スタートアップのピッチの基本|必要な準備・資料作成のコツを紹介

世の中に新しい価値を提供するスタートアップでは、「ピッチ」と呼ばれる短時間のプレゼンテーションで自社の製品・サービスの魅力を伝え、資金や人材などの経営リソースを獲得します。ぜひチャンスをつかめるようにピッチの基本をおさえましょう。

この記事では、ピッチの基本として必要な準備や資料作成のコツを紹介します。

スタートアップの定番「ピッチ」の基本

ピッチとは?プレゼンとの違い

ピッチとは、主にスタートアップが行う資金調達や顧客獲得などを目的にした短いプレゼンテーション(プレゼン)のことです。

短いピッチで1分のものがあります。「エレベーターピッチ」という「エレベーターに乗っているほど時間の短さのピッチ」を表現する言葉もあるほどで、投資家とばったり出会ったときなど、チャンスを逃さずに自社の製品・サービスの魅力を伝えられるように準備しする必要があります。

ピッチは短いものもあれば、10分以上の長いものもあります。1分、3分、5分、10分…と時間が変化しても対応できるよう、要点をまとめておくのがポイントです。

元々の英語のpitchは同じことを続けて行う意味で、野球の投球を繰り返すピッチングも同じ言葉から来ています。言葉の原義からも、スタートアップとして何度も繰り返し、自社の売り込みのための短いプレゼンテーションを行う覚悟が必要だと言えるでしょう。

スタートアップにピッチが必須な理由

スタートアップでは、資金調達や採用などの経営リソース獲得の際にピッチを用いることは多いです。
スタートアップは短期間での黒字化が難しい性質上、赤字が長引きやすく、実績がない中でも、自社の製品・サービスの魅力を売り込んで、資金・人材の経営リソースを獲得し続けないといけないからです。

人気のピッチイベント・ピッチコンテスト

ピッチを見学したり、参加したりするなら、ピッチイベントやピッチコンテストを探しましょう。ピッチイベントやピッチコンテストは日本にも数多く存在します。
イベントの大きさは全国規模の大きなものから、業界や地域が限定された小さなものまで様々です。
世の中に公開されている既に形になった製品・サービスについてピッチするものもあれば、まだ世の中には未公開のアイデアをピッチする場合もあります。

また、ピッチの目的も、スタートアップ同士のコネクション強化や、投資家との出会いや、メンバーの採用、大企業との協業など様々です。
ピッチイベント・ピッチコンテストも、自分の事業フェーズにあったものをおすすめします。
自分で参加するだけでなく、視聴できるものもあるので、興味のある方は「スタートアップ ピッチ イベント」や「スタートアップ ピッチ コンテスト」などで検索してみてください。

国内で人気のピッチイベント(2021年5月18日現在)

東京発・世界を変える起業家とビジネスを輩出するスタートアップコンテスト

設立3年未満のスタートアップがビジネスアイデアを武器にピッチするイベント

インターネット企業の経営者・経営幹部・投資家が一堂に会する招待制カンファレンス

産業を共に創る経営者・経営幹部のためのコミュニティ型カンファレンス

ピッチに申し込むには?

ピッチに申し込むには、各イベントの要件を満たす必要があります。
ピッチイベントにはいろいろな形式があり、申込み条件や申込みに必要な書類も異なります。
参加しやすい条件の例では400字で事業アイデアを説明すればよいもの、当日参加OKものがあります。

一方で難易度の高い、事業計画書を提出後面談して合格した人しか参加できない事前審査のあるもの、紹介してもらえないと参加できないものもがあるので、出場したいピッチイベント・ピッチコンテストがあれば、常日頃から情報を集めておきましょう。

スタートアップのピッチに必要な準備・資料作成のコツ

ピッチに必要な準備は次の5つです。

  • 準備①ピッチの目的・ゴールを考える
  • 準備②ピッチに必要な要素の洗い出しをする
  • 準備③洗い出した要素をもとに資料作成する
  • 準備④過去のピッチ資料と比較する
  • 準備⑤発表準備をする

それぞれ説明します。

準備①ピッチに必要な要素の洗い出しをする

必要な準備の1つめは、ピッチに必要な要素の洗い出しとして、自分の製品・サービスの状況を整理します。
スタートアップが事業の要素を整理するときにおすすめなのは、リーンキャンバス(Lean Canvas)というフレームワークです。起業家のエリック・リースにより発案されたもので、9つの要素で事業を整理できます。

ピッチに必要な要素の洗い出し方法、リーンキャンパスについては次の記事を参考にしてください。

準備②ピッチの目的・ゴールを考える

必要な準備の2つめは、ピッチの目的・ゴールを考えること、つまり「何のために誰にどんなことをしてもらうためのピッチなのか」を考えることです。

例えば、資金調達を目的としている場合は、参加する投資家の心を動かすピッチにする必要があります。投資家が複数いる場合、全員をターゲットにするのか一人に絞るのかでも、ピッチに盛り込む情報が変わってきます。

