農業分野の経営者が今からできる後継者対策について

農業分野の経営者が今からできる後継者対策について
株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
資格の学校TACで財務諸表論の講師を5年行う。税理士事務所勤務を経て、平成23年より個人で融資サポート業務をスタート。
平成27年12月、株式会社SoLabo立ち上げ。
融資支援業務に力を注ぎ、現在では400件以上の融資支援を行っている。

会社などの事業経営を後継者に引き継がせる「事業承継(じぎょうしょうけい)」。内容が少し類似する「遺産相続(個人で所有している預貯金や不動産等の資産を引き継がせること)」とは手順が異なるため、経営者の悩みの種です。特に農業分野の経営者の場合、土地などの経営基盤の資産が経営者名義であるケースがほとんどで、後継者対策は経営者が元気なうちに取り組む必要があります。この記事では、事業承継の基本知識を確認し、農業分野の経営者の方が今からできる後継者対策についてご紹介していきます。

1.事業承継が注目されている背景

会社の経営権やブランド、取引先等の事業に関連する全ての事柄を後継者に引き継がせる「事業承継」、簡単な言葉で言えば、社長である代表取締役の交代です。大企業では、それほど経営者の交代は珍しくなく、スムーズに行われているように見えますが、それは経営に関する資産などが、経営者名義になっていないためです。その一方、事業の経営に関係する資産等が経営者本人の名義、そのままであることが珍しくない中小企業や個人事業主の場合、経営者が変わるとなると一大事です。事業承継で多いケースとして、事業基盤となる資産(自社株等)の買い取りや、相続を行う際にかかる税金である相続税の支払いのために多額の資金が必要になってしまいます。それでも、事業承継ができないと、廃業するしかなくなってしまいます。日本の経済を支える中小企業の7割が後継者不在と言われているのも、どこも事業承継に二の足を踏んでしまっている現状が伺えます。

そんな状況を打開するため、2018年からの5年間を事業承継の集中実施期間と定め、「事業承継5カ年計画」と呼ばれる計画や、強化支援を行っている国も事業承継強化キャンペーンを打ち出す等の対策が行われています。その影響もあってか、各金融機関で、事業承継を推し進める融資商品が目立ってきています。昔は「親族でなければ事業承継と定義しない」という姿勢を見せる金融機関も多かったようです。ですが、近年では、親族以外に事業を引き渡す事業譲渡や企業合併・買収などのM&Aによる事業承継も「事業承継」として扱い、低金利で優遇する融資商品が目立ってきています。後継者を親族にこだわらずに探すことが主流になりつつあるのです。中小企業庁出典の次の図も、20年以上前には親族での承継が8割を超えていましたが、近年では親族外の事業承継が6割を超え、逆転しています。

農業分野の経営者が今からできる後継者対策について

 

2.農業分野の事業承継のパターンと、今からできる後継者対策

農業分野の事業承継は、大きく分けて2パターンあります。

①親族や従業員に事業承継する
②親族以外に事業承継する

そのパターンごとに見ていきましょう。

①親族や従業員に事業承継する

親族や従業員などの身内に事業承継する場合、必要になる主な資金は次の2つです。

■「遺産相続」や自己財産を無償で与える「贈与」等で、親族等に分け与えた事業基盤となる土地や自社株を含む資産を、次期後継者もしくは会社が買い戻すための資金
■「遺産相続」や自己資産を無償で与える「贈与」等で得た事業基盤となる土地や自社株を含む資産の、相続税かつ贈与税の税金を次期後継者が納めるための資金

上記から見ても分かる通り、身内で事業承継を行うとなると、相続税や贈与税の税金面での負担が大きいことが分かります。事業承継が相続とイコールだからです。「遺産相続」という枠組みで見てしまうと、子の側は農業という事業そのものよりも目先の資産価値だけで見てしまいます。事業承継の話を避けたまま時が経ち、いきなり農業用地などを親族が相続することになってしまうと、農業経営者としては力量不足で、事業を存続させたいと思っても時すでに遅く、事業承継に必要な資金の調達もできず、お手上げ状態、というケースが増加しているようです。

事業承継というのは数年の期間がかかる大事業です。親族や従業員等の比較的近い存在を後継者と定め承継するのであれば、経営者としてどのように振る舞うのか、という教育を行う必要もあります。また、経営者が所有する経営権を維持させるために、「会社株式の移転」「事業基盤となる資産の買い取り」「相続税や贈与税の対策を検討」といった準備も必要になってくるでしょう。また、経営者自身が生きている間に自己財産を誰かに与える「生前贈与」等の相続問題にも同時に発展するはずです。これらの事から、人的にも物的にも代替わりが綺麗に完了するまで10年程度の期間がかかると見込んでおくようにしましょう

日本はスムーズな事業承継を推進するために2009年、「経営承継円滑化法」を制定しました。また、事業承継税制では、後継者が会社の株式を承継する際にかかる税金、相続税と贈与税が軽減され、相続分では8割、贈与では全額、納税猶予が5年間受けられることとなりました。

