銀行融資における納税証明書の必要性を解説

納税証明書は、銀行融資の申請時に提出を求められる必要書類のひとつです。適切に納税されている記録は、資金管理の確実さや経営者の信頼を示す資料となるため、融資の可否を左右する判断材料として扱われます。

当記事では、銀行融資を受ける際に必要となる納税証明書の必要性を解説します。納税証明書の取得方法や未納があった場合の対応方法も紹介するので、融資申請前に納税証明書の詳細を確認しておきたい人は参考にしてみてください。

銀行は融資判断のために納税証明書を活用している

銀行は、融資の判断材料のひとつとして納税証明書を活用しています。納税証明書は、税金の納付状況から事業の継続性や資金管理の適切さを読み取れるため、申請者の返済能力と信用力を裏付ける資料となります。

たとえば、銀行は納税証明書から申請者の「法人税」の納税状況を確認しています。法人税が毎月安定して納付されていることで、安定した収益構造を読み取れるため、経営の健全性が評価されやすくなります。

また、銀行は納税証明書から申請者の「消費税」の納税状況を確認しています。消費税が毎月安定して納付されていることで、日常的な資金管理の適切さが伝わるため、返済に対する信頼性が評価されやすくなります。

納税証明書は、銀行融資において事業者の信用力を判断するための基本資料です。確実に税金を納めていることは、誠実な経営者と評価される前提条件となるため、納税証明書の必要性をあらかじめ理解しておきましょう。

税金の支払い状況が審査に与える影響

税金の未納があると、融資審査で不利になります。銀行は融資審査の際、申請者の納税証明書の記載内容から納付の遅れや未納を確認した場合、融資への返済リスクが高いと判断する可能性があります。

たとえば、申請者の納税履歴に滞納の記録がある場合、納税に問題のない申請者と比べて融資の条件が厳しくなる可能性があります。返済遅延や滞納などのリスクを避けるため、銀行は融資審査において金利の引き上げや返済期間の短縮といった判断を下すことがあります。

また、申請者の納税履歴に滞納の記録がある場合、融資を断られる可能性があります。銀行は「信用力に問題がある」と判断すると、返済遅延や滞納などのリスクを避けるために融資を見送ることがあります。

銀行融資の審査では、納税証明書に記載された納税状況が、信用評価や融資条件に大きく影響します。銀行融資に申請する際は、事前に所轄の税務署に問い合わせ、未納がないかどうかを確認しておきましょう。

融資審査で求められる納税証明書の種類

納税証明書には「納税証明書(その1)」から「納税証明書(その4)」までの4種類があり、それぞれに証明される内容が異なります。融資を受ける際は、金融機関ごとの審査方針や融資の種類に応じて求められる証明書が異なる場合があるため、それぞれの内容を確認しておきましょう。

納税証明書の種類と証明内容

納税証明書の種類 証明内容
(その1)「納税額等の証明」 納税額、納税済額および未納額などの税金の支払い状況を証明
(その2)「所得金額の証明」 所得税、法人税の課税所得金額を証明
(その3)「未納のない証明」 消費税や所得税、法人税などの指定税目ごとに未納がないことを証明
(その4)「滞納処分のない証明」 差し押さえ等の滞納処分を受けていないことを証明

納税証明書(その1)は「過去の納税状況と現在未納の税金がないか」を確認する書類です。未納の税金がある場合は銀行の回収リスクが高まるため、申請者の納税履歴を調べる目的で提出を求められます。

納税証明書(その2)は、確定申告書に基づいて「所得金額」を証明する書類です。個人事業主の所得や法人の代表者が受け取る「役員報酬」など、個人所得として扱われる収入がある場合には、所得税の納税状況を確認する目的で提出を求められることがあります。

納税証明書(その3)は「特定の税目について未納がないこと」を証明する書類です。税目を指定して発行できるため、法人税や消費税など「融資審査で重視される税金」の納付状況を確認する目的で提出を求められます。

