【運送業版】融資を受けるときのポイントを解説

トラック運送業やバイク便事業など、運送業として独立開業を目指している人の中には、金融機関から融資を受けることを検討している人もいますよね。その際、融資を受けられるかどうかが不安なことにより、融資を受けるときのポイントを知りたい人もいるでしょう。

当記事では、運送業における融資を受けるときのポイントを解説します。融資の申し込みに向けて、事業計画を策定するときの項目も解説するため、運送業を創業予定の人は参考にしてみてください。

ポイントは実現可能な運賃収入を試算すること

運送業を創業する場合、ポイントは実現可能な運賃収入を試算することです。実現可能な運賃収入を試算することにより、収支計画の精度を高められる可能性があるため、運送業を創業予定の人は融資を受けるときのポイントとして押さえておきましょう。

【実現可能な運賃収入を試算する方法の具体例】

  • 受注予定から検討する
  • 運行能力から検討する

運賃収入を試算する方法として挙げられるのは「受注予定から検討する方法」と「運行能力から検討する方法」があります。収支計画の精度を高められる可能性があるため、運送業を創業予定の人はそれぞれの項目を確認してみましょう。

受注予定から検討する

実現可能な運賃収入を試算したい場合、方法のひとつは「受注予定から検討する方法」です。受注予定から検討することにより、実現可能な運賃収入を試算できる可能性があるため、運送業を創業予定の人は受注予定から運賃収入を試算してみましょう。

【受注予定から運賃収入を試算するときのイメージ】

契約形態 料金体系 単価 数量 1か月あたりの運賃収入
定期便の場合 月額制 250万円/月 1か月 250万円
回数制 100万円/回 1回×3運行 300万円
スポット便の場合 距離制 3万円/100km 100km×50運行 150万円
時間制 4万円/8時間 8時間×15運行 120万円

運賃収入を左右する要素のひとつは「契約形態」です。定期便はあらかじめ決められた日程やルートに従って継続的に運送する契約ですが、スポット便は単発の依頼に応じて一時的に運送する契約となるため、運賃収入は契約形態によって異なります。

また、運賃収入を左右する要素のひとつは「単価」です。「月額250万円」「100kmあたり3万円」「8時間あたり4万円」など、料金体系に応じて、それぞれの単価を設定することになるため、運賃収入は単価によって異なります。

なお、運賃収入を試算する場合、時期による受注数の変動に留意が必要です。「年末年始」や「新年度」など、時期によって繁忙期と閑散期が発生する可能性があるため、運賃収入を試算するときは時期ごとの受注数を予測しておきましょう。

運行能力から検討する

実現可能な運賃収入を試算したい場合、方法のひとつは「運行能力から検討する方法」です。運行能力から検討することにより、実現可能な運賃収入を試算できる可能性があるため、運送業を創業予定の人は運行能力から運賃収入を試算してみましょう。

【運行能力から運賃収入を試算するときのイメージ】

車両台数 ドライバー数 運行数 単価 1か月あたりの運賃収入
1台 1人 20運行×1台=20運行 5万円/回 20運行×5万円=100万円
3台 3人 20運行×3台=60運行 5万円/回 60運行×5万円=300万円

運賃収入を左右する要素のひとつは「車両台数」です。保有する車両台数が多ければ多いほど、運行数を増やすことができるため、1か月あたりの運賃収入が増えることになりますが、車両を稼働させるためのドライバー数を確保する必要があります。

また、運賃収入を左右する要素のひとつは「ドライバー数」です。ドライバー数が多ければ多いほど、運行数を増やすことができるため、1か月あたりの運賃収入が増えることになりますが、ドライバー数に見合った車両台数を確保する必要があります。

なお、運送業は人件費が上昇傾向にあります。物流業界の「2024年問題」により、ドライバーの時間外労働の上限規制が適用され、同じ業務量でもドライバーを増やす場合がある関係上、人件費が上昇傾向にあるため、ドライバーを雇用する予定の人は注意しましょう。

運賃収入を試算した後は事業計画を策定する

運賃収入を試算した後は運送業を創業するための事業計画を策定することになります。融資を申し込む場合、審査における必要書類のひとつとして、金融機関から事業計画書の提出を求められるため、運賃収入を試算した人は事業計画を策定してみましょう。

