法人口座が作りにくくなったと聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。法人口座は個人口座よりも審査が厳しく、作成までに時間もかかります。
今回は法人口座が作れない理由、審査基準、法人口座作成に必要書類などについて説明します。
目次
1.なぜ法人口座が作りにくいのか
未公開株・社債購入等における詐欺事件や不法な商行為が増え、銀行口座が悪用されるケースがあることから、犯罪対策の一環として銀行などの金融機関には犯罪による収益の移転防止に関する法律により取引時確認を行う義務が定められています。
そのため、法人口座が作成しにくい傾向があります。
2.法人口座の開設を断られる4つの具体例
銀行などの金融機関に法人口座を作成したいと申し込みをすると、融資のように審査があります。
どういった方が法人口座の開設を断られているかを具体例で説明します。
(1)登記場所がバーチャルオフィスである
銀行などの金融機関によってはバーチャルオフィスということだけで法人口座の作成が難しいです。
バーチャルオフィスでも作成できる金融機関はありますが、実際に登記場所が確認できるケースと比較するとハードルは高いといえるでしょう。
特に法人設立して間もない、実績がない状況ですと、口座開設するのはかなり難しいと考えてください。
(2)履歴事項全部証明書の事業目的が20以上あって、何がやりたいのかわからない
事業目的をむやみやたらに盛り込み過ぎると、法人の実態を把握できないと判断され、法人口座の開設を断られてしまいます。
(3)資本金が50万円以下である
資本金が1円から法人を設立できるようになったため、事業を始めるハードルは低くなりました。
しかし、銀行などの金融機関からすると資本金が少ないと事業を継続する意欲を疑わざるを得ません。
上手くいかなったら、すぐに事業をやめてしまうのではないかという懸念が生じます。
(4)主たる業務の許認可が未取得である
例えば介護事業など、主たる業務を行うのに許認可が必要な場合、基本的には許認可を取得してからでないと法人口座を開設することはできません。
3.法人口座の作成時の主な審査基準
法人口座作成において、銀行などの金融機関が審査基準にしているポイントは主に次の4点です。
- 事業所の場所
- 事業内容
- 資本金の金額
- 固定電話・ホームページの有無
ただし金融機関ごとに独自の審査をしていますので、A銀行では法人口座を作成できなかったけど、B銀行では作成できたということはあります。そのため、下記審査基準は一般的なものであるとご了承ください。
(1)事業所の場所
銀行などの金融機関はどこで事業を営んでいるかを重視します。そのため、バーチャルオフィスの場合、実態が分かりにくく、法人の口座作成が難しいといえます。
また、本店登記場所と実際に業務を行う場所が異なる場合は法人口座の開設ができない金融機関もありますので、ご注意ください。
他にも過去に同一住所で登記していた法人が犯罪に使用されていたなどの経緯があると、名義を変えて法人を作成している可能性が考えられ、法人口座の開設に影響する場合があります。そのため、事務所については慎重に検討しましょう。
(2)事業内容(事業目的)は何か
「将来的にあれもできるように記載しておこう」と履歴事項全部証明書に主業務以外の事業目的をむやみやたらに含めるのは避けましょう。
多く含めてしまうと、「いったい何がしたいのか」と銀行などの金融機関としては不信感につながります。
法人としてどういう事業をしたいのかを明確にする必要があります。
そこで営業時の提案資料や事業計画書、ホームページなど事業実態が明確に説明できる資料も準備しておきましょう。
(3)資本金の金額
2006年に施行された新会社法により、資本金1円でも株式会社を設立できるようになりました。しかし、一般的に資本金が1円ですと対外的にも信用は低いと考えられています。
もし今後融資を検討している場合であれば、なおさら資本金を準備する必要があります。
(4)固定電話・ホームページの有無
銀行などの金融機関としては法人の実態があるのかどうかを慎重に確認する必要があります。
携帯電話で連絡をとるから、別に固定電話は必要ないという方もいらっしゃるかもしれません。
銀行などの金融機関の中には「固定回線の有無」が法人口座開設の要件の1つに設定されているケースもあります。
ネット銀行では特にホームページの有無もポイントです。
ジャパンネット銀行ではホームページで具体的な業務内容を確認します。もしホームページがない場合には別途会社概要や具体的な業務内容が確認できる書類を求められます。
今すぐ必要ないかもしれませんが、法人口座開設のために固定電話・ホームページの準備はしておきましょう。
