「団信」と聞いて多くの人が思い出すのは住宅ローンではないでしょうか。
住宅を購入する場合に、住宅ローンの借り入れ条件として団体信用生命保険(団信)に加入するのが一般的です。
この団体信用生命保険、実は信用保証協会でも扱っていて、事業資金の融資を受けた場合にも利用できます。
今回はこの信用保証協会の団体信用生命保険がどのような制度なのか、住宅ローンの場合とどう違うのか、について解説します。
目次
1.信用保証協会の団体信用生命保険とは
信用保証協会の団体信用生命保険とは、信用保証協会の信用保証を利用して融資を受けた債務者、または法人の代表権を有する連帯保証人が債務の返済を完了しないうちに死亡または所定の高度障害といった不測の事態に陥った場合に、生命保険会社から受取る保険金を元に債務を弁済、事業の維持安定や家族の安心を図ることを目的とした制度です。
所定の高度障害とは、以下の8つが該当します。
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引用:信用保証協会ホームページ
いうなれば、「働けなくなってしまっても生命保険の保険金で弁済が可能」という保険制度です。
住宅ローンを借り入れるときに入る団体信用生命保険(団信)と概要はほぼ同じなので、住宅ローンの借り入れをしたことがある人は知っているかもしれません。
住宅ローンの団信と異なる点として、住宅ローンの場合は契約時に団体信用生命保険への加入が必須とされていることが一般的ですが、信用保証協会の団信は加入資格を満たした債務者が任意で加入するものです。
2.団体信用生命保険に加入するメリット
信用保証協会の団信のメリットを3つご紹介します。
(1)万が一の場合、家族や事業承継者が借入金の返済をしなくてよい
団体信用生命保険に加入する最大のメリットとして、債務者に万が一のことがあった場合に、家族や事業承継者が借入金の返済をしなくてよくなるということが挙げられます。
これは、団体信用生命保険によって支払われる保険金が借入金の返済に充てられるためです。
(2)生命保険に比べて手続きが少ない
信用保証協会の団体信用生命保険では、必要書類が「団体信用生命保険による債務弁済委託契約申込書」と「保証協会団信申込書兼告知書」の2種類と少ないです。
通常の生命保険を申し込む際に必要となる医師の診査も不要で、健康状態などの告知による手続きのみです。
注意点として、借入金額が5,000万円を超える場合は医師の診査と「健康診断結果証明書」が必要になります。
(3)個人事業主の場合、所得税は課税されない
通常、生命保険で受け取る保険金には所得税がかかります。
しかし、信用保証協会の団体信用生命保険では、個人事業主の場合は所得税が課税されません。
法人の場合は保険金が益金扱いとなり所得税の課税対象となってしまいますが、その分、特約料が損金に計上できます。
3.団体信用生命保険に加入するデメリット
信用保証協会の団信のデメリットを3つご紹介します。
(1)生命保険に比べて特約料の支払いが高くなる可能性がある
「特約料」とは、全国信用保証協会連合会に対して加入者が支払うお金で、「保険料」とは別の扱いとなっています。
信用保証協会の団体信用生命保険における「保険料」は全国信用保証協会連合会が保険会社に支払うお金で、「特約料」は全国信用保証協会連合会に債務弁済を行ってもらうことに対する対価として支払うお金です。
この「特約料」には保険料と手数料の両方が含まれているため、生命保険の保険料と比較すると出費がかさむ場合があります。
ただし、契約年数が長ければ長いほど総特約料は減ります。また、特約保証協会団信利用時の負担軽減を目的として、令和2年4月から特約料率が20%引き下げられていることもあり、一概に「特約料」の方が高い、というわけではありません。
もし、保証協会団信を利用したいと考えていて、特約料がどのくらいになるか知りたいという場合は、全国信用保証協会連合会のホームページでシミュレーションができます。
あくまでもシミュレーションで実際の特約料は借り入れ条件などでさらに変動しますが、おおよその目安を知ることができます。
(2)個人事業主の場合、所得控除が受けられない
個人事業主の場合、保険金に所得税は掛かりませんが、特約料が損金扱いにできないので所得控除の対象になりません。
この点に関しては、保険金に所得税は掛かるものの特約料が損金扱いで計上できる法人とは逆になるため、メリットと表裏一体となっています。
(3)健康状態によっては加入できないケースがある
通常の生命保険同様、既に重大な疾患がある場合などには加入できない場合があります。
とはいえ、「疾患があるからと言って必ず加入できない」というわけではないので、加入を考えている場合は医師の診断を受けた上で、加入の相談をしてみましょう。
4.団体信用生命保険に入らないと融資の審査に影響はあるの?
信用保証協会の団体信用生命保険は、加入者の任意で入るか入らないかを決められる制度です。
保証の許諾には関係がありません。特約料の支払いや万が一のリスクも考えた返済計画を立て、加入するかどうかを決めましょう。
5.団体信用生命保険の加入条件
団体信用生命保険の加入には、以下の条件を満たしたうえで信用保証協会の信用保証付き融資を受けた債務者または連帯保証人である必要があります。
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6.団体信用生命保険の加入手続き
(1)必要書類提出
金融機関、信用保証協会に備え付けられている「団体信用生命保険による債務弁済委託契約申込書」と「保証協会団信申込書兼告知書」の2種類の書類を記入して提出します。
借入額が5,000万円を超える場合にはこれに加えて「健康診断結果証明書」の提出が必要になりますので忘れないように注意しましょう。
(2)加入諾否連絡
加入の諾否が連絡されます。
融資実行月の翌月中旬頃に口座振替の案内が届くので、必ず口座振替の手続きを行いましょう。
7.団体信用生命保険の注意点
4つの注意点をおさえて、団体信用保険に加入するか検討しましょう。
(1)途中加入はできない
信用保証協会の団体信用生命保険は融資実行時のみ加入ができ、融資実行後に途中から加入することは基本的にできません。
加入を考えている場合は、融資の申し込み時点で加入するかどうかを決めておく必要があります。
(2)借り換えの場合は再加入
借り換え融資を行う場合、借り換え前の団体生命保険は維持されず、借り換え融資時に再度加入する必要があります。
借り換え融資を受ける際は忘れないようにしましょう。
(3)連帯保証人が変更する場合保証が終了する
団体信用生命保険の加入者が法人の場合、代表者が連帯保証人になる必要がありますが、この連帯保証人が代表者でなくなった場合はその時点で保証が終了してしまいます。
新しい代表者が加入条件を満たしている場合はその時点から新たに加入できるので、信用保証協会に加入申請を行えば例外的に融資途中から加入することができます。
(4)いつでも任意脱退可能
団体信用生命保険はいつでも任意に脱退することが可能です。
ただし、特約料は1年ごとの支払いで、残り期間分の返還は行われませんので脱退するタイミングには注意しましょう。
まとめ
信用保証協会の団体信用生命保険はメリットとデメリットが両方あるため、一概に加入がしたほうがいい、加入しないほうがいいなど、どちらがいいと言い切ることはできません。
注意点なども参考にしながら、検討してみてください。