銀行融資の種類を解説

銀行融資の利用を検討する事業者の中には、どの融資を選べばよいのかが分からず、検討の段階から迷ってしまう人もいるのではないでしょうか。事業性融資の種類は「どのような形態で資金を借りるのか」や「どのような制度で資金を借りるのか」によって分けられます。

当記事では、銀行融資の種類を2つの視点に分けて解説します。あわせて、事業者の状況に応じた融資の選び方も紹介するので、自社に適した融資制度を探している人は参考にしてみてください。

銀行融資の種類は2つの視点から分けられる

銀行融資の種類は、「契約の形態」と「制度の仕組み」の2つの視点から分けることができます。視点を分けて理解することにより、制度ごとの特徴や自社に適した融資の選び方が見えてきやすくなります。

【2つの視点で分けた銀行融資の種類】

分類の視点 特徴
契約の形態による分類 銀行と事業者がどのような契約方法で資金をやり取りするかによって分けられる
制度の仕組みによる分類 保証の有無や融資制度の提供主体、融資条件などによって分けられる

融資の分類方法のひとつとして「契約の形態」による分け方が挙げられます。短期間の資金調達に売掛債権を使って契約する方法や、長期間の返済を前提に契約書を交わして契約する方法など、借り入れ方法の違いによっていくつかの種類に分けられます。

また、融資の分類方法のひとつとして「制度の仕組み」による分け方が挙げられます。信用保証協会の保証制度を活用する融資や、銀行が独自に資金を貸し出すプロパー融資など、制度の違いによっていくつかの種類に分けられます。

銀行融資は「契約の形態」と「制度の仕組み」という2つの視点から種類を整理することができます。これらの視点を理解した上で、それぞれの分類に属する具体的な融資の種類を確認していきましょう。

契約の形態によって分類される融資の種類

銀行融資は、事業者が銀行から資金を借り入れる際の「契約の形態」によって複数の種類に分類することができます。どの契約形態による融資を受けることが自社の資金調達に適しているのかを考えながら、それぞれの契約の形態を確認してみましょう。

【契約の形態で分類した融資の種類】

融資の種類 内容
証書貸付 ・契約書を交わして一定額を借りる方法であり、最も多く利用されている
・設備投資や事業拡大のような長期の資金需要に適している
当座貸越 ・銀行とあらかじめ融資枠を設定し、限度額の範囲で自由に借入できる方法
・仕入れや売上の入出金が頻繁に発生する業種に適している
電子記録債権割引
(でんさい割引)
・電子記録債権(でんさい)を期日前に銀行が買い取り、資金化する方法
・売掛金の早期回収に役立ち、従来の手形に代わる手段として普及が進んでいる

「どのような方法で資金を調達したいのか」「どのような使い道に資金が必要なのか」を整理したうえで、自社の状況に適した契約形態を検討しましょう。申し込みの際は、各融資における利用条件をあらかじめ確認し、条件を満たしておく必要があります。

なお、かつて企業の決済手段として広く利用されていた約束手形は、印紙税の負担や紙の管理の手間などから利用が減少しています。電子記録債権の普及により、今後は約束手形に代わる契約や決済の方法、資金調達の手段もさらに広がっていくと見込まれます。

証書貸付

証書貸付は、銀行融資の契約形態の中でも最も多く利用されている方法です。銀行と「金銭消費貸借契約書」という証書を交わし、まとまった資金を一括で借り入れる仕組みとなっています。

証書貸付は、主に設備投資や事業拡大など、長期的かつ高額な資金調達に加え、一定期間にわたって継続的に必要となる運転資金の需要にも適しています。借入額や返済期間、金利などの条件が契約時に明確に定められるため、資金繰りの計画を立てやすい点が特徴です。

ただし、契約には事業計画書や決算書など複数の書類提出が求められることから、審査や手続きには数週間〜1か月以上の時間がかかります。余裕を持って準備を進める必要があるため、急ぎの資金調達には適していません。

証書貸付は計画的な返済を前提とする安定的な融資手段であるため、他の融資よりも金利が低めに設定される傾向にあります。自社の状況や資金ニーズに合っているかを確認し、利用条件を事前にチェックしておきましょう。

