経営者にカリスマ性は必要か、答えは「NO」です。カリスマ性がなくても経営者としての資質が備わっていれば会社の舵をとることができます。
カリスマ性だけで資質がない経営者は厄介です。本能に任せた判断と、根拠のない決断で経営危機をまねく若手の起業家を多く見てきました。
そこで今回は、経営者に求められる8つの資質をテーマに、ビジネスを成功へと導くトップリーダーの条件についてチェックしていきましょう。
目次
1.論理的な考え方をもっているか
クロネコヤマト宅急便の創業者・小倉昌男さんは、自信の著書「経営学」のなかで次のような言葉を残しています。
経営者にとって一番必要な条件は、論理的に考える力を持っていることである。なぜなら、経営は論理の積み重ねだからである。 計画だけでなく実際に行動したあと、試行錯誤しながら条件を変化させてゆき、微調整しながら計測していけば、そんなに違いなく結果を予測できるものである。 むしろ、試行錯誤のやり方が大事なのである。 小倉さんが宅急便の事業プランを立てたとき、当時は広範囲の荷物を集めることが難しく、効率が悪すぎて採算がとれないからビジネスにならないと周りにバカにされたそうです。
その問題点を小倉さんは見直し、一日あたりの費用・収入・一日に必要な集荷数・集荷エリアの密度・車両の作業効率などを予測して事業プランを立て直します。
そして、初年度は赤字になるが2年後は損益分岐点が黒字に転換する、しかし、真似するライバルも出てくるだろうが、その頃には市場を独占して収益性が高いと考えました。
自分の頭で論理的に組み立てて考えず、他人のビジネスモデルに乗っかり感情的に考える人は経営者に向かないと述べています。
2.戦略的な考え方をもっているか
また、小倉さんは、次のような言葉も残しています。
経営には「戦略」と「戦術」がある。 戦術は、日常の営業活動において競争に勝つための方策であり、戦略とは経営目標を実現するための長期的な策略である。
つまり、経営の舵をとるトップリーダーは、表面上だけで推測するような戦術レベルで判断してはいけないと言うのです。
経営者に求められる資質は、戦略的な思考。 たとえば、「売上第一」とか「利益優先」とか、「安全第一」や「シェア独占」など、部下に対して様々な「第一」を掲げる経営者もいるが好ましくないとのこと。
こうしたケースは、どれを優先して「第一にすべきか」を部下に示せない戦術レベルの人間で、会社にとって「何が第一なのか」を見極め、指示できる経営者が戦略的な考えの持ち主だそうです。
3.需要(ニーズ)をつくりだせるか
さらに、小倉さんは、次のような言葉を残しています。
ボーダーレスの時代だから、どんな新しい競争相手が現れるかわからない。経営は攻めの姿勢が大事である。守りの経営では、ジリ貧になるのは間違いない。 攻めの経営の神髄は、需要(ニーズ)をつくり出すことにある。需要はあるものではなく、つくるものである。
従来のサービスや商品に固執しているとビジネスモデルも偏って、既存のユーザーを奪い合うだけの経営者が多いですが、それでは会社が長続きしないとのこと。
自分が売りだしたいサービスや商品があるとすれば、その需要をつくりだしてユーザーを引き付ける能力がトップリーダーに求められる資質です。
新しいサービスや商品を試行すると同時に、そのニーズをユーザーに植えつけるアイデアを論理的・戦略的に考えられる人間こそ、トップリーダーに相応しいと言えるでしょう。
4.経営者の立ち位置を理解している
経営者は、経営に関するプロフェッショナルです。会社の財政や社内のバランス、ビジネスの収益性を高めるために問題を解決することが経営者の仕事です。
優秀な経営者には、リスクを背負ってリターンを求める企業家精神も備わっていますが、キャッシュフローや資金調達、人材の配置やビジネスプランの軌道修正など経営戦略を打ち立てられる実務家としての資質も求められます。
5.全体像を把握できる能力と先見性
経営者にとって一番の責務は、会社の将来を考えて動くことです。全体を把握しながら必要なものと不必要なものを区別し、先見性をもって時代の流れを読む能力が求められるでしょう。
先を見通せない経営者は、知識や情報が備わっていないだけで勉強不足な人間です。先見性は天性の才能ではありません。
常にアンテナを張り、トレンドや市場の動向から目を離さないことが重要です。
6.共感力とコミュニケーション能力が高い
会社全体の経営とは、ビジネス戦略やキャッシュフローの問題だけではありません。
社員やユーザーの反応など、会社に関わる全体を把握することが仕事です。 そのうえで重要になるのがコミュニケーション能力。そして、従業員とのコミュニケーションにおいて大切なポイントが「共感力」です。
一方通行では経営の舵取りは上手くいきません。経営者から管理職へ、管理職から従業員へとコミュニケーションや意思の疎通が明確になることで会社のビジョンも全体に共有されます。
日頃から社内の人間とコミュニケーションをとるときには、共感する姿勢と情報を共有する姿勢を心がけるように意識しましょう。
7.財務や会計の知識が備わっているか
経営は、常に「お金」と背中合わせです。損益計算書や貸借対照表などキャッシュフローに関わる必要最低限の知識は備えておかなければなりません。
もっと言えば、金融経済や企業会計にも目を向けて知識を養う必要があります。必要であればセミナーや通信講座など、トップリーダーは自らが知識を得るための投資を惜しみません。 ほかにも、税金のカラクリや公的機関に関する融資についてなども把握しておく必要があります。今の時代、財務の教養がない経営者は時代の流れについていけないでしょう。
8.資金調達が上手い
会社は、1年で、約60%が倒産し、5年で、約85%が倒産します。 つまり、会社を設立して、5年継続している企業は、約15%程度なのです。 この15%の企業になるためには、資金調達を上手に行うことが必須となってきます。
資金調達のノウハウの関連記事まとめておきます。ぜひご参照ください。
以上、8つのポイントで経営者に求められる資質をチェックしましたが、「これだけマスターすればOK」という決められたルールはないのです。
ルールがないからこそ、無限に自分を高めていかなければ会社の舵取りに行き詰まってしまいます。会社の成長に伴い、経営者も成長しなければなりません。
逆を言えば、経営者が育てば会社も良い方向に成長します。トップリーダーに相応しい人格をもつために、求められる資質を多く備えていきたいものです。