福岡県で創業を考えている人のなかには、創業融資をうけたいと考えている人もいるでしょう。しかし、これまで勤務者だった人は融資になじみがなく、イメージがつかないケースも多いのではないでしょうか。
福岡県では創業支援として公的な融資の窓口を設けているほか、創業前後の無料相談などさまざまな支援策を打ち出しています。
当記事では福岡県での創業融資を考えている人に向けて、利用できる融資制度の比較や創業支援策について解説していきます。
目次
福岡県で利用できる創業融資制度は2つ
福岡県では、制度融資の新規開業資金と日本政策金融公庫の創業融資の2種類の融資を開業時に活用できます。
創業融資制度 | 概要 |
福岡県の制度融資「新規開業資金」 | 福岡県が金融機関に資金を一部預託し、低金利の貸付制度をつくり創業者支援を行う。実際の窓口は商工会議所で、他に金融機関と県信用保証協会と連携して融資が行われる。 |
日本政策金融公庫の創業融資 | 政府100%出資の政府系金融機関。個人事業主や小規模事業者をメインターゲットに創業融資や創業後の運転資金、設備資金の融資を行う。 |
福岡県の制度融資は市区町村ごとに設置された商工会議所から申込み、各窓口に相談員がいて創業計画の作成からサポートしてくれます。創業(予定)地を管轄している商工会議所は日本商工会議所の公式サイトから確認できます。
日本政策金融公庫は福岡県内に、福岡支店、福岡西支店、北九州支店、八幡支店、久留米支店の5支店があり、公式サイトから管轄地域が確認できます。創業(予定)地の管轄支店に直接融資相談に行くか、インターネットからでも融資申込が可能です。
商工会議所も日本政策金融公庫も、自宅ではなく創業場所の地域を管轄しているところに申し込む必要があります。誤った会議所もしくは支店に相談に行くと思わぬ時間のロスになってしまうため、事前に創業(予定)地の管轄を確認してから問合せするようにしましょう。
福岡県の制度融資と日本政策金融公庫の創業融資を比較
福岡県の制度融資と日本政策金融公庫の創業融資の制度内容を比較した表は以下の通りです。
福岡県の制度融資 | 日本政策金融公庫の創業融資 | |
融資制度名 | 新規開業資金 | 新規開業資金(新創業融資制度と創業支援貸付利率特例制度を併用) |
金利 | 1.3% (55歳以上は1.2%) |
1.59%~2.55%
(女性、もしくは35歳未満か55歳以上の場合1.19%~2.15%) |
融資限度額 | 2,000万円以内
(シニア支援型の場合1,000万円以内) |
3,000万円以内 (うち運転資金は1,500万円以内) |
返済期間 | 設備資金10年以内 運転資金7年以内 |
設備資金20年以内 運転資金7年以内 |
担保、保証人 | 担保は不要 保証人は原則代表者のみ |
無担保、無保証人の制度あり
代表者の保証をつける場合は金利低減あり |
信用保証協会への保証料率 | 創業時は0% | 保証協会の保証不要 |
申込から入金までの期間 | 2か月程度 | 1か月程度 |
金利でいえば福岡県の制度融資の方が日本政策金融公庫よりも低金利で借りられます。他にも、民間金融機関の融資で信用保証協会を利用する際に通常は保証料を支払いますが、福岡県の新規開業資金に限り保証料の支払いが不要です。
日本政策金融公庫は法人借入の場合、代表者の連帯保証不要の制度があること、申し込みから入金まで信用保証協会の審査等を通さず自社で完結するため、入金までの期間が1か月程度と福岡県の制度融資より短い点が特徴です。
創業融資を受けたいといっても、まだ創業計画が固まっていないため相談しながら進めたい場合や、創業時期が迫っているため急いで資金を用意したい場合など人によって状況は違います。借入の条件を比較しつつ、入金までの期間も考慮しながら自分に合った創業融資制度を選びましょう。
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福岡県の制度融資「新規開業資金」申込から入金までの流れ
福岡県の制度融資「新規開業資金」申込から入金までの流れは以下の通りです。
- 創業(予定)地の管轄商工会議所に融資相談に行く
- 商工会議所の相談員と創業計画を練る
- 商工会議所の紹介として、創業計画書含む申込書類を金融機関に提出