【事業計画における項目の具体例】

項目 概要
事業経験 創業者の職務経歴や実績を示す項目。創業する事業に関する経験を整理する。
経営方針 創業後の事業内容や経営方針を示す項目。取扱貨物や集客戦略を整理する。
収支計画 創業後の売上や利益の見込みを示す項目。数値の根拠を明確にする。

事業計画の項目として挙げられるのは「事業経験」「経営方針」「収支計画」です。融資を申し込む場合、審査における必要書類のひとつとして、金融機関から事業計画書の提出を求められるため、運賃収入を試算した人はそれぞれの項目を確認してみましょう。

事業経験

事業計画の項目として挙げられるのは「事業経験」です。事業経験は創業者の職務経歴や実績を示す項目となる関係上、運送業を創業する場合は運送業に関連する知識や技術を示すことになるため、事業計画を策定する人は事業経験を整理してみましょう。

【運送業における事業経験の具体例】

年月 具体例
平成24年3月 〇〇高校卒業
平成24年4月 〇〇運送に入社
小型トラック(最大積載量2トン)による配送業務、車両管理業務を担当。大型自動車第一種運転免許を取得。
平成30年4月 〇〇運輸に入社
神奈川営業所長として、シフト管理や人材育成などを担当。荷積みの効率化により残業時間を10%削減。運行管理者の資格を取得。
令和4年4月 〇〇エクスプレスに入社
運行管理課長として、配車業務や運行計画の作成を担当。ドライバーの労務管理や収支管理にも携わる。
令和8年10月 退職予定

事業経験を整理するときのポイントは「時系列に沿うこと」です。「高校の卒業」「大型自動車第一種運転免許を取得」「運送会社への転職」など、時系列に沿って整理することにより、運送業に関する経歴の抜け漏れを防げる可能性があります。

事業経験を整理するときのポイントは「具体的な実績を示すこと」です。「営業所長に就任」「残業時間を10%削減」「配車業務や運行計画の作成を担当」など、具体的な実績を示すことにより、創業後の経営に活かせる能力を伝えられる可能性があります。

なお、運送業を創業する場合、運送業許可が必要です。貨物軽自動車運送事業の場合は届出のみですが、「一般貨物自動車運送事業」や「特定貨物自動車運送事業」の場合は地方運輸局に運送業許可を申請することになるため、運送業を創業したい人は覚えておきましょう。

経営方針

事業計画の項目として挙げられるのは「経営方針」です。経営方針は創業後の事業内容や経営方針を示す項目となる関係上、運送業を創業する場合は運送できる貨物や顧客獲得の戦略を示すことになるため、事業計画を策定する人は経営方針を検討してみましょう。

【運送業における経営方針の具体例】

項目 具体例
サービス 貨物軽自動車運送事業(軽貨物車での運送業務)
単価 ①20kmまで:5,000円
②21km~50km:1kmごとに160円加算
③51km~100km:1kmごとに140円加算
④101km以上:1kmごとに110円加算
早朝と深夜は30%割増にて対応可能
営業日数 25日/月
営業時間 8:00~21:00
特長 無事故無違反の実績を活かし、安全第一の配送サービスを提供する。個人事業主として開業するため、柔軟に対応できる点がセールスポイント。緊急時の配送や長距離の配送など、荷主のニーズに応じて、きめ細やかな配送サービスができる。
集客方法 〇〇地区での営業経験があるため、△△運送よりチャーター便の契約を受託できる見込みがある。チャーター便の業務がない日は新規顧客からのスポット便に対応する予定。開業当初はリスティング広告の活用と物流会社への訪問営業により、新規顧客獲得を目指す。
市場分析 〇〇地区は複数の競合業者がいるが、EC関連の物流拠点が多いため、配送需要が高い。隣接する△△地区には、新たに物流倉庫が建設される予定があるため、新規顧客の獲得も見込まれる。柔軟な対応をアピールすることにより、競合業者との差別化を図る。

経営方針を検討するときのポイントは「強みを明確にすること」です。「無事故無違反の実績」「緊急時の配送対応」「長距離の配送対応」など、その運送業者ならではの強みを明確にすることにより、競合業者と差別化できる可能性があります。

