近頃、資金調達の世界でプロジェクト融資、あるいはプロジェクトファイナンスという言葉が頻繁に使われています。
今回の記事では、プロジェクト融資の概要からメリット・デメリットを解説します。
プロジェクト融資の概要
プロジェクトとは英語でのProject(訳:大規模な計画)を指します。一体どんな種類の融資なのでしょうか?
①どんな融資?
一般に、融資をする金融機関は会社(個人)の信用度をみて、お金を貸せるか判断します。
信用度が高い人は「返済も滞りなくできるだろう」と金融機関は考え、融資をしてくれます。
これに対し、プロジェクト融資ではプロジェクト自体の収益率でお金を貸せるか判断する融資です。プロジェクトを実施する会社(例、電気作業会社)の信用度は見ずに、プロジェクトの運営会社(特別目的会社。SPIと呼びます)の信用度とプロジェクトの収益性の高さで融資をします。
図をご覧ください。
通常の融資では融資の審査対象は会社や個人です。そして、事業の運営をするのも同じく会社や個人です。
しかし、プロジェクト融資の場合は違います。
金融機関から融資を受けたSPIから資金調達をしたプロジェクト実施会社は、お金を返済する必要はありません。これを、ノン・リコースと呼びます。
収益が莫大な規模で関連する企業も多岐に渡るため、特別目的会社(SPI)が間に入り金融機関とのやりとりや進捗管理を実施しています。例えると、売れっ子タレントのマネージャーがテレビ局などの依頼主とタレントの間にたってスケジュール調整などをするイメージです。(ヘタな例えでスミマセン)
特別目的会社の存在はプロジェクト融資のキモで、資金調達を行うために特別目的会社を設立するという方法もあります。
②具体的にどんなプロジェクトが融資の対象なのか?
プロジェクト融資は、最低でも数十億以上の規模の巨大プロジェクトが対象です。
欧米で巨大な資金調達を必要とする石油・ガス資源等の開発のために考案された融資方法なので、巨額の利子が見込めます。
日本でも三井住友銀行やみずほ銀行を始めとした大手銀行が、積極的にプロジェクト融資に参入しています。
具体的なプロジェクトは、電力会社の電力売買、土地所有者の土地関連契約、不動産投資や太陽光発電など。セゾンファンデックスでは融資の申込み資格として「宅建業免許をお持ちの方」と規定し、不動産業者向けのプロジェクト融資を販売していますし、不動産開発事業で土地の取得資金だけでなく建築費用も出来高で融資をする業者もあるようです。
不動産業では建築費用の融資で銀行からの許可がおりず涙を飲んだ事業主の方もいるのでは?「一般の融資では審査が通らない場合も、このプロジェクト融資であれば審査がおりる」と言われているのは不動産投資の場合なのですね。
③融資額はいくら?
プロジェクト融資という言葉がネット上で流行っていますが、本来は国際的な規模の事業に対しての融資です。
特別目的会社はプロジェクト運営会社と金融機関に間に入り調整をするとお話しましたが、国際的な規模のプロジェクトでは国と電力会社、輸出企業、スポンサーなどを相手に調整をするのです。
例えば、中国の珠海石炭火力発電プロジェクト、カナダの再生可能エネルギー発電プロジェクトなどが本融資の対象です。
いわば、国家プロジェクトですよね。
そのため、融資額も億~兆の単位の金額となり1つの金融機関だけでなく複数の金融機関が組み合わさりシンジケート化して融資をします。
④どんな企業がプロジェクト融資に向いている?
海外を拠点に開発する燃料供給会社や現地保険会社、火力・電力の設備機器メーカーなどがプロジェクト融資には向いています。
また、今後再生エネルギーの供給も増えると見込まれるため、再生エネルギー発電事業に関連する企業もこのプロジェクト融資には向いています。
プロジェクト融資のメリット
多額の借金を背負う必要がないことが、プロジェクト実施会社にとってのメリットです。
返済は特別目的会社が行ってくれるので、プロジェクト自体に集中することができます。
また、特別目的会社としてもプロジェクト実施は別の会社が行うため、プロジェクトの進捗管理や調整役に徹することができます。
シンジケート化した金融機関から融資を受けるため、1つの金融機関から融資を受けるよりも結果的に手数料が安く上がる傾向であるというメリットもあります。
プロジェクト融資のデメリット
収益が高いという将来性を担保に巨額の資金を融資してくれるのですが、裏を返せばプロジェクトが失敗した際のリスクは通常の融資よりも高いです。
プロジェクトに関連する企業も複数にわたるため、プロジェクトが失敗した際には金銭面だけの負担でなく社会的な負担も強いられることになります。
まとめ
プロジェクト融資は国際的な火力・電力などの事業に必要な資金を、特別目的会社という仲介役が借りるタイプの融資です。
ネット上では「プロジェクト融資=不動産投資でお金がなくても貸してくれる」、という間違った意味合いの記事が多く見受けられますが、本来は敷居の高い部類の融資です。