新型コロナウイルス感染症の感染拡大に関するニュースが連日メディアを騒がせています。その影響は事業活動にも大きな打撃を与えており、日本各地の中小企業の経営状態も急速に悪化しています。
先月2月7日には、各省庁が国内の政府系金融機関(日本政策金融公庫、商工組合中央金庫等)に対して「適切な貸出を行い、企業の実情に応じて、十分な対応を行うこと」と要請しました※。
※参照:新型コロナウイルス感染拡大に伴い政府系金融機関等に対し配慮要請を行いました(経済産業省)
この状況を受け、日本全国の各自治体が新型コロナウイルスの影響を受けている中小企業者への金融対策に乗り出しています。
今回は、3月4日に新融資制度を創設する方針を発表した、愛知県内の自治体による「新型コロナウイルス関連」の特別融資制度をご紹介します。
目次
●総額2000億円の支援!愛知県が「新型コロナウイルス感染症対策緊急つなぎ資金」の創設を発表
愛知県の大村秀章知事は3月3日、臨時記者会見を行い、新型コロナウイルス感染症の他業種への影響と、今後の長期化にそなえ、中小企業の資金繰りを支援する「新型コロナウイルス感染症対策緊急つなぎ資金」の創設を発表しました。
愛知県は、9年前の東日本大震災の際にも、震災直後に融資制度を創設し、融資限度額2億8,000万円のサポート資金を取り扱った実績があります。
信用調査会社の東京商工リサーチの調べによると、愛知県蒲郡市の観光旅館が新型肺炎の拡大による観光客の減少を理由に事業の見通しが立たなくなり、破産申請したことが、2月25日に明らかになっています。
【参照:東京商工リサーチ】
このように、新型コロナウイルス感染拡大の影響は愛知県内の観光業や宿泊業にも打撃を与えていますので、県独自に資金繰りをサポートしてくれる制度はとても心強いですね!
それでは、こちらのつなぎ資金の詳細を見ていきましょう。
●(愛知県)【創設予定】「新型コロナウイルス感染症対策緊急つなぎ資金(経済環境適応資金融資制度)」
本制度は、愛知県が独自に創設を進め、3月9日から県内47の金融機関で申し込みが開始されます。内容は下記表の通りです。
■資金の内容
実施期間 | 2020年3月9日(月)~同年8月31日(月) |
融資対象者 | 新型コロナウイルス感染症の影響を直接的に又は間接的に受け、直近1か月の売上高又は売上高総利益額(以下、売上高等)が、前年同月又は2年前同月の売上高等に比べて減少している中小企業者 |
融資限度額 | 5,000万円 |
資金使途 | 運転資金 |
融資期間・利率 | 3年 年1.2% |
信用保証料 | 無料(本県が契約時の額を全額補助します) |
取扱い金融機関 | 愛知県内の県融資制度取扱金融機関(銀行、信用金庫、信用組合、(株)商工組合中央金庫の47金融機関) |
必要書類 | ※愛知県内で、お取引のある金融機関の窓口へお問い合わせください |
※上記は3月4日時点での情報です。
【参照:新型コロナウイルス感染症の影響を受ける中小企業への緊急つなぎ資金として「新型コロナウイルス感染症対策緊急つなぎ資金」を創設します(愛知県)】
愛知県では、既に2月18日には既存融資制度の拡充を行い、中小企業への資金繰りを支援していましたが、資金繰り状況がより悪化しており緊急の運転資金を求める声が増えているため、本制度の創設を決定しました。
今回のコロナウイルス感染症の影響により、予定していたイベントの予約キャンセルや、材料や資材の調達等に支障が出てしまったなど、間接的に影響を受けている中小企業も利用できる制度になっています。
① 資金使途の「運転資金」には何が当てはまる?
