近年、設立される法人として数が増えつつある「合同会社」ですが、どのような特徴を持っているのかよく知らない方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、合同会社とは何か、特徴とメリット・デメリット、株式会社との違いについてわかりやすく解説します。
合同会社とは
合同会社とは出資者と経営者が同じ会社の新形態
合同会社とは、2006年に改正された会社法によって設立できるようになった、新しい形態の会社です。
合同会社は出資者と経営者が同じであるため、意思決定が素早くでき、組織体制が比較的自由という特徴を持ちます。
なお、合同会社の略し方は(同)です。「合名会社」「合資会社」と区別をつけるため、頭文字ではなく2文字目です。銀行口座などでカタカナ表記するときは(ド)です。
日本ではまだ認知度の低い会社形態ではありますが、次の有名な企業も合同会社です。
- アマゾンジャパン合同会社
- Apple Japan合同会社
- グーグル合同会社
- ソフトバンクグループジャパン合同会社
- 合同会社西友
- ユニバーサルミュージック合同会社
ただ、有名企業が合同会社を選択しているとはいえ、日本国内で見るとほんの一部です。登記統計によると2019年時点で株式会社数は本店支店合わせて約98万件であるのに対し、合同会社はあわせて約7万5千件と、現状株式会社と比べると合同会社の数はかなり少ないと言えるでしょう。
しかし、このほど初めて新設された合同会社数が3万件に上りました。着実に合同会社という会社形態が浸透しつつあるともいえます。
(2021年4月参照:登記統計 商業・法人「会社及び登記の種類別 会社の登記の件数」 |政府統計の総合窓口(e-Stat))
合名会社とは:類語解説
合名会社とは、会社の負債を抱えたとき、自身の私財を投じて返済する義務を負う(無限責任)ルールで運営されている会社です。
株式会社や合同会社のように自身が出資した額以上の負債に返済義務がない(有限責任)ものと比べると、合名会社はリスクが高いです。
合資会社とは:類語解説
合資会社とは、資本金が必要なく、決算公告の義務もない会社です。無限責任社員1人と有限責任社員1人で構成、つまり、2人以上いないと設立できません。
合同会社にするメリット・デメリット
メリット①:事業運営の意思決定を迅速に行える
合同会社は出資者と経営者が同一であるため、経営の意思決定が迅速です。また、外部の意見に左右されることがないので、経営者は自由に事業を運営することが可能です。
メリット②:コストを低くおさえ、節税が見込める
株式会社よりもコストを抑えて設立でき、個人事業主よりも節税になるというのが合同会社の特徴です。
設立登記に20万円ほどかかる株式会社と比べ、合同会社では6万円前後と設立登記のコストが安いです。
個人事業主と比べれば、法人である以上、合同会社は、経費として計上できる範囲が広がるので、節税にもなります。
メリット③:利益の配分を自由に決めることができる
合同会社では出資金に関係なく利益を配分できるため、出資額の大小以外にも貢献度が高ければ、利益を多く分配できます。
ただし、どのような率で利益を配分するのかは定款で定めておかないと、設立後にトラブルが起きる可能性があるでしょう。
デメリット①:認知度が低く信用を得にくい傾向
まず合同会社は認知度が低いため、取引先などから信用を得にくい傾向があります。
ネームバリューのある大企業であれば大して問題にならないですが、中小企業や立ち上げたばかりのスタートアップだと、取引先から敬遠されてしまうかもしれません。「同じ取引をするなら合同会社よりも株式会社」と判断する会社があるので、注意が必要です。
デメリット②:出資者の意思統一ができないと事業に影響する
合同会社はその性質上、出資者すべてが経営者になります。つまり、出資者全員に経営権(業務執行権)があるのです。
そのため、組織内での意思統一がされずに経営方針の対立が続くと、そのまま事業が傾く可能性があります。
デメリット③:資金調達の方法が限定される
合同会社は、株式会社のように株式を発行できません。また、当然ながら合同会社は上場もできません。
そのため、資金調達の方法が限定的になります。
合同会社に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 合同会社と株式会社の違いは?
