銀行融資とは?仕組みと種類を解説

事業の投資や住宅購入時など、大きな資金が必要な時には銀行からお金を借りることをイメージする方も多いと思います。しかし改めて、銀行がどこからお金を集めて、何のために融資を行っているのか、その仕組みが気になる人もいるのではないでしょうか。

銀行は営利法人であり、融資を通じて得られる利息や手数料を元に利益を得ています。融資の資金源は主として顧客からの預金であり、その他にも銀行同士の繋がりや私企業として社債や株式を発行することで資金を得て、銀行は融資を行っているのです。

当記事では、銀行融資の仕組みについて解説していきます。また、実際に銀行が行っている融資の種類についても説明していきますので、銀行の業務が気になる人は参考にしてみてください。

銀行融資の仕組み

銀行融資とは、主に預金によって集めた資金を個人や法人に資金を融通することで銀行が利益を得る仕組みのことです。

銀行は公営機関でなく営利法人であり、融資をすることで得る利息や手数料を元に利益を得ています。資金調達をしたいという顧客の需要と、預金を活用しようとする銀行の供給が一致した結果として融資が行われ、利息や手数料を得ることで銀行は収益を生み出しているのです。

このように、集めた資金を融資することで利益を出す仕組みのことを間接金融と言います。融資を行うための主な資金源は預金となるので、銀行は金利をつけることで預金者を増やそうとします。

預金者に金利による利益を還元しなければならないという特性上、原則として銀行融資の金利は預金金利を上回ります。融資から得た利息や手数料から預金者に還元した利息を差し引いたものが銀行の利益となるのです。

預金以外の資金源

銀行が融資を行うための主な資金源は預金ですが、それ以外にも以下のような資金調達源があります。

【銀行の資金調達先】

  • 銀行債(社債)の発行
  • 銀行株(株式)の発行
  • 中央銀行からの借入
  • 他の金融機関からの借入

銀行は私企業としての一面を持っているため、株式会社と同様に株式や社債を発行することで資金調達をすることができます。これらの資金は調達までに準備期間が必要なため、主に銀行自身の長期的な事業投資のために充てられます。

銀行独自の資金調達源としては、銀行や他行からの借入があります。ほかの金融機関からの借入は銀行債や銀行株と比較して資金調達の迅速性が高いため、主に銀行が短期的な資金の不足を賄うのに利用されます。

このように、銀行は預金以外にも長短両方に合わせた資金調達方法を持っており、銀行自身の成長戦略や短期的な資金不足の解消をしているのです。

銀行は預金額以上の融資を行っている

融資を行うための主な資金調達源は預金ですが、実際には銀行は預金額以上の融資を行っています。

たとえば、準備率10%の元で銀行Aに1,000万円の預金がある時、100万円を準備金として保持し、残った900万円が融資に充てられます。この900万円の代金は事業を通じて銀行Bに預金され、さらに銀行Bは90万円を準備金として残りの810万円を融資に充て、さらに銀行C、Dと続いていきます。

このプロセスを繰り返すことで、当初の預金1,000万円を超える貨幣価値が市場に出回り、経済全体に供給されます。このように、銀行の融資が預金以上の貨幣供給量を増加させる仕組みのことを信用創造といいます。

現代の市場経済は、銀行による信用創造によって投資や消費が拡大し、経済を実態以上の速度で成長させています。一方で、信用創造によって流通貨幣量の増加によるインフレーションにより、経済実態以上に物価が上昇してしまうリスクがある点には注意が必要です。

信用創造によって生じるリスク

信用創造はインフレーションを加速させるほかに、銀行の連鎖的な倒産や金融システムの停滞を引き起こすリスクもはらんでいます。このようなリスクをシステミック・リスクと言い、発生するメカニズムは次のようになります。

信用創造は融資の利息や手数料が滞りなく回収できることを前提にしています。多少の貸し倒れはリスクとして事前に想定はされているものの、不況などにより複数の融資先の経営状況が悪くなると、銀行は不良債権を大量に抱えることになります。

また、経済的な不況が進行するとデフレが起きて貨幣価値が向上し、預金者は預けていた預金を銀行から引き出そうと動きます。このように、不況によって不良債権の増加と資金源の不足が連鎖的に起こると、銀行自体が倒産してしまう可能性が出てくるのです。

