保証料とは、万が一融資の返済ができなくなった場合に備えて信用保証制度を利用する際に、保証会社等へ支払う手数料のことです。銀行の事業性融資においては、主に中小企業の資金調達をサポートする公的機関である「信用保証協会」に支払う信用保証料を指しています。
保証料は、銀行への対価として支払う「利息」とは別に発生する費用です。資金調達コストにも影響を与えるため、信用保証協会による保証付き融資を利用する際は、利息だけではなく保証料も考慮した上で返済計画を立てなければなりません。
当記事では、銀行融資における保証料の計算方法を解説します。銀行融資を受ける際に、信用保証制度の利用を検討している人は参考にしてみてください。
まずは保証料の計算に必要となる項目を押さえる
保証料を計算するためには、まず保証料の計算に必要となる項目を押さえましょう。銀行融資における保証料は、借入の内容や返済の方法など、さまざまな要因に基づき決定されます。
【保証料の計算に必要となる項目】
項目 | 詳細 |
---|---|
借入金額 | 銀行融資において借り入れた資金の総額 |
保証料率 | 申込者の状況や融資の制度に応じて定められる料率 |
保証期間 | 信用保証が適用される期間(=借入期間) |
分割係数 | 分割返済を行う場合に元金の減少を考慮して保証料を割引くための掛目 |
据置期間 | 元金の返済を据え置き利息のみを支払う期間 |
保証料の計算に必要となる項目は「借入金額」「保証料率」「保証期間」「分割係数」「据置期間」です。これらの項目を、融資の利用状況に応じた計算式に当てはめることによって、保証料を算出することができます。
なお、各項目において用いる数値は、事業者の状況や融資の条件によって変動します。保証料を正しく算出できるよう、それぞれの内容を詳しく確認していきましょう。
借入金額
借入金額とは、銀行融資において借り入れた資金の総額のことです。保証料の計算においては、この借入金額を基準にさまざまな要素を掛け合わせていきます。
融資の申し込みを行う際、事業計画や資金使途に基づいて借入金額が決定されます。保証料はこの借入金額に対してかかるものであり、保証料を算出する上での重要な基準となります。
融資の借入金額は、信用保証協会による保証の元本にあたります。保証料の決定にはさまざまな要因が影響しますが、原則として借入金額が大きくなればなるほど支払う保証料も高くなることを念頭に置いておきましょう。
保証料率
保証料率とは、申込者の状況や融資の制度に応じて定められる料率のことです。保証料率には9つの区分があり、一般社団法人CRD協会による中小企業信用リスク情報データベース(CRD)に基づき、適用される保証料率の区分が決定されます。
【基本となる保証料率の区分】
区分 | ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
責任共有保証料率 | 1.90 | 1.75 | 1.55 | 1.35 | 1.15 | 1.00 | 0.80 | 0.60 | 0.45 |
責任共有外保証料率 | 2.20 | 2.00 | 1.80 | 1.60 | 1.35 | 1.10 | 0.90 | 0.70 | 0.50 |
※引用:信用保証料率について|北海道信用保証協会
基本となる保証料率は、信用保証協会と銀行が責任を分担する「責任共有制度」の適用有無によって異なります。責任共有制度が適用される場合は、銀行が約20%の貸付金を負担するリスクを負うことから信用保証協会のリスクが軽減されるため、責任共有保証料率として通常よりも低い金利が適用されます。
基本となる保証料率のほかにも、融資制度によって異なる保証料率の区分が設けられている場合があり、保証料率の相場としてはおおむね0.20%~2.20%となる傾向にあります。信用保証協会ごとに提供している融資制度が異なるほか、条件に応じた保証料の割引などもあるため、自身の事業地域を管轄する信用保証協会が定める保証料率を確認してみてください。
なお、保証料率区分の判断には、申込者が提出する賃借対照表および損益計算書が用いられます。創業者や個人事業主など、貸借対照表および損益計算書を作成していない場合は、財務状況にかかわらず原則として料率区分⑤の保証料率が適用されます。
保証期間