今からすぐできる後継者対策としては、まず何より、経営状態の見える化です。要は、部外者にもわかるように、どういう事業経営をしているのか、キャッシュフローや事業の流れ、取引先の状況などを図解、文章化して整理することから始めましょう、ということです。後継者となる方に対し、経営資源や価値、事業が目指すものとは何かを説明できるようにするのです。そして、それを元に話し合いましょう。お互いの認識にギャップがないか、行き違いや誤解のないようにすることから、スムーズな事業承継のプランニングが始まります。

親族や従業員など身近に後継者を求める場合、特に気をつけたいこととして、やりがいなどの主観的な思いを後継者に押し付けないこと、というのがあります。農業分野の事業を経営する方は「手間暇かけて食べる人の喜ぶ顔が見たい」という思いが第一で、続けてきた方が多いかもしれませんが、後継者が全く同じ価値観を持つとは限りません。例えば「異業種と連携してこの世にないユニークな農業をして、世界中をあっと驚かせたい」と意気込む人や「AIやIoT、ドローンなどの最新技術を使って、できるだけスマートに野菜を作って、世界中に流通させたい」と考える人もいるかもしれません。話し合った時に最終的に目指すべき姿、経営ポリシーが一致しているのであれば、根っこは同じだと思ってください。枝や葉の違いを楽しむ、後継者の色にどう染まるかを楽しむ心を持って、事業承継に臨むようにしましょう。

なお、親族には後継者にしないと決めた上で、従業員がいない経営者の方は、まずは後継者探しを兼ね、新たに就農してくれる人を探す必要があります。まずは、農業会議所などによる新規就農相談センターに相談してみましょう。公益社団法人日本農業法人協会などでは、短期間の農業就業体験、インターンシップも実施しているので、そういう人の輪を広げるアクションも有効でしょう。他にも、農業を仕事にしたい人、農業に興味のある人を対象とした新規就農相談会「新・農業人フェア」が農林水産省の補助事業として行われています。農業関連の企業だけでなく大学や専門学校も参加しているため、参加してみると思わぬ出会いがあるかもしれません。

②親族以外に事業承継する

親族や従業員ではなく、見知らぬ第三者に対して事業承継をする場合に必要となる主な資金は次の通りです。

■M&A(企業の合併と買収)によって、事業(土地、株式など含む)を後継者が取得するための資金

M&Aなら短期間で実行できると思われるかもしれませんが、そもそもM&Aの相手がすぐ見つかるとは限りません。また、自分が求めるような相手に理想的な条件で引き継ぎたいと考えるなら、その選定や吟味で数年は見積もっておいた方がよいでしょう。

見知らぬ誰かに事業を譲り渡したいと考えている方が、今からすぐできる後継者対策は、親族の事業承継のケースと同様、まず何より、経営状態の見える化をしてください。部外者でもある第三者が見ても分かるように、どのような事業経営を行っているのか、キャッシュフローや事業の流れはどんな感じか、取引先との関係や状況等を図や文章を使用して整理することから始めましょう。その理由として、経営資源や価値、事業が目指しているものが何かを説明できるようし、何があっても譲れないことや、相手には飲んで欲しい「条件」を洗い出しておきます。そして、事業を譲ってもいい相手が現れた時に、その条件を提示できると、とてもスムーズに事業承継の話を進めることができるでしょう。

なお、「事業承継5カ年計画」は経営者と後継者が見合うように支援を行ったり、事業の廃止や結合の統廃合を促す環境の整備等を含めて、事業承継を促進するものです。「事業承継5カ年計画」について詳しく確認されたい方は「経営者高齢化で本格化!H30年の事業承継補助金に向け準備しよう」をご参照ください。

 

まとめ

業界・業態に限らず事業経営を行う限り、いつかは必ず来るのが「事業承継」です。経営者の代替わりを円滑に進めるために低金利の公的融資をお考えの方は、日本政策金融公庫が行っている事業承継融資の「事業承継・集約・活性化支援資金(企業活力強化貸付)」がおススメです。また、先代の経営者から事業を引き継いでもらった後に、業態の転換、新事業を起こす「第二創業」をお考えの方は「新創業融資制度(新企業育成貸付)」を検討してみてもいいかもしれません。このほかにも、“条件の合う融資制度を探したい”“低金利となる特別利率「特利」の適用には何をしたらいいのか”等を知りたい方は、融資の専門家でもある認定支援機関へ相談してみるのも良いでしょう。

農林水産省「食料・農業・農村白書」によれば、農業を専業とする自営農家、専業農家などの農業従事者は、平成の初めと終わりで3割以上減少し、その傾向は今も続いています。ですが、先行きは暗いばかりではありません。先端技術を活用したスマート農業とともに若手の農家の躍進も目立つようになってきています。農業を一から始めることはとても大変なことです。跡継ぎがいないからと事業を畳んでしまうのではなく、ぜひ次世代の農業に期待する気持ちで、後継者を探してみてください。あなたが持ちつつけた大事なバトンを渡すことで始まる、新しい農業があるはずです。

事業承継について、今すぐ始められる対策に興味のある方は「事業承継はなぜ必要?「今すぐできる」事業承継に必要な対策」もあわせてご参照ください。

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