取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)

取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)
株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
資格の学校TACで財務諸表論の講師を5年行う。税理士事務所勤務を経て、平成23年より個人で融資サポート業務をスタート。
平成27年12月、株式会社SoLabo立ち上げ。
融資支援業務に力を注ぎ、現在では400件以上の融資支援を行っている。

日本政策金融公庫の貸付を受けるには、まず自分の状況に合った融資制度を選ぶことが重要です。

例えるなら、レストランで食事をするときにメニューを選んで、注文するようなイメージです。

このメニューは人や状況によって利用できる融資制度が異なります。

それはちょうど、お子さまランチが小学生以下でないと頼めないなど、雨が降ったときだけ注文できるスペシャルメニューがあったりするのと似て、

利用するときに利用者の属性や状況などの条件を満たす必要があります。

では「取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)」とは、どんな融資制度なのか?見ていきましょう。

1.利用条件

取引企業など関連企業の倒産により経営に困難をきたしている方が、企業の運営上一時的に必要になった運転資金として、利用できる融資制度です。

「セーフティネット」は直訳で「安全網」のことで、安心や安全を提供するための仕組みや救済策のことを指します。

「取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)」は、この貸付名から救済策としての貸付であること、資金名からは金融環境が変化したときの対応のための資金であることが伺えます。

この融資制度は、次の条件のどれか1つに当てはまれば利用できます。

利用に際しては、売掛金債権の回収困難、売上減少などのため緊急性があることや、あくまで一時的に必要であることの根拠を示すことも重要なようです。

取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)

2.資金の使途

取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)で利用できる資金の使いみちは「運転資金」に限られます。

取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)

*日本政策金融公庫の公開情報「国民生活事業」の融資制度の概要を参考に2018年10月に作成

言葉の定義を確認しておきましょう。

借りた時と異なる使いみちで資金を流用すると、資金使途違反となり、一括返済を求められる他、日本政策金融公庫からの借り入れは二度とできなくなりますので、注意しましょう。

「運転資金」は、事業経営に必要な資金のことを指します。

「運転」というと、機械や自動車を動かすイメージが強いかもしれませんが、組織や団体を動かすことにも使われます。

「ランニングコスト」とも呼ばれます。

事業をスムーズに回すために必要なお金で、具体的には人件費や仕入れ費用はもちろん、文房具や印刷用紙代などの雑費も、運転資金に含まれます。

運転資金は、次の式で算出できます。

運転資金=売上債権+棚卸資産−買入債務

ざっくり身近な言葉で表現すると、次のようになります。

運転資金=売上+在庫-仕入れ

 

算出式を見てわかる通り、売上が黒字であっても、運転資金が充分とは限りません。

例えば、月に100万円の仕入れをして、売上が150万円の事業を経営しているとします。

会計上は50万円の黒字です。

しかし、通常、現金払いを徹底でもしない限り、仕入れの支払い時期と、売上が懐に入ってくる時期が同じになることはありません。

仕入れの支払いは当月、売上金の回収は翌月という事業サイクルの場合、50万円あっても次の仕入れの代金としては不足で商売が成立しません。

仕入れをして、売り上げて、またその次の仕入れをして、と事業を回していくのに必要なこのお金が運転資金に当たります。

3.融資限度額

融資限度額は「条件を満たせば、この額まで融資できますよ」という日本政策公庫の設定金額を指します。

あくまで最大の金額なので「3,000万円も貸してもらえる!」という勘違いはしないようにしましょう。当然、状況によって融資希望額が下回ることもあります。

なお「別枠」は、他の融資制度とは別の審査基準が設定されている、ということを示します。

その詳細は非公開ですが、別枠と書かれているのがセーフティネット貸付や災害貸付などの社会保障の意味合いが強い融資制度のため、「別枠」とある融資制度は他よりも融資が通りやすい、あるいは融資額が高くなりやすい、と思ってよいでしょう。

取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)の場合、融資限度額は別枠3,000万円です。

4.返済期間(据置期間)

返済期間は「日本政策金融公庫が、お金を返し終わるのを待ってくれる期間」のことで、据置期間」は「日本政策金融公庫が、利子の支払いだけで、本格的に返済を始めるのを待ってくれる期間」のことを指します。

返済期間の中に据置期間が含まれるので、注意が必要です。

例えば、返済期間が3年で、据置期間が1年だった場合、最初の1年は利子だけ支払って、後の2年で返済することになります。

融資を受けた後、据置期間を設定する、といったことはできないので、それも注意しましょう。

具体的な年数は、日本政策金融公庫の担当者との融資面談を通して、利子を決める「利率」とセットで決まります。

取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)では、8年以内の返済期間、

3年以内の据置期間を設定されます。これらの年数は最大の期間を示しているので、これより短くなる想定をしておくと安全です。

5.利率

融資を受けたときに融資金に上乗せして支払う利子、金利を算出する率のことを「利率」と呼びます。

なお、日本政策金融公庫の場合、年間で算出する年利です。

取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)では、日本政策金融公庫が設定する「基準利率」と呼ばれる一般的な利率が採用されます。

この場合、利率が変わる要素は「担保」と「保証人」です。具体的な数字は、日本政策金融公庫の担当者との融資面談を通して、返済期間とセットで決まります。

利率は次の通りです。

2018年10月時点での金利情報です。最新の金利情報は、日本政策金融公庫のウェブサイトでご確認ください。

 

担保あり・保証人あり 1.16~2.35(年利%)

担保なし・保証人あり 2.06~2.65(年利%)*利用条件に「税務申告を2期以上行っている方」が追加

 

担保あり・保証人なし、担保なし・保証人なしの場合、別の融資制度に変わる可能性が高いため、ここでは割愛します。

6.担保・保証人

「担保」はお金を返せなかったときに没収される財産で、「保証人」は返せなかったときに支払い義務が生じる連帯保証人のことです。

それらを用意することで確実に返済する意思を示すことになり、利息が安くなります。

取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)の枠組みで融資に臨む場合、基本的には「保証人あり」で担保の有無が選べる部分だと言えるでしょう。

まとめ

取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)は、社会保障の意味合いが強く出ている貸付の一つです。

使いみちが運転資金のみに限られた融資制度ではありますが、他の貸付の枠組みと比べたとき、比較的、返済期間が長く設定されています。

取引企業など関連企業の倒産などの経営環境の悪化という具体的な要因であるため、これに代わるような融資制度は少ないかもしれませんが、日本政策金融公庫には困っている人がいるパターンの分だけ、融資制度の数があるといっても過言ではありません。例えば、その関連企業の倒産が災害に起因するものであれば、基準利率よりも低い利率の「特利」が設定されている災害貸付を利用できる可能性もあります。

「取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)」を利用する前に一度、他にもっと条件のあった融資制度がないか、確認するようにしましょう。

 

 

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