起業するにあたって、決定が必要不可欠な「役員報酬」。
これから起業しようと考えている方、起業に興味はあるが未だ具体的ではない方、
そんな皆さんが「いざ、役員報酬を決定しよう!」とした際に失敗しないよう、
役員報酬の決め方、いくつかの注意点についてご説明します。
1.役員報酬(役員給与)とは?
決定すると言っても、役員報酬がそもそも何なのかを理解しなければ、思わぬミスにつながりかねません。
まずは、役員報酬そのものに対する理解を深めましょう。
よく役員報酬と混同されがちなのが「従業員給与」。
この二つは、どう違うのでしょうか。
- 役員報酬…会社から支払われる報酬の中で、法人上の役員(法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人)に支払われる報酬のこと。
- 従業員給与…雇用契約に基づいて、会社から従業員に労働の対価として支払われる報酬。
分かり易くいうと、役員に支払われる報酬が役員報酬、従業員に支払われる報酬が従業員給与です。
2.役員報酬の決め方とルール
(1)決定への手順
いざ、役員報酬を決めようとしても、
どこから手をつけていけばいいのかが、わかりませんよね。
役員報酬はあとで自由自在に変更できるものでないため、慎重に手順を踏んでいかなければなりません。
設立した会社の役員報酬を決定する場合に、必要な手順や手続きを次にまとめました。
①役員報酬のルールを確認しましょう。
法律上、役員報酬は原則的に損金不算入(経費にできない)のため、損金算入(経費にできる)できて節税が可能な範囲内で決定するようにしましょう。
詳しくは、「下記(2)の役員報酬を決める際のルールとは?」をご覧ください。
②株主総会(社員総会)で決議を行いましょう。
株主総会(社員総会)を開催し役員報酬の金額を決め、出資者の承認を得ます。
③年金事務所に社会保険加入の書類を作成した後、提出しましょう。
役員報酬額を決定した後、社会保険加入の手続きをする必要があります。
⓸役員が住む市区町村へ住民税の届出をしましょう。
役員個人の住民税を会社が源泉徴収し納付する特別徴収手続きが必要です。
(2)役員報酬を決める際のルールとは?
役員報酬を決める際に注意するルールはたったの二つ。
- 定期同額給与(毎月同額の給与支払い)であること or 事前確定届出給与(予め届け出た給与支払い)であること
- 役員報酬の変更可能期間が会社の事業開始日から三ヶ月以内と限りがあること
(利益連動型給与というのもありますが、中小企業はほぼ適用できないので割愛させていただきます。)
一見、シンプルに見えるこのルールですが、
シンプルゆえに調節がきかない時や、会社を設立したばかりの売り上げの見込みがつかない時期に
毎月支払いをする役員報酬を決定することは、容易なこととはいえません。
(3)役員報酬の決める際の2つの方法
役員報酬を決定する手順は大まかにご説明いたしましたが、具体的にどのような基準で決定していけばいいのでしょうか。
①利益計画から決定する方法
まず、会社の利益計画を作成して、利益として出た金額までを自分の役員報酬とする方法
例)年間1,000万円の利益が出る計画のため、役員報酬を年間900万円までだしても100万円黒字となる
→毎月75万円(年間900万円)の役員報酬に決定
②希望額から決定する方法
利益計画から決定する方法の場合で、より高額の報酬がほしいという方がとるべき方法で、
先ほどの決定方法の計算おいて、役員報酬の希望額を決めた上で、売り上げを伸ばすか無駄な固定費をおさえることで可能となります。
例)毎月100万円(年間1,200万円)の役員報酬に決定
→売上増加して粗利を200万円増加、交際費を100万円削減して100万円の黒字とする
③役員報酬の変更方法と注意点
役員報酬は基本的に決算終了後三ヶ月以内でしか、変更することはできません。
なぜなら、いつでも簡単に役員報酬の変更ができてしまうと、会社は意図的に利益・納税額を操作できるようになってしまうからです。
例えば想定より利益が大幅に出そうになったら、自身の役員報酬を増やせば、会社の税金も減って自分の給料も増える!
これができれば夢のようですが、国は認めてくれません。
このように利益・納税額を簡単に操作できないように変更できる期間が決まっています。
しかし、変更可能な期間以外で絶対に変更できない、というわけではないです。
では、どのような場合に、役員報酬の増減が可能なのでしょうか?
⓸減額する場合
期の途中で役員報酬を減額しても損金算入するためには要件があります。
1、経営状況が悪化した
経営状況悪化とは売上が思うように伸びず赤字になっている、主要取引先が倒産して売上減少し資金繰りが悪化している等のことです。
会社が危機的状況なのに役員報酬がそのままというのもおかしいので、この場合は減額できます。
しかし具体的にどういう状況なら減額できるというはっきりとした規定がない、という問題点があります。
業績悪化したから役員報酬を減額したけど、税務署に認められなかった事例も過去にございます。
個別に判断しなければならないため煩雑であるといえます。
2、臨時的な改定
常勤役員が病気になった等の理由で非常勤役員に変更となった場合は減額できます。
ただ単に地位が変更になっているだけでなく、実際に行っている仕事内容が大きく変わっているということが重要な要件となります。
例えば、肩書が代表取締役から取締役に変更となったため、役員報酬を減額したが、
実際に行っている仕事内容が全く一緒だったら認められない場合があるので注意が必要です。
⓹役員報酬を増額する場合
会社の業績があがり売上が予想に反し高額であった場合、経営者はご自身の報酬を増額したくなるかもしれません。
しかし、前記した通り利益・納税額の操作を防ぐために、役員報酬の増額も認められない場合があります。
認められる場合とは、たとえば非常勤役員が常勤役員になるなどの与えられる責任が明らかに大きくなるなどの昇格の際です。
これらの条件を理解した上で、役員報酬の変更を検討しましょう。
また、役員報酬の変更は、株主総会などでそれについての決議がされた日の次の支給からの変更となるため、過去の役員報酬を変更することがはできません。
あわせて、注意しましょう。
3.役員報酬を決定!手続きも忘れずに!
上記の観点を余すところなく理解し、ついに役員報酬が決まると、
最後の難点、「各役所への手続き」が待っています。
年金事務所や市区町村に届出を出すなどの手続きが必要です。
いままでの説明を参考に、忘れず手続きを行いましょう。
まとめ
役員報酬の決定は、その後の会社の経営に大きく影響をもたらします。
ご自身の将来や会社の発展の為にも、様々な観点から綿密な計画を立て、
無駄な税金を払わなくて済むような役員報酬を決めましょう。