投資家もスタンスは様々です。スタートアップの情熱を応援したい投資家、優位性の高い製品・サービスを提供するスタートアップを応援したい投資家など、それぞれの興味関心がかけ合わされば、それこそ星の数ほどの「心」があるでしょう。
一人の心を動かすことに絞れば、ターゲットの好きそうな情報、投資判断に必要そうな情報を盛り込むのが効果的です。

逆に、幅広い人に認知度を高めたり興味を持ってもらったりするためには、複数のターゲットを想定し、全員がある程度うなずく「納得感」を盛り込む必要があるでしょう。
ピッチの目的を確実に果たすため、自分がピッチで「何のため」に「誰」に「どんなこと」をしてもらいたいのかよく考えましょう

準備③洗い出した要素をもとに資料作成する

必要な準備の3つめは、洗い出した要素をもとに資料作成することです。準備②で考えた目的・ゴールによって情報を選んで資料作成しましょう。短いピッチであればすべての要素を盛り込むことは難しいため、情報の重要度・優先度で内容を取捨選択しましょう。

一般的にピッチで必要な要素は次の6つです。

  • 顧客と問題
  • 解決策
  • 市場規模
  • ビジネスモデル(収益の流れを図式化したもの)
  • 今までの実績
  • 優位性
  • チーム
  • 今後の事業計画

必要に応じてデモ動画や製品・サービスのサンプル、顧客の声などターゲットの関心のある情報を付け加えましょう。

準備④過去のピッチ資料と比較する

必要な準備の4つめは、過去のピッチ資料と比較することです。過去のピッチ資料を参考に、作成したピッチ資料と内容にインパクトがあるかをチェックしましょう。

過去のピッチ資料ならプレゼン資料共有サービスのSlidShare、過去のピッチ動画なら動画共有サービスのYoutubeなどでも確認できます。どのような表現をすると短時間で伝わるか、資料を洗練させるヒントも見つかるでしょう。

準備⑤発表準備をする

必要な準備の5つめは、発表準備をすることです。

iPhoneでおなじみのスティーブ・ジョブズはプレゼンが上手いことで有名でした。
5分のピッチに数週間前から準備をして、リハーサルを丸2日かけて行い、本番同様の練習を1・2回するといったくらい準備を徹底していたと言われます。
それほどまででないにしろ、準備は必要です。資料だけ作成して本番ぶっつけで発表した結果、時間オーバーで最後までたどり着けない失敗をしないよう、準備しましょう。

主な準備は3つです。

  • ピッチ原稿をつくる
  • QA対策する
  • ピッチの練習を動画に撮影して見返す

ピッチ原稿をつくることで、「どのページで何を伝えるか」がはっきりします。またピッチ内容の情報量を文量から把握できます。情報量が多すぎると時間がオーバーしたり、相手に伝わりにくかったりするため、できるだけシンプルに伝わるように調整しましょう。

QA対策とは、ピッチ後の質疑応答への対策のことです。多くのピッチではピッチのあとに質疑応答の機会を設けられることが多く、聞き手は質疑応答を通して、さらに内容への理解を深めます。
QA対策ができていないと、しどろもどろな受け答えになったり、アピールチャンスを逃したりします。どのような質問がくるかを想像し、自社の製品・サービスをアピールできる回答を用意しましょう。

最終的なまとめとして、ピッチの練習を動画に撮影して見返しましょう。

ピッチは、内容の革新性や発表資料の美しさだけでなく、話し手の見栄えや身振り手振りを含めた総合的なアピールができなければ、聞き手の心を動かせず、目的を達成できないでしょう。
動画で確認することで、ピッチの内容だけでなく、ピッチ中の口調や姿勢なども確認することができます。ぜひ聴衆の気持ちになりまっさらな頭で動画を確認してください。

その際、次の3つに答えるピッチ内容になっているかもあわせてチェックしましょう。

  • Why now? (なぜ今やると成功するのか)
  • Why you?(なぜあなた(たち)ならできるのか)
  • Why this?(なぜこの解決策なのか)

3点は「スタートアップのピッチで結果を出す3つのコツ」で詳しくご説明します。

スタートアップのピッチで結果を出す3つのコツ

スタートアップのピッチで結果を出すためのコツは3つあります。

  • コツ①「Why now? Why you?Why this?」に答える内容にする
  • コツ②壇上での立ち振舞いをシミュレーションする
  • コツ③ピッチの前・ピッチの後のアクションも考える

コツ①「Why now? Why you?Why this?」に答える内容にする

スタートアップがピッチで結果を出すためのコツの1つめは、前の項目でも説明した通り、「Why now?(なぜ今やると成功するのか) Why you?(なぜ今やると成功するのか)Why this?(なぜこの解決策なのか)」に答える内容にすることです。この3つの問いの答えによって、事業のビジネスの優位性を明確にするからです。

Why now(なぜ今やると成功するのか)?