今回の新制度の資金使途は「運転資金」が指定されています。運転資金とは、例えば商品の仕入に使うお金や人件費、外注費、広告宣伝費、地代家賃、消耗費といった事業の運営に必要な資金です。物件取得費や機材の購入費など「設備資金」は該当しませんので、ご注意ください。
【設備資金と運転資金の定義】
■設備資金 創業時の設備投資に必要な資金、会計上では「(固定)資産」に位置付けられるもの。資産には有形(形のあるもの)だけでなく、無形(形のないもの)も含まれます。 具体的には、不動産初期費用(テナントの契約金)、店舗の内装・外装費、機械設備購入費、ホームページ作成費用、パソコン、電話、机、その他備品などの購入費が挙げられます。 |
■運転資金 会社や事業を回していく(運転していく)上で継続的にかかる費用。設備資金に該当しない費用。 具体的には商品仕入費、人件費、外注費、広告宣伝費、地代家賃、消耗品費などです。 |
② 無担保かつ信用保証料も無料
金融機関から融資を受ける際、ほとんどの中小企業が利用しているのが「制度融資」です。制度融資とは、中小企業を資金面でサポートするために各地方自治体が信用保証協会、金融機関と連携して実施する制度です。
具体的には、中小企業は、信用保証協会の審査を通過し、「信用保証」を受けることで、金融機関からの融資を受けることができます。もし万が一借入を返済できなくなった場合、事業主の代わりに信用保証協会が金融機関へ借入金を返済することになります。
信用保証協会が事業者と金融機関の間に入ることで、金融機関がお金を貸しやすくなる状況を作り出しているのです。
通常であれば、中小企業はこの制度を利用する際、信用保証協会に対して信用保証料を支払うのが一般的です。しかし、今回のつなぎ資金制度では、中小企業の負担を軽減するため、契約時の信用保証料を愛知県が中小企業に代わって全額負担します。
さらに、県は信用保証協会の積極的な保証を促す目的で、貸し倒れ損失が生じた場合の信用保証協会の最終的な返済負担も全額補償するとしています。
また、信用保証協会が認めれば、無担保保証枠の利用が8,000万円を超えた場合でも、融資限度額5,000万円をすべて無担保で利用が可能です。
なお、信用保証協会については下記既存記事でより詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
③ 受付は3月9日開始。愛知県内47金融機関の窓口へ
今回の新融資制度の受付は3月9日から開始されます。
本制度について相談したいという方は、まず愛知県内の47の金融機関にお問い合わせください。なお、提出書類についても利用する金融機関の指定する書類を準備する必要がありますので、あわせて窓口で確認するようにしましょう。
愛知県内で融資制度を取扱っている金融機関は下記リンクの一覧表をご確認ください。
●(愛知県)新型コロナウイルス感染症に関する相談受付窓口
愛知県内の商工会議所、よろず支援拠点や保証協会などでは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業の経営者または小規模事業者からの資金調達や返済の相談に対応する窓口を設けています。
今回の感染拡大を受けて資金調達に不安を感じている方は、まずはこのような窓口へ相談することを検討ください。
■愛知県信用保証協会:【特別】新型コロナウイルス感染症に関する休日電話相談
愛知県信用保証協会では、今回の状況を受け、3月7日から電話相談の実施を開始することを決めました。「窓口に直接うかがえないけれど、資金調達について相談したい」という方にはこのような電話相談窓口のご利用もおすすめです。
なお、受付は毎週土日・祝日のみですので、ご注意ください。
実施日 | 令和2年3月7日(土)~3月29日(日)までの毎週土曜、日曜および祝日 |
受付時間 | 午前9時~午前12時、午後1時~午後5時 |
電話 | 0120-454-754 |
詳細 | https://www.cgc-aichi.or.jp/reception_application_consultation/consultation.html |
■愛知県よろず支援拠点:【完全予約制】新型コロナウイルスに関する土日、祝日の相談対応窓口
愛知県よろず支援拠点では、3月7日より土日・祝日の相談対応窓口を開設します。
相談は完全予約制となっているので、お気を付けください。
実施日 | 令和2年3月7日(土)から開始。土曜日、日曜日、祝日のみの対応 |
受付時間 | 午前9時~午後5時 |
相談場所 | 愛知県よろず支援拠点 (名古屋市中村区名駅四丁目4番38号 愛知県産業労働センター14階) |
詳細 | http://www.aibsc.jp/Portals/0/keiei/korona_sodan.pdf |
