「一般社団法人・一般財団法人」と、まとめて一緒に目にする一般社団法人ですが、よく知らない方もいるのではないでしょうか。
今回は、一般社団法人の種類、メリット・デメリット、設立の流れについてわかりやすく解説します。
一般社団法人とは?
一般社団法人とは、同窓会や学会など幅広い分野で「集団活動」を運営しやすくするために
「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立された法人形態です。
例えば、大学の同窓会を組織したいとします。
一般社団法人のような法人でなければ、「同窓会」として同窓会館など不動産契約をすることも、物品を購入することもできません。契約や購入は、同窓会という組織としてではなく、代表個人での契約になります。このとき、代表が途中で変わると、契約し直しが発生して大変不便です。
端的にいえば「集団活動を運営しやすくするために一般社団法人がある」と覚えておきましょう。
一般社団法人の種類

次に、一般社団法人の種類について解説します。
一般社団法人を理解する上で、普通型一般社団法人・非営利型一般社団法人・公益社団法人の3つをおさえるとよいでしょう。
法律上、一般社団法人は「普通型」と「非営利型」の2つに分かれます。
普通型一般社団法人とは、社員2名以上で法人登記手続きをして設立した一般社団法人のことです。
非営利型一般社団法人とは、普通型一般社団法人の中で、「①非営利性を徹底する仕組み」もしくは、「②会員全員が共通の利益を得る仕組み」を整えることができている法人のことです(詳しくは一般社団法人の要件で解説)。
公益社団法人とは、公共の利益を高めるための事業を主な目的としている法人です。一般社団法人の中から、条件を満たせば認定を受けられます。
一般社団法人の法人としての位置付け
一般社団法人が集団活動をしやすくする法人だとご説明しましたが、他の「法人」と比べてどのような違いがあるのでしょうか。法人としての位置づけを解説します。
法人としての位置付け
一般社団法人は、民間で運営される非営利組織にあたります。
非営利組織は、利益の全てを次の事業のためのお金として使います。そのため、一般社団法人は、営利組織のように利益の分配で悩むことはなく、全てを事業目的達成のための活動につなげることができます。
なお、一般社団法人での意思決定は、毎年必ず開催する社員総会で行われます。
他の法人との違いからわかる一般社団法人の特徴
一般社団法人以外の非営利組織と比較しながら、一般社団法人について理解しましょう。
社団・財団との違い
まずは、一般社団法人と一般財団法人の違いについてご説明します。
一般財団法人とは、「一般社団法人および一般財団法人に関する法律」に基づいて設立され、「財」をテーマに維持・運用などの活動をする組織のことです。
一般社団法人と一般財団法人の大きな違いは「法人格(法律上「人」と同じように権利が認められること)」です。
一般社団法人と一般財団法人では何に対して法人格が与えられるかが違います。
一般社団法人は「人の集まり」に法人格が与えられ、一般財団法人は「お金の集まり」に法人格が与えられます。
一般社団法人は「人」、一般財団法人は「財」という法人格の扱いの違いから、一般社団法人と一般財団法人とで、設立時の要件や活動の仕方も異なります。
例えば一般社団法人の例として、学会は「人」が集まることで、その叡智を発展させる活動です。設立の要件にも社員が2人以上必要で、社員が0人になると解散します。
一般財団法人で重視されるのは「お金をどんな目的で、何に使うか」です。そのため、一般財団法人の設立の要件には300万円以上の財産が必要です。
共通点としては、同じく法人登記によって設立申請をすること、一般社団法人と一般財団法人は普通型を除いた「公益」または「非営利型」の法人のみ税制優遇されることが挙げられます。
一般社団法人 | 一般財団法人 | |
設立時申請手続 | 法人登記 | |
設立時必要社員人数 | 社員2名以上、理事1名以上 (社員との兼任可) ※社員が0名になったら解散 |
理事3名、評議員3名、監事1名 |
設立時必要財産 | 特になし | 300万円以上 |
税制優遇 | 公益・非営利型のみ税制優遇あり |
NPO法人との違い
次にNPO法人についてご説明します。
NPO法人とは、「特定非営利活動促進法」に基づいて設立された特定非営利活動法人です。
一般社団法人とNPO法人の大きな違いは、設立条件の厳しさと、設立後も行政から管理されるかどうかです。
NPO法人は設立するために、厳しい要件と審査があります。
しかし、そのぶん設立費用が優遇されることや、社会的信用が得やすいなどのメリットもあります。
一般社団法人 | NPO法人 | |
設立時申請手続 | 法人登記 | 審査+法人登記 |
設立時必要社員人数 | 2名以上 | 10名以上 |
設立後の管理 | なし | あり |
税制優遇 | 公益または非営利型一般社団法人のみ税制優遇あり | あり |
一般社団法人にするメリット・デメリット
一般社団法人のメリット・デメリットをご紹介します。
メリット1 登記の手続きのみで設立できる
先ほどのNPO法人との比較であったように、設立時に審査なく、法人登記の手続きのみで設立できることが一般社団法人のメリットです。
最低でも3.5か月かかるNPO法人の設立手続きに比べて、一般社団法人の登記は申請から5営業日程度で完了します。
