開業や新事業の立ち上げに際し、銀行融資への申し込みを行った人の中には、これから面談を控えている人もいますよね。その際、銀行融資の面談ではどのような質問がされ、どのように回答すればよいのかを知りたい人もいるでしょう。
当記事では、銀行融資の面談を受ける際のポイントを解説します。銀行融資の面談の中でを受けるにあたって、想定される質問内容や回答する際のポイントを把握しておきたい人は参考にしてみてください。
ポイントは申請書類の情報を明確に伝えられるようにしておくこと
銀行融資の面談を受ける際のポイントは、申請書類の情報を明確に伝えられるようにしておくことです。銀行融資の面談では、申請書類に記載した情報の再確認と、具体的な内容や数字の根拠などの確認が行われるためです。
【銀行融資の面談でおもに質問される内容】
- 事業内容
- 資金使途
- 返済の見通し
- 借入状況
銀行融資の面談でおもに質問される内容として「事業内容」「資金使途」「返済の見通し」「借入状況」が挙げられます。それぞれにどのような質問がされるのかを事前に把握しておくことにより、具体的な回答を用意することができるため、各内容における想定質問を確認してみましょう。
事業内容に関する質問
銀行融資の面談では「事業内容」に関する質問が行われます。銀行が、事業内容に関する質問を通して、実現可能な事業であるかや将来性のある事業であるかなどを確認するためです。
【事業内容に対して想定される質問の例】
想定される質問 | 回答のポイント |
---|---|
事業を通して社会にどのような影響を与えたいか? | 事業を通して社会や地域が抱えるどのような課題を解決していきたいかを伝える |
取得している資格やこれまでの経験をどのように生かしたいか? | 資格を生かして得た経験や培った実務実績が、事業の成功にどう結びつくかを伝える |
主力となる商品やサービスは? | 商品やサービスの特徴に加えて、顧客が得られる効果、単価、全体の売上に占める割合などを伝える |
競合他社と差別化できるポイントや強みは? | 独自の技術や特許、特別なノウハウなどを具体的に挙げ、顧客にとってどのようなメリットをもたらすことができるのかを伝える |
仕入先や販売先は? | すでに決まっている場合には契約先名と契約内容を、未定である場合には進捗状況を具体的に伝える |
従業員を雇用する予定はあるか? | 雇用する予定の有無、家族を従事させる予定の有無を提示し、雇用する予定がある場合は人数や役割など具体的な組織体制を伝える |
たとえば、主力となる商品やサービスに対する質問をされた場合、特徴に加えて、顧客が得られる効果、単価、全体の売上に占める割合などを伝えます。どのように売り上げを生み出していくのかが明確になるため、実現可能である事業であることを示すことができます。
また、競合他社との差別化や事業の強みに対する質問をされた場合、他社にはない独自の技術や特許、特別なノウハウなどを具体的に伝えます。競合他社に比べてなにが優れているのかが明確になるため、市場で継続的に利益を生むことができる事業であることを示すことができます。
事業内容に関する質問には、どのような事業を展開して利益を生むのかを具体的に回答することがポイントです。事業内容を具体的に説明することによって、事業に対する熱意や成功への意欲があるとの評価にも繋がります。
資金使途に関する質問
銀行融資の面談では「資金使途」に関する質問が行われます。銀行が、資金使途に関する質問を通して、希望融資額が妥当であるかや返済原資を確保できそうかなどを確認するためです。
【資金使途に関する質問の例】
想定される質問 | 回答のポイント |
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希望融資額の使い道は? | 借り入れる資金を何にいくら使うのか、費用項目と金額を伝える |
高額な設備資金を必要とする理由は? | 導入する設備や機器によって見込まれる効果が、事業計画の実現や成長に必要不可欠であることを伝える |
運転資金が必要になる理由や根拠は? | 売上の増加に対応するためや季節変動に対応するためなど、その運転資金の確保がキャッシュフローの安定と売上の向上に必要不可欠であることを伝える |
たとえば、借り入れる資金の使い道に対して質問をされた場合、何にいくら使うのかを費用項目と金額を挙げて伝えます。事業の成長や安定に必要な資金であることが明確になるため、希望融資額の妥当性を示すことができます。
また、借り入れる資金がなぜ必要であるのかを質問された場合、生産性の向上やコスト削減など、その資金の確保によって見込まれる効果を具体的に伝えます。事業の売上増加に繋がることが明確になるため、借りたお金を返すための元手となる返済原資が確保できることを示すことができます。
資金使途に関する質問には、なぜその金額が必要であるかの理由と費用項目を明確に回答することがポイントです。設備資金の場合は見積書を、運転資金の場合は内訳と計算根拠を提示することで、希望金額の妥当性をより伝えることが可能となります。