納税証明書(その4)は「滞納処分を受けたことがないこと」を証明するための書類です。提出が必要となる機会は少ない傾向にあるものの、融資額が大きい場合や企業の信用力がまだ確立されていない場合には、慎重な審査を行うために提出を求められることがあります。

銀行融資の審査では、納税証明書(その1)と(その3)の提出を求められる傾向にありますが、どの証明書が必要かは融資内容や申請者の事業形態によって異なります。申請の際にどの証明書を取り寄せれば良いか悩む場合は、あらかじめ銀行に確認しておきましょう。

個人事業主と法人で提出する納税証明書が異なる

個人事業主と法人では、提出する納税証明書が異なります。税目ごとに未納の税金がないことを証明する「納税証明書(その3)」は、個人事業主と法人で提出する書類の形式が異なるため、それぞれ内容を確認しましょう。

納税証明書(その3)の種類と対象者

証明書の種類 対象者 証明する税目
その3の2 ・個人事業主
・フリーランス
・所得税
・消費税
その3の3 ・法人 ・法人税
・消費税

「納税証明書(その3の2)」は、所得税と消費税に未納がないことを証明する書類です。個人事業主やフリーランスは、所得や売上に応じて課された税額を自身で納付する立場にあるため、納税状況の確認を目的としてこの証明書の提出が求められます。

「納税証明書(その3の3)」は、法人税と消費税に未納がないことを証明する書類です。法人は、企業活動によって得た利益に対して課された税額を納付する立場にあるため、納税状況の確認を目的としてこの証明書の提出が求められます。

個人事業主と法人では、納税の対象や課税の仕組みが異なるため、提出する納税証明書の種類が一部異なります。どちらの証明書も、事業の健全性や納税姿勢を示す資料として融資審査で重視されるため、事業形態に応じて適切なものを準備しましょう。

納税証明書を取得するための準備 

納税証明書を取得するには、事前に必要な書類や手続きを確認しておきましょう。申請に必要なものや手続き方法を把握していないまま進めると、申請が受理されず、銀行融資のスケジュールに遅れが生じるリスクがあります。

納税証明書の取得に向けた準備項目

準備項目 内容
納税証明書の取得に必要なものを揃える 申請書、本人確認書類、印鑑、委任状(代理申請時)などを確認しておく
納税証明書の取得先を確認する 原則として納税地の所轄税務署で発行されるため、所在地の窓口を確認する
納税証明書の取得方法を確認する 窓口、郵送、e-Taxのいずれかの方法を選び、方法に応じた準備を行う

たとえば、「申請書を印刷していなかった」「本人確認書類を忘れた」「申請方法を勘違いしていた」といった理由で、税務署窓口で再訪を求められることがあります。手戻りを防ぐには、必要事項をあらかじめ整理し、自社の状況に合った方法で申請を進めることが大切です。

銀行融資の審査を滞りなく進めるためにも、納税証明書の取得準備は早めに着手しておきましょう。事前にチェックリスト化しておくことで、書類の提出漏れや申請内容の不備を防ぐことができます。

納税証明書の取得に必要なものを揃える

納税証明書をスムーズに取得するには、税務署への申請に必要なものを事前に揃えておくことがポイントです。不足があると、受付で手続きが中断される可能性があり、再提出や再訪が必要になる場合もあるため、準備しておくものをあらかじめ確認しておきましょう。

納税証明書の申請時に必要なもの

項目 内容
納税証明書交付請求書 ・納税証明書の発行を申請するために必要
・税務署指定の様式税務署窓口や国税庁ウェブサイト(e-Tax)で入手可能
本人確認書類 ・申請者本人であることを証明するために必要
・運転免許証やマイナンバーカードなどを提示
・写真付きの本人確認書類がない場合は、健康保険証、年金手帳、住民票の写しなどを2点提示する
手数料 ・納税証明書の発行に必要な費用
・全国一律で1通につき400円(収入印紙購入または現金)
・e-Taxの場合は370円
返信用封筒 ・郵送で取得する場合に必要
・切手を貼り、宛先を明記した返信用封筒を同封する
委任状 ・代理人が申請する場合に必要
・委任者の氏名、住所、申請内容などを記載する
代理人の本人確認書類 ・代理人が申請する場合に必要
・運転免許証やマイナンバーカードで代理人本人であることを証明する

