運転資金や設備資金など、事業資金として銀行融資を受ける場合、事業計画や財務状況に加え、信用情報を確認されます。その際、信用情報に何かしらの問題がある場合は担当者に返済能力を疑問視され、所定の審査に通らず、銀行融資を受けられない可能性があります。
当記事では、銀行融資の審査における信用情報を解説します。信用情報とは何かを解説しつつ、信用情報に問題がある場合の対処法を紹介するため、銀行融資を受ける前の予備知識として信用情報に関する内容を確認しておきたい人は参考にしてみてください。
目次
信用情報とは金融取引における過去の記録のこと
信用情報とは、金融取引における過去の記録のことです。ローンやクレジットカードなどの金融取引における過去の記録は信用情報に登録され、銀行融資を受けるならば、返済能力を確かめる目的として担当者に確認されるため、まずはその前提を踏まえておきましょう。
【信用情報に記録される項目の具体例】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本人を特定する情報 | 氏名、生年月日、住所、電話番号、勤務先 など |
| 契約内容 | ローン契約(住宅、自動車事業用など)、クレジットカード契約、スマートフォンの割賦契約 など |
| 返済および支払い状況 | 毎月の支払状況、遅延や延滞の有無、完済の事実 など |
| 利用履歴 | 現在の借入残高、利用可能枠(限度額)など |
| 異動情報(事故情報) | 長期延延、債務整理(任意整理、個人再生、自己破産)、保証会社による代位弁済 など |
| 照会記録 | 他の金融機関や保証会社が信用情報を照会した履歴 |
信用情報は「良い履歴」と「悪い履歴」に分けられ、長期延滞や債務整理などの登録情報は「悪い履歴」になります。「異動情報(事故情報)」として扱われる関係上、信用情報の傷とも呼ばれ、「ブラックリスト」といわれる状態を指しています。
また、信用情報には、ローンやクレジットカードなどの契約情報に加え、借入件数や借入残高などの返済に関する情報も登録されます。最新情報が反映されるため、銀行の担当者は返済履歴のみならず、借入件数の有無や借入残高の推移も確認することができます。
信用情報は金融取引における過去の記録のことです。融資の可否を決める判断材料のひとつになる関係上、銀行融資を受ける場合は担当者に必ず確認される項目となるため、銀行融資を受ける予定の人はその前提を踏まえておきましょう。
信用情報に問題がある場合の審査に与える影響
信用情報に問題がある場合、銀行融資を受けられない可能性があります。とくに、「異動情報(事故情報)」に該当する内容は担当者に返済能力を疑問視され、銀行融資の審査に落ちる可能性があるため、銀行融資を受けたい人は留意しておきましょう。
【異動情報(事故情報)の具体例】
| 項目 | 概要 | 記録期間の目安 |
|---|---|---|
| 長期延滞 | ・返済や支払いが61日以上または3か月以上遅れること ・返済能力を懸念され、情報記録期間中の新規融資は困難 |
約5年 |
| 任意整理 | ・弁護士等が債権者と交渉し、将来利息等をカットして返済計画を立て直すこと ・事故情報として扱われ、情報記録期間中の新規融資は困難 |
完済後約5年 |
| 個人再生 | ・裁判所を通じて借金を減額し、分割返済する手続き ・ 重要な事故情報と見なされ、情報記録期間中の新規融資はほぼ不可能 |
約5年~10年 |
| 自己破産 | ・裁判所に借金の支払義務を免除してもらう手続き ・最も重い事故情報につき、新規融資は不可能 |
約5年~10年 |
異動情報(事故情報)の記録がある場合、銀行の担当者から返済能力を疑問視され、審査に落ちる可能性があります。長期延滞や債務整理の記録は5年から10年程度の記録が残るため、その間は銀行融資を受けられず、銀行融資以外の資金調達方法を検討する余地があります。
なお、異動情報(事故情報)の記録期間は情報の種類に加え、信用情報機関によっても異なります。信用情報機関に信用情報の開示請求を行うことにより、異動情報(事故情報)の有無を知ることができるため、心当たりのある人は試してみることを検討してみましょう。
信用情報を管理する3つの信用情報機関と役割
信用情報は国が指定する3つの信用情報機関により管理されています。ローンやクレジットカードなどの金融取引における過去の記録は3つの信用情報機関が管理しているため、銀行融資を受ける予定の人はそれぞれの信用情報機関を確認してみましょう。
【3つの信用情報機関と取扱情報の具体例】
| 信用情報機関 | 取扱情報の具体例 |
|---|---|
| 全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 銀行のローン商品、奨学金 など |
| 株式会社シー・アイ・シー(CIC) | クレジットカード、スマートフォン本体代の分割払い など |
| 株式会社日本信用情報機構(JICC) | 消費者金融のローン商品、法人の信用情報 など |
1つ目の個人信用情報機関は「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」です。銀行や信用金庫などの金融機関が加盟し、全国銀行個人信用情報センター(KSC)の役割は奨学金や住宅ローンなどの信用情報を管理することです。