当座貸越

当座貸越は、あらかじめ設定した融資枠の範囲内で、必要なときに必要な分だけ資金を借り入れることができる方法です。資金の出入りが不安定な事業においても柔軟に対応でき、短期資金の備えとして活用されています。

当座貸越は、主に売掛金の入金サイクルが遅れる場合や突発的な仕入れ、賞与の支払いなど、一時的な資金需要に適しています。必要なときに必要な分だけ借入と返済が可能で、資金繰りの変動に応じて柔軟に対応できる点が特徴です。

当座貸越では、実際に借り入れた金額と期間の分だけ利息が発生するため、無駄なコストを抑えられる可能性があります。一方で、証書貸付に比べて金利が高く設定される傾向にあるため、使い方によっては総支払額が高くなる恐れもあります。  

なお、当座貸越の利用には従来、当座預金口座の開設が前提とされてきましたが、現在では普通預金口座に対応した融資商品や事業者向けローンカードによる利用形式も広がっています。自社の資金管理の方針に適しているかどうかを確認し、事前に利用条件を把握しておきましょう。

電子記録債権割引(でんさい割引)

電子記録債権割引は、取引先から受け取った「でんさい」と呼ばれる電子記録債権を銀行に買取ってもらい、支払期日前に資金化する方法です。売掛金を早期に現金化できるため、資金繰りの安定を図る方法として利用されています。

電子記録債権は、主に商品やサービスの納品後、売掛金の入金を待たずに資金を確保したい場合に適しています。債権の内容はすべて電子データとして記録されており、譲渡の手続きもインターネット上で完了できるため、紙の手形と比べて事務作業の負担が軽減される点が特徴です。

銀行にでんさいを買い取ってもらう際には、支払期日までの利息相当分が差し引かれますが、印紙税は不要で紛失や盗難のリスクもありません。取引の確実性と利便性を両立できる手段として、でんさいの利用が注目されています。

なお、2026年度末には全国の手形交換所が廃止される予定であり、企業間の決済手段として、でんさいの活用が今後さらに進むと見込まれます。自社の資金調達手段のひとつとして、でんさいの導入を視野に入れておくとよいでしょう。

制度の仕組みによって分類される融資の種類

銀行融資は、事業者が銀行から資金を借り入れる際の「制度の仕組み」によって複数の種類に分類することができます。選ぶ制度によって審査の厳しさや金利の優遇措置が異なるため、自社の状況に合った制度を選ぶことが大切です。

制度の仕組みによって分類される融資の種類は、融資の契約形態としては「証書貸付」に値するものです。制度の違いによって内容は異なりますが、いずれも共通して証書貸付の形式で契約が行われる点を押さえておくと、融資の種類を整理しやすくなります。

【制度の仕組みで分類した融資の種類】

融資の種類 内容
信用保証付き融資 ・信用保証協会が債務の保証を引き受ける仕組み
・銀行のリスクが軽減されるため、審査に通りやすくなる傾向
プロパー融資 ・銀行が自らの責任で融資を行う方式で高額の借入にも対応
・信用力が重視され、保証人や担保が求められる傾向
制度融資 ・銀行、自治体、信用保証協会が連携した融資制度
・金利や保証料に優遇措置があるが、審査期間が長い傾向
ビジネスローン ・銀行と比べて審査や手続きが簡易で、最短即日の融資も可能
・保証人や担保が不要で利用可能な分、金利が高めの傾向

どの制度を利用すれば自社にとって有利な条件で融資を受けられるのかを整理したうえで、資金の使い道や返済の見通しに応じた制度を検討しましょう。融資を申し込む際は、各制度における申込条件や手続きの流れをあらかじめ確認し、準備を整えておくことが必要です。

信用保証付き融資

信用保証付き融資は、信用保証協会が借り手の返済を保証することにより、銀行の貸し倒れリスクを軽減する制度です。借り手が万一返済不能となった場合には、保証協会が銀行に対して代位弁済を行います。

主に中小企業や個人事業主が対象で、事業実績が少なく信用力に不安がある場合でも融資を受けやすくなるのが特徴です。設備資金や運転資金など、幅広い用途に対応しています。

ただし、初めて利用する場合は銀行の審査に加えて保証協会による別途の審査が必要となるため、融資の実行までには1ヶ月程度の時間がかかります。あわせて保証料の支払いも発生するめ、スケジュールや総コストを踏まえて検討することが大切です。

