新型コロナウイルス感染拡大のなか、日本政府は令和2年4月7日、東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の7都道府県を対象に緊急事態宣言を発出しました。さらに、各都道府県も独自に事業者への休業要請をする方針を打ち出しはじめています。
なかでも東京都は休業の要請に協力した中小事業者に対して、1店舗50万円を独自に支給することを決めるなど、大きな打撃を受けている事業者をなんとか支援しようという動きを見せています。
しかし、給付金の場合支給される額に限度がある上手続きにも一定の時間を要しますので、資金繰りは時間との戦いになってきます。
そこで今回は、「お金を借りる」=「融資を受ける」方法に絞って、つなぎとなる運転資金を確保したい中小企業の方に向けた記事をお届けします。
そもそも事業に必要な資金調達手段には、下記のように資金を「もらう」か「借りる」かの2つの手段に大きく分かれます。

今回の記事では、中小企業の方へ向けて、政府系金融機関による資金繰り支援制度の内容をまとめています。
解説しきれない内容については関連リンクも紹介しておりますので、これを機会にぜひ一読し、政府系金融機関の融資制度について理解していただければ幸いです。
※令和2年度第2次補正予算の成立を前提に、融資限度額と利下げ限度額の引き上げの実施が発表されましたので、本記事も情報を更新しております(令和2年5月28日時点)。
なお、当サイトを運営する株式会社SoLaboは、日本政策金融公庫の融資サポートをする認定支援機関です。相談は無料ですので、今回の新型コロナウイルス関連の融資制度に関して、ご不明な点や疑問点等ありましたら、まずはお気軽にご相談ください。
目次
0.【本題に入る前に】事業者向け新型コロナ施策全体の最新公式情報は経済産業省パンフレットで確認できます
「今すぐ政府が出している施策の最新公式情報を知りたい!」という方は、経済産業省がまとめている下記のパンフレットをご確認ください。
新たな情報も随時追加更新されています。
▼新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ(経済産業省)
※上記は令和2年4月13日20:00更新版のキャプチャです。
1.政府系金融機関による主な融資制度【中小企業向け】
政府系金融機関による中小企業向けの融資制度は、下記の3本柱となっています。
新型コロナウイルス感染症特別貸付[中小企業事業] →日本政策金融公庫へ! |
セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金) →日本政策金融公庫へ! |
危機対応融資 →商工組合中央金庫へ! |
上記制度の取扱期間である「日本政策金融公庫」と「商工組合中央金庫」どちらも、日本の公的金融機関です。
両社の違いはいくつかありますが、大きな違いは「日本政策金融公庫」は創業時の融資を受けやすい機関で、「商工組合中央金庫」はある程度実績を積み発展した中小企業の融資に向いている機関という点です。
なお、「日本政策金融公庫」と「商工組合中央金庫(通称:商工中金)」がそれぞれどんな組織か詳しく知りたいという方は下記の記事もあわせてご一読ください。
日本政策金融公庫とはどんな金融機関なの?創業時でも融資が受けやすいってホント?
①新型コロナウイルス感染症特別貸付
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の概要は下記の通りです。

【「日本政策金融公庫 新型コロナウイルス感染症特別貸付の概要」を基に作成】
ポイント1:当初3年間は基準金利から-0.9%金利引下げ(※1億円まで)
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に業況が悪化している事業者(フリーランスを含む)に対して新しく創設された制度です。
通常の融資とは異なり、信用力や担保の有無にかかわらず金利は一律で、融資後の3年間まで基準利率から0.9%の金利引き下げを実施しています。
例えば、基準利率1.11%であれば、当初3年間は0.21%の金利になります。
※基準利率について詳しくはこちら
ポイント2:新型コロナの影響を受ける前から融資を受けていた方は、借り換えが可能に
令和2年4月7日に閣議決定された資金繰り支援策の強化によって、既存の借入負担が重荷となっている事業者の返済負担を軽減するため、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」では既存の公庫からの融資の借換ができるようになります(「公庫融資借換特例制度」)。
借換のみの申込みは、原則として取扱っておらず、新たな資金とあわせてお借入の希望がある場合に適用される制度です。
なお、同制度を適用し利率を低減した部分(基準利率-0.9%部分)についても、「実質無利子化」の対象になります。
※「実質無利子」については本記事の後半部分で詳しく解説しています。
【参照:[中小企業事業]新型コロナウイルス感染症特別貸付の拡充内容に関するQ&A】
ポイント3:必要書類は通常の融資より簡略化されている
新型コロナウイルス感染症特別貸付を申し込む際、提出する書類は下記の通りです。
現在、中小企業事業を利用中の方 | □借入申込書 表面および裏面を両面印刷、または2枚とも出力のうえ、提出 ※フォーマットはこちら |
□最近3期分の税務申告書・決算書(勘定科目明細書を含む) | |
□最近の売上高が把握できる資料 試算表、売上帳又は新型コロナウイルス感染症の影響による売上減少の申告書等を指しています。 ※新型コロナウイルス感染症の影響による売上減少の申告書のフォーマットは日本政策金融公庫の中小企業事業の書式をまとめた下記ページにWordファイルがアップされていますので、そちらからご入手ください。中小企業事業(日本政策金融公庫) | |
※現在、中小企業事業を利用していない方は右記も必要 | □ 法人の登記事項証明書(原本) |
□ 代表者個人の印鑑証明書(原本) | |
□納税証明書(最近2期分の法人税の税額証明(その1)、直近の消費税の未納税額がない証明(その3又はその3の3)) |
【参照:[中小企業事業] 「新型コロナウイルス感染症特別貸付」のお申込時にご提出いただく書類】
日本政策金融公庫では審査にかかる時間短縮のために、申込書類を通常の融資より簡略化していますので、自力で申請準備をしようという方もいらっしゃるでしょう。
しかし、この緊急時は少しでも融資成功の確率を上げ、資金面の態勢を整えておきたいはずです。そんな方には、融資を専門としている「認定支援機関」への依頼をおすすめします。
「認定支援機関」とは、資料作成代行、面接へのアドバイスなど幅広いサポートを行う国の認定機関です。
当サイトを運営する株式会社SoLaboも、日本政策金融公庫の融資サポートを行う認定支援機関として、日夜融資を希望する方々を支援しています。
相談は無料で、現在土日のご相談も承っておりますので、今回の新型コロナウイルス関連の融資制度について、ご不明な点や疑問点等ありましたら、まずはお気軽に下記メールフォームよりご相談ください。

②セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)
「セーフティネット貸付」の概要は下記の通りです。

【日本政策金融公庫|経営環境変化対応資金(中小企業事業)を基に作成】
ポイント.要件緩和により、売上高減少幅は問われなくなりました
「セーフティネット貸付」はもともと日本政策金融公庫の既存の制度(正式名称:「経営環境対応資金」)ですが、今回の事態を受けて、対象者の適用条件が緩和されました。
対象者の条件に「新型コロナウイルス感染症特別貸付」のような「売上高5%以上の減少」といった減少幅が関係なくなったため、「現状ではまだ影響が出ていないが、今後影響を受ける可能性がある中小企業」も対象となります。
実際のところ、弊社株式会社SoLabo(認定支援機関)が融資サポートさせていただいてたお客様のなかにも「セーフティネット貸付」の融資審査に通った方がいらっしゃいます。
売上高減少条件に当てはまらず、「新型コロナウイルス感染症特別貸付への申請は難しい……」と思った方も、諦めずにまずはご相談ください。
なお、「セーフティネット貸付」に関して、融資限度額や金利等については既存から変更がない点にご注意ください。
③商工中金による「危機対応融資」
商工中金(正式名称「商工組合中央金庫」)による「危機対応融資」の概要は下記の通りです。
商工組合中央金庫(通称:商工中金)は、政府と民間の共同出資で運営している、中小企業専門の金融機関です。
政府系金融機関でもあるため、災害など非常時に財政困難に陥っている企業への緊急的な貸し付けをする役割も果たしています(下記記事ではさらにその役割について詳細に説明しております)。
【新型コロナ関連中小企業向け融資】商工中金の危機対応業務を解説!実質無利子の支援も
ポイント.商工中金に未加入の場合は借入申込時に相談が必要です
もともと商工中金の融資対象は、株主である中小企業の組合と、そこに加入している組合員です。
そのため、未加入の場合で今回の危機対応融資に申請したい場合、借入時に相談が必要です。
但し、中小企業への融資の要件を見るとわかる通り、商工中金による「危機対応融資」と日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は同様の要件が下記の通り複数あります。
・融資限度額6億円(拡充前:3億円) |
・当初3年間は基準利率-0.9% |
・返済期間:設備資金20年、運転資金15年、うち据置期間5年以内 |
・既往債務の借り換え可能で実質無利子化の対象 |
どちらの制度に申し込むかは、状況によって変わってきますので、各窓口に問い合わせいただくか、弊メディアを運営する株式会社SoLaboへご相談ください。
株式会社SoLaboは、日本政策金融公庫の融資サポートを行う認定支援機関として、現在新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者の皆様の融資サポートをしております。相談は無料で、現在土日のご相談も承ります。
今回の新型コロナウイルス関連の融資制度について、ご不明な点や疑問点等ありましたら、まずはお気軽に下記メールフォームよりご相談ください。
商工中金の危機対応融資について、申込手順や必要書類を知りたい方は、下記記事もご覧ください。
【新型コロナ関連中小企業向け融資】商工中金の危機対応業務を解説!実質無利子の支援も
2.政府系金融機関からの融資でよく聞く「実質無利子」化とは?
政府系金融機関による中小企業向けの資金繰り支援策について、下記3つを紹介してきました。
新型コロナウイルス感染症特別貸付 |
セーフティネット貸付 |
危機対応融資 |
これらの制度を金利面でわかりやすく整理した図が下記です。
※「新型コロナウイルス対策マル経融資」については小規模事業者向けのため本記事では説明を割愛しております。

