企業価値が資金調達に与える影響を解説

株式発行や社債発行など、資金調達することを検討している人の中には、企業価値と資金調達の関係性が気になる人もいますよね。その際、自社の企業価値に不安があることにより、企業価値が資金調達にどのような影響を与えるのかを知りたい人もいるでしょう。

当記事では、企業価値が資金調達に与える影響を解説します。企業価値が資金調達に与える影響に加え、企業価値を試算するときの算出方法も解説するため、資金調達における企業価値の情報が知りたい人は参考にしてみてください。

企業価値は資金調達の条件に影響を与える

影響の大きさは企業の状況次第ですが、企業価値は資金調達の条件に影響を与えます。企業価値は資金調達の条件を左右することになるため、資金調達における企業価値の情報が知りたい人はその前提を踏まえておきましょう。

【企業価値による影響の具体例】

資金調達方法 具体例
株式発行 ・株式の発行数
・1株あたりの価格
・経営への関与度合
・EXIT時のリターン
社債発行 ・社債の利率
・償還までの期間
・信用格付の評価
・発行可能額の上限

たとえば、株式を発行する場合、企業価値は株価に影響を与えます。企業価値が高く評価されればされるほど、1株あたりの価格も高く評価される傾向がある関係上、希望調達額に対して発行株式数が少なくなるため、経営者側の持株比率の低下を防げる可能性があります。

また、社債を発行する場合、企業価値は利率に影響を与えます。企業価値が高く評価されればされるほど、将来の返済能力や事業の安定性が高いと判断される傾向がある関係上、投資家が求める利率を抑えることができるため、資金繰りを安定させられる可能性があります。

なお、未上場企業の場合、企業価値は経営者側と資金調達先の交渉により評価されます。上場企業の場合は株式の市場価格が目安となりますが、未上場企業の場合は双方の交渉により評価されるため、資金調達における企業価値の情報が知りたい人は覚えておきましょう。

企業価値担保権を活用できる可能性がある

金融機関から借入する場合、企業価値担保権を活用できる可能性があります。企業価値を担保として借入できる「企業価値担保権」の制度が2026年5月に始まるため、金融機関から借入することを検討している人は企業価値担保権の概要を確認してみましょう。

【企業価値担保権の概要】

項目 概要
法律名 事業性融資の推進等に関する法律
施行日 2026年5月25日(2024年6月7日成立)
制度内容 「技術」「ブランド」「ビジネスモデル」など、無形資産を含む企業の価値全体を担保とする制度。企業が信託会社と信託契約を結んだ後、その信託契約に基づき、金融機関から借入する。

「技術」「ブランド」「ビジネスモデル」など、無形資産を含む企業の価値全体を担保とする制度。企業が信託会社と信託契約を結んだ後、その信託契約に基づき、金融機関から借入する。

企業価値担保権は2024年6月に成立した「事業性融資の推進等に関する法律」に定められています。事業性融資の推進等に関する法律は不動産担保や経営者保証に過度に依存せず、事業の将来性に基づく融資を後押しすることを目的として、新たに制定された法律です。

企業価値担保権を活用する場合、企業価値が借入の可否に影響します。「技術」や「ビジネスモデル」など、無形資産を含む企業価値が金融機関における判断材料のひとつになるため、企業価値が評価されることにより、金融機関から借入できる可能性があります。

なお、企業価値担保権を活用する場合の設定金利や手数料は明確になっていません(2026年1月23日時点)。制度の運用開始後に具体的な借入条件が判明することが考えられるため、企業価値担保権が気になる人は予備知識として覚えておきましょう。

企業価値を試算したい人は算出方法を確認する

企業価値を試算する場合、いくつかの算出方法を活用できます。算出方法ごとに特徴が異なる関係上、企業価値を試算するときは企業の状況に応じた算出方法を選択することになるため、企業価値を試算したい人は算出方法を比較してみましょう。

【企業価値の算出方法】

算出方法 特徴
コストアプローチ 純資産から企業価値を評価する
インカムアプローチ 将来のフリーキャッシュフローから企業価値を評価する
マーケットアプローチ 市場データから企業価値を評価する

企業価値の算出方法は「コストアプローチ」「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」に大別できます。企業価値を試算する場合、企業の状況に応じた算出方法を選択することになるため、企業価値を試算したい人はそれぞれの項目を確認してみましょう。

コストアプローチ

企業価値の算出方法のひとつは「コストアプローチ」です。企業の純資産から企業価値を評価する算出方法となる関係上、「時価純資産法」が代表的な手段となるため、企業価値を試算したい人はコストアプローチの具体例を確認してみましょう。

【コストアプローチの具体例】

具体例 概要
時価純資産法 企業が保有している資産の時価から負債の時価を引いた額を企業価値とする方法
<計算式>
資産の時価-負債の時価=企業価値

時価純資産法は企業が保有している資産の時価から負債の時価を引いた額を企業価値とする方法です。「流動資産」「固定資産」「有価証券」など、資産の時価を算出後に負債の時価を引くことにより、算出された時価純資産を企業価値とみなすことができます。

時価純資産法には、メリットとデメリットがあります。時価純資産法のメリットとして計算式が理解しやすい点が挙げられる半面、時価純資産法のデメリットとして企業価値に企業の将来性が反映されない点が挙げられます。

