京都府は、千年の歴史を紡ぐ伝統産業と、世界的な先端技術を誇るメーカーが共存する、日本の中でも特殊な経済圏です。この地域特性は創業融資制度にも反映されており、一律の支援ではなく、事業の性質に合わせた多角的な選択肢が用意されています。
当記事では、京都府で利用できる創業融資の種類とそれぞれの特徴を解説します。京都府内で自身に合ったで創業融資制度を探している人は参考にしてみてください。
京都府の創業融資の特徴
京都府の創業融資には、伝統産業の継承から大学発ベンチャーの支援まで、ビジネスモデルに応じた支援体制が構築されている点に特徴があります。地域経済の持続性を重視しており、自治体、保証協会、金融機関が連携して、事業の性質を見極めた資金供給を行っています。
一般的な新規開業を支援する制度に加え、事業の承継や多角化を対象とした「第二創業」向けの融資や、成長性を重視するテック系向けの大型融資が確立されています。自身の事業がどのカテゴリーに該当するかを把握することで、最適な調達ルートを選択することが可能です。
【京都府で利用できる創業融資の種類】
| 融資の種類 | 特徴 | 主な相談先 |
| 一般的な創業 | 低利・固定金利を主軸とした安定的な調達 | 京都府・京都市、商工会議所 |
| 第二創業(事業承継) | 家業の引き継ぎや新分野への進出を支援 | 京都信用保証協会、各金融機関 |
| テック・ベンチャー向け | 技術力や将来性を評価し、数千万円規模にも対応 | 京都中央信用金庫、京都銀行 |
これらの制度を有効活用するためには、自身の事業が「地域密着・伝統産業型」か「先端技術・急成長型」かを明確に区分する必要があります。たとえば、飲食店や伝統工芸など設備投資を回収しながら長期的に安定収益を目指す場合は、金利固定の「制度融資」を取り扱う商工会議所や地域金融機関を優先すべきです。一方で、創業初期に赤字を掘ってでも急成長を目指すテック系スタートアップであれば、将来性を評価軸に持つ京都中央信用金庫の融資制度などが適しています。
このように、自社の成長曲線と合致した審査基準を持つ窓口へアプローチすることが、融資獲得の確度を高める要因となるでしょう。
京都府で創業時に利用できる制度
京都府で創業資金を調達する場合、自治体の「制度融資」と日本政策金融公庫の融資を主軸に検討するのが一般的です。これらは民間のプロパー融資と比較して低利かつ据置期間を長く設定できるため、収益が不安定な創業初期の負担を軽減できます。
まずは制度融資や日本政策金融公庫で基礎となる資金を確保し、不足分を民間の独自商品で補う、あるいは複数を組み合わせる「協調融資」を活用するのが効率的です。各制度には対象者や優遇条件に違いがあるため、自社の事業形態に適したものを見極める必要があります。
【京都府で利用できる創業融資制度】
| 融資制度名 | 金利・保証料 | 限度額 | 主な特徴 |
| 京都府制度融資「開業・経営承継支援資金」 | 年1.2%(固定)・年0.5%〜1.2% | 1,500万円(最大3,500万円) | 京都府・市の標準的な制度融資 |
| 京都中央信用金庫「ベンチャーローン」 | 変動金利・なし | 最大1億円 | 高成長・テック系向け |
| 京都中央信用金庫「創業スタートダッシュ」 | 変動金利・年0.5%〜1.2% | 3,000万円 | 既存の個人取引を活かせる |
| 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」 | 特別利率適用あり・なし | 7,200万円 | 無担保・無保証人で利用可能 |
資金調達の際は、1つの窓口に絞る必要はありません。公庫と民間金融機関が連携する協調融資を利用することで、より大きな金額の調達や将来的な取引実績の構築が可能になります。
京都府制度融資「開業・経営承継支援資金」
京都府の制度融資である「開業・経営承継支援資金」は、京都府内で新たに事業を開始する方や、創業後5年未満の方を対象とした公的な融資制度です。2026年現在の金利上昇局面においても年1.2%という他の制度と比較しても低水準の固定金利で最長10年の資金を確保できるメリットがあります。
事業計画の妥当性や将来性を京都信用保証協会が審査して保証することで、実績のない創業者でも円滑な借入を可能にしています。また、地域の商工会議所等から経営指導を受けることで、融資限度額が大幅に拡大される仕組みも備わっています。
【開業・経営承継支援資金の特徴】
| 項目 | 内容 |
| 金利(優遇も併記) | 年1.2%(固定) |
| 保証料 | 年0.5% 〜 0.7% |
| 優遇条件 | 認定特定創業支援等事業の受講等で、融資限度額が最大3,500万円に拡大 |
| 限度額 | 1,500万円(特定要件を満たす場合は3,500万円) |
| 要件 | 京都府内で事業開始予定、または開始後5年未満の個人・法人 |
| 特徴 | 最長2年の据置期間が設定可能。安定した返済計画を立てやすい |
| 相談先 | 京都府内の商工会議所、商工会、各取扱金融機関 |
この制度は通常の創業以外にも、事業承継も創業として認めています。事業の譲渡によってその全部または一部を設立会社に承継させたことが客観的に確認できる資料を提示することで、承継者であっても新規創業者と同様の手厚い支援を受けることが可能になります。
なお、この制度の利用は保証人なしでも利用可能ですが、この場合は上限の0.7%が適応されます。保証料を少しでも下げたい場合、保証人を用意してから申込みをするようにしましょう。
京都中央信用金庫「ベンチャーローン」
京都中央信用金庫が提供する「ベンチャーローン」は、高い成長性が見込まれる新興企業を対象とした融資制度です。信用保証協会の保証を必要としないプロパー融資であるため、保証料の負担がなく、迅速な資金調達が期待できます。