- 金融機関から信用保証協会に保証依頼を申込む
- 信用保証協会の担当者と創業者が面談
- 信用保証協会から審査可否の連絡がある
- 審査が通れば金融機関と融資契約を結び、口座へ着金
まず、商工会議所と創業者で相談し創業計画をブラッシュアップしていきます。商工会議所によっては創業塾と称して4回のセミナー受講が必須のところもあります。創業計画を推敲することで、金融機関や信用保証協会との面談に自信をもって臨めるようにする目的です。
金融機関は申込書類を受け取り、信用保証協会への保証依頼を行います。信用保証協会の保証審査が通れば、万が一事業が上手くいかず返済不能となった場合でも信用保証協会が金融機関へ債権の代払いを行ってくれるため、金融機関は回収リスクが下がり創業融資を行いやすくなります。
福岡県の制度融資は商工会議所、金融機関、信用保証協会の3つの機関と連携しながら進めていくため、融資までの期間が2か月程度と日本政策金融公庫よりも長くなってしまいます。その代わり創業計画を相談員と話し合いながら作成できるため、初めての創業で分からないことがある人にとっては助かる制度といえるでしょう。
福岡市は市単体でも制度融資を行っている
福岡県のなかでも福岡市は単体で制度融資を取り扱っています。福岡県と同じように福岡市も金融機関に資金を一部預託し、「福岡市創業支援資金」として創業者向けの融資制度を用意しています。
【福岡市創業支援資金の制度詳細】
福岡市創業支援資金 | スタートアップ資金 | 成長支援資金 | 分社化資金 |
金利 | 1.3% (女性または50歳以上の場合1.2%) |
1.3% | 1.3% |
融資限度額 | 3,500万円 (創業前は2,000万円) |
3,500万円 | 3,500万円 |
返済期間 | 10年以内 | 10年以内 | 10年以内 |
信用保証協会への保証料率 | 0% | 0.5% | 0.81% |
担保、保証人 | 担保は不要
保証人は原則代表者のみ |
スタートアップ資金の対象者は、これまで事業経営経験がなく市内で新たに創業する人、または事業開始後2年以内で、それまで事業経営経験がない人です。
成長支援資金の対象者は、事業を営んでいない個人が市内で新たに事業を開始した日、または新たに会社を設立した日から2年を経過し、5年未満の人です。
分社化資金の対象者は、県内の会社で現在の事業を継続しつつ、新たに市内で会社を設立される人(新会社で事業を開始してから5年未満の人を含む)です。
福岡市内で創業予定の人は、福岡県の制度融資と併せて検討してみましょう。どちらの制度融資を利用するにしても、窓口は福岡商工会議所です。福岡商工会議所の公式サイトで融資申込の流れについて記載されているため、気になる人は参考にしてみてください。
日本政策金融公庫の創業融資は創業前後の人に優遇制度がある
日本政策金融公庫の創業融資は、創業前もしくは創業後2期以内の人に対して優遇制度があります。
【創業時に利用できる日本政策金融公庫の融資制度】
制度名 | 概要 |
新規開業資金 | 創業前または開業後おおむね7年以内の人が対象。 |
新創業融資制度 | 新規開業資金と併用できる制度。創業前もしくは創業2期目以内なら無担保、無保証人で融資を受けられる制度。ただし、利用するには自己資金要件を満たす必要がある。 |
創業支援貸付利率特例制度 | 新規開業資金と併用できる制度。創業前もしくは創業2期目以内なら利率を-0.65%低減できる制度。
雇用の拡大を図る場合は、各融資制度に定める利率から-0.9%低減可能。 |
新創業融資制度と創業支援貸付利率特例制度は、創業前か創業後2期目以内の申込であれば、新規開業資金と合わせてどちらも併用可能です。創業2期目以内の事業者は上記三つの制度を利用する前提で日本政策金融公庫に問合せをすると良いでしょう。
また、新規開業資金の基準金利は2.24%から3.20%(令和5年6月1日現在)ですが、以下に該当する人は特別利率Aの1.84%から2.80%での借入が可能です。
- 女性もしくは35歳未満か55歳以上の人
- Uターン等により地方で新たに創業する人
