売上高利益率と資本利益率は、収益性の分析でよく使用される指標です。
当該指標は、どちらか単体だけでは会社の収益性を判断するには不十分であることが多く、併せて分析することで、より精細な分析を行う事が出来ます。
今回は、この2つの指標をどう利用するのか説明します。
1.売上高利益率と資本利益率とは
2つの指標はどちらも収益性を表す指標ですが、その目的・用途が異なります。
売上高利益率と資本利益率は、簡単に言うと下記のように言い表すことが出来ます。

売上高利益率は、売上高に対しどれだけの利益を稼げているかを示す指標です。
一般的に、高級品などは利幅が大きく利益率が高い傾向にあり、薄利多売とする商品は逆に低くなります。
売上高利益率の平均値は業種によって様々です。そのため、単純に売上高利益率が高いか低いかで会社の良し悪しを判断することはできません。同業他社との比較や年次比較を行い、会社の収益性を判断します。
一方、資本利益率は会社の保有資本がどれだけ効率的に運用されたかを示す指標であり、一般的に資本利益率が高いほど効率的に利益を生んでいると判断されます。
しかし、当該指標においても平均値は業種によって大きく異なるため、売上高利益率と同様に、同業他社との比較や年次比較を行って会社の効率性を判断することになります。
2.売上高利益率と資本利益率の計算式
(1)売上高利益率

売上高利益率は、売上高に対する利益の割合を表します。ここで、様々な利益を使用することで、必要に応じて適切な利益率を分析することが出来ます。
(2)資本利益率

資本利益率は、資本に対する利益の割合を表します。ここでも、売上高利益率と同じように、様々な利益や資本を使用することで、必要に応じて適切な利益率を分析することが出来ます。
3.売上高利益率と資本利益率の比較
ここで、同市場に属する2つの会社の利益率を比較し、会社の優劣を判断してみましょう。
分かりやすくするために、期首・期末の資本は同額と仮定します。
一見、B社の方が売上高や利益の額が多く、優良だと判断できそうですが、規模が大きい会社は規模が小さい会社に比べ、売上高が多く計上できるのは当然とも言えます。
ここでは、会社規模の影響を除外した利益率を見ることで、A社とB社を比較していきます。
(1)売上高利益率の判断


売上高利益率は両社とも同じであり、単純にこれだけで判断すれば、A社とB社が提供するサービス自体の収益力は同等と言えそうです。
しかし、この分析だけで両社の優劣は同等と判断してよいのでしょうか?
会社がこの利益をちゃんと効率よく出しているのかどうかは、単に売上高利益率を分析するだけでは分かりません。
そこで、これらと併せて資本利益率を分析します。投資効率を分析できる資本利益率を併せて見ることで、会社の収益性について、より精細な評価をすることが出来ます。
(2)資本利益率の判断 ※ここでは総資本を用います。


A社とB社を比較すると、総資本利益率はA社の方が高く、保有資本をB社より効率良く運用できていることが分かります。
対して、B社は保有資本の割には売上高を効率良く計上できていません。
(3)2つの会社の優劣判断
売上高利益率と資本利益率の計算結果より、A社の方がB社よりも収益性の面で優れていると判断できるでしょう。
同市場における平均値と比較する必要もありますが、A社は収益力も経営効率も良いため、事業規模を拡大すればより多くの収益を獲得できる可能性があります。
B社は、A社よりも経営効率が悪く、事業内の見直しが必要となっているかもしれません。事業が健全に動いているかどうかは、さらに棚卸資産や債権債務の回転率を分析する事も有効です。
4.まとめ
会社は、高い利益を上げつつ保有資本を有効に活用し、売上高利益率や資本利益率を高水準、且つ長期的に持続することが重要です。
会社の収益性をはかるには、売上高利益率単体では不十分です。資本利益率と併せて適正な判断を行いましょう!