2つ目の個人信用情報機関は「株式会社シー・アイ・シー(CIC)」です。信販会社やクレジットカード会社などの金融機関が加盟し、株式会社シー・アイ・シー(CIC)の役割はスマホ本体代の分割払いやクレジットカードの利用履歴などの信用情報を管理することです。
3つ目の個人信用情報機関は「株式会社日本信用情報機構(JICC)」です。消費者金融などの金融機関が加盟し、株式会社日本信用情報機構(JICC)の役割はカードローンの利用履歴やビジネスローンの利用履歴などの信用情報を管理することです。
なお、法人として銀行融資を受けるならば、法人代表者個人の信用情報が審査に影響する可能性があります。法人代表者個人の信用情報に問題がある場合は所定の審査に通らず、銀行融資を受けられない可能性があるため、該当する人は留意しておきましょう。
自分の信用情報を確認する方法
信用情報を開示請求することにより、自分の信用情報を確認することができます。開示請求の方法は信用情報機関によっても異なるため、銀行融資を受けたい人はその前提を踏まえつつ、信用情報機関に信用情報を開示請求することを検討してみましょう。
【信用情報機関ごとの開示請求の方法】
| 信用情報機関 | 開示請求の方法 | 手数料 | 備考 |
|---|---|---|---|
| KSC | インターネット、郵送 | 1,000円 | ネット申請可 |
| CIC | 郵送 | 500円 | インターネット開示停止中 |
| JICC | スマートフォンアプリ、郵送 | 1,000円 | アプリ申請可 |
銀行融資を目的とする場合、開示請求先として検討するのはKSCとCICです。銀行などの金融機関が加盟するKSCに加え、消費者金融などの金融機関が加盟するCICに開示請求することにより、銀行融資の審査にマイナスの影響があるかどうかを知ることができます。
また、法人として銀行融資を受ける場合、開示請求先として検討するのはJICCです。JICCは法人の信用情報も管理しているため、JICCに開示請求することにより、法人として銀行融資を受けるときの審査にマイナスの影響があるかどうかを知ることができます。
なお、3つの信用情報機関はCRIN(クリン)と呼ばれる交流ネットワークシステムを活用しています。CRINの活用により、各機関はその他の機関が保有する信用情報を確認することができるため、銀行融資を受けたい人は予備知識として覚えておきましょう。
開示報告書の確認項目
信用情報の開示請求後は開示報告書を受け取ることになります。開示報告書には、契約状況や返済状況などの信用取引における内容が記録されているため、銀行融資の審査にマイナスの影響を与える内容が記録されているかどうかを確認してみましょう
【開示報告書の確認項目】
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 契約状況 | ・完済済みや解約済みの契約は「継続中」になっていないか? |
| 返済状況 | ・期日通り入金されたことを示す「$」マークになっているか? |
| 事故情報 | ・長期延滞や債務整理を示す「異動」の文字は記載されていないか? |
| 個人情報 | ・「氏名」「住所」「勤務先」などの個人情報は更新されているか? |
開示報告書の確認項目として挙げられるのは「契約状況」です。ローンやクレジットカードなど、契約状況に関する内容の記録がある場合は「継続中」の文字が記載され、返済能力を疑問視されることにより、銀行融資の審査にマイナスの影響を与える可能性があります。
また、開示報告書の確認項目として挙げられるのは「事故情報」です。長期延滞や債務整理など、事故情報に関する内容の記録がある場合は「異動」の文字が記載され、返済能力を疑問視されることにより、銀行融資の審査にマイナスの影響を与える可能性があります。
なお、開示報告書の記載内容に誤りがある場合は信用情報機関に訂正依頼を出すことができます。その際、完済証明書や契約書の写しなどの証明書類の提出を求められる可能性があるため、開示報告書の記載内容に誤りがある人は用意しておきましょう。
信用情報に問題があった場合の対処法
信用情報に問題があったとしても銀行融資を受けられる可能性はあります。銀行融資を受ける場合、融資の可否は申込者の情報から総合的に判断されるため、信用情報に問題があった人はその前提を踏まえつつ、信用情報に問題があった場合の対処法を押さえておきましょう。
【信用情報に問題がある場合の対処法】
- 登録情報の誤りを訂正する
- 新たな信用実績を作る
信用情報に問題あった場合の対処法として挙げられるのは「登録情報の誤りを訂正する」「新たな信用実績を作る」といった点です。原因から対処法を考えることになるため、信用情報に問題あった人はそれぞれの項目を確認してみましょう。
登録情報の誤りを訂正する
開示報告書に登録情報の誤りがある場合、事実とは異なるにもかかわらず、銀行融資の審査にマイナスの影響を与えることになります。登録情報に誤りがあるという前提ですが、開示報告書に登録情報の誤りがある人は登録情報の誤りを訂正しておきましょう。
信用情報を開示請求した結果、開示報告書に登録情報の誤りがあったときはその内容を信用情報機関に申し立てることになります。その後、信用情報機関が事実確認を実施し、誤りが認められれば、開示報告書の登録情報が訂正されることになります。
