これから銀行融資を利用する事業者の中には、資金の返済方法や返済期間の仕組みがわからず、確認しておきたいという人もいるのではないでしょうか。銀行融資を検討する際は、無理のない返済計画を立て、どのように返済していくかを明確にしておくことが大切です。
当記事では、銀行融資の返済方法と返済期間を解説します。返済のシミュレーションや、返済が困難になった場合の対応策などもあわせて紹介しているので、銀行融資の返済方法の基本を押さえておきたい人は参考にしてみてください。
銀行融資の主な返済方法
銀行融資の返済方法として、元金と利子をあわせて算出された返済額を決められた返済期間で毎月返済していく「分割返済」が最も多く用いられます。分割返済には「元利均等返済」と「元金均等返済」の2種類があるため、それぞれの特徴を把握して自社に合う返済方法を検討しましょう。
【分割返済の種類】
返済方法 | 特徴 |
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元利均等返済 | 毎月の返済総額が一定となる方法。初期は利息の割合が大きい |
元金均等返済 | 毎月の返済総額のうち元金の金額が一定となる方法。利息は段階的に減っていく |
元利均等返済は、毎月の返済額が一定になる返済方法です。元金と利息を合計した金額が均等になるように設定されるため、初期の返済では利息の割合が多く、元金の減り方は緩やかです。
元金均等返済は、毎月返済する元金の額が一定で、これに利息を加えた金額を支払っていく方法です。利息は借入残高に対してかかるため、返済が進むほど利息が減り、毎月の返済額も徐々に少なくなっていきます。
元利均等返済と元金均等返済のどちらを選ぶかによって、毎月の資金繰りや返済計画が変わってきます。必要に応じて専門家のサポートを活用しながら、自社の状況にあわせて適切な返済方法を検討しましょう。
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元利均等返済
元利均等返済は、元金と利息を合算した毎月の返済額が一定になる返済方法であり、返済初期は利息の割合が高く、元金の減りは緩やかとなる仕組みです。月々の返済額が変わらないため、資金繰りの予測がしやすく、安定した返済計画を立てることができます。
【元利均等返済の特徴】
項目 | 内容 |
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毎月の返済額 | 一定額(元金+利息) |
元金と利息の割合 | 利息が多く元金が少ない状態から始まり、徐々に元金の割合が増える |
総返済額 | 元金均等返済より多くなる傾向 |
メリット | 月々の返済額が一定で予測しやすく、資金繰りの安定につながる |
デメリット | 初期は利息が多く、結果として返済総額が増えやすい |
元利均等返済は、毎月の返済額が一定であるため、資金繰りを予測しやすく、事業運営の見通しを立てやすいというメリットがあります。売上の変動が少ない業種や、支出を毎月一定に保ちたい事業者に適しています。
一方で、元利均等返済は返済初期に利息の割合が高く、元金の減りが緩やかな仕組みのため、総返済額が元金均等返済より多くなるというデメリットがあります。特に、長期間の借入を検討している場合は、返済総額の差も大きくなる点に留意しておく必要があります。
毎月の返済額を安定させたい場合には、元利均等返済を選ぶことで資金繰りの見通しを立てやすくなります。自社の資金計画をふまえて、無理のない返済方法を検討しましょう。
元金均等返済
元金均等返済は、毎月一定額の元金に利息を加えて返済する方法であり、返済が進むにつれて毎月の返済額が減少していく仕組みです。返済初期の負担は大きくなりますが、元金の減りが早いため、返済総額を抑えることができます。
【元金均等返済の特徴】
項目 | 内容 |
---|---|
毎月の返済額 | 初期は多く、徐々に減少(元金一定+利息) |
元金と利息の割合 | 元金は一定で、利息は支払を重ねるごとに減っていく |
総返済額 | 元利均等返済より少なくなる傾向 |
メリット | 元金が早く減るため、総返済額を抑えやすい |
デメリット | 返済初期の負担が重く、資金繰りに影響する可能性がある |
元金均等返済は元金の減りが早いため、利息を抑えて返済総額を少なくできるというメリットがあります。短期間での返済を予定している場合や、初期の返済負担に対応できる資金計画がある場合には有効な方法です。
一方で、元金均等返済は初期の返済額が高額になるため、資金繰りが厳しい事業者にとっては負担が大きいというデメリットがあります。特に借入初期のキャッシュフローが不安定な場合は、慎重な判断が必要です。
返済初期の負担に耐えられる場合には、元金均等返済を選ぶことで総返済額を抑えられます。自社の資金計画と照らし合わせて、適切な返済方法を選びましょう。