納税証明書の取得に必要なものを漏れなく揃え、余裕を持って申請できるよう準備を進めておきましょう。その際、書類の取り寄せや手数料の支払いにインターネットを利用することで、手間を省けるうえに、窓口申請よりも費用を抑えられる場合があります。

なお、2021年の行政手続き見直しにより、申請時の押印は原則不要とされ、署名で代替できるケースが増えています。ただし、対応は税務署によって異なることがあるため、事前に確認しておきましょう。

納税証明書の取得先を確認する

納税証明書(その1~その4)は、いずれも国税に関する証明であり、取得先は所轄の税務署です。税務署ごとに管轄が決まっているため、誤った場所へ申請すると受理されません。

たとえば、法人が本店とは異なる営業所を管轄する税務署に申請した場合、納税証明書を発行することはできないため、申請をやり直す必要があります。申請先の誤りで証明書の申請が遅れると、予定通りに取得できず融資スケジュールに影響をきたす可能性があります。

納税証明書の取得先は、個人事業主や法人を問わず、納税地を管轄する税務署です。特に、最近移転した場合や初めて申請する場合は、事前に自社の管轄となる税務署を確認しておくと今後の税金関連の手続きもスムーズに進めることができます。

銀行融資の手続きに遅れが生じないよう、申請前に必ず所轄の税務署を調べておきましょう。自社の管轄の税務署が不明な場合は、国税庁のウェブサイト「税務署の所在地などを知りたい方」にて、郵便番号や市区町村を入力すると検索できます。

納税証明書の取得方法を確認する

納税証明書は「窓口」「郵送」「e-Tax」のいずれかの方法で取得できます。取得手段によって必要な準備や所要日数が異なるため、あらかじめ違いを把握しておきましょう。

納税証明書の取得方法と特徴

取得方法 特徴 所要日数の目安
窓口 即日交付も可能で、職員の案内を受けながら手続きできる 当日~翌日
郵送 税務署へ出向く必要がなく、全国どこからでも申請可能 当館から1週間前後
e-Tax オンラインで申請と納付まで完結でき、窓口申請よりも手数料が安い 申請から2~3日程度

急いで納税証明書が必要な場合は、税務署の窓口で申請すれば即日交付を受けられることがあります。書類に不備があってもその場で修正できるため、再訪の手間を省ける点も窓口申請のメリットです。

日にちに余裕がある場合は、郵送による申請やe-Taxによるオンライン申請も選択できます。いずれも税務署に出向く必要がなく、全国どこからでも手続きできる点がメリットです。

納税証明書の取得方法は、自社の状況や融資申請までのスケジュールに応じて適したものが異なります。それぞれの特徴を踏まえ、取り寄せやすい方法を選びましょう。

なお、「e-Tax」とは、国税庁が提供するオンライン申請サービスです。パソコンやスマートフォンを使って申請から支払いまでを一貫して行えるため、手続きの負担を軽減することができます。

納税履歴に不安がある場合の対応方法

過去の納税状況に不安がある場合は、融資申請に影響しないよう、納税証明書の取得前に必要な対応を済ませておくことが大切です。納税証明書には申請時点の未納額が反映されるため、融資前にすべて納付しておく必要があります。

【納税履歴に不安がある場合の対応方法】

対応項目 内容
未納分は申請前にすべて納付しておく 納税証明書には申請時点での未納額が記載されるため、未納のない状態で取得する
必要に応じて補足資料を準備しておく 過去の延滞が他の資料やヒアリングで判明する場合に備え、納付状況や経緯を示す資料を準備しておく

納税後すぐに証明書を請求すると、データの反映が間に合わず、実際には納付済であっても未納額が記載された証明書が発行される場合があります。こうした場合は、領収証書や納付書の控えを補足資料として提出することで、納税済であることを伝えることができます。

