起業したい!と考えている方も多いかと思いますが、起業する場合、個人事業主でスタートすべき?それとも、会社を設立すべき?この論点で悩む方が多いのではないでしょうか?今回の記事では、個人事業で開業?法人設立で開業?どっちが理想的なのかの判断するために、会社設立のメリット・デメリットをご紹介致します。
1.開業するための手続きは個人・法人どっちが楽か?
(1)個人事業主の場合
個人事業主は、税務署に『開業届』を出すだけで始めることができます。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/05.pdf
下記は、提出しなくても個人事業をスタートすることは可能ですが、状況に応じて提出が必要となります。
青色申告をしようとお考えの場合には『青色申告承認申請書』
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/10.pdf
従業員を雇用する場合には『給与支払事務所開設届出』
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/pdf2/1648_11-2801.pdf
源泉所得税を毎月払いたくない場合には『源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書』
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/pdf2/1648_14-2801.pdf
を提出します。
(2)法人設立の場合
一方で法人設立の場合は登記書類を作成します。書類作成以外にも登記費用で25万円~30万円の支払い、資本金の払い込みも必要となります。
ご自身で手続きを行うことも出来ますが、時間と労力を考えると専門家に依頼するという方法もひとつです。
登記書類作成以外にも、 税務署に法人設立届出を行います。
さらに必要に応じて、下記の手続きを行います。
・青色申告承認申請書(特典を受けるためには必要
・従業員を雇用する場合には、『給与支払事務所開設届出』
・源泉所得税を毎月払いたくない場合には、『源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書』
さらにさらに、都税事務所、県税事務所、市町村役場に 法人設立届出を提出します。
※管轄の都税事務所、県税事務所、市町村役場で法人設立届出資料データを取得してください。
ご自身で会社設立の手続きを行う方法は下記を 専門家に頼まず自分で登記申請(会社設立)を手続きする場合の流れをご紹介! 専門家に依頼することも検討したいという方は下記を 会社設立を依頼する士業はどこがベスト?行政書士・司法書士・税理士選ぶためのポイントとは? 参考にしてみてください。 |
開業するための手続きだけを考えると、個人事業のほうが法人に比べて簡単に開業できるでしょう。
しかし、それ以外に考えなければならない論点がありますので、以下で、法人設立する際のメリット・デメリットをご説明させて頂きます。
2.法人設立のメリット8つ!!!
(1)信頼性の担保
個人事業主は社会的信頼が低く仕事上で不利になる場面もあります。
法人の場合、資本金の払い込みや決算内容の情報開示など一般的に、個人事業主よりも取引先から信頼度が高くなります。
とくに大手企業を取引先にする場合には、個人事業主に仕事を発注しないというケースも考えられます。法人化することで、取引先が制限されるリスクを回避することが出来ます。
(2)税率が一定になる
個人事業主では所得税が最大45%の累進課税となっていますが、法人だと年間所得800万円以下なら15%、最高でも25.5%の一定税率となっています。
※所得税率の参照 http://so-labo.com/income-tax-rate-2760
※法人税率の参照 https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2015_5/pdf/03.pdf
個人事業主は利益が出るほど税金を取られてしまうために、一定の売上を超えた場合は、法人税のほうが有利になります。
年間の利益がおおむね600万以上ある場合は、法人化した方が、税制上のメリットが大きくなるケースが多いです。
(3)節税対策の範囲が広がる
個人事業主に比べて法人の方が、経費に計上できる項目が多いので、その分だけ利益を減らすことができます。
①家族への給与
個人事業主の場合、家族を社員として雇用し給与を支給するのには青色事業専従者給与の届出を提出する必要があります。 法人の場合は特に制約を受けることがありません。

②退職金の支給
退職金は税務上非常に優遇されています。 個人事業主の場合は退職金を払うことができませんが、法人では支払うことができます。

③保険料の計上
個人の場合は生命保険料の控除がありますが、限度額が定められています。高額の保険料を支払っていても最大で12万円しか控除することはできません。
しかし、法人は個人に比べると保険料を費用に計上できる金額が多いです。
法人の場合には、保険の種類にもよりますが「全額損金」「1/2損金」「1/3損金」など損金として扱うことが出来ます。