Why now?(なぜ今やると成功するのか)」は、テクノロジーの変化や社会情勢の変化、法律の変化、経済情勢の変化などからの事業の背景を表現する問いです。

例えば、次のような状況で考えてみましょう。

  • コロナ禍でソーシャルディスタンスが求められる社会情勢になった
  • 緊急宣言が発令され、飲食店でのアルコール提供が制限された
  • リモートワークが普及した結果、今までは使っていなかった層の人までがビデオ通話が使用可能になった

「ビデオ通話を利用したオンラインの飲み会サービス」を作るピッチをしたら、「今やるべきだ」と他の人からみても、ある程度の納得感が得られるはずです。

Why you?(なぜあなた(たち)ならできるのか)

Why you?(なぜあなた(たち)ならできるのか)」は、自分や自分達のチームだから成功する理由、創業者や参画するメンバーの経歴や来歴などを表現する問いです。

例えば、次のようなメンバーだったらどうでしょうか。

  • 飲食経験15年、居酒屋チェーンで仕入・調理・接客すべてを経験していたAさん
  • HPなどのサイト構築のできるエンジニアBさん
  • 飲食メーカーのデザインをしていたCさん

「ビデオ通話を利用したオンラインの飲み会サービス」を作るピッチをしたら、飲食業界への専門性もあり、サービスを形にするエンジニアとデザイナーのいるチームであれば、ビジネスの成功率が高そうだと考えられるでしょう。

Why this?(なぜこの解決策なのか)

Why this?(なぜこの解決策なのか)」というのは、課題に対する解決策が一番よいと言える理由、言うなれば創業動機と製品・サービスの優位性を表現する問いです。

例えば、「フードロス(食品ロス)」を課題だとすると、どのような解決策があるかを考えてみましょう。食べられる量だけ作る、食べられる量だけ買う、廃棄するはずの食料を活用する、などが挙げられます。その無数の解決策の中で「自分の解決策が一番よい」と伝えるために、課題に対するユニークな考察や、ターゲットについて自分しか知らない情報、市場規模など聴衆が理解しやすいポイントを探します。

自分しか知らない情報の例は、自分の体験に潜んでいるかもしれません。15年の飲食経験から、お店の飲み会では「一人ひとりの食べる量がわからないために、残すことを前提とした量の食事が提供されている」状況を知っていたとします。

今回の「ビデオ通話を利用したオンラインの飲み会サービス」で提供するお酒や食べ物の量を一人ひとり調整して届けられるようにすれば、フードロス解決の一手になるかもしれません。

このように、課題に対する解決策が一番よいと言える理由や、創業動機と製品・サービスの優位性を盛り込みましょう。

コツ②壇上での立ち振舞いをシミュレーションする

スタートアップがピッチで結果を出すためのコツの2つめは、壇上での立ち振舞いをシミュレーションすることです。

人前でピッチをするとき、自信がある話し方、端的な受け答えが重要です。自信がある話し方をするポイントは、大きな声でゆっくりと話すことです。

とくにピッチは時間が短いため、早口になってしまうことも多く、自分が思うよりもゆったりとした話し方を心がけましょう。
練習のときに動画で撮影し実際に確認すると、話し方をチェックできます。

コツ③ピッチの前・ピッチの後のアクションも考える

スタートアップがピッチで結果を出すためのコツの3つめは、ピッチの前・ピッチの後のアクションも考えることです。

ピッチをする目的に合わせて、ピッチの前後でもゴールに向けてできることをしていきましょう。

ピッチ前のアクション

ピッチ前のアクションとしておすすめなのは、審査員や投資家の情報を確認することです。資金獲得を目的として、投資家に投資してもらうことをゴールとすれば、まずは投資家の情報を確認します。同じ業界に投資経験があるのか、どのような規模で何回投資をしているのかなど、投資家の傾向を把握します。

また、今はSNSで人とつながりやすくなっているため、事前にSNS経由で挨拶をするなどのアクションもよいでしょう。

ピッチ後のアクション

ピッチ後のアクションとして、懇親会やメールなどでターゲットにアプローチするのも選択肢のひとつです。ピッチイベントでは懇親会などで自由に会話ができる時間が設定されていることがあります。その際にアピールしたり、連絡先を交換したりすることで、その後につながります。

また、イベント後はお礼や改めてピッチの内容、次回ミーティングのお願いなどをメールするとよいでしょう。

まとめ

スタートアップのピッチについて基本的なところから、コツまでご紹介しました。

ピッチを通して自社の製品・サービスの魅力を伝えることで、資金や人材などの経営リソースの獲得に繋げられます。チャンスを逃さないために、素晴らしいピッチができるように準備を整えましょう。

ピッチの内容は「Why now?」「Why you?」「Why this?」に答えられているかどうか、ピッチをするときの立ち振る舞い、ピッチ前後での行動などを確認し、スタートアップとしての目的を達成に向け、最善を尽くしましょう。

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