返済の見通しに関する質問
銀行融資の面談では「返済の見通し」に関する質問が行われます。銀行が、返済の見通しに関する質問を通して、収支計画の妥当性や返済能力の有無を確認するためです。
【返済の見通しに関する質問の例】
想定される質問 | 回答のポイント |
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売上高や原価、経費の根拠は? | 過去の経験や実績、市場動向、仕入販売先の見積書や契約書など、何に基づいて算出したのかを具体的に伝える |
前期から売上が減少した理由は? | 減少の要因と影響を受けた数値を具体的に説明し、すでに実施している対策あるいは検討している対策と見通しを伝える |
資金繰りの見通しは? | 月ごとの収支を明確化した資金繰り表に基づいて収支の見通しを説明するとともに、予想される資金不足のリスクやその対策なども伝える |
万が一に返済が厳しくなった場合の対応策は? | 具体性のある売上向上策や経費削減策などを挙げ、返済原資の確保に努めることを伝える |
たとえば、売上高や原価、経費などの根拠に対する質問をされた場合、過去の経験や実績、市場動向など、何に基づいて算出した数字であるのかを伝えます。憶測や希望的観測による数字ではないことが明確になるため、収支計画の妥当性を示すことができます。
また、資金繰りの見通しに対する質問をされた場合、月ごとの収支を明確化した資金繰り表に基づいて収支の見通しを伝えます。将来の収支の見通しから継続的な返済を行える可能性が高いと示すことができれば、返済能力に対する評価を得られる可能性があります。
返済の見通しに関する質問には、何に基づいて算出した数字であるのかを根拠となる資料やデータなどを用いて具体的に回答することがポイントです。将来的に予想されるリスクに対しては具体的な対応策を提示することで、返済への強い意志があるとの評価に繋がります。
借入状況に関する質問
銀行融資の面談では「借り入れ状況」に関する質問が行われます。銀行が、借り入れ状況に関する質問を通して、申請者の信頼性や返済能力の有無を確認するためです。
【借り入れ状況に関する質問の例】
想定される質問 | 回答のポイント |
---|---|
他の金融機関からの借り入れは? | 住宅ローンや自動車ローンなど個人的な借り入れも含めて現在の借り入れ状況を伝える |
借入金の返済残高は? | どのような借り入れがいくら残っているのか、正確な残高と月々の返済額を具体的に伝える |
これまでの返済において滞納や遅延をしたことは? | 返済の滞納や遅延を起こしたことがある場合にはその理由を説明し、現在の支払い状況についても伝える |
たとえば、他の金融機関からの借り入れに対して質問をされた場合、個人的な借り入れも含めて現在の借り入れ状況を伝えます。総負債額や収入に占める返済の割合が明確になるため、資金繰りの健全性を示しやすくなります。
また、これまでの返済状況に対して質問をされた場合、返済の滞納や遅延の有無を正直に伝え、遅延や滞納がある場合にはその理由を説明します。銀行は信用情報機関を通じてすでに状況を把握しているため、正直に伝えることで誠実さを示すことができます。
借り入れ状況に関する質問には、どのような借り入れがいくら残っているのかを正確に回答することがポイントです。返済状況が分かる預金口座の取引履歴やローンの返済予定表などを提示することで、銀行からスムーズに理解を得ることが可能になります。
ポイントを押さえた人は面談を受ける際の注意点を確認しておく
銀行融資の面談を受ける際のポイントを押さえた人は、以下に挙げた注意点も確認しておきましょう。
【銀行融資の面談を受ける際の注意点】
- 面談に第三者を同席させない
- 当日持参する追加書類を忘れない
- カジュアルすぎる服装や派手な装飾品は避ける
銀行融資の面談では申請者の人間性も重視されることから、面談に臨む態度や服装などにも注意する必要があります。銀行融資の面談で悪印象を与えて審査に大きな影響を及ぼすことのないよう、面談を受ける際の注意点を事前に押さえておきましょう。
面談に第三者を同席させない
銀行融資の面談を受ける際には、会計の担当者や専門家などの第三者を同席させないようにしましょう。銀行融資の面談に出席できるのは原則として、事業の代表者のみです。
銀行は面談を通して、申請者の人柄や経営者としての資質の有無などを確認しています。質問に対する受け答えや態度から事業への理解度や熱意などを評価するため、事業の代表者である申請者自身からの説明を求めています。
そのため、申請書類の中で会計の担当者や専門家に依頼した書類があり、詳細を説明することに不安を感じていたとしても、申請者自身で対応する必要があります。銀行融資の申請書類には事前に目を通しておき、理解を深めてから面談に臨むようにしましょう。
当日持参する追加書類を忘れない