また、経営方針を検討するときのポイントは「具体的な戦略を示すこと」です。「契約受託の見込み」「リスティング広告の活用」「物流会社への訪問営業」など、経営における具体的な戦略を示すことにより、売上の実現性を伝えられる可能性があります。

なお、経営方針に盛り込む項目は他にも考えられます。「事故や故障への対応」「誤配送の対策」「ドライバーの採用計画」など、事業内容に応じた項目を盛り込むことにより、経営方針の具体性が高まる可能性があるため、経営方針を検討する人は覚えておきましょう。

収支計画

事業計画の項目として挙げられるのは「収支計画」です。収支計画は創業後の売上や利益の見込みを示す項目となる関係上、それぞれの数値の根拠を明確にする必要があるため、事業計画を策定する人は収支計画を作成してみましょう。

【運送業における収支計画の具体例】

項目 創業時 軌道に乗った後 根拠
①売上高 75万円 143.5万円 <創業時>
①売上高:3万円/220km×25日=75万円
②原価率:70%(勤務時の経験を参考)
③人件費:創業時は無し
家賃:駐車場代
支払利息:600万円×年2.0%÷12=1万円
その他:広告費、通信費など
<軌道に乗った後>
①売上高:4.1万円/320km×25日+4.1万円/320km×10日=143.5万円
②創業時の原価率を採用
③人件費:ドライバーを1人採用
時給1,500円×8時間×10日=12万円
家賃:車両の増車により駐車場代1台分を追加
その他:通信費が1万円増加
②売上原価 53万円 100万円
経費 人件費 0万円 12万円
家賃 1万円 2万円
支払利息 1万円 1万円
その他 1万円 2万円
③合計 3万円 17万円
利益
①-②-③
19万円 26.5万円

収支計画を作成するときのポイントは「計算式を示すこと」です。「売上高=1日の走行距離における単価×1か月の営業日数」や「人件費=時給×1日の勤務時間×1か月の勤務日数」など、計算式を示すことにより、各数値の説得力を高められる可能性があります。

また、収支計画を作成するときのポイントは「内訳を明確にすること」です。「人件費」「駐車場代」「支払利息」「広告費」「通信費」など、経費の内訳を明確にすることにより、各経費の説得力を高められる可能性があります。

なお、運送業の場合、燃料費の変動に留意が必要です。中東情勢や為替相場など、さまざまな要因により、燃料費が変動するおそれがある関係上、売上原価も変動する可能性があるため、運送業の収支計画を作成したい人は念頭に置いておきましょう。

事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントも押さえておく

融資を受けたい場合、全業種に共通するポイントがあります。創業予定の業種にかかわらず、融資の審査時に金融機関から確認される可能性がある要素となるため、事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントを確認してみましょう。

【全業種に共通するポイント】

ポイント 概要
自己資金 事業に使用する予定の資金。自己資金として認められる資金と認められない資金に留意が必要となる。
信用情報 信用取引における利用情報。ローンの利用履歴やクレジットカードの利用履歴など、創業者の信用情報が確認される。

全業種に共通するポイントとして挙げられるのは「自己資金」と「信用情報」です。融資の審査時に金融機関から確認される可能性がある要素となるため、事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントを確認してみましょう。

自己資金

全業種に共通するポイントのひとつは「自己資金」です。自己資金は事業に使用する予定の資金となる関係上、審査時に金融機関から確認される可能性があるため、運送業を創業予定の人は自己資金の概要を確認してみましょう。

【自己資金の概要】

項目 概要
自己資金として認められる傾向がある資金 ・預貯金
・退職金
・みなし自己資金
・資産の売却代金
自己資金として認められない傾向がある資金 ・タンス預金
・返済義務のあるお金

自己資金として認められる傾向がある資金として挙げられるのは「預貯金」です。「運送会社勤務時の給与」や「副業の収入」など、創業者の口座にコツコツと貯めた資金は金融機関から自己資金として認められる傾向があります。

一方、自己資金として認められない傾向がある資金として挙げられるのは「タンス預金」です。「自宅に保管していたお金」や「入出金履歴を確認できない資金」など、資金の出所が不明瞭な資金は金融機関から自己資金として認められない傾向があります。

