融資の審査は書類作成がカギと言われています。事業自体は素晴らしいものなのに、書類がイマイチなので審査に落ちてしまうケースは非常にもったいないですね。
今回の記事では、創業融資で提出が必須の「創業計画書」へ添付できる交通量調査の書類についてご説明します。
目次
1.通行量調査はマーケティングの一種
交通量調査とはカウンターと言われるストップウォッチのような機器で車の通行量を図る調査です。歩道や駅のホームで通行人の量や性別を図る調査は通行量調査と言い、事業をする上で欠かせない大切なマーケティングデータとなります。
これから飲食店や美容室など店舗系ビジネスをされるオーナーの方であれば、出店予定の場所にどれぐらいの通行量があるかだけでなく「どの年代」や「どの性別」の方がいらっしゃるのかを細かく知りたいのではないでしょうか。出店前にそうしたことを知っておくと、店の雰囲気や価格帯などを決める上でミスマッチが防げるというメリットがあります。
さらに、融資の審査でも以下のメリットがあります。
【店舗系ビジネスの通行量調査が融資の審査で有効な理由】
- なぜその場所を選んだのかの理由が明確になる
- 通行量がある→集客できる、というイメージを融資担当者が持ちやすい
- きちんと通行量調査をしている→やる気のある、きちんとした経営者、という見え方になる
2.通行量調査はどうやって実施するのか
では、具体的にどのように通行量調査を実施すればいいのでしょうか。通行量調査には、以下4つの区分があります。
・曜日→平日or休日
・時間帯→朝or昼or夕方or夜or深夜等
・歩行者属性→性別or年齢別or職業別or通行目的等
・計測時間→どれくらい(何分)計測するのか
この区分が店の趣旨に合っていないと、使えるデータにはなりません。例えば、夜しか営業しない居酒屋なのに昼の学生の通行量を調べても意味はありません。
どの地域のどの区分でのデータが欲しいかを決めたら、自分で調査を実行するか、または通行量調査会社からデータを購入する(1地点:3万円~)という実施方法を選ぶことになります。自分で調査を実行すれば、実感としてその地域の特性を掴むことができます。
3.通行量調査を融資に活かす方法
①タイトルは「出店エリア環境分析」「出店エリア立地調査」など
PowerPointはプレゼン資料を作るのに最適な資料作成ソフトの一つです。融資担当者も見やすくグラフを入れることもできるのでおすすめです。PowerPointを使って「出店エリア環境分析」「出店エリア立地調査」などのタイトルをつけ、表紙を作りましょう。
次に、見出しをつけながら出店エリアの以下の情報を記載します。
- 所在地
- 商圏人口
- 最寄り駅
- 乗降者数
- 近隣施設
これらは、ネット検索で容易に調べることができます。あわせて、このエリアに団地が多いのか戸建てが多いのかなどの周辺住民の住居属性も記載すると良いでしょう。
②調べたデータと共に分析結果を自分の言葉で書く
大切なのは調べること自体ではなく、そのデータからどのようなことが店舗開業に結び付けられるか、という事です。例えば、神奈川県のある市で開業予定のAさんは以下のように文章をまとめていました。
徒歩10~15分圏内に住宅地が多数あり、商圏人口は約3万人。
商圏人口と近隣施設の充実に対し飲食店が少ないため、地元住民や雇用者の需要が見込まれる。
また、出店エリアは地元住民の生活道路上にあり、JR平塚駅を利用するサラリーマンやOLにとっては通勤経路でもある。
書き方としては、「その地域を大きく捉えた結果から〇〇のような住民がいると見込まれる→そのため、出店エリアには〇〇のような〇〇(サラリーマンなど)が通行すると言える」というように展開していきます。
また、競合であるスーパーなどの小売店や美容院などの前での通行量調査も非常に調査としては有効です。ある飲食店を営むBさんは、創業前の通行量調査を以下のような日記形式で書きました。
10月9日(土)10:00~17:00
某大手スーパー前を調査。平日より年齢層が下がり、子連れのファミリー層が目立った。大型スーパーで買い物をしたあとに、そのままランチに取り込めればと思索中。
このように日付や時間を入れることで、調査に臨場感が出る効果があります。
③グラフもあればさらに効果的
ひたすら長い文章にするのではなく、要所要所に画像や地図、そしてグラフを入れると審査員(融資担当者)は見やすいので、結果、あなたの書類を理解しやすくなります。
上記のグラフは、ランチとディナータイムに分けた60歳を境にした男女の通行量です。このデータを見ると、夜はシニア(60歳以上)はあまり出歩かない、女性よりも男性の方がディナーの外食率が高いということがわかります。
4.創業融資の書類には客観的事実が有効
創業融資の場合、まだ実績の出ていない事業者に多額のお金を貸すのですから、金融機関としては必ず返済してくれるのか、その能力があるのかを重視して審査をします。そのため、どんなにやる気を見せてもやる気だけでは足りない部分があるのです。
通行量調査を始めとした市場調査や競合調査などのマーケティングをしっかりしている事業は、創業融資の事業計画書の部分で高評価につながります。
まとめ
創業融資の際にはきちんと返済できるというデータがあるかどうかが審査に影響します。一見、起業に環形のないように見える交通量調査や通行人調査ですが、実は出店エリアや店舗内容を決める大きなカギとなっています。