Aさんは元々、大手インターネットサイトで古本の販売をされていました。事業が順調に進み約10ヶ月が経過。Aさんは「あること」で悩みだしました。「あること」とは、古本の仕入れ資金のことです。まとめて仕入れれば仕入れるほど単価は安くなり、買ってくれる顧客もさらに増加します。
しかし、そのまとまった仕入れ資金がまだ用意できないため、利益率の上昇のために日本政策金融公庫からの融資を検討しました。融資の世界では、「インターネット物販では融資は受けにくい」という通説もあります。
にもかかわらず、Aさんはみごとご希望の200万円の融資に成功しました。その決め手は一体なんだったのでしょうか?
目次
なぜ?200万円の融資を日本政策金融公庫から受けることに成功したAさんの事例

副業でインターネット物販を行う方も多い中、Aさんの場合は本業で古本販売を行っていました。元々本は大好きだったAさん。自身でも古本を日常的に買う中で、「これをネット販売したらどうか」と思い立ちました。「古本せどり」についてはネットや書籍などで自分なりに勉強をし続けました。
Aさんにとっては初めてのインターネット物販の試みでしたが、毎月顧客数は伸びていきました。「古本せどり」は副業でやられている方もいらっしゃいますが、Aさんの場合は本業で行っていました。その分、融資の審査ではよりシビアにみられます。
融資の申し込み時には、これまでの実績や将来の収益性の説明を求められていました。さて、ここからが本題です。Aさんはインターネット物販「古本せどり」の実績と将来の収益性をどのように説明し、日本政策金融公庫を納得させたのでしょうか?
決め手1.【実績は融資の審査で力になる!】販売実績の証拠を提出

インターネット物販で融資を受ける際に最大のポイントは過去の実績といっても過言ではありません。Aさんの場合は、販売実績をまとめた書類を提出したことが最大のカギとなりました。
【Aさんの提出した販売実績関連書類】
- 受注管理画面の月別グラフ
- 入金口座の通帳コピー
- 顧客管理リストのコピー※個人情報を省く
なぜ公庫は店舗の小売販売よりインターネット物販の方で販売実績を厳しく求めるのでしょうか?それは、ECサイト(インターネット物販)の方が店舗で開業するより気軽に開業できるからです。
いくら売れるかわからないものを何百万円も仕入れるというのは非常にリスクが高いと金融機関は評価します。売った実績のない人から「大量に仕入れると利益率が上がるからお金を貸して」と言われても、懐疑的になってしまうのです。
【ECサイトの融資審査での考え方】
売れ残る→ 在庫になる→ 場所も管理費もかかる→ 事業を圧迫する
古本販売に限らず、販売業において在庫は適正在庫という経営の大原則があります。一定の在庫はもちろん必要ですが、基本的に在庫が多いと金融機関からの評価は融資において下がります。

さらに、売った実績のない人はこの在庫リスクが高いと判断されてしまいます。したがって、たとえ半年間でも売上の実績を作ってから融資を申し込んだほうが融資の審査では有利になります。
Aさんの場合、10ヶ月間の売上推移が書面でも預金通帳の入金記録からも明確になっていたため、この実績がとても評価されたのです。
決め手2.【自分でコツコツ積み上げたのがカギ!】自己資金が100万円あった

上記で「在庫→事業を圧迫する」という【ECサイトの融資審査での考え方】をお伝えしましたが、当然売上実績のある人でも在庫を抱えてしまう可能性は大いにあります。
古本の仕入れで先行してお金を使って売れ残った場合、次に本が売れない限りは商品を現金化できません。その間の生活費はどうするのか?サーバーやドメイン維持費はどうするのか?という問題が新たに浮上します。
悲しい現実ですが、古本が売れても売れなくてもいったん事業融資を受けたなら、毎月、日本政策金融公庫の返済は行われます。仕入れた商品を現金化できない間の借入の返済は自己資金で補てんをすることになるため、自己資金が少ない・全くない方は融資を受けるのが難しくなります。
Aさんの場合、インターネット物販を開始した当初は自己資金がほぼほぼない状況でした。しかし、徐々に実績を積んでいくうちに自己資金が約100万円まで増加していたため、返済余剰があると評価されました。すごいですね!
決め手3.【古本市場のデータベースを駆使!】販売戦略がしっかりしていた

インターネット物販を開始している人は年々増加しているため、市場競争は非常に厳しくなってきています。ネット検索すると、あらゆる戦略がレクチャーされていますからね。
そのため、ネット古本屋の場合でも「どのような販売戦略をとっているか」「自社の商品が他社と比較してどう違うか」をしっかり説明できるかが重要なポイントです。
単に需要があるから売れるというだけでは正直、説得力に欠けます。他にも同じような商品を出している人はきっといるからです。
Aさんが融資に成功した理由の一つとして、古本市場のデータベースを駆使した販売戦略があったことが挙げられます。古本であればなんでもいい、という訳ではなく、データベースから現在の売れ筋の商品のみを中心に取り扱うようにしました。売れ筋商品のみ取り扱っているので商品回転日数も短く、在庫数も少ないという好循環となっていたことが好評価となりました。
決め手4.【認定支援機関に相談して】納得の事業計画書を提出

実績値がベースであって、日本政策金融公庫から融資を受けることによって今後の事業計画がどのように変化するのか、これを書面にまとめる必要があります。
一度に大量仕入れをすることで原価率を抑えられるのか、単純に仕入れる額が増えれば売上も伸びるのか、資金余業があると新たな業者と取引できるようになるのか、など様々の効果が期待されます。
Aさんは数値予測の作成がご自身では難しいと判断したため、認定支援機関に相談して、一緒に事業計画を作成しました。これまでの実績と今後の計画を事業計画書にまとめて提出し、事業計画の内容が評価された結果融資に成功しました。
ご自身で作成する時間がない、又はどう作成すれば良いかわからない方は資金調達の専門家(認定支援機関)にご相談してはいかがでしょうか。
~注意点!~許認可について
インターネット物販を行う方で中古品を取り扱う場合、必ず「古物商」の許可が必要となります。許可申請先は営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係が窓口となっております。
日本政策金融公庫の融資お申込み時にすでに許可を持っていないと絶対だめということはございませんが、現在申請中のご状況であれば後日確認が前提で融資審査は進めることは可能です。
ご参考までに東京都での古物商許可申請のサイトです。
まとめ
Aさんは元々自己資金がほぼない状態でしたが、データベースを駆使した販売戦略で売上実績があり、さらに売上実績からのまとまった自己資金100万円があったということで無事融資に成功されました。
これからインターネット物販を開始しようとされている方は、まず自己資金の中から事業を開始して、実績を積んでから日本政策金融公庫にお申込みをすることをお勧めします。
「千里の道も一歩から」古くから言われている言葉ですが、いきなり大きい金額でスタートするのではなく、こつこつと成果を積み上げていくことが成功への近道と言えます。