銀行同士は互いに決済や資金源として連携し、相互作用する金融システムを構築しています。そのため、銀行の倒産が連鎖的な反応を引き起こして金融システムの崩壊を引き起こし、市場経済全体が停滞してしまう危険性が生じます。このようなリスクがシステミック・リスクです。

信用創造は現代の経済において必要不可欠な要素であるものの、不況によりシステミック・リスクが発生する危険性もはらんでいます。銀行が倒産してしまうほどの不況というのは稀ではありますし、このような事態が起きないように中央銀行が貨幣流通量をコントロールをしていますが、とくに実態以上のインフレーションの裏には金融恐慌のリスクがあることは認識しておくべきでしょう。

種類別の融資方法

銀行が行う融資は、主にデットファイナンスとアセットファイナンスに分類されます。デットファイナンスとは借入を伴う融資を指し、担保の設定が必須でないという特徴があります。対してアセットファイナンスは担保を基に融資を受ける方法であり、融資は借入や資産の現金化など柔軟に実施されます。

【種類別の融資方法】

融資の種類 融資方法 利用シーン
デットファイナンス 証書貸付 長期的な設備投資のための融資
当座貸越 短期的な資金繰りの改善
手形貸付 短期的な資金繰りの改善
アセットファイナンス 手形割引 短期的な資金繰りの改善
ファクタリング 短期的な資金繰りの改善

デットファイナンスとアセットファイナンスの違いは融資方法と審査の対象です。デットファイナンスは借入であり、審査においては債務者の信用情報や自己資金、事業計画書、担保などから総合的な返済能力を審査します。

それに対し、アセットファイナンスは担保とする資産の価値が主な審査の対象となります。担保とする資産を銀行に売却すれば現金化という形で融資がなされ、所有権を譲渡する場合には借入という形で融資がなされます。

また、各種の融資方法にはそれぞれ長期向け、短期向けといった特徴があります。銀行から融資を受けたい時には、それぞれの融資方法の特性を理解し、自社に合ったサービスに申し込むと良いでしょう。

証書貸付の仕組みと特徴

銀行が行う証書貸付とは、契約の際に作成される証書に基づいて行われるデットファイナンスです。プロパー融資や信用保証貸付などの事業資金の融資の他にも、住宅ローンなど個人を対象にした融資も含まれ、主に1年以上の返済が必要になる長期的な融資であり、主に銀行融資としてイメージされるのは証書貸付です。

証書には次のような項目が記載され、この項目に沿った返済が行われることになります。

【証書に記載される項目】

  • 融資額
  • 金利(利率)
  • 返済期間
  • 返済方法
  • 担保の有無
  • 遅延損害金

契約書を作成するために債権者の信用力や事業状況を細かく審査するため、証書貸付はデットファイナンスの中でも手続きが煩雑であり、審査に時間が掛かります。一方で、他のデットファイナンスと比較して返済期間が長く設定されるため、設備資金など高額な融資を長期に渡って借入できるというメリットがあります。

また、他のデットファイナンスは原則として開業後からの利用になるのに対し、証書貸付は創業時にも利用可能です。開業時に証書貸付を利用して銀行との取引実績を作っておくと、より良い条件で新たな融資を受けられる可能性も高まります。

そのため、とくに開業時や事業拡大など大きな資金が必要な際は証書貸付を利用し、金融機関との取引実績を作っておくと良いでしょう。

当座貸越の仕組みと特徴

銀行が行う当座貸越とは、預金を担保にして行われるデットファイナンスです。当座貸越を利用すると、普通預金の残高が不足している時に、定期預金を基に予め設定しておいた限度額内において自動で融資が行われるようになります。

たとえば、事業資金の普通預金口座に100万円がある状態で110万円の請求がされた場合、10万円の残高が不足します。当座貸越の契約をしておけば、この不足分が自動的に融資がなされるようになるのです。

当座貸越のメリットとして、融資の迅速性が挙げられます。予め契約さえしておけば審査の必要もなく自動的に融資を受けられるので、当座貸越を利用すると急な資金不足に対処しやすくなります。

一方、当座貸越はその特性上、口座のない銀行を相手に融資を受けることができません。また、当座貸越の契約自体には審査が必要であり、主に今までの取引実績や口座の預金状況から結果が決まるため、開業直後には利用できない点には注意が必要です。

なお、当座貸越で融資を受けられる金額は契約内容によります。いくらまでの融資を受けられるのかは、事前に事業用の預金口座を解説している銀行に相談して確認しておきましょう。