■名古屋商工会議所:「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」
名古屋商工会議所では、名古屋市内の5か所の支部に「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」を設置しています。
詳細な問い合わせ先は下記URLからご確認ください。
「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」の設置について(名古屋商工会議所)
なお、当サイトを運営する株式会社SoLaboは、日本政策金融公庫の融資サポートをする認定支援機関です。相談は無料ですので、今回の新型コロナウイルス関連の融資制度に関して、ご不明な点や疑問点等ありましたら、まずはお気軽にご相談ください。
●(愛知県)【既設/拡充】「経済環境適応資金/サポート資金【経営あんしん】」
冒頭では、3月に入ってから発表されたばかりの新制度を解説しましたが、愛知県では2月の時点ですでに既存制度の拡充を実施しています。
■「経済環境適応資金/サポート資金【経営あんしん】」の内容
取扱期間 | 2020年2月18日(火)~2021年3月31日(水) |
融資対象者 | 最近3か月間の月平均売上高(建設業にあっては、完成工事高。以下同じ。)が、前年同期の月平均売上高に比べて3%以上減少している中小企業者 |
融資限度額 | 8,000万円 |
資金使途 | 運転資金 |
据置期間 | 1年以内 |
担保・保証人 | 愛知県信用保証協会所定 |
保証料率 | 年0.40~1.83% |
融資期間・利率 | 3年 年1.2% 5年 年1.3% 7年 年1.4% |
信用保証料 | 無料(本県が契約時の額を全額補助します) |
取扱い金融機関 | 県内に本支店のある銀行、信用金庫等47金融機関 |
認定等 | 取扱金融機関の証明 |
【参照:新型コロナウイルスに関連した肺炎の感染拡大による影響を受けている中小企業者への金融支援を強化します(愛知県)】
① 1か月間の減少実績(及びその後2か月間の減少見込み)があれば利用可能
今回の拡充により、融資対象者には次の要件が追加されました。
「新型コロナウイルス関連肺炎の流行による直接的又は間接的な影響を受けたことにより、最近1か月の売上高(建設業にあっては、完成工事高。以下同じ。)が、前年同期の売上高に比べて3%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高が前年同期の売上高に比べて3%以上減少することが見込まれる中小企業者」 |
【参照:新型コロナウイルスに関連した肺炎の感染拡大による影響を受けている中小企業者への金融支援を強化します(愛知県) 】
上記の要件が追加されたことにより、売上が減ったまま3か月を待たなくても、1か月間の減少実績(およびその後2ヶ月間も減少する見込み)があれば、本制度の利用対象者に該当することになります。
本制度の利用をご検討の方は、まずは直近の売上高の状況を試算表等で把握し、対象者に当てはまるかどうか確認してみましょう。
② 本制度の融資対象となる「中小企業者」は?
「経済環境適応資金/サポート資金」の対象となる中小企業者のマスト条件を確認しておきましょう。
■本制度の融資対象となる中小企業者
法人の場合は本店/事業所のいずれかを愛知県内に有し、個人事業者の場合は住居/事業所のいずれかを愛知県内に有する、事業を営んでいる個人事業者、会社、医療法人等、特定非営利活動法人で、次の条件に該当する者もしくは中小企業等協同組合など
業種 | 資本金あるいは従業員の人数 |
小売業(飲食店を含む) | 資本金5,000万円以下又は常時使用の従業員50人以下 |
サービス業 | 資本金5,000万円以下又は常時使用の従業員100人以下(旅館業は200人以下) |
卸売業 | 資本金1億円又は常時使用の従業員100人以下 |
製造業・建設業・運送業 | 資本金3億円以下又は常時使用の従業員300人以下 |
医療法人等 | 常時使用の従業員300人以下 |
【参照:新型コロナウイルスに関連した肺炎の感染拡大による影響を受けている中小企業者への金融支援を強化します(愛知県)】
まとめ
愛知県内で実施されている中小企業の経営者・小規模事業者向けの融資をご紹介してきました。
新型ウイルスの感染拡大により、中国からの観光客が激減する等、愛知県内でも経済への影響は非常に大きなものになっています。
愛知県で事業をされている方は、今回ご紹介した県によるサポートを上手に活用し、この苦境を乗り越えていきましょう。
コロナウイルスの影響で資金調達にお困りの方は、当サイトを運営する株式会社Solaboまでお気軽にご相談ください!