スルガ銀行の不正融資問題は融資業界を震撼とさせました。融資目標達成をするためにパワハラを横行させ、通常であれば融資をしないような案件にも融資を行っていることが発覚しました。
そのスルガ銀行の再建に注目が集まる中、創業家は株式売却にNOを突き付けています。再建の目途は果たして立つのでしょうか?
目次
1.シェアハウス「かぼちゃの馬車」の販売会社がスルガ銀行の融資ストップで破綻
①事件の概要とは
スルガ銀行の不正融資問題が明るみになったきっかけは、「かぼちゃの馬車」というシェアハウスを販売する会社が破綻したからです。「かぼちゃの馬車」販売会社であるスマートデイズ社はスルガ銀行から融資を受け、市場価格よりも多額の金額で「シェアウアウス投資」としてかぼちゃの馬車を販売していました。
かぼちゃの馬車は売れに売れました。それはなぜか?スマートデイズ社がかぼちゃの馬車購入者へ高額な「家賃保証」をしていたからです。

高額な家賃保証を武器に1,000人を超えるシェアハウスオーナーを抱えることになったスマートデイズ社は、次第に複数の不動産業者と協業して資産を増やしていきました。
しかし、内情は自転車操業でした。シェアハウスオーナーに支払う高額家賃の支払いはスルガ銀行からの融資に頼っていましたので、融資をストップされた時点で資金繰りが焦げ付き、破綻するという結果になったのです。
②スルガ銀行不正融資問題で指摘される二つの不正とは?

この不正融資問題では、主に2つの不正が指摘されています。一つ目は、まずかぼちゃの馬車を購入したいシェアハウスオーナーの預金額などを改ざんしたこと。通常であれば自己資金の少ない人への融資は行わないはずが、スルガ銀行の目標融資額に達成したいために、自己資金の少ない人へも簡単に融資をパスさせていたという実態がありました。
二つ目は、スマートデイズ社ら複数の不動産業者が相場より高い金額でシェアハウス「かぼちゃの馬車」の価値をシェアハウスオーナーに申告していたという不正がありました。通常であれば1棟4,000万円程度の価値とみなされる物件を、1億円の価値があると広告宣伝し、多くのオーナーを集めていました。
③スマートデイズ案件は氷山の一角?!
「それなら死んでみろ」「ビルから飛び降りろ」パワーハラスメントが横行していたとスルガ銀行が報道されたきっけかはかぼちゃの馬車(シャアハウス)でしたが、それは多くの問題のうちの一部にすぎません。
報告書によると、スルガ銀行では営業ノルマを守るために大勢の前で罵声を浴びられ、精神的に病んでしまう人もいたと言います。営業ノルマのため、市場性や事業の将来性を審査せずに安易に融資の件数を増やしていきました。しかし安易に融資をした結果、業績の伸び悩みから自転車操業となり返済が滞る事態が続出しました。
2.不適切融資問題でスルガ銀行の株価もストップ安
スルガ銀行はなぜこのような不適切融資を続けたのでしょうか?その一つの理由として、株主に対する評価を上げたかったからではないかと推測できます。
スルガ銀行の株価はこの不適切問題が明るみに出るまで、2012年より突然伸び続けています。ちなみに、その前の2009年から2011年までは800円~600円台を推移していました。
年 | 終値 |
2012年 | 1,059円 |
2013年 | 1,886円 |
2014年 | 2,223円 |
2015年 | 2,513円 |
この期間に、不正融資で融資件数を増やし、その結果多くの投資家から出資を得たと考えることができます。
ちなみに、スルガ銀行は「地銀の優等生」と呼ばれていました。地銀とは地方銀行の略で、全国地方銀行協会に加盟する銀行のことです。スルガ銀行以外の主要地銀の株価を参考までに以下に表示します。
銀行名 | 年/月/日 | 終値 |
千葉銀行 | 2018/12/3 | 762円 |
島根銀行 | 2018/12/3 | 861円 |
群馬銀行 | 2018/12/3 | 551円 |
富山第一銀行 | 2018/12/3 | 439円 |
東京きらぼし銀行 | 2018/12/3 | 2,112円 |
西日本ファイナンシャル ホールディングス | 2018/12/3 | 1,250円 |
三十三ファイナンシャル ホールディングス | 2018/12/3 | 1,947円 |
地銀の株かは400~800円程度で推移しているか、または2,000円前後というようにその株価には格差が生まれています。この中で株価優等生であったスルガ銀行ですが、現在は株価500円台と急落しています。
3.金融庁が行政処分。再建の目途が立たず
金融料が2018年10月、行政処分を下しました。今後は再建計画をどう立てるかに注目が集まりますが、創業者は株式売却に難色を示しており、不正融資の件数も非常に多いため、支援先もなかなか決まらない状況です。
また、不正融資に関しては関与した営業職員が非常に多く、明確に不正を認識しての行為であったと判断できるため、この問題の後処理はまだまだ長く続きそうです。
まとめ
融資の審査を甘くすることにより利益を得ても、それで融資を受けた事業主は返済できなくなるケースが多々あります。銀行も長引く低金利で預金が減り収益を得られなくなり、融資や投資など他の商品を必死に売ろうとしています。
けれども、融資の審査を甘くすることは金融機関だけでなく事業主にも双方にデメリットがあります。