【抜粋:新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ(経済産業省)P8】
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「危機対応融資」は、当初3年間基準利率から-0.9%の引下げがある上、「特別利子補給制度」を適用することで「実質無利子」になることが話題を呼んでいます。
この「実質無利子」について、「どうして“実質”という言葉がつくの?」と疑問に思った方も少なくないかもしれません。ここからは、「実質無利子」の実際のところがわかるよう、解説していきます。
① 利子補給とは?
まず「利子補給」とは、その字の通り、「行政機関が特定の融資を行った金融機関に対して、借入者の利子負担を軽くするために、その利子の一部もしくは全ての金額を給付すること」です。
今回で言えば、日本政策金融公庫と商工中金が当初3年間行う「基準利率-0.9%」という取り組みも、マイナスされた分の利子は行政機関が補っているため、これも「利子補給」といえます。
② 今回実施される「特別利子補給制度」とは?
今回の「実質無利子化」を実現している「特別利子補給制度」は低減した利率の利息部分について、後日日本政府からの利子補給を受けることで、当初3年間は実質的に無利子で利用できるというものです。
中小企業の場合は、-20%以上の売上減少という要件を満たすことで、当初3年間は金利0%になるまでの利子補給を受けることができます。
但し、借入れ後永久に利子補給を受けられるわけではありません。利子補給が実施されるのはあくまで当初3年です。
4年目からは基準利率が適用され金利が発生する点に注意してください。
【利子補給制度と特別利子補給制度の概要】

【参照:商工中金の危機対応業務~新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業の皆さまへ~】
また、この制度は政府の元に設けられることになっていますが、まだ制度の詳細は発表されていません。申請方法も2020年4月16日時点では不明です。
日本政策金融公庫や商工中金で取り扱っているわけではありませんので、各金融機関に問い合わせしても詳細はわかりません。中小企業庁からの続報を待ちましょう。
③ 「実質無利子」は一度負担した利子が返金されるということ
「利子補給」は、融資実行後に利息も含めた各金融機関への返済がある点は通常の融資と変わりません。
後日、低減した利率の利息部分が申請者に返ってくるという流れになっていますので、一旦は金融機関に返済を行う必要がある点に注意しましょう。
つまり、はじめから無利子になるわけではなく、一度返済を負担した利子が最終的にまとめて返ってくるので「実質的に無利子」と表現しているわけです。
詳細は今後中小企業庁Webサイト等で公表される予定です。
※特別利子補給制度に関しては政府のもと設けられる予定ですので、各金融機関ではなく中小企業庁が開設する下記相談窓口へ問い合わせください。
【特別利子補給制度に関するお問合せ先】 中小企業金融相談窓口 03ー3501ー1544 ※平日・休日9時00分~17時00分 |
3.中小企業向けの融資相談窓口
政府系金融機関の各資金繰り支援制度について、中小企業が相談できる融資相談窓口をまとめました。
【政府系金融機関:新型コロナウイルスに関する中小企業向けの資金繰り相談窓口(4/16時点)】
■政府の発表した資金繰り支援全般に関する相談をしたい ①中小企業 金融・給付金相談窓口 0570ー783183 ②金融庁相談ダイヤル 0120ー156811(フリーダイヤル) | |||||||||||||||||||
■「新型コロナウイルス感染症特別貸付」もしくは「セーフティネット貸付」に関する相談をしたい ・日本政策金融公庫の事業資金相談ダイヤル 0120-154-505(平日9時~17時) ・日本政策金融公庫の各支店の中小企業事業相談窓口:緊急事態宣言が発令された地域の店舗を除く支店 平日・土日:9時~17時 ※新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止する観点から、政府の緊急事態宣言が発出された7都府県に所在する計50支店において、支店窓口の営業時間を「平日9時~15時」に変更しております。 対象支店はこちらをご覧ください。 最寄りの支店の電話番号・住所検索は下記サイトで確認可能です。 | |||||||||||||||||||
■「危機対応融資」に関する相談をしたい ・商工組合中央金庫の全営業店舗 ※最寄りの支店の電話番号・住所検索は下記サイトで確認可能です。 ・商工中金の電話相談窓口
|
【参照:新型コロナウイルス感染症に関する特別相談窓口(商工中金)】
状況によっては、今後相談窓口の営業時間が変更になることも考えられますので、相談の前に最寄りの支店等の最新情報をWebサイトなどで調べてから問い合わせをしてください。
まとめ
新型コロナウイルスの影響を受ける中小企業向けの資金繰り支援制度をご紹介してきました。
この『創業融資ガイド』を運営している株式会社SoLaboでは、現在新型コロナウイルスの影響で資金繰りに悩んでいる既存事業者様の融資サポートをしております。
主なサポート内容は提出書類作成・面談方法・融資依頼先の最適化・スケジュール決定など、融資が決定するまでの一連の業務です。
緊急時だからこそ、おひとりで悩まず、私たちのような融資サポートのプロフェッショナルにぜひご相談ください。