新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、日本政府は今日までに経済を支援するためのさまざまな施策を打ち出しています。
政府が2020年3月10日に公表した第二弾の緊急対応策のひとつとして盛り込まれていた、商工組合中央金庫(商工中金)による対応について、経済産業省は3月19日に「指定金融機関である商工組合中央金庫による危機対応業務を実施します」というニュースリリースを発表しました。
【参照:指定金融機関である商工組合中央金庫による危機対応業務を実施します(経済産業省)】
この「危機対応業務」は、商工組合中央金庫(商工中金)が新型コロナウイルス感染症による影響を受け業況が悪化した事業者に対し、危機対応融資による資金繰り支援を実施するというものです。制度適用開始は4月中旬を予定しています。
借入者が一定の要件に該当していれば、日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と同様に、特別利子補給制度を利用することが可能になります。
今回は、これらの制度に関して詳しく解説していきます。
制度適用開始は4月中旬となりますが、それまでに資金が必要な方もいらっしゃるはずです。そういった場合の対応についても説明していきますので、ぜひご一読ください。
なお、新型コロナウイルスに関連する融資制度については当サイトの下記の記事でもまとめておりますので、こちらもぜひご一読ください。
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目次
1.商工中金による危機対応融資「新型コロナウイルス感染症特別貸付」とは
商工組合中央金庫(商工中金)は、日本政府より危機対応業務発動にかかる指示を受け、新型コロナウイルス感染症により影響を受けた中小企業者等の資金繰りを支援するために、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を実施します。
(1)危機対応融資「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の概要
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、新型コロナウイルス感染症の影響で最近の売上が前年比もしくは前々年比と比べて5%以上減少し、資金繰りに支障をきたしている中小企業組合の組合員が利用できる制度融資※です。
【参照:新型コロナウイルス感染症特別貸し付けに関するQ&A】
信用力や担保に関わらず、金利は一律となり、融資後の3年間まで0.9%の金利引き下げを実施し、据置期間は最長で5年間となります。制度適用開始は4月中旬になることが予定されています。
※融資限度額は元高(貸出額の累計)20億円以内、残高3億円以内。また、融資限度額は日本政策投資銀行との合算運用。
現在発表されている詳細は下記表の通りです。
【中小企業向け制度】
対象者 | 新型コロナウイルス感染症の影響により直近1カ月の売上高が、前年又は前々年の同期比5%以上減少している方 |
資金使途 | 設備資金 運転資金 |
適用利率 | 商工中金所定の利率 (下限は日本公庫の基準金利。(2020年3月19日現在)1.11%(注)) |
利子補給(※1) | ※本記事2-1に掲載の通り |
貸出期間 | 設備:20年以内(据置5年以内) 運転:15年以内(据置5年以内) |
貸出限度(※2) | 元高:20億円以内 残高:3億円以内 |
(※1) 利子補給の残高限度は、日本政策投資銀行等との合算運用となります。
(※2) 元高とは貸出額の累計です。貸出限度額は日本政策投資銀行等との合算運用となります。
【中堅企業向け制度】
対象者 | 新型コロナウイルス感染症の影響により直近1カ月の売上高が、前年又は前々年の同期比5%以上減少している方 |
資金使途 | 運転資金 設備資金 |
適用利率 | 商工中金所定の利率 (※:利子補給は無し) |
貸出期間 | 設備:20年以内(据置5年以内) 運転:15年以内(据置5年以内) |
貸出限度 | 定めなし(ただし、審査により個別に金額が決定される) |
【参照:商工中金の危機対応業務~新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業の皆さまへ~】
(2)そもそも商工組合中央金庫(商工中金)とは?
商工中金は政府と民間共同出資による中小企業専門の金融機関
商工組合中央金庫(通称:商工中金)とは、政府と民間の共同出資で運営されている、中小企業専門の金融機関です。簡単に言えば普通の銀行ですので、個人・法人どちらも利用可能ですが、政府系金融機関なので、今回のような非常時に財政難に陥った企業を救済するための貸付も実施しています。
日本全国47都道府県と、海外4拠点に展開し、国内外のさまざまな機関と提携を結んだ実績のある、幅広いネットワークを持つ金融機関です。
商工中金については下記既存記事でも解説しておりますので、気になる方はこちらもチェックしてみてください。
★危機対応業務とは?