(4)融資や資金調達の幅が広がる
会社運営をしていくと、規模拡大等でどうしても資金が必要になる時期がやってきます。金融機関で融資をお願いする時にもやはり「社会的信用」がポイントになることがあります。
個人事業主よりも法人の方が社会的信用が高いために、銀行などの理解を得やすく資金調達の選択肢や可能性が高まります。大きな金額を借りる予定がある場合には法人の方が借りやすいケースがあります。
(5)人材採用を行いやすい
求職者の人が会社を選ぶ際に社会的信頼の低い個人事業主よりも、社会的な信用が高い法人の方が人材が集まりやすい傾向にあります。
人材が集まりやすければその分だけ優秀な人を選ぶことができ事業の発展につながります。
(6)決算月を自由に決めることができる
個人事業主の事業年度は1~12月と決められています。 一方で、法人の場合は決算日を自由に決めることが可能です。そのため、売り上げの平準化や繁忙期を避けて決算月を設定することができます。
(7)有限責任なのでリスクが少ない
個人事業主の場合は事業上の責任はすべて負う必要があります。負債についても事業主が負担しなければなりません。
法人の場合、出資した株式の上限までという責任の上限があります。大きな損失が発生したとしても、代表者が責任を持つ必要はありません。
ただし、借入金などの連帯保証になった場合は、代表者の財産をもって弁済する必要性がでてきますのでご注意ください。
(8)欠損金の繰越控除
発生した赤字を来期以降に繰り越すことで翌年度以降の黒字と相殺をすることができます。それによって課税所得を圧縮することができますので税金額を減らすことができます。
この欠損金の繰越控除は、個人事業主の場合は3年間限りですが法人だと9年間まで繰越を行うことができます。
法人の繰越期間は時期によって異なります。詳しくは下記サイトをご参照ください。
3.法人設立のデメリット5つ!!
以上のメリットを見ていくと、個人事業主よりも、法人化したほうがいいと思うかもしれませんが、一方でデメリットも存在しています。
この点も踏まえて、法人設立するか否かを検討してください。

(1)赤字でも毎年約7万円を支払う必要がある
個人事業主の場合、利益がなければの税金は発生しません。 法人の場合は、仮に赤字だったとしても、法人住民税の均等割支払い約7万円が毎年発生してしまいます。
※法人がある場所によって、7万円が多少前後致します。

(2)社会保険への加入が義務づけられている
個人事業主の場合は、国民年金と国民健康保険の加入で済みますが、法人の場合は厚生年金保険と健康保険への加入が義務付けられています。
例えば年齢30歳、月収30万円、年収360万円の人を雇用する場合、事業者負担は毎月42,315円、年間507,780円の負担が発生します。(平成29年9月からの保険料で計算)
5人未満の個人事業主の場合は、加入を義務付けられていないので、この支払をする必要がありません。
※現在は、加入義務があるにも関わらず、社会保険に加入していない会社もありますが、マイナンバー制度の導入によって、規制が厳しくなり、社会保険に加入していない会社を無くすため行政が動いてくると予想されております。
(3)事務負担の増加
・法人税申告 ・貸借対照表の公示義務 ・会社組織に関する手続き といったように、個人事業主では発生しない様々な事務手続きが発生します。
(4)交際費の上限が800万円
個人事業主の場合は、交際費に上限はありません。 個人事業主の場合、交際費に上限はありませんので、交際費と認められればいくらでも計上することができます。
一方で、資本金1億円以下の法人の場合、年間800万円までしか交際費として計上することができません。
(5)事業廃止費用がかかる
個人事業主の場合、税務署へ廃業届けをすれば、簡単に廃業することができます。一方、法人が廃業をする場合には、各種手続き及び事業廃止費用がかかってしまいます。

まとめ
起業する際に、法人を設立すべきか、個人事業で開業すべきかの判断材料になりましたでしょうか?
法人を設立する際には、メリットもあれば、デメリットもあります!
起業をするときの形として、個人事業主と法人設立のどちらがいいのかはケースバイケースなので、一概には言えませんがあなたが会社設立をする際の参考にしていただければ幸いです。