保証期間とは、信用保証が適用される期間のことです。原則として、信用保証は銀行融資の完済まで継続するため、保証期間には銀行融資の返済期間を用います。
保証期間が長くなるほど、保証協会が負うリスクは高くなります。そのため、保証協会が担うリスクに応じた保証料となるよう、保証期間が長くなるほど保証料も高く設定されます。
保証料の負担を抑えるためには、無理のない範囲で融資の返済期間を短く設定することが有効です。自身の返済能力に合わせて、適切な返済期間を設定しましょう。
分割係数
分割係数とは、元金を分割返済する場合に、元金の減少を考慮して保証料を割引くための掛目のことです。分割返済では返済を重ねるごとに保証の対象となる元金が減少するため、保証会社におけるリスクの減少分を保証料に反映させるために、分割係数が用いられます。
【返済回数ごとの分割係数】
返済回数 | 均等分割係数 | 不均等分割係数 |
---|---|---|
6回以下 | 0.70 | 0.77 |
7回以上12回以下 | 0.65 | 0.72 |
13回以上24回以下 | 0.60 | 0.66 |
25回以上 | 0.55 | 0.61 |
分割係数は、返済回数によって4つの区分に分けられています。保証期間が同じであれば、分割回数が多いほど元金の減少が早まるため、分割係数も低く設定されます。
また、分割係数は返済方法によって2つの区分に分けられています。分割返済において各回の返済額および返済間隔がほぼ同じとなる「均等分割返済」のほうが、各回の返済額および返済間隔が変動する「不均等分割返済」よりも分割係数が低く設定されます。
返済回数や返済方法の選択によって、保証料率を抑えられる可能性があります。借入金額によっては分割回数を増やすことによって保証料の総額に大幅に削減できる場合もあるため、融資を分割返済にする場合は、適用される分割係数も考慮した上で返済条件の希望を融資担当者へ伝えてみましょう。
据置期間
据置期間とは、元金の返済を据え置き、利息のみを支払う期間のことです。銀行融資においては、事業の立ち上げ期や設備投資後など、キャッシュフローが安定しない時期の返済負担を軽減する目的で据置期間が設定される場合があります。
保証料の計算においては、据置期間の有無および長さが影響します。据置期間中は元本が減少しないため、据え置き期間が長いほど元本の減少は遅くなり、保証料は高額になります。
据置期間を設けることによって初期の返済負担は軽減されますが、保証料の負担は重くなる可能性があります。信用保証制度を利用して銀行融資を受ける際は、据え置き期間の設定による保証料の違いも考慮し、据置期間の必要性と設定期間を慎重に検討しましょう。
つぎは返済方法に応じた保証料の計算方法を確認する
保証料の計算に必要となる項目を抑えた人は、返済方法に応じた保証料の計算方法を確認していきましょう。信用保証料は借入残高に対して計算されるものであり、元金の返済方法によって借入残高の減り方が異なることから、保証料の計算方法も異なります。
【返済方法ごとの保証料の計算方法】
返済方法 | 計算式 |
---|---|
満期一括返済 | 借入金額 × 保証料率 × 保証期間(月数) ÷ 12 |
分割返済(据置期間なし) | 借入金額 × 保証料率 × 保証期間(月数) ÷ 12 × 分割係数 |
分割返済(据置期間あり) | (A)据置期間中:借入金額 × 保証料率 × 据置期間(月数) ÷ 12 (B)据置期間後:借入金額 × 保証料率 × (保証期間(月数) - 据置期間(月数)) ÷ 12 × 分割係数 保証料:(A)+(B) |
満期一括返済の場合、借入金額に保証料率と保証期間を乗じて計算されます。保証料率は年率であるため、12で除することにより月ごとの保証料が算出され、保証期間に応じた保証料率を適切に算出することができます。
分割返済の場合、満期一括返済の計算式に分割係数を乗じて保証料が算出されます。分割返済では返済が進むにつれて借入残高が減少するため、返済の進捗に応じて信用保証料を割り引くための掛目である分割係数が設定されます。
分割返済において据置期間を設定する場合、据置期間中と据置期間後のそれぞれの保証料を合計して算出します。据置期間中は元金が減らないため満期一括返済と同じ計算式が用いられますが、据置期間終了後は元金が減るため分割返済と同じ計算式が用いられます。