借入の条件に応じて選択可能な返済の仕組み
銀行融資では、毎月一定額を分割で返済する方法のほか、資金の使い道や事業の状況に応じた返済方法や返済条件を選ぶこともできます。返済開始のタイミングや元金の返済回数を柔軟に設定できる仕組みにより、事業者は資金繰りに無理のない計画を立てやすくなります。
【事業者の状況に応じて検討できる返済の選択肢】
返済方法 | 特徴 |
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期日一括返済 | 満期までは毎月利息のみを支払い、満期になったら元金をまとめて返済する方法。運転資金やつなぎ資金など短期の資金調達に適している |
据置期間付返済 | 一定期間は利息のみを返済し、元金の返済は後から開始する方法。開業資金や設備投資など、初期費用の負担が大きい場合に有効 |
たとえば、仕入資金の支出が先行して売掛金の入金までに時間がかかる取引では、期日一括返済を選ぶことで、売上回収までの資金繰りをつなぐことができます。元金の返済を満期まで据え置けるため、当面の経営に余裕を持たせることが可能です。
また、新規事業の立ち上げや設備導入などで初期投資が大きくなる場合には、据置期間付の返済が有効です。一定期間は利息のみの支払いで済むため、その間に売上基盤を整えれば、元金返済が始まってからの負担に備えることができます。
短期資金の確保が必要な場面や初期投資の負担が重い場面では、資金繰りの調整が重要になります。融資を受ける際は、借入の目的と資金の流れを明確にしたうえで、自社の状況に合わせて返済条件を設けることを検討しましょう。
短期借入の場合は期日一括返済の選択が可能
期日一括返済は、満期日に元金をまとめて返済する方法です。期日一括返済は毎月の元金返済が不要なため、一時的に資金を確保しておきたい場面で有効な返済方法です。
【期日一括返済の特徴】
項目 | 内容 |
---|---|
返済方式 | 満期日に元金を一括返済。利息は契約時または期間中に支払う |
活用される場面 | 売掛金回収前のつなぎ資金、短期の運転資金 |
返済期間 | 数週間〜1年程度 |
返済の留意点 | 満期に向けて資金を確保しておく必要がある |
利用される融資形態 | 手形貸付、当座貸越 |
売掛金の入金前に仕入資金を確保したい場合のような、あらかじめ返済原資の目途が立っているときには期日一括返済が適している可能性があります。売掛金の入金予定と融資返済のタイミングを調整することにより、資金繰りの悪化を防ぐことができます。
期日一括返済は、手形貸付や当座貸越といった短期資金向けの融資で用いられる傾向にあり、融資期間は概ね数か月〜1年程度に設定されています。事業の収支サイクルが明確で、短期で返済可能な見通しがある場合に適した方法です。
返済までに確実な入金が見込める状況であれば、期日一括返済を活用することで当面の手元資金を確保できます。短期資金の融資において、期日一括返済を検討している場合は、返済時期の見通しと資金確保の計画を明確にしたうえで判断しましょう。
収益化に時間がかかる場合は据置期間を設けられる
据置期間付き返済は、一定期間は利息のみを支払い、元金の返済はその後に開始する方法です。大規模な設備投資や事業の立ち上げ直後など、収益がすぐに見込めない段階での銀行融資において、返済負担を抑える目的で利用されます。
【据置期間付返済の特徴】
項目 | 内容 |
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返済方式 | 据置期間中は利息のみ返済し、据置期間終了後に元金返済を開始 |
活用される場面 | 設備投資、開業直後の資金調達 |
据置期間 | 6か月〜1年程度(案件により異なる) |
返済計画の留意点 | 据置終了後に備えた資金計画が必要 |
利用される融資形態 | 証書貸付 |
事業の収益が安定するまでの期間に返済を始めると、資金繰りを圧迫するおそれがあります。据置期間付返済は、導入後すぐに売上につながりにくい設備投資や、立ち上げ直後で収益基盤が整っていない事業に対する融資を受ける場合に適した方法です。
据置期間付返済は、証書貸付などの中長期融資で活用される仕組みであり、据置期間は6か月〜1年程度に設定される傾向にあります。元金の返済が始まると月々の返済額が増加するため、据置期間中に安定した収益基盤を整えておくことが大切です。
元金の返済開始時に資金が不足しないよう、売上見込みや費用計画をもとに資金繰りのシミュレーションをしておきましょう。支払い額の増加を見越して準備しておけば、据置期間終了後も無理のない返済を継続しやすくなり、事業運営の安定にもつながります。
返済期間の目安は資金使途によって異なる
銀行融資における返済期間の目安は、借入金の使い道である「資金使途」によって異なります。運転資金のような短期支出と設備資金のような長期投資とでは資金の性質が異なるため、適切な返済期間にも差が生じます。