銀行融資の申請前に、自身の納税状況を確認し、未納がない状況にしておきましょう。納税履歴に一部問題があり、銀行への説明が必要な場合は、補足資料を準備しておくことで、審査において不利な状況を避けやすくなります。

未納分は申請前にすべて納付しておく

税務署に納税証明書の取得申請を行う際に税金の未納がある場合は、申請前にすべて納付しておきましょう。銀行は、申請者に税金の未納がある場合、信用面でのリスクがあると判断し、審査において慎重な対応をとる可能性があるためです。

たとえば、税金が未納のまま納税証明書(その1)を申請すると「未納税額」の欄にその残額が記載されます。未納税額がある状態の場合、未納がないことを証明する納税証明書(その3)は発行されないため、銀行へ提出することができなくなります。 

一方で、過去に未納や延滞があったとしても、納税証明書の発行時点で完納されていれば、納税証明書(その1)の未納税額は「0円」と記載されます。未納がないことを証明する納税証明書(その3)も発行され、両方の証明書を銀行へ提出することができます。

銀行融資の審査では、納税証明書(その1)や(その3)で現在の未納がないことを確認しているため、過去の未納も完納されていれば概ね審査に支障をきたしません。過去の納税状況が分からず不安な場合は、身分証明書を持参のうえ、所轄の税務署の窓口や電話で問い合わせてみましょう。   

必要に応じて補足資料を準備しておく

納税証明書(その1)や(その3)で現在未納がないことが示されていれば審査上は概ね問題ありませんが、決算書やヒアリングで過去の延滞が判明する場合があります。その際に銀行から説明や補足資料を求められることがあるため、必要に応じて準備をしておきましょう。

【納税履歴に不安がある場合に提出する補足資料の例】

補足資料が必要な場面 用意する補足資料
過去の延滞をすでに納付したことを伝えたい 領収書、納付書控え、納税記録が記帳された通帳など
延滞の理由や行った改善策を説明したい 経緯説明書、資金繰り表、税理士の意見書など
分納で納付を進めていた経緯を説明したい 分納計画書、全期間分の納付書控え

たとえば、過去の延滞をすでに納付したことを伝えたい場合、領収書や納付書控え、納税記録が記載された通帳などを用意します。これらの補足資料により、未納額は既に解消されていることを銀行に伝えることができます。

また、延滞の理由や行った改善策を説明したい場合、経緯説明書や資金繰り表、税理士の意見書などを用意します。これらの補足資料により、遅延に至った背景や再発防止に向けた取り組みを示すことができます。

そして、分納で納付を進めていた経緯を説明したい場合、分納計画書や全期間分の納付書控えなどを用意します。これらの補足資料により、納税義務を計画的に果たしてきたことを示すことができます。

納税証明書が完納を示していても、他の情報から過去の延滞が判明する可能性があります。不安を抱かれそうな点はあらかじめ資料で補足し、現時点で問題なく返済能力があることを説明できるように備えておきましょう。

なお、納税証明書には発行日から3か月間の有効期限があるため、提出時点で期限切れにならないように準備する必要があります。補足資料には法的な有効期限はないものの、融資審査では内容の新しさや妥当性が重視されるため、最新の情報を反映した資料を用意しておきましょう。

まとめ

銀行融資の申請では、納税証明書の提出が求められることが多く、税金の納付状況は資金管理の正確さや経営者の信頼性を示す判断材料になります。なかでも、納税証明書(その1)や(その3)は、現在の未納がないことを証明する書類として重視されます。

ただし、納税証明書が完納を示していても、過去の延滞が決算書など他の資料から判明する場合には、補足資料の提出や経緯の説明を求められることがあります。納税に関する懸念がある場合は、あらかじめ対応を済ませておくことで、審査への影響を最小限に抑えることができます。

融資審査を円滑に進めるためにも、必要な納税証明書の種類や取得方法を事前に確認し、未納がある場合は速やかに納付を済ませておきましょう。状況に応じて補足資料を準備し、税務対応への姿勢を示すことが、銀行からの信頼を得ることに繋がります。

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