手形貸付の仕組みと特徴

銀行が行う手形貸付とは、約束手形を担保として行われるデットファイナンスです。期日までに所定の金額の支払いを約束する有価証券である約束手形を銀行に発行して融資が行われます。

書面を提出するという点に関しては、手形貸付は証書貸付と近い融資方法と言えますが、証書は双方の合意の元で銀行側が作成するのに対し、手形貸付における約束手形は借り手が記載しなければなりません。

【約束手形の記載事項】

  • 支払期日
  • 支払い場所
  • 金額
  • 振出人(発行者)
  • 受取人(銀行名)
  • 発行日

約束手形を作成するには、上記の内容を債務者側が記載して捺印した手形を銀行側に提出する必要があります。支払期日や支払金額に関しては、事前に取引先の銀行と相談して決定します。

約束手形の作成には証書ほど作成に時間が掛からないので、証書貸付と比較すると入金までの速度が早いというメリットがあります。ただし、返済期間は原則として一年以内に設定されるため、長期的な借入をするのには向かない点には注意が必要です。

手形割引の仕組みと特徴

銀行が行う手形割引とは、約束手形を担保にして行われるアセットファイナンスです。同じ約束手形を担保にする融資には手形貸付がありますが、手形の扱いと資金調達方法について次のような違いが発生します。

【手形割引と手形貸付の違い】

融資方法 約束手形の扱い 資金調達のされ方
手形割引 取引先が作成したものを銀行に譲渡する 現金化
手形貸付 自社で作成して銀行に提出する 借入

具体例として、まずは取引先A社から1か月先を支払期日とした100万円の約束手形を受け取ったとします。この手形を銀行に売却することで現金を受け取るのが手形割引です。この際に現金化できる金額は100万円から手形割引料を引いた金額であり、2%に設定されていた場合は98万円を受け取ることが可能です。

手形割引のメリットとして挙げられるのは、取引先の入金を待たずに早期に現金化ができるので、キャッシュフローの改善につながるという点です。とくに急な資金繰りが必要になった時に手形割引は向いている融資方法と言えます。

一方で、本来入金される金額から手形割引料が差し引かれるため満額の入金を受けられず、事業全体の売上が低下するというデメリットがあります。ほかにも取引先の状況により売却した約束手形が不渡りになってしまった場合には買戻しの義務が生じるというリスクがある点には注意が必要です。

ファクタリングの仕組みと特徴

銀行が行うファクタリングとは、売掛債権を担保にして行われるアセットファイナンスです。

取引先からの入金を早期に現金化するという点はファクタリングと手形割引で一致していますが、担保設定する資産に微妙な違いがあります。ファクタリングで担保設定するのは売掛債権であり、約束手形と比較して流通性と法的な強制力が低いという特徴があります。

銀行から受けられる融資の中で、ファクタリングは申込から入金までの時間がとくに早いというメリットがあります。日本国内の取引は約束手形よりも請求書で行うことが多いので、手形割引と比較して利用できるシーンが多いというのも特徴です。

一方で、銀行側から見るとファクタリングの方が資金回収のリスクが高くなるため、多くの場合は手形割引よりも手数料が高めに設定されます。短期的にはキャッシュフローが改善されると言っても、継続的なファクタリングの利用は長期的には資金繰りの悪化を招く可能性があります。

そのため、ファクタリングの利用は緊急の資金調達のみに抑え、経常的な資金繰りには他の融資方法を利用するようにすると良いでしょう。

まとめ

銀行は主に預金を通じて資金を調達し、それを原資として法人や個人に融資を行うことで利益を得ています。銀行は営利法人としての側面ももっているので、時に社債や株式を発行することで長期的な資金を調達するほか、ほかの銀行と連携をすることで短期的な資金不足の解消も行っています。

また、銀行は預金と融資を繰り返す中で信用創造を行っており、これが市場経済の発展に寄与しています。ただし、経済実態に見合わない過度な信用創造はシステミック・リスクをまねき、経済の停滞を招く危険性をはらんでいます。

銀行融資の種類は主にデットファイナンスとアセットファイナンスに二分され、それぞれ審査対象が異なります。また、それぞれの融資方法には独自のメリットとデメリットがあるので、実際に融資を受ける時には目的に合った方法を選択するようにすると良いでしょう。

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