合同会社と株式会社の違いは主に3つあります。
違い①:合同会社は設立費用が安い
どの会社の種類でも、設立には登記が必要です。合同会社では6万円前後の登記費用がかかりますが、株式会社では25万円ほどで、多くかかります。
開業したてで運営資金が少しでも多く欲しい方にとって約20万円の差は大きいでしょう。
違い②:合同会社は利益を自由に分配できる
合同会社は株式会社よりも自由に利益を分配できます。
株式会社は株式数(=出資額)に応じて利益を分配しますが、事業運営に重要な役割を果たした人でも、出資が少なければ、十分な利益を分配できない問題点があります。
合同会社は、設立時の出資額が少なくとも、利益を公平に分配できるので、不満が出にくくなります。
違い③:合同会社は柔軟な意思決定ができる
すでに説明した通り、合同会社は株主総会や取締役会、監査役を定める必要がなく、自由に組織設計できます。経営の仕方に柔軟性があるので、素早く意思決定できます。
Q2. 合同会社と有限会社は同じもの?どう関連する?
2006年に法改正によって、合同会社は、有限会社の代わりとして新設されました。かつて「有限会社」と呼ばれていた会社形態は、改正会社法施行してから、新たに設立することはできません。
存在していた有限会社は、株式会社に形態を変えて存続していますが、従来とほぼ同じ法的な扱いを受けています(特例有限会社)。
また、会社の名前(商号)の変更は強制されていないため、会社名に「有限会社」が含まれる会社は、今現在もあります。
Q3. 合同会社はやばい?合同会社にかかわっても大丈夫?
有名企業の合同会社で働いたり一緒に仕事したりと関わるなら、特に合同会社であることを気にする場面はないでしょう。意思決定のスピード感を重視する外資系の企業などは合同会社を選択しています。
しかし、企業規模の小さい合同会社にかかわるときは、注意です。「合同会社はやばい」の声は、企業規模の小さい会社であがりやすい背景があるのです。
まず、合同会社は、株式会社のように株式を発行して資金調達をすることができません。そのため会社自体に資金力がなく、赤字が続いていると経営破綻の可能性が高くなります。
また、合同会社は出資者と経営者が同一なため、ワンマンな采配になりがちです。株式会社のように重要なことを株主総会で決める手順を踏まないので、経営判断に第三者の意見が入ることがありません。
規模の小さい合同会社とかかわるなら、「振り回されるだけ振り回され、資金が尽きて会社は解散」という混乱に巻き込まれないよう、きちんと経営者の手腕と資金力を見定めることが大切です。
合同会社の設立手順
手順1:定款の作成する
合同会社を設立するには、まず定款を作成します。
定款とは、商号や目的、本店所在地、資本金の集め方や機関設計、会社の基本的な事項を書面にまとめたものです。合同会社を設立するケースでは、株式会社とは違い、公証役場での認証を受ける必要はありません。
ただ、出資者全員で利益分配の割合をしっかりと取り決めましょう。利益分配の割合を取り決めないと、会社設立後に出資者同士でトラブルに発展しやすくなります。
手順2:登記書類の作成・申請をする
定款や登記に必要な各種書類を揃えたら、法務局に登記申請を行います。
定款を作成した後、登記申請の前に発起人の口座に資本金を入金しておく必要があります。もしすでに資本金が口座に入っているのなら、一度引き出し、再度入金しましょう。
手順3:開業届を出す
登記申請後、本店所在地がある地域の税務署に法人設立届出書や、青色申告の承認申請書の届出などを提出します。
まとめ
合同会社とは何か、特徴と株式会社との違い、メリット・デメリットについて解説しました。
新しい会社形態の合同会社は、まだまだ国内では認知度が低く、信用が得にくいケースがあります。
しかし、意思決定の速さや設立のしやすさなどの理由から、合同会社の数は増えています。
現在は、合同会社を選択する大企業もでてきています。