創業時に利用できる日本政策金融公庫の融資制度は、新規開業資金に新創業融資制度と創業支援貸付利率特例制度を併用する方法ですが、申込人によってはさらに金利低減措置の対象になる場合があるため、日本政策金融公庫の新規開業資金の概要ページから対象要件を確認してみましょう。
新創業融資制度を利用するには自己資金要件を満たす必要がある
新創業融資制度を利用する際は、創業前もしくは創業後後税務申告を1期終えていない人に限り、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できることが条件となっています。
たとえば、飲食店を開業する際に設備資金と創業後の運転資金を含めてトータル300万円必要な場合、自己資金は最低30万円用意したうえで申し込む必要があります。
自己資金要件はあくまで最低条件のため、自己資金の10倍まで融資が申し込めるということではありません。創業するためにどれくらいの資金がいるのか考え、目標のために自己資金を貯めてきたという計画性を見せる必要があるでしょう。
無料診断では、日本政策金融公庫の新創業融資制度の対象となるかがわかります。現状の自己資金から自社が対象となるか、審査に通りそうか知りたい人は無料診断をお試しください。
福岡県で認定特定創業等支援事業を受講すると国からの支援策がうけられる
福岡県で認定特定創業等支援事業を受講すると、税率の免除や融資時の金利の引き下げなど国からの支援策がうけられます。
福岡県内の商工会議所をはじめとする連携事業者が認定特定創業等支援事業として行っている創業セミナー等を受講すると、認定特定創業等支援事業を受けたことの証明書が発行でき、それによって3つの優遇措置が受けられます。
- 法人設立時の登録免許税が半額軽減される
- 信用保証協会を利用する場合、通常2か月以内に創業する必要があるが、認定特定創業等支援事業を受けていれば6か月以内まで延長できる
- 日本政策金融公庫の自己資金要件を満たしたものと判断され、かつ融資を受ける際には金利の引き下げ対象となる
認定特定創業等支援事業の内容は各自治体によって異なりますが、証明書を発行するには1か月以上で計4回程度の受講が必要なケースが多いです。受講には時間がかかりますが、国からの支援策以外に各市区町村単位でも優遇措置を行っているところもあります。創業まで時間があり、知識を習得したい人は受講を検討してみましょう。
福岡市は融資以外にも創業支援政策を行っている
福岡市では創業融資以外にも創業支援政策を行っています。福岡市は2012年にスタートアップ都市宣言を行い、国家戦略特区のなかでも「グローバル創業・雇用創出特区」認定されており、政府主導で創業支援政策を打ち出しているからです。
さまざまな創業支援がありますが、事業規模や事業内容に関わらず利用できる支援制度を2つ記載します。
福岡市の創業支援政策 | 概要 |
福岡市新規創業促進補助金 | 法人設立時の登録免許税を半額負担する補助金制度。認定特定創業等支援事業の受講を修了すると、国の支援策として登録免許税を半額に軽減できるが、福岡市で創業する場合はさらに追加でもう半額分を補助金申請できる。
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スタートアップカフェ | 福岡市から委託を受けて創業前後の相談や起業家向けのイベント開催、コワーキングスペースの提供を行う。
創業に関する無料個別相談も受け付けている。相談員のなかには飲食事業に特化した相談員もいれば、ベンチャーキャピタル勤務の相談員もいるため、自分に合った相談員を希望することも可能。 |
他にも福岡市の公式サイトで創業支援について記載されているため、福岡市内での創業を検討している人は確認してみましょう。
まとめ
福岡県で創業融資をうけるときの選択肢として、福岡県の制度融資と日本政策金融公庫の創業融資という2つの制度があります。どちらも低金利で長期融資が可能ですが、創業計画のサポート体制や融資までの期間、保証人の有無なども踏まえて検討してみましょう。
初めて創業する場合は分からないことや不安なこともあるかもしれませんが、福岡県では商工会議所等を通じて創業を支援する政策が充実しています。福岡市で開業を予定している人はもちろん、他の市で開業を予定している人も参考にすると良いでしょう。