なお、時価純資産法は中小企業のM&Aにおいて活用される傾向があります。財務状況を評価できる関係上、時価純資産法は中小企業のM&Aにおける価格交渉の土台として活用される傾向があるため、時価純資産法が気になる人は覚えておきましょう。

インカムアプローチ

企業価値の算出方法のひとつは「インカムアプローチ」です。将来のフリーキャッシュフローから企業価値を評価する算出方法となる関係上、「DCF法」が代表的な手段となるため、企業価値を試算したい人はインカムアプローチの具体例を確認してみましょう。

【インカムアプローチの具体例】

具体例 概要
DCF法 企業が生み出すフリーキャッシュフローを現在の価値に割り引いて合計した額を企業価値とする方法
<計算式>
企業が生み出すフリーキャッシュフローの期待値を加重平均資本コスト(WACC)により割り引いた現在価値の合計=企業価値

DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)は将来に企業が自由に使える金額(FCF)を現在の価値に割り引き、合計した額を企業価値とする方法です。今回紹介した計算式は簡略化した例ですが、FCFや割引率をもとに企業価値を算出することができます。

DCF法には、メリットとデメリットがあります。DCF法のメリットとして企業の将来性や事業の成長性を数値化できる点が挙げられる半面、DCF法のデメリットとして事業の長期予測をもとに企業価値を試算することによる不確実性が挙げられます。

なお、成長段階にある企業の場合、DCF法を活用することを検討する余地があります。DCF法は企業の成長性を企業価値に反映できる算出方法となるため、ベンチャー企業やスタートアップなどの成長段階にある企業はDCF法を活用することを検討してみましょう。

加重平均資本コスト(WACC)の算出方法が知りたい人は「資金調達におけるコストを解説」を参考にしてみてください。

マーケットアプローチ

企業価値の算出方法のひとつは「マーケットアプローチ」です。市場データから企業価値を評価する算出方法となる関係上、「類似企業比較法」が代表的な手段となるため、企業価値を試算したい人はマーケットアプローチの具体例を確認してみましょう。

【マーケットアプローチの具体例】

具体例 概要
類似企業比較法 類似する上場企業の企業価値と財務指標から評価倍率を算出後、自社の財務指標に評価倍率を掛けた額を企業価値とする方法
<計算式>
①上場企業の企業価値÷財務指標=評価倍率(マルチプル)
②評価倍率×自社の財務指標=企業価値

類似企業比較法は類似する上場企業の企業価値と財務指標をもとに評価倍率を算出後、自社の財務指標に掛けた額を企業価値とする方法です。「売上高」や「EBITDA(営業利益+減価償却費)」など、財務指標別に企業価値を算出することができます。

類似企業比較法には、メリットとデメリットがあります。類似企業比較法のメリットとして市場動向を企業価値に反映できる点が挙げられる半面、類似企業比較法のデメリットとしてビジネスモデルによっては類似企業の選定が困難となる点が挙げられます。

なお、複数の上場企業を参考として評価倍率を算出する場合があります。今回紹介した計算式は上場企業を一社としていますが、複数社における平均値や中央値から算出することにより、客観性を高められるため、類似企業比較法が気になる人は覚えておきましょう。

企業価値の評価が適正でない場合は資金調達時のリスクになりえる

企業価値は絶対的な数値が存在するわけではなく、多面的に評価することになります。企業価値の評価が適正でない場合は資金調達時のリスクになりえるため、資金調達を予定している人は企業価値の評価が適正でない場合のリスクを押さえておきましょう。

【リスクの具体例】

項目 具体例
企業価値の評価が過度に高い場合 ・出資を受けられないおそれがある
・ダウンラウンドを招くおそれがある
・出資条件の交渉が難航するおそれがある
企業価値の評価が過度に低い場合 ・株価が低く評価されるおそれがある
・投資家の影響力が強まるおそれがある
・既存株主からの信頼が低下するおそれがある

たとえば、企業価値の評価が過度に高い場合、次回の資金調達時にダウンラウンドを招くおそれがあります。ダウンラウンドは前回の資金調達時よりも低い企業価値において資金調達することを指すため、投資家や既存株主からの信用が低下することが考えられます。

また、企業価値の評価が過度に低い場合、投資家の影響力が強まるおそれがあります。企業価値の評価に応じて株価も低く評価されることになる関係上、同じ出資額でも投資家の持株比率が増えることになるため、投資家から経営に干渉されることが考えられます。

なお、企業価値を適正に評価したい場合、複数の算出方法を併用することを検討する余地があります。複数の観点から企業価値を算出することにより、精度を高められる可能性があるため、資金調達に向けて企業価値を算出したい人は覚えておきましょう。

まとめ

影響の大きさは企業の状況次第ですが、企業価値は資金調達の条件に影響を与えます。企業価値は資金調達の条件を左右することになるため、資金調達における企業価値の情報が知りたい人はその前提を踏まえておきましょう。

企業価値を試算する場合、いくつかの算出方法を活用できます。算出方法ごとに特徴が異なる関係上、企業価値を試算するときは企業の状況に応じた算出方法を選択することになるため、企業価値を試算したい人は算出方法を比較してみましょう。

企業価値は絶対的な数値が存在するわけではなく、多面的に評価することになります。企業価値の評価が適正でない場合は資金調達時のリスクになりえるため、資金調達を予定している人は企業価値の評価が適正でない場合のリスクを押さえておきましょう。

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