なお、訂正手続きには、数週間~1か月程度の期間を要する可能性があります。信用情報機関の事実確認が実施される関係上、即座に訂正されるとは限らず、数週間~1か月程度の期間を要する可能性があるため、訂正手続きを検討する場合は留意しておきましょう。
新たな信用実績を作る
開示報告書の登録情報に誤りがなく、その内容が事実ならば、新たな信用実績を作ることになります。返済実績を積み重ねることにより、信用力の改善を図れる可能性があるため、信用情報に問題がある人は新たな信用実績を作ることを検討してみましょう。
たとえば、信用取引における支払期日を守ることにより、信用力の改善を図れる可能性があります。ローンやクレジットカードなどの返済実績を積み重ねることにより、返済能力や信用力を認められ、銀行融資の審査にプラスの影響を与える可能性があります。
なお、信用情報の改善は長期間かかります。日々の積み重ねから判断される関係上、短期間での改善は難しく、最低でも6か月~1年程度はかかる可能性があるため、新たな信用実績を作ることを検討している人は留意しておきましょう。
信用情報の取り扱いは完済後も注意が必要
ローンやキャッシングなど、契約継続中の金融商品がある場合は銀行融資の審査に影響を与える可能性があります。完済済みだったしても銀行融資の審査に影響を与える可能性があるため、心当たりのある人は留意しておきましょう。
たとえば、過去に消費者金融から100万円を借りた場合、その100万円が完済済みだったとしても解約手続きをしていなければ、消費者金融との契約は継続中(=信用情報に記録が残っている状態)となるため、銀行融資の審査に影響を与える可能性があります。
未解約の金融商品があることにより、与信枠が残っていると見なされ、銀行融資の審査に影響を与える可能性があります。銀行融資の審査にマイナスの影響を与えることも考えられるため、利用していない金融商品がある場合は解約することも検討してみましょう。
完済後は登録情報が更新されてから申し込む
信用情報機関の登録情報は即座に反映されるとは限らず、一定期間を要することも考えられます。そのため、銀行融資を希望するならば、完済したとしてもすぐに銀行に申し込むのではなく、信用情報の登録情報が更新されてから銀行に申し込むことを検討してみましょう。
たとえば、月末に借入金を完済した場合、その情報が信用情報機関に登録されるのは翌月以降になるかもしれません。登録情報の更新前に銀行に申し込みしてしまえば、信用情報の観点から銀行融資の審査にマイナスの影響を与えることも考えられます。
ローンやキャッシングの完済後、銀行融資を受けるならば、1か月~2か月程度の期間を空けてから銀行に申し込むことを検討する余地があります。完済後すぐに申し込むのではなく、信用情報の登録情報が更新されてから銀行に申し込むことを検討してみましょう。
信用力は信用情報以外の内容も影響する
銀行融資における信用力は信用情報以外の内容も影響します。銀行の担当者は申込者の情報から総合的に融資の可否を判断するため、信用情報以外の内容から返済能力を疑問視されれば、信用情報に問題がなかったとしても銀行融資の審査に落ちる可能性があります。
【信用情報以外の評価項目】
| 評価項目 | 具体例 |
|---|---|
| 安定した収入と自己資金 | ・継続的に収入を得られているか? ・月々の生活費を差し引いても返済に十分な余力があるか? ・融資希望額の2割~3割程度の自己資金があるか? |
| 提出書類の内容 | ・資金使途や返済見込みの妥当性を説明できるか? ・過去の業績や利益の安定性を確認できるか? |
| 担保や保証人の有無 | ・不動産や有価証券などの担保を提供できるか? ・信頼できる保証人はいるか? |
| 金融機関との取引実績 | ・預金口座やローンなどの取引実績はあるか? ・信頼関係が構築されている金融機関はあるか? |
銀行融資の審査では、「信用情報」に加え、「安定収入の有無」「自己資金の有無」「提出書類の内容」「担保や保証人の有無」など、あらゆる内容を確認されます。いずれも審査の可否に影響を与える項目となるため、銀行融資を受けるならば、準備すべき項目となります。
なお、当サイトを運営する「株式会社SoLabo(ソラボ)」は中小企業庁の認定を受けた認定支援機関です。資金調達や経営改善に関するアドバイスを実施しているため、銀行融資を受けたい人は株式会社SoLabo(ソラボ)に相談することを検討してみてください。
まとめ
信用情報とは、金融取引における過去の記録のことです。ローンやクレジットカードなどの金融取引における過去の記録は信用情報に登録され、銀行融資を受けるならば、返済能力を確かめる目的として担当者に確認されるため、まずはその前提を踏まえておきましょう。
また、信用情報は国が指定する3つの信用情報機関により管理されています。ローンやクレジットカードなどの金融取引における過去の記録は3つの信用情報機関が管理しているため、銀行融資を受ける予定の人はそれぞれの信用情報機関を確認してみましょう。
なお、信用情報に問題があったとしても銀行融資を受けられる可能性はあります。銀行融資を受ける場合、融資の可否は申込者の情報から総合的に判断されるため、信用情報に問題があった人はその前提を踏まえつつ、信用情報に問題があった場合の対処法を押さえておきましょう。