【資金使途ごとの返済期間の目安】
資金の使い道 | 返済期間の目安 | 内容 |
---|---|---|
運転資金 | 1~3年程度 | 短期的な支出に充てられる資金であるため、回収サイクルに応じて短期の返済期間が設定される |
設備資金 | 5~10年程度 | 投資した資金の回収に時間がかかるため、長期の返済期間が設定される |
運転資金は、仕入れや人件費といった短期的な支出に充てられる資金であり、通常1〜3年程度の返済期間が設定される傾向にあります。資金回収のサイクルが早く、短期間の返済でも事業に支障をきたしにくいとされているため、返済期間は短めに設定されています。
一方、設備資金は、機器の購入や内外装工事、車両の導入などに用いられる資金であり、5〜10年程度の返済期間が想定される傾向にあります。多額の初期投資が必要となるほか、収益に結び付くまでに時間がかかるとされているため、返済期間も長めに設定されています。
銀行融資の返済期間は、利用する融資制度や各銀行の条件によって、あらかじめ上限や範囲が設けられていることがあります。希望する返済期間がある場合は、資金の使い道や返済能力の根拠を示す資料を準備し、融資担当者と相談しましょう。
運転資金における返済期間の目安
運転資金は、比較的短期間で回収が見込まれる資金であるため、返済期間も1〜3年程度に設定されます。仕入れや人件費を補う性質上、5年を超える返済期間は認められない傾向にあります。
返済期間の妥当性は、売掛金の入金時期や在庫の滞留期間といった、資金の流れに関する情報をもとに判断されます。たとえば、売上の入金が請求から1か月以内で安定して行われている場合、2〜3年の返済期間でも資金繰りに支障がないと見なされることがあります。
一方で、取引先との契約によって、入金までに2〜3か月を要する場合もあります。このような場合は、資金の回収が後ろ倒しになることを踏まえ、3〜5年程度の返済期間が認められることもあります。
希望する返済期間がある場合は、資金の使い道や回収見込みを示す資料を準備したうえで、融資担当者と相談しましょう。その際、あらかじめ自社の資金の流れを整理しておけば、より説得力のある返済計画を提案でき、融資担当者からの理解を得やすくなります。
設備資金における返済期間の目安
設備資金は、導入した機器や内外装工事などの投資回収に時間を要するため、返済期間は5〜10年程度で設定されます。事業の拡大や生産効率の向上を目的とした支出であることから、資金回収の見通しに応じて中長期の返済スケジュールが組まれる傾向にあります。
返済期間の妥当性は、導入設備の耐用年数や収益計画などをもとに判断されます。たとえば、耐用年数が10年とされている機械を導入する場合は、その機関に見合った返済期間が適用される可能性があります。
一方で、提出された収益計画に説得力が弱い場合や、銀行側から長期的な採算性が見込みにくいと判断された場合、返済期間が3〜5年程度に設定されることもあります。投資の採算性が十分に説明できないと、長期返済が認められにくくなります。
希望する返済期間がある場合は、設備の見積書や収益予測、資金繰り表などの資料を用意したうえで、融資担当者と相談しましょう。導入の目的や回収見込みを整理しておくことで、返済期間の交渉が進めやすくなります。
自社の状況に応じて無理のない返済計画を立てる
銀行融資を利用する際は、資金繰りや売上の見通しをふまえて「返済期間」と「返済額」を無理のない範囲で設定することが大切です。返済に追われて資金繰りが悪化しないよう、自社の実情に合った返済計画をあらかじめ検討しておく必要があります。
返済条件には銀行や制度ごとの基準があるため、希望条件がある場合は融資担当者との相談が欠かせません。あらかじめ収支計画を整理しておけば、基準の範囲内で柔軟に調整してもらえる可能性があります。
特に金利や返済期間の設定によって、総返済額や毎月の支払額には大きな差が生じます。資金繰り表や事業計画書をもとに返済シミュレーションを行い、無理のない条件で融資の申し込みを進められるよう準備しておきましょう。
融資に申し込む前に返済シミュレーションを行う
銀行融資の申し込み前に返済シミュレーションを行っておくと、自社の資金繰りに合った返済計画を立てやすくなります。あらかじめ返済額の目安を試算しておくことで、条件の選定にも具体的な根拠を持って臨むことができます。
たとえば、1,000万円を年利2.0%、返済期間10年、据え置き期間1年で借り入れた場合は、以下のような返済スケジュールが想定されます。
【据置期間付分割返済のシミュレーション】
据置期間中(利息のみ返済) | ||||||||||||||
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回数 | 月々の返済 | 元金返済額 | 利息支払額 | 返済後残高 | ||||||||||
