アパレルショップや雑貨店など、小売業として独立開業を目指している人の中には、金融機関から融資を受けることを検討している人もいますよね。その際、融資を受けられるかどうかが不安なことにより、融資を受けるときのポイントを知りたい人もいるでしょう。
当記事では、小売業における融資を受けるときのポイントを解説します。小売業の創業時におけるポイントに加え、全業種に共通するポイントも解説するため、小売業を創業予定の人は参考にしてみてください。
目次
ポイントは販売形態に応じて売上高を想定すること
小売業を創業する場合、ポイントは販売形態に応じて売上高を想定することです。販売形態に応じて売上高を想定することにより、現実的な利益を試算できる可能性があるため、小売業を創業予定の人は融資を受けるときのポイントとして押さえておきましょう。
【小売業における販売形態の具体例】
- 実店舗の場合
- ネットショップの場合
小売業における販売形態として挙げられるのは「実店舗」と「ネットショップ」です。販売形態に応じて売上高を想定することにより、現実的な利益を試算できる可能性があるため、小売業を創業予定の人はそれぞれの項目を確認してみましょう。
実店舗の場合
小売業における販売形態のひとつは「実店舗」です。実店舗を設けることにより、店舗の来店客に商品を販売する形態となるため、実店舗での販売を計画中の人は実店舗における売上高の計算方法を確認してみましょう。
【実店舗における売上高を想定するときのイメージ】
| 小売業の種類 | 1日あたりの来店数 | 購買率 | 客単価 | 1か月あたりの売上高(25日営業の場合) |
|---|---|---|---|---|
| 雑貨店 | 80人 | 40% | 3,000円 | 80人×40%×3,000円×25日=240万円 |
| 食料品店 | 120人 | 90% | 2,500円 | 120人×90%×2,500円×25日=675万円 |
| アパレルショップ | 90人 | 30% | 9,000円 | 90人×30%×9,000円×25日=608万円 |
| リサイクルショップ | 60人 | 50% | 2,000円 | 60人×50%×2,000円×25日=150万円 |
| コンビニエンスストア | 300人 | 98% | 800円 | 300人×98%×800円×25日=588万円 |
実店舗の場合、売上高を左右する要素のひとつは購買率です。購買率は来店数のうち、商品を購入した人の割合を示す指標となる関係上、購買率が高ければ高いほど売上高が増えるため、店舗の立地や客層をもとに実現可能性のある購買率を設定することになります。
また、実店舗の場合、売上高を左右する要素のひとつは客単価です。客単価は顧客1人が1回の購入時に支払う平均額を示す関係上、客単価が高ければ高いほど、売上高が増えるため、取扱商品の価格をもとに実現可能性のある客単価を設定することになります。
なお、実店舗での売上高を想定する場合、売場の面積を基準にする方法もあります。「1坪あたりの売上高×売場面積」の計算式より、売上高を試算する方法もあるため、実店舗での売上高を想定するときは複数の計算方法を活用することも検討してみましょう。
ネットショップの場合
小売業における販売形態のひとつは「ネットショップ」です。インターネット上に販売サイトを設けることにより、サイトの利用者に商品を販売する形態となるため、ネットショップでの販売を計画中の人はネットショップにおける売上高の計算方法を確認してみましょう。
【ネットショップにおける売上高を想定するときのイメージ】
| 小売業の種類 | 1か月あたりのアクセス数 | 購入率 | 客単価 | 1か月あたりの売上高 |
|---|---|---|---|---|
| 雑貨店 | 8,000人 | 2.5% | 3,500円 | 8,000人×2.5%×3,500円=70万円 |
| 食料品店 | 10,000人 | 4.0% | 4,500円 | 10,000人×4.0%×4,500円=180万円 |
| 化粧品店 | 6,000人 | 3.5% | 7,000円 | 6,000人×3.5%×7,000円=147万円 |
| スポーツ用品店 | 5,000人 | 3.0% | 12,000円 | 5,000人×3.0%×12,000円=180万円 |
| アパレルショップ | 9,000人 | 1.5% | 10,000円 | 9,000人×1.5%×10,000円=135万円 |
ネットショップの場合、売上高を左右する要素のひとつは「1か月あたりのアクセス数」です。アクセス数は利用者が販売サイトを訪問した回数を示すため、SNSでの情報発信やSEO対策など、広報戦略をもとに実現可能性のあるアクセス数を設定することになります。
また、ネットショップの場合、売上高を左右する要素のひとつは「購入率(CVR)」です。購入率は販売サイトのアクセス数のうち、購入に至った割合を示すため、同業他社の実績や業界の傾向をもとに実現可能性のある購入率を設定することになります。