メリット2 税金が優遇される
一部の一般社団法人は、税金で優遇されます。
一般社団法人の種類の章で、「普通型一般社団法人」と「非営利型一般社団法人」、「公益社団法人」の3種類あるとご説明しました。この中で税の優遇があるのは、「公益社団法人」と「非営利型一般社団法人」
「公益社団法人」は、公益目的事業・収益事業以外の事業から生み出された利益に対して、法人税はかかりません。
「非営利型一般社団法人」は、収益事業以外の事業から生み出された利益に対して、法人税はかかりません。
参考:国税庁 一 般 社 団 法 人 ・ 一 般 財 団 法 人 と 法人税
メリット3 社会的信用につながる
一般社団法人は、法人運営について法で定められ、組織の仕組みがしっかりしています。そのため、任意団体や個人などと比べて社会的信用は高くなります。
デメリット1 利益を分配できない
一般社団法人は非営利組織で、利益(剰余金)を必ず事業に使用しなければなりません。
株式会社などの営利目的の法人の場合は、利益を分配できますが、一般社団法人が利益(余剰金)を配当として分配することはできません。
一般社団法人を設立しても、出資者や個人の利益にはできないので注意が必要です。
デメリット2 収益事業は課税対象となる
非営利型一般社団法人でも、普通型一般社団法人でも、原則「収益事業」は課税対象になります。
収益事業とは、法人税法第5条に定められた事業で、利益を多く出すことを目的として継続的に活動している事業のことです。そのため、バザーなど不定期のものは入りません。
収益事業は34種類あり、例えば「美容業」や「旅館業」などが収益事業に当てはまります。詳しく知りたい方は法人税法施行令第5条をご覧ください。
ただし、公益社団法人の行う、公共目的事業は、一般的に収益事業と同業種に見えても、非課税になります。
デメリット3 融資が受けにくく資金調達に課題がある
一般的に、一般社団法人は融資が受けにくいとされています。それは一般社団法人が利益を上げることを主な目的ではないためです。
事業性の融資は、事業で生み出された利益を返済原資としています。一般社団法人は、利益を上げることを目的としている株式会社や合同会社と比べて、返済原資が得にくいケースがあります。融資をする銀行などの金融機関側からすると貸しにくいと考える傾向があります。
もちろん、一般社団法人だから全ての法人が借りられないわけではありません。資産が潤沢であったり、事業の利益が毎年出ていたりすれば融資の確度は変わります。
当社SoLaboは認定支援機関として、融資のサポートをしております。まずは一度ご相談ください。
一般社団法人設立までの流れ
ここからは、一般社団法人の設立について要件と手順を解説します。
一般社団法人の要件
一般社団法人は、普通型・非営利型があるとご説明しました。それぞれの要件を解説します。
普通型一般社団法人
普通型一般社団法事の設立要件は次の通りです。
- 社員2名以上、理事1名以上(社員との兼任可)社員がいる
- 社員が共同して定款を作成し、公証人の認証を受ける
非営利型一般社団法人
非営利型一般社団法人になるためには、普通型一般社団法人の条件に加えて、非営利型になるための要件を満たすことが必要です。要件さえ満たせば特に手続きなく一般型から非営利型になります。
非営利型の要件とは、「①非営利性を徹底する仕組み」もしくは、「②会員全員が共通の利益を得る仕組み」のどちらかの要件を整えることです。
①非営利性を徹底する仕組みには、「利益(余剰金)の分配を行わないこと」や「解散するときは、残りの財産を公益のために活動する団体に贈ること」を会社の決まりごととして約束することなどが挙げられます。
②会員全員が共通の利益を得る仕組みには、一般社団法人に所属する会員全員の利益につながる活動を目的としていることや、主な事業内容は収益をあげるための事業ではないことなどが挙げられます。
(参考:国税庁 一 般 社 団 法 人 ・ 一 般 財 団 法 人 と 法人税)
申請手順
最後に、一般社団法人の申請手順を3STEPで解説します。
- STEP1 定款を作成し、公証人の認証を受ける。
定款とは、会社の決まりごとを記入した書類です。公証人の認証は、一般社団法人だけでなく株式会社など他の法人でも同様に必要なステップで、きちんと要件を満たしているか公証人(公務員)が書類チェックをします。(目安:1日前後) - STEP2 設立時に理事の選任を行う(社員との兼任も可)。
理事とは、一般社団法人の業務を執り行う人で、株式会社でいう代表取締役のような組織の顔です。理事会を置くケースでは、意思決定は理事会、業務の執行は代表理事が行います。 - STEP3 法人の代表者が、法人登記の申請を行う。
法人の代表者となる理事が、法人の所在地の法務局で申請します。法務局へ登記申請をした日が一般社団法人の成立日です。
申請の具体的な手続きは法務局HPをご覧ください。
まとめ
一般社団法人の種類、メリット・デメリット、設立の流れについて解説しました。
一般社団法人は、集団活動をするのにあった非営利の組織です。一般社団法人の設立条件は厳しくないですが、税優遇を狙うなら、よく要件を確認する必要があるでしょう。法人の設立で迷ったときは、専門家に相談するのもよいでしょう。
当社SoLaboは認定支援機関として、創業前・創業後のサポートをしております。
「法人設立の相談をしたい」方は専門の担当が対応しますので、まずは一度ご相談ください。