なお、融資を申し込む場合、創業者の通帳コピーを提出することになります。金融機関に通帳コピーを提出することにより、その記帳内容から自己資金の額が確認されることになるため、運送業を創業予定の人は覚えておきましょう。

信用情報

全業種に共通するポイントのひとつは「信用情報」です。信用情報は信用取引における利用情報となる関係上、審査時に金融機関から確認される可能性があるため、運送業を創業予定の人は信用情報の概要を確認してみましょう。

【信用情報の概要】

項目 概要
信用情報として登録される情報 ・本人情報
・住宅ローンの利用状況
・カードローンの利用状況
・クレジットカードの利用状況など
信用情報として登録されない情報 ・納税の状況
・保有する資産
・預貯金の残高など

信用情報として登録される情報のひとつは「クレジットカードの利用状況」です。「利用額」「支払日」「支払遅延」など、クレジットカードの利用状況は信用情報として登録されるため、融資の審査において金融機関から確認される可能性があります。

また、信用情報として登録される情報のひとつは「住宅ローンの利用状況」です。「契約日」「借入残高」「返済遅延」など、住宅ローンの利用状況は信用情報として登録されるため、融資の審査において金融機関から確認される可能性があります。

なお、信用情報に異動情報が登録されている場合、審査を通過できないおそれがあります。「長期延滞」や「債務整理」など、異動情報が登録されている場合は審査を通過できず、融資を受けられないおそれがあるため、心当たりがある人は念頭に置いておきましょう。

ポイントを押さえた人は運送業に利用できる融資制度を確認する

運送業を創業する場合、創業融資制度を検討する余地があります。さまざまな機関が創業融資制度を用意している関係上、創業者の希望条件に合った融資制度を選択することになるため、ポイントを押さえた人は運送業の創業に利用できる融資制度を確認してみましょう。

【運送業の創業に利用できる融資制度の具体例】

融資制度 概要
日本政策金融公庫
「新規開業・スタートアップ支援資金」
<対象者>
・新たに事業を始める人
・事業開始後おおむね7年以内の人
<返済期間>
設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)
<融資限度額>
7,200万円
東京都中小企業制度融資
「創業」
<対象者>
・1か月以内に東京都内で創業しようとする個人
・創業した日から通算5年未満の個人など
<返済期間>
設備資金:10年以内(うち据置期間1年以内)
運転資金:7年以内(うち据置期間1年以内)
<融資限度額>
3,500万円
大阪府制度融資
「開業・スタートアップ応援資金」
<対象者>
・開業前の人
・開業後5年未満の人など
※ 事業開始前または事業開始後2か月未満の場合は創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要
<返済期間>
10年以内
<融資限度額>
3,500万円

運送業の創業に利用できる融資制度として挙げられるのは日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。「新たに事業を始める人」や「事業開始後おおむね7年以内の人」が対象となるため、運送業を創業する人は利用できる可能性があります。

また、運送業の創業に利用できる融資制度として挙げられるのは大阪府の制度融資「開業・スタートアップ応援資金」です。「開業前の人」や「開業後5年未満の人」が対象となるため、大阪府内において運送業を創業する人は利用できる可能性があります。

なお、事業用車両を購入したい場合、購入費用は設備資金に該当します。「軽バン」「冷蔵車」「大型トラック」など、事業用車両を購入する費用は設備資金に該当するため、融資制度を選択するときは資金使途を確認しておきましょう。

まとめ

運送業を創業する場合、ポイントは実現可能な運賃収入を試算することです。実現可能な運賃収入を試算することにより、収支計画の精度を高められる可能性があるため、運送業を創業予定の人は融資を受けるときのポイントとして押さえておきましょう。

運賃収入を試算した後は運送業を創業するための事業計画を策定することになります。融資を申し込む場合、審査における必要書類のひとつとして、金融機関から事業計画書の提出を求められるため、運賃収入を試算した人は事業計画を策定してみてください。

運送業を創業する場合、創業融資制度を検討する余地があります。さまざまな機関が創業融資制度を用意している関係上、創業者の希望条件に合った融資制度を選択することになるため、ポイントを押さえた人は運送業の創業に利用できる融資制度を確認してみましょう。

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