なお、小売業を創業する場合、ネットショップと実店舗を併用することを検討する余地があります。それぞれの特徴を活かして集客することにより、認知度や売上高を増やせる可能性があるため、小売業を創業したい人は併用することも検討してみましょう。
売上高を想定した後は事業計画を策定する
販売形態に応じた売上高を想定した後は小売業を創業するための事業計画を策定することになります。融資を申し込む場合、審査における必要書類のひとつとして、金融機関から事業計画書の提出を求められるため、売上高を想定した人は事業計画を策定してみましょう。
【事業計画における項目の具体例】
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 事業経験 | 創業者の職務経歴や実績を示す項目。創業する事業に関する経験を整理する。 |
| 経営方針 | 創業後の事業内容や経営方針を示す項目。商品や集客戦略を整理する。 |
| 収支計画 | 創業後の売上や利益の見込みを示す項目。数値の根拠を明確にする。 |
事業計画の項目として挙げられるのは「事業経験」「経営方針」「収支計画」です。融資を申し込む場合、審査における必要書類のひとつとして、金融機関から事業計画書の提出を求められるため、売上高を想定した人はそれぞれの項目を確認してみましょう。
事業経験
事業計画の項目として挙げられるのは「事業経験」です。事業経験は創業者の職務経歴や実績を示す項目となる関係上、小売業を創業する場合は小売業に関連する知識や技術を示すことになるため、事業計画を策定する人は事業経験を整理してみましょう。
【小売業における事業経験の具体例】
| 年月 | 具体例 |
|---|---|
| 平成26年3月 | 〇〇大学卒業 |
| 平成26年4月 | 株式会社〇〇(アパレル小売業)に入社 レディース衣料の販売を担当。入社後2年目で年間の個人売上1,000万円を達成し、社長賞を受賞。4年目には〇〇店の店長に昇格。スタッフ10名のシフト管理や在庫管理を担当。〇〇店の売上高を前年比10%増加させた。 |
| 令和2年4月 | 株式会社△△(セレクトショップ)に入社 エリアマネージャーとして、〇〇エリア3店舗における売上管理や販売戦略の立案、人材育成を担当。販売データの分析や取扱商品の見直しにより、〇〇エリアの利益率を前年比15%向上させた。リテールマーケティング(販売士)検定2級に合格。 |
| 令和8年10月 | 退職予定 |
事業経験を整理するときのポイントは「時系列に沿うこと」です。「アパレル小売業者に就職」「〇〇店の店長に昇格」「リテールマーケティング検定2級に合格」など、時系列に沿って整理することにより、小売業に関する経歴の抜け漏れを防げる可能性があります。
事業経験を整理するときのポイントは「具体的な実績を示すこと」です。「エリアマネージャーとして転職」「売上を10%増加」「利益率を15%向上」など、具体的な実績を示すことにより、創業後の経営に活かせる能力を伝えられる可能性があります。
なお、小売業の事業経験が浅い場合、経験不足の状況を補う必要があります。「販売職のアルバイト」や「資格の取得」など、経験不足の状況を補う行動を取ることにより、創業後の経営に役立つ可能性があるため、事業経験に不安がある人は覚えておきましょう。
経営方針
事業計画の項目として挙げられるのは「経営方針」です。経営方針は創業後の事業内容や経営方針を示す項目となる関係上、小売業を創業する場合は販売する商品や顧客獲得の戦略を示すことになるため、事業計画を策定する人は経営方針を検討してみましょう。
【小売業における経営方針の具体例】
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 商品 | ①オフィスカジュアル系のレディース衣類(ジャケット、シャツ、テーパードパンツなど) ②フェミニン系のレディース衣類(ワンピース、ブラウス、スカートなど) ③ファッション雑貨(パンプス、サンダル、バッグなど) |
| 客単価 | 9,000円 |
| 営業日数 | 25日/月 |
| 営業時間 | 11:00~21:00 |
| 特長 | 20代~40代の働く女性をターゲット層とする。仕事や会食など、第一印象が重視される場面に着用できる衣類を取り扱う。セレクトショップでの勤務経験を活かして、国内のアパレルメーカーやデザイナーから衣類を買い付けることにより、ターゲット層のニーズに合致した商品展開を行う。 |
| 市場分析 | JRの〇〇駅から徒歩5分の立地。食料品店や飲食店が密集している商店街となる関係上、通行量が多いため、認知度を高めやすい。女性向けのアパレルショップは数店舗あるが、低価格帯の店舗や若年層向けのアパレルショップが多いため、ターゲット層や商品展開の違いにより、差別化を図る。 |
| 集客方法 | 創業前からInstagramを活用することにより、入荷商品やコーディネート例を発信する。InstagramのDMによる問い合わせにも対応し、顧客との接点を増やす。創業時は〇〇駅を利用する女性を対象としてフライヤーを配布。近隣の飲食店にもフライヤーを置いていただくことにより、認知度を上げる。 |