銀行融資の面談を受ける際には、当日持参する追加書類を忘れないようにしましょう。申請内容や申請時の状況によって追加書類の提出の有無や内容は異なるものの、銀行融資の面談時には以下の書類の提出を求められる可能性があります。
【面談時に提出を求められる追加書類の例】
- 会社や取り扱い商品のことが分かる資料
- 役員名簿や株主名簿
- オフィスや店舗の賃貸借契約書
- 自己資金を証明できる預金通帳
- 担保物件一覧表
- 許認可証のコピー
たとえば、融資の申請をした銀行との取引が初めての場合、会社や取り扱い商品のことが分かる資料の提出を求められることがあります。事業の概要や取り扱い商品の詳細を伝えられるよう、会社案内のパンフレットや取扱商品のカタログ、自社のホームページ資料などを持参します。
また、許認可事業の融資を受ける場合、許認可証原本の提示もしくはコピーの提出が求められることがあります。飲食業であれば保健所から取得した営業許可証、建設業であれば国土交通大臣または都道府県知事から取得した建設業許可証明書など、各業種における許認可証を持参します。
追加書類の持参を忘れてしまった場合には、準備を怠った態度から信頼を損なう可能性があります。再提出の機会が発生することにより審査を長引かせることにも繋がるため、追加書類の提出を求められている人は、前もって書類を揃えておきましょう。
カジュアルすぎる服装や派手な装飾品は避ける
銀行融資の面談を受ける際には、カジュアルすぎる服装や派手な装飾品は避けましょう。銀行の面談担当者から、誠実さや金銭感覚の堅実さを疑われるおそれがあるためです。
【面談時の服装や装飾品の例】
項目 | ふさわしい例 | ふさわしくない例 |
---|---|---|
服装 | ・ビジネススーツ ・ジャケットにスラックスなどのオフィスカジュアル ・清潔感のある作業着 |
・Tシャツにジーンズ ・スウェット ・しわや汚れのひどいシャツやスラックス |
装飾品 | ・シンプルで目立ちすぎないデザインの腕時計 ・一粒ダイヤのような控えめなネックレス ・小ぶりでシンプルなピアスやイヤリング |
・一目で高級ブランドとわかる高価な腕時計 ・金色の太いネックレス ・レザーやビーズなど、ビジネスシーンに不向きなブレスレット |
服装は必ずスーツである必要はありませんが、事業やTPOにあった服装を心がけることが大切です。作業着が事業の制服である場合には作業着での面談も問題はありませんが、汚れやしわのない清潔感のある状態とします。
装飾品は派手なものや華美なものは避け、シンプルで目立ちすぎないものに留めます。一目で高級ブランドと分かるような装飾品を多数身につけて行った場合、浪費家ではないかと疑われ返済能力に不安を持たれてしまうおそれがあるため注意が必要です。
銀行融資の面談に関するQ&A
銀行融資の面談に関する情報を、Q&A方式でまとめてみました。銀行融資の面談を受けるにあたって気になることがある人は、参考にしてみてください。
【銀行融資の面談に関するQ&A】
質問 | 回答 |
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面談時間はどのくらいかかりますか? | 申請した融資の種類や申請書類の内容、記載されている情報量などによって異なるものの、おおよそ30分〜1時間ほどかかる傾向にあります。 |
分からない質問に対してはどう回答すればよいですか? | 曖昧に回答することは避け、面談後に改めて確認して回答することの許可を得るようにしましょう。 |
銀行融資の面談後、審査結果はいつ頃通知されますか? | 申請した融資の種類や申請内容、銀行の繁忙具合などによって異なるものの、おおよそ2週間から1ヶ月ほどと言われています。 |
信用保証付き融資で申請をした場合、信用保証協会との面談もあるのですか? | 信用保証付き融資の場合は、信用保証協会の面談も受ける必要があります。ただし、面談が実施されるのは原則として初回利用時のみです。 |
銀行融資の面談内容は、申請した融資の種類や申請時の状況によっても異なります。銀行融資の面談を受けるにあたって疑問や悩みがある場合には、融資を申請した銀行の担当者あるいは、税理士や会計士などの専門家に相談することを検討してみてください。
まとめ
銀行融資の面談を受ける際のポイントは、申請書類の情報を明確に伝えられるようにしておくことです。銀行融資の面談では、申請書類に記載した情報の再確認と、具体的な内容や数字の根拠などの確認が行われるためです。
銀行融資の面談でおもに質問される内容として「事業内容」「資金使途」「返済の見通し」「借入状況」が挙げられます。各内容においてどのような質問がされるのかを事前に把握しておき、具体的な根拠をもって事業内容や資金使途などを回答できるようにしておきましょう。
なお、銀行融資の面談では申請者の人間性も確認されます。面談当日は「第三者を同席させない」「持参する追加書類を忘れない」「カジュアルすぎる服装や派手な装飾品では出席しない」ことに注意して、面談に臨みましょう。