なお、合同会社は法人口座を作りにくいのかを気にされる方がいらっしゃいますが、特に合同会社だから不利になることはありません。
当社が法人口座を作成できた理由
当社は創業当初、メガバンクとネット銀行でそれぞれ法人口座を開設しました。
信用の面からメガバンクで法人口座を作成したいと考え、申し込みました。
事業実態の確認のため、事務所に担当の方がお越しになり、事業内容などの質問をされ、その後無事に法人口座を作成することができました。
法人口座を作成できた要因としては代表が個人口座を長く取引していたこと、知り合いの社長に紹介してもらったことが大きいのではないかと思います。
その次に利便性の良いネット銀行でも作成したいと考えX銀行に申し込みしましたが、結果としては法人口座を作成することはできませんでした。
しかし、Y銀行では問題なく作成することができたのです。
ネット銀行は書類だけで審査しますが、各金融機関によって審査ポイントが違うことを改めて実感しました。
4.法人口座作成に必要な書類
どの金融機関でも下記は必要になりますので、まず準備しましょう。
- 履歴事項全部証明書
- 印鑑証明書
- 代表者の本人確認書類
金融機関によっては下記書類も必要です。
- 定款
- 会社案内、製品、パンフレット、取引先向けの提案書、見積書、注文書、仕様書等
- 本店・主たる事務所が自己所有の場合は建物登記簿謄本、賃貸の場合は賃貸借契約書の写し
- 事業の許認可が確認できる書類
- 法人番号が確認できる書類(法人番号通知書等)
- 代表者印の押印がある(主要)株主名簿または(主要)出資者名簿
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
事前に申し込みを検討している金融機関に問い合わせをして、必要書類を確認しておきましょう。しっかりと必要書類を準備できることで銀行などの金融機関からの印象は良くなります。
5.法人口座作成の流れ
ここではメガバンクとネット銀行を例に法人口座作成の流れを紹介します。
銀行などの金融機関によって異なる場合がありますので、詳しくは申し込みを検討している金融機関に問い合わせをしましょう。
(1)メガバンク(三井住友銀行の場合)
三井住友銀行の場合、まずメールで問い合わせをするとメールが返送されます。
メール内に記載されているURLから必要事項入力し、必要書類を郵送します。そして書類の内容を確認後、口座開設を希望する支店に必要書類を持参の上、来店し実際に相談するという流れです。
書類を郵送して、内容を確認されるまでに混雑状況によっては2~3週間程度かかる場合があります。
(2)ネット銀行(GMOあおぞらネット銀行の場合)
GMOあおぞらネット銀行の場合、オンラインで法人口座開設の申し込みができます。
ホームページの「口座開設申込フォーム」から必要事項を入力し、画面の案内に従ってオンライン上で事業内容申告と必要書類の提出をします(※郵送での受付も可能)。
その後審査が行われ、所定の条件を満たしていればすぐに口座利用が可能となり、その後およそ4~5営業日でカードが届きます。
混雑状況にもよりますが、最短では申し込んでから当日に審査が完了し、利用開始ができます。
6.法人口座開設を断られた際の対処法
状況によってなかなか法人口座を作れないことがあるでしょう。そのようなときは下記対処法を確認してください。
(1)個人口座での取引のある金融機関に相談する
会社員時代に給料を受け取り、クレジットカードなどの引き落としに使っている口座の金融機関に相談してみましょう。
まったく取引がない金融機関よりは法人口座を作成してもらえる可能性は高いです。
(2)取引先に紹介してもらう
可能であれば、取引先の企業が利用している金融機関を紹介してもらいましょう。
紹介されたからといって絶対に法人口座を作成できるわけではありませんが、通常の申し込みよりは法人口座を作成してもらえる可能性は高くなります。
(3)他の銀行に申し込みをする
利便性などからメガバンクで法人口座を作成したい方もいらっしゃるとは思いますが、
メガバンクにこだわらず、ゆうちょ銀行、ネット銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合などまずは法人口座を作成できるところを探して、取引実績ができてから本来作成したかった金融機関に申し込みましょう。
まとめ
法人口座を作成するには準備が必要です。そのため、法人口座を作れない理由や審査基準を確認してしっかり準備を行いましょう。
審査には2~3週間程度かかりますので、万が一口座が作成できないことも想定して余裕を持ったスケジュールで法人口座開設の申し込みを行いましょう。