返済方法に合わせた計算式を用いることにより、保証料を正しく計算することができます。それぞれの状況における保証料の違いを把握し、返済方法を検討する際の参考にしてみてください。
満期一括返済における保証料の計算例
銀行からの借入金を、満期に一括で返済する場合の信用保証料の計算方法を確認してみましょう。満期一括返済では保証期間中に元金が減ることがないため、借入金全体に対して保証料がかかります。
たとえば、借入金額1,000万円、信用保証料率1.15%、保証期間2年の場合、保証料は以下のように計算します。
【満期一括返済の場合の計算例】
項目 | 内容 |
---|---|
計算式 | 借入金額×保証料率×保証期間÷12 |
計算例 | 10,000,000(円)×1.15(%)×24(か月)÷12=230,000(円) |
満期一括返済の場合、借入金額と保証料率、保証期間をそれぞれ掛け合わせて求めることができます。保証料率は年率で示されているため、保証期間が1年未満や1年を超える場合には、保証料率を12で除して1か月あたりの値に変換することにより、適切な保証料率を算出できます。
満期一括返済においては保証期間中に元金の減少がないため、分割係数による割引が適用されません。返済方法以外の条件が同じであれば、満期一括返済の方が分割返済のよりも保証料が高額になる点に留意しておきましょう。
分割返済(据置期間なし)における保証料の計算例
銀行からの借入金を、据置期間無しで分割返済する場合の信用保証料の計算方法を確認してみましょう。分割返済では返済を重ねるにつれて元金が減少していくため、分割係数を用いた保証料の割引が適用されます。
たとえば、借入金額1,000万円、信用保証料率1.15%、保証期間2年の均等分割返済の場合、保証料は以下のように計算します。
【分割返済(据置期間なし)の場合の計算例】
項目 | 内容 |
---|---|
計算式 | 借入金額×保証料率×保証期間÷12×分割係数 |
計算例 | 10,000,000(円)×1.15(%)×24(か月)÷12×0.60=138,000(円) |
据置期間なしで2年間の分割払いを行う場合、元金の返済回数が24回となるため、分割係数は0.60が適用されます。満期一括返済の場合の保証料230,000円に、分割係数0.60を乗じて算出される138,000円が、据置期間なしの分割返済における保証料の金額となります。
満期一括返済と分割返済とでは、保証料に約10万円の差が生じる計算となりました。実際の借入金額と信用保証料率、保証期間に応じて差分は変動しますが、保証期間分割係数が適用されることにより、満期一括返済よりも分割返済の方が保証料を抑えられます。
分割返済(据置期間あり)における保証料の計算例
銀行からの借入金を、据置期間ありで分割返済する場合の信用保証料の計算方法を確認してみましょう。元金の支払いを据え置き利息のみを支払う「据置期間」を設定する場合、据置期間中と据置期間後では元金の減り方が異なるため、それぞれの期間に分けて保証料を算出した上でその合計額を求めます。
たとえば、借入金額1,000万円、信用保証料率1.15%、据置期間12か月、保証期間2年の均等分割返済の場合、保証料は以下のように計算します。
【分割返済(据置期間なし)の場合の計算例】
項目 | 内容 |
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計算式 | (A)据置期間中:借入金額×保証料率×据置期間(月数)÷12 (B)据置期間後:借入金額×保証料率×(保証期間(月数)-据置期間(月数))÷12×分割係数 保証料:(A)+(B) |
計算例 | (A)10,000,000(円)×1.15(%)×12(か月)÷12×=115,000(円) (B)10,000,000(円)×1.15(%)×12(か月)÷12×0.60=74,750(円) 保証料:115,000+74,750=189,750(円) |
据置期間を12か月間設ける場合、元金の返済回数が12回となるため、分割係数は0.65が適用されます。据置期間ありの分割返済においては、据置期間中の12か月分の保証料115,000円と、据置期間後の12か月分の保証料74,750円を合計した189,750円が保証料の金額となります。