「危機対応業務」とは、内外の金融秩序の混乱や大規模な災害、感染症などの非常事態時、民間金融機関による資金の供給が十分にできないときに、政府の指定金融機関を通じて事業者に対して必要な資金の貸付け等を行うことです。
現在は、日本政策投資銀行と商工組合中央金庫(商工中金)が政府の指定金融機関になっています。
全体をみると、下図のような座組になっています。

【図の参照:危機対応業務の概要(財務省)】
危機対応業務は、これまでにも東日本大震災や平成28年の熊本地震による災害で実施された実績があります。詳しい内容が知りたい方は、財務省のWebサイトをご覧ください。
(3)危機対応融資「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の対象者は?
商工中金による「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の対象者は以下のとおりです。
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的に業況悪化をきたしており、下記のいずれかに該当する方
①最近1か月の売上高が前年もしくは前々年の同期と比較して5%以上減少した方 |
②業歴3か月以上1年1か月未満の場合は、最近1か月の売上高が、次のいずれかと比較して5%以上減少している方 a 過去3か月(最近1か月を含む)の平均売上高 b 令和元年12月の売上高 c 令和元年10月~12月の売上高平均額 |
※対象者に関する留意点
商工中金は、株主である中小企業の組合と、その組合員を融資の対象としています。商工中金に未加入の場合には、借入申込時に相談するようにしてください。
(4)商工中金「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の申込手順と必要書類
今回の制度の申込手順と必要書類は下記の通りです。
【申込手順】
1.融資相談受付 事業の状況、資金の必要事情などについてヒアリングを実施 |
2.申込 申込に必要な書類を提出 |
3.商工中金での審査 提出された資料、面談時の情報をもとに商工中金で審査を実施。 ※必要に応じて追加の資料が求められる場合があります。 |
4.融資実行 審査が通過すれば、契約手続きに移ります。商工中金に未加入の新規の方の場合は、加入手続きと預金口座の開設手続きも必要です。 契約完了後、資金が入金されます。 |
【参照:商工中金の危機対応業務~新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業の皆さまへ~】
【新型コロナウイルス感染症特別貸付の申込に必要な書類】
・借入申込書(危機対応制度融資用) 別紙様式に必要な事項を記入のうえ、提出。 |
・商業登記簿謄本(写) コピーで可。但し、取引開始時には原本提出が必要。 |
・決算書(写) 直近決算期 3 期分 あわせて、納税申告書、別表、科目明細一式を添付。 ※関係会社がある場合は関係会社分も同様に提出。 ※個人事業主の方の場合は、確定申告書を提出。 |
・直近の売上高が把握できる資料 試算表、売上帳等を提出。 前年もしくは前々年との比較をするため、比較が可能な前年もしくは前々年の同種の資料もあわせて提出。 |
【参照:新型コロナウイルス感染症特別貸付のお申し込みに必要な書類】
商工中金は、申込に関する留意点として、下記2点を挙げています。状況に応じて臨機応変に対応しましょう。
・既に作成している資料があれば、それで代替することも可能
・上記以外に別途書類提出が求められる場合がある
(5)融資開始は4月中旬目途。それまでに資金が必要なときはどうする?