1 | 16,667円 | 0円 | 16,667円 | 10,000,000円 | ||||||||||
・・・ | 16,667円 | 0円 | 16,667円 | 10,000,000円 | ||||||||||
12 | 16,667円 | 0円 | 16,667円 | 10,000,000円 | ||||||||||
元利均等返済期間(元金+利息) | ||||||||||||||
回数 | 月々の返済額 | 元金返済額 | 利息支払額 | 返済後残高 | ||||||||||
13 | 92,013円 | 75,346円 | 16,667円 | 9,924,654円 | ||||||||||
14 | 92,013円 | 75,472円 | 16,541円 | 9,849,182円 | ||||||||||
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ||||||||||
60 | 92,013円 | 85,257円 | 6,756円 | 3,968,349円 | ||||||||||
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ||||||||||
119 | 92,013円 | 91,861円 | 152円 | 91,862円 | ||||||||||
120 | 92,015円 | 91,862円 | 153円 | 0円 | ||||||||||
合計 | 約11,137,452円 | 10,000,000円 | 約1,137,452円 | ー |
※返済シミュレーションツールをもとに作成
上記の場合、利息のみを支払う据置期間を経て、元利均等返済を選択したときの月々の返済額は92,013円となります。返済が進むと利息額が減り、その分が元金返済に充てられていくため、元金返済額は徐々に増えていく仕組みです。
返済シミュレーションを行うことで、将来的な返済負担のイメージを具体的に把握できます。無理のない返済を継続するために、金額や期間の条件を慎重に試算しておきましょう。
返済が困難になった場合の対応策
事業活動を続けていると、経営環境の悪化や売上減少などにより、返済ができない状況に陥ることも起こり得ます。その場合は、状況を放置せずにできるだけ早く銀行へ相談することが大切です。
【返済が困難になった場合の対応策】
対応策 | 内容 |
---|---|
リスケジュール | 返済期間の延長や返済額の見直しにより、月々の返済負担を軽減する |
返済猶予 | 一時的な資金繰り悪化に対応するため、一定期間の返済を猶予する |
追加融資 | 再建の見込みがある場合に限り、追加の資金を借り入れて事業の立て直しを図る |
「リスケジュール」は、返済条件を変更してもらう方法であり、毎月の返済負担を軽くして資金繰りの安定を図るための対応策です。返済期間の延長や元金の据置などが認められれば、事業の立て直しに集中しやすくなります。
「返済猶予」は、一定期間元金や利息の返済を止めてもらう方法であり、一時的な資金繰りの悪化に備えるための対応策です。売上の回復が見込まれる場合であれば、銀行が返済の猶予に柔軟に応じてくれる可能性があります。
「追加融資」は、返済が滞っている状況では原則として利用できない方法ですが、例外的な条件を満たす場合に限られる対応策です。たとえば、再建計画が具体的かつ現実的で、外部支援を受けながら立て直しを進めている場合には、認められる可能性があります。
いずれの対策を講じる場合も、銀行へ相談する前に自治体や商工会、認定支援機関などの外部機関による支援を活用することが有効です。専門家のサポートを受けながら資金計画を見直し、銀行との交渉を効率的に進めましょう。
まとめ
銀行融資の返済方法には「分割返済」が最も多く用いられます。分割返済は元金と利子をあわせて算出された返済額を毎月返済していく方法であり、毎月の返済額が一定となる「元利均等返済」と、毎月返済する元金の額が一定となる「元金均等返済」があります。
また、満期に元金をまとめて返済する「期日一括返済」や一定期間の元金を猶予できる「据置期間付返済」などの返済方法があります。これらは返済開始のタイミングや元金返済の回数を柔軟に設定できる仕組みであり、無理のない返済計画を立てやすくなります。
銀行融資の返済期間は、資金の使い道によって異なります。短期的な支出に充てられる運転資金の返済期間は1〜3年程度、投資した資金の回収に時間がかかる設備資金の返済期間は5〜10年程度が目安とされています。
融資に申し込む前に返済シミュレーションを行っておくと、自社の資金繰りに合った返済計画を立てやすくなります。無理のない返済条件で月々の返済を続けていても返済が困難になる場面に直面した場合は、早めに銀行に相談し、リスケジュールや返済猶予などの対応策を検討しましょう。