信用保証付き融資は、公的保証によって融資のハードルを下げられる選択肢です。利用にあたっては、利用条件や手続きの流れを事前に確認しておきましょう。

プロパー融資

プロパー融資は、信用保証協会のような第三者保証を利用せず、銀行が自らの審査と責任で実行する制度です。銀行が直接リスクを負うため、借り手の信用力や返済能力が重視されます。

プロパー融資は、主に財務状況が極めて健全で、事業の安定性が明確に認められる事業者が対象です。設備資金や運転資金など、多くの企業が必要とする資金に対応しており、銀行との交渉次第で柔軟な資金使途や融資額、条件が設定できる点が特徴です。

一方で、創業間もない事業者や赤字が続いている場合など、信用力に不安があると融資を受けるのは難しくなります。申請の際は事業計画や財務資料をもとに、銀行の信頼を得られるよう正確かつ不備のない準備が求められます。

プロパー融資は、保証料がかからず公的な制度の制限も少ない反面、審査は厳格です。自社の信用状況や返済能力を踏まえたうえで、プロパー融資を活用できるかどうかを判断しましょう。

制度融資

制度融資は、銀行と自治体、信用保証協会が連携して実施する公的な融資制度です。各自治体が定める制度に基づき、所定の手続きを経て申し込む仕組みとなっています。

制度融資は、主に創業時や新たな取り組みへの挑戦など、民間融資を受けにくい場面で活用されています。信用保証付きで低金利、長期返済の条件が整っている点が特徴です。

申請時には、商工会や商工会議所での事前相談や書類確認を求められる場合が多く、融資の実行までに1〜2か月程度かかることもあります。審査に関わる機関が多く融資実行までに時間を要するため、スケジュールに余裕を持って準備することが大切です。

制度融資は、自己資金や事業実績に不安がある事業者にとって、公的支援を活用した現実的な資金調達手段です。融資限度額や利用条件は自治体によって異なるため、各自治体の制度内容や申請方法を事前に確認しておきましょう。

ビジネスローン

ビジネスローンは、金融機関やノンバンクが事業者向けに提供する無担保無保証人の融資商品です。銀行融資と比べて提出書類が少なく審査も簡易であり、急ぎの資金需要にも適した資金調達方法のひとつです。

ビジネスローンの審査期間は、主に仕入れ費用や一時的な運転資金などの短期的かつ少額の資金需要に活用されており、申し込みから数日以内、早ければ即日での融資も可能です。資金繰りの一時的な補完手段として、柔軟に利用される傾向にあります。

一方で、信用保証がつかないため、金利は年3〜18%前後と高めに設定されており、借入限度額も数百万円程度にとどまります。こうした特徴から、長期的な資金計画や大規模な投資には適していません。

ビジネスローンは、スピードを重視した資金調達手段として有効です。申し込みの際は、返済スケジュールや金利負担を踏まえたうえで、慎重に検討しましょう。

種類を押さえたあとは融資の選び方を確認する

銀行融資の種類を押さえたあとは、自社に適した融資の選び方を確認しましょう。今回は最も多く利用されている融資形態である「証書貸付」における融資の選び方を紹介します。

【自社に適した融資の選び方】

  • 資金使途に応じた制度を選ぶ
  • 事業段階に応じた制度を選ぶ

自社に適した資金の選び方として「資金使途に合った融資を選ぶ」ことが挙げられます。設備投資や運転資金、創業資金などの使途に応じた融資制度を選ぶことで、必要な金額を必要な時期に調達できる可能性が高まります。

また、自社に適した資金の選び方として「事業段階に応じた制度を選ぶ」ことが挙げられます。自社の事業段階が創業初期の段階なのか拡大期なのかによって適した制度を選ぶことで、状況に適した条件で必要な融資額を調達しやすくなります。

自社の資金ニーズと事業の現状を整理し、状況に合った制度を検討することで、必要な資金を無理なく調達できます。これまでに整理してきた融資の種類を踏まえ、自社に合った制度を検討してみましょう。