この融資は、技術力や市場性を評価する審査担当者の判断に基づき実行されるため、担保や実績に乏しいテック系企業向けの融資制度となります。
【ベンチャーローンの特徴】
| 項目 | 内容 |
| 金利 | 変動金利(新長期プライムレート等に連動) |
| 保証料 | なし(ただし、保証協会付融資を併用する場合は別途必要) |
| 金利や保証料の優遇条件 | 京都市の各種認定(オスカー認定等)取得により条件が緩和される場合がある |
| 限度額 | 最大1億円(うち無担保2,000万円) |
| 要件 | 高い成長性、技術力・開発力があると認められる法人 |
| 特徴 | 保証料ゼロで大型の資金調達が可能。中信による経営支援も受けられる |
| 相談先 | 京都中央信用金庫 本支店窓口 |
技術シーズを持つベンチャー企業や、短期間でのスケールを狙う事業者に適した制度です。京都中央信用金庫から直接リスクを取った融資を受けることは、他機関や投資家からの信頼獲得にも寄与するため、今後のエクイティを含めた資金調達手段に繋がる可能性も出て来るでしょう。
なお、本制度は変動金利が適用されるため、とくに高額な融資を受ける場合は将来的な金利上昇が返済額に与える影響を十分に考慮しなければなりません。また、利用にあたっては「オスカー認定」の取得や「インキュベーション施設への入居」など、客観的な認定要件を満たす必要があり、申し込みへのハードルは相応に高い点にも留意が必要です。
京都中央信用金庫「創業スタートダッシュ」
京都中央信用金庫の「創業スタートダッシュ」は、創業の6ヶ月前から事業開始後1年以内の事業者を対象とした融資制度です。同じ京都中央信用金庫の「ベンチャーローン」と比較すると、幅広い業種で活用できる制度となっています。
本制度は、公的な支援機関による指導実績を審査の根拠とする点が特徴です。第三者機関が事業計画の妥当性を認めていることを前提とするため、実績の少ない創業初期であっても融資審査が進めやすくなります。
【創業スタートダッシュの特徴】
| 項目 | 内容 |
| 金利 | 変動金利(新長期プライムレート連動) |
| 保証料 | 年0.5% 〜 1.2%(別途保証協会の保証が必要) |
| 金利や保証料の優遇条件 | 特になし(認定要件自体が申し込みの前提となる) |
| 限度額 | 1,000万円(日本政策金融公庫との「協調融資ツイン」利用時は合計3,000万円) |
| 要件 | 創業前〜創業後1年以内で、所定のセミナー修了や経営支援を受けていること |
| 特徴 | 創業初期の運転・設備資金に特化。公庫との協調融資にも発展させやすい |
| 相談先 | 京都中央信用金庫 本支店窓口 |
創業スタートダッシュは、公的な創業支援を受けながら準備を進めたい事業者に向いている資金調達手段となります。融資額を増やしたい場合は、日本政策金融公庫との協調融資商品「スタートダッシュ・ツイン」として利用すれば、合計で最大3,000万円まで確保することが可能です。
なお、利用対象期間が創業後1年以内と厳格に定められているため、事業開始から1年を超過すると申し込みができなくなる点に注意しなければなりません。開業時期に利用するか、もし期限を過ぎてしまった場合は他の融資制度を利用しましょう。
日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、信用保証協会を介さずに国の金融機関が直接資金を貸し付けるプロパー融資です。信用保証協会への申し込みや面談の手続きが不要であり、審査プロセスが公庫内だけで完結するという特徴があります。
また、全期間固定金利を選択できる点がメリットです。2026年の金利上昇局面において、返済完了までの利率を確定させることができるため、将来の金利変動リスクを負わずに事業計画を立てることが可能です。
【新規開業・スタートアップ支援資金の特徴】
| 項目 | 内容 |
| 金利 | 基準利率または特別利率(原則、固定金利) |
| 保証料 | なし |
| 金利や保証料の優遇条件 | 雇用の創出や認定特定創業支援事業の受講により特別利率が適用される |
| 限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
| 要件 | 新たに事業を始める方、または開始後おおむね7年以内の方 |
| 特徴 | 経営者保証が原則不要。民間銀行との協調融資にも積極的 |
| 相談先 | 日本政策金融公庫 各支店(京都、京都北など) |
新規開業・スタートアップ支援資金は、固定金利による支払額の安定を求める事業者や、保証料などの融資コストを抑えたい事業者に適しています。また、日本政策金融公庫を利用することで信用保証協会の保証枠を温存できるため、将来的に民間金融機関から追加融資を受ける際の余力を残すことができます。
なお、融資限度額は7,200万円と設定されていますが、これはあくまで制度上の上限です。実績のない創業段階において無担保・無保証でこの金額が満額融資されることは稀であり、現実的な調達可能額は事業規模に応じた範囲である数百万円から一千万円程度に留まる点に留意して資金計画を立てる必要があります。
まとめ
京都府における創業融資は、府・市の制度融資、日本政策金融公庫、そして地域金融機関の独自商品を使い分けることが重要です。2026年現在の金融環境では、固定金利でリスクを抑えられる制度融資や、代表者保証を不要とする公庫の活用を優先すべきといえます。
調達の成否を分けるのは、事前の準備と自身のビジネスモデルに適した窓口の選定です。特に限度額の拡大や金利優遇を狙う場合は、「認定特定創業支援等事業」の受講など、融資申し込みの数ヶ月前から計画的に動く必要があります。
融資を受けることは、単なる資金調達にとどまらず、地域金融機関との長期的なパートナーシップの始まりを意味します。各制度の特性を理解し、事業の成長を支える資金計画を立てることで、京都での事業を軌道に乗せることが可能です。