据置期間中は元金が減少しないため、保証料の計算において分割係数が適用されません。据置期間中の12か月間は、借入金額全体に保証料率がかかることになります。
また、分割係数は元金の返済回数に応じて適用される値が決定します。同じ期間での借入であれば、据置期間ありの方が元金の返済回数が少なくなり高い分割係数が適用される場合があるため、保証料率の負担も大きくなる可能性があります。
据置期間ありの分割返済の場合は、満期一括返済や据置期間なしの分割返済と比較して保証料の計算が複雑になります。必要に応じて、各信用保証協会のホームページにて公開されている「信用保証料簡易シミュレーション」を活用しながら、保証料の目安を確認してみてください。
銀行融資の保証料に関するQ&A
銀行融資の保証料に関して、これから銀行融資を受ける人が気になりそうな点をQ&A方式にまとめました。保証料の計算方法を押さえた人は、あわせて参考にしてみてください。
【銀行融資の保証料に関するQ&A】
質問 | 回答 |
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保証料を支払うメリットは何ですか? | 保証料を支払い信用保証を利用することにより、万が一返済が不可となった場合に保証機関による代位弁済が行われます。銀行にとってのリスク低減により、融資を受けられる可能性が高まります |
保証料はどのように支払いますか? | 原則として、融資の実行時に銀行を通じて一括で支払います。ただし、保証期間が2年を超える場合には保証料の分割払いが認められる場合があります |
保証料を支払えば債務がなくなるのですか? | 保証料を支払っても保証会社へ債務が移行する訳ではありません。代位弁済が行われた場合、債務者はその金額を保証会社へ支払う必要があります |
支払った保証料の会計処理はどうなりますか? | 保証料の勘定科目は、保証期間によって異なります。原則、当期中に保証期間が終了する場合は「支払保証料」、翌期分の保証にあたる分は「前払費用」、翌々期以降の保証にあたる分は「長期前払費用」として計上します |
支払った保証料は返ってきますか | 原則として、代位弁済の有無にかかわらず保証料は返ってきません。ただし、繰り上げ返済によって元金を早期に完済した場合は、利用しなかった期間分の保証料が返ってくる場合があります |
信用保証制度を利用することにより融資を受けやすくなる一方で、保証料の負担が資金繰りを圧迫する可能性もあります。信用保証制度を利用して銀行融資を受けたいと考えている人は、保証料も踏まえた上で無理のない返済計画を立てましょう。
なお、当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)では、融資サポートを実施しています。8,000件以上の融資サポートの実績から回答するため、融資の返済や保証料の支払いに不安がある人は株式会社SoLabo(ソラボ)へ相談することを検討してみてください。
まとめ
融資の保証料とは、万が一返済ができなくなった場合に備えて保証会社等に支払う費用のことであり、銀行の事業性融資においては「信用保証協会」に支払う信用保証料を指します。保証料を支払って信用保証を利用することにより、銀行の貸し倒れリスクが低減され、融資の申込者は審査に通過できる可能性が高まります。
信用保証協会における保証料率の相場は、おおむね0.2%台〜2.20%です。適用される保証料率は申込者の状況や利用する融資制度によって異なるため、自身の状況における保証料率の目安を知りたい人は、自身の事業地域を管轄する信用保証協会へ問い合わせてみてください。
保証料を支払った場合の勘定科目は、保証期間に応じて「支払手数料」「前払費用」「長期前払費用」のいずれかを用います。会計処理を正しく行うためには、自身の保証期間に合わせて適切な勘定科目を用いる必要があります。
なお、代位弁済が行われることなく融資を完済しても保証料は返金されませんが、繰り上げ返済をすることにより保証料の一部が返ってくることがあります。資金調達コストの削減のためにも、資金繰りに余裕ができた場合は繰り上げ返済の実施を検討してみましょう。