資金使途に応じた融資制度を選ぶ

融資を選ぶ際は、資金使途に応じた制度を選びましょう。資金使途に合わない融資を選んでしまうと、審査に通りにくくなることや返済に無理が生じる可能性があるためです。

【資金の使い道に適した融資制度】

資金の用途 利用に適した制度 選ぶ際のポイント
運転資金 ・信用保証付き融資
・制度融資
・プロパー融資
・金利や返済期間など、毎月の返済負担を重視する
・信用保証付き融資や制度融資は創業初期でも利用しやすい
設備資金 ・信用保証付き融資
・制度融資
・プロパー融資
・長期返済に対応できる制度を選ぶ
・信用力がある場合は保証料のかからないプロパー融資も選択肢となる
つなぎ資金 ・ビジネスローン ・ノンバンクやネット銀行のスピード重視の融資を検討する
・手数料や金利などのコスト面を確認した上で計画的に利用する

運転資金の融資を受ける際は、信用保証付き融資や制度融資のほか、信用力や実績がある場合はプロパー融資も利用も適しています。事業の継続に必要な費用を安定して賄うには、返済期間や金利の条件に無理のない制度を選ぶことが大切です。

設備資金の融資を受ける際は、信用保証付き融資や制度融資、プロパー融資の利用が適しています。設備の耐用年数や収益見込みに見応じて返済期間を設定し、月々の返済額を抑えつつ、適切な返済額を借り入れることが大切です。

つなぎ資金として一時的に資金を借り入れる際は、ビジネスローンや当座貸付、電子記録債権割引など、迅速な資金調達に対応できる融資制度が適しています。迅速な借入が可能な制度は、手数料や金利が高めに設定されている傾向にあるため、費用対効果を見極めたうえで計画的に活用することが大切です。

資金の使い道と制度の特性を正しく把握することは、審査通過の可能性を高め、借入後の資金繰り改善にもつながります。適した融資の選び方に迷った場合は、融資を受ける予定の銀行担当者に早めに相談しましょう。

事業段階に応じた融資制度を選ぶ

融資を選ぶ際は、自社の事業段階に応じた制度を選びましょう。創業直後や事業拡大期など、それぞれのステージに適した融資制度を選ばなければ、審査に通りにくくなるだけでなく、必要な支援を十分に受けられない可能性があるためです。

【事業段階に適した融資制度】

資金の段階 利用に適した制度 選ぶ際のポイント
創業期 ・制度融資
・信用保証付き融資
・創業支援を目的とした優遇制度を利用する
・創業期はメガバンクの利用が難しいため、信用保証付き融資を利用するには地方銀行を選ぶ
成長期~成熟期 ・プロパー融資
・信用保証付き融資
・長期返済に対応できる制度を選ぶ
・信用力や実績がある場合は保証料のかからないプロパー融資の利用を検討する

創業期においては、制度融資や信用保証付き融資の利用が適しています。創業期の事業者は、信用や実績の不足が理由でメガバンクの利用が難しいため、公的融資の利用や地方銀行の信用保証付き融資を申し込むのが現実的です。

成長期から成熟期にかけては、プロパー融資や信用保証付き融資の利用が適しています。実績や信用力がある場合は、保証料のかからないプロパー融資を活用することで資金コストを抑えることができます。

事業段階と制度の特性を見極めて融資を選ぶことは、審査を有利に進めるうえでも、資金調達後の運用を安定させるうえでも重要です。どの制度を選ぶべきか迷う場合は、事業の状況を整理したうえで、金融機関の担当者に早めに相談してみましょう。

まとめ

銀行融資の種類は「融資の形態」と「制度の仕組み」の2つの視点で整理すると理解しやすくなります。融資の形態では「資金をどのような方法で貸し出すか」という点に着目して分類された「証書貸付」「当座貸越」「電子記録債権割引」などの種類があります。

このうち最も広く利用されているのが証書貸付であり、その中にはさらに「制度の仕組み」によって分類された「信用保証付き融資」「プロパー融資」「制度融資」「ビジネスローン」などの制度の種類があります。

自社に適した融資を選ぶ際は、融資を利用する目的である「資金使途」や自社の「事業段階」に応じた融資の種類を選択してください。選び方に迷った場合は、融資を申し込む予定の銀行に相談し、事前にアドバイスを受けておきましょう。

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