商工中金による「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は4月中旬に融資開始を予定しています。
しかし、資金繰りに困っている事業者の方の中には、それより前に資金を必要している方もいるはずです。その場合は、商工中金で所定の審査等を実施し、一時的に商工中金所定の利率でつなぎ融資を実行し、その後、今回の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」への借り換え手続きを実施することが発表されています。
状況は刻一刻と変わりますので、詳しくは商工中金の下記相談窓口へお問い合わせください。
【本制度に関する商工中金の相談窓口】
受付時間 | お問い合わせ先 | |||
制度のご案内 | 平日、休日 (土・日・祝) | 9:00 ~ 17:00 | 0120-542-711 03-6695-6590(有料) 03-3246-9209(有料) | |
具体的な借入れに関する問い合わせ | はじめての方 | |||
既に融資のある方 | 平日(銀行営業日) | 9:00 ~ 19:00 | お取引のある 営業店(店舗一覧) | |
休日(土・日・祝) | 9:00 ~ 17:00 | 0120-542-711 03-6695-6590(有料) 03-3246-9209(有料) |
【参照:新型コロナウイルス感染症に関する特別相談窓口(商工中金)】
2.「特別利子補給制度」とは
「利子補給」とは、行政機関が特定の融資を実施した金融機関に対して、借入者の利子負担を軽減するために、その利子の一部もしくは全ての金額を給付することです。
ここからは、今回の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」で実施される特別利子補給制度についてみていきましょう。
(1)「特別利子補給制度」の概要
「特別利子補給制度」では、日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」または、商工中金の危機対応業務における「新型コロナウイルス感染症特別貸付」による借入をした中小事業者等のうち、特に影響の大きい事業性のあるフリーランスを含む個人事業主、また売上高が急に低下した事業者などに対して、利子補給を行うことで資金繰り支援を実施します。
【利子補給制度と特別利子補給制度の概要】

【参照:商工中金の危機対応業務~新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業の皆さまへ~】
★利子補給制度は金利返済あり!後日返金の仕組みに注意を
利子補給制度では、借入期間中の金利について、一旦日本政策金融公庫もしくは商工中金に返済を行う必要がある点にご注意ください。後日、低減した利率の利息部分が申請者に返ってくるという仕組みになっています。
今回の特別利子補給制度も、単にはじめから無利子になるのではなく、一度返済を負担した利子が最終的にまとめて返ってくるので、今回多くのメディアで報じられている通り「実質的に無利子」となります。誤解のないよう、ご注意ください。
利子補給金の具体的な手続きや、返金方法等の詳細については、まだ発表されていません。中小企業庁Webサイト等で公表される予定ですので、発表を待ちましょう。
また、本制度に関しては中小企業庁が開設する下記相談窓口に問い合わせ可能です。
【特別利子補給制度に関するお問合せ先】
中小企業金融相談窓口 03ー3501ー1544 ※平日・休日9時00分~17時00分 |
(2)特別利子補給制度の対象者は?
特別利子補給制度の適用対象は下記の要件を満たす方になります。適用されれば、残高1億円まで、当初3年間は金利0%(実質無利子)になるまでの利子補給を受けることが可能です。
【特別利子補給制度の適用対象】
日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」もしくは商工中金による「危機対応融資」により借入を行った中小企業者のうち、売上高の減少について以下の要件を満たす方 ① 個人事業主(事業性のあるフリーランス含み、小規模※に限る):売上高の要件なし ②小規模事業者※(法人事業者) :売上高▲15%減少 ③中小企業者(上記➀➁を除く事業者):売上高▲20%減少 |
※小規模事業者とは
・製造業、建設業、運輸業、その他業種は従業員20名以下
・卸売業、小売業、サービス業は従業員5名以下
(3)特別利子補給制度の実施はあくまで「当初3年」
特別利子補給制度を使うことで、実質無利子になりますが、借入れ後、永久的に利子補給を受けられるわけではありません。利子補給が実施されるのはあくまで当初3年に限定されます。
4年目からは基準利率が適用され金利が発生する点に注意してください。
3.まとめ
今回は、2020年3月10日に政府が公表した第二弾の緊急対応策に盛り込まれた、商工中金による危機対応業務についてご紹介してきました。
適用開始は4月中旬からと差し迫っていますが、利用を検討している方は制度の概要をよく理解して手続きを進めてください。
また、特別利子補給制度の具体的な手続きについては、中小企業庁のWebサイトで発表される予定です。こちらも検討されている方は、随時情報更新をチェックするようにしましょう。