経営方針を検討するときのポイントは「強みを明確にすること」です。「働く女性をターゲット層とする点」や「デザイナーから衣類を買い付ける点」など、その店舗ならではの強みを明確にすることにより、競合業者と差別化できる可能性があります。
また、経営方針を検討するときのポイントは「具体的な戦略を示すこと」です。「コーディネート例を発信する点」や「フライヤーを配布する点」など、経営における具体的な戦略を示すことにより、売上の実現性を伝えられる可能性があります。
なお、小売業の場合、販売する商品によっては許認可が必要です。「古物商許可」「菓子製造業許可」「医薬品販売業許可」「酒類販売業免許」など、許認可が必要となる商品があるため、気になる人は必要となる許認可を確認しておきましょう。
収支計画
事業計画の項目として挙げられるのは「収支計画」です。収支計画は創業後の売上や利益の見込みを示す項目となる関係上、それぞれの数値の根拠を明確にする必要があるため、事業計画を策定する人は収支計画を作成してみましょう。
【小売業における収支計画の具体例】
| 項目 | 創業時 | 軌道に乗った後 | 根拠 | |
|---|---|---|---|---|
| ①売上高 | 270万円 | 405万円 | <創業時> ①売上高:40人×30%×9,000円×25日=270万円 ②売上原価:原価率65%(勤務時の経験を参考) ③人件費:パート従業員1人 時給1,300円×8時間×25日=26万円 家賃:15万円 支払利息:400万円×年3.0%÷12=1万円 その他:通信費、消耗品費、広告宣伝費など計20万円 <軌道に乗った後> ①売上高:60人×30%×9,000円×25日=405万円 ②売上原価:創業時の原価率を採用 ③その他:広告宣伝費を2万円増加 |
|
| ②売上原価 | 176万円 | 263万円 | ||
| 経費 | 人件費 | 26万円 | 26万円 | |
| 家賃 | 15万円 | 15万円 | ||
| 支払利息 | 1万円 | 1万円 | ||
| その他 | 20万円 | 22万円 | ||
| ③合計 | 62万円 | 64万円 | ||
| 利益 ①-②-③ |
32万円 | 78万円 | ||
収支計画を作成するときのポイントは「計算式を示すこと」です。「売上高=来店数×購買率×客単価×1か月の営業日数」や「人件費=時給×1日の勤務時間×1か月の勤務日数」など、計算式を示すことにより、各数値の説得力を高められる可能性があります。
また、収支計画を作成するときのポイントは「内訳を明確にすること」です。「人件費」「家賃」「支払利息」「通信費」「広告宣伝費」など、経費の内訳を明確にすることにより、各経費の説得力を高められる可能性があります。
なお、小売業の場合、キャッシュレス決済による入金サイクルに注意が必要です。「クレジットカード」や「QRコード」など、キャッシュレス決済の導入により、売上発生から入金までに時間がかかる可能性があるため、収支計画を作成するときは留意しましょう。
事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントも押さえておく
創業時に融資を受けたい場合、全業種に共通するポイントがあります。創業予定の業種にかかわらず、融資の審査時に金融機関から確認される可能性があるため、事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントを確認してみましょう。
【全業種に共通するポイント】
| ポイント | 概要 |
|---|---|
| 自己資金 | 事業に使用する予定の資金。創業者名義の口座における預貯金や勤務先における退職金など、創業者の自己資金が確認される。 |
| 信用情報 | 信用取引における利用情報。ローンの利用履歴やクレジットカードの利用履歴など、創業者の信用情報が確認される。 |
全業種に共通するポイントとして挙げられるのは「自己資金」と「信用情報」です。融資の審査時に金融機関から確認される可能性があるため、事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントを確認してみましょう。
自己資金
全業種に共通するポイントのひとつは「自己資金」です。自己資金は事業に使用する予定の資金となる関係上、審査時に金融機関から確認される可能性があるため、小売業を創業予定の人は自己資金の概要を確認してみましょう。
【自己資金の概要】
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 自己資金として認められる傾向がある資金 | ・預貯金 ・退職金 ・みなし自己資金 ・資産の売却代金 |
| 自己資金として認められない傾向がある資金 | ・タンス預金 ・返済義務のあるお金 |
自己資金として認められる傾向がある資金として挙げられるのは「預貯金」です。「セレクトショップ勤務時の給与」や「副業による収入」など、創業者名義の口座にコツコツと貯めた資金は金融機関から自己資金として認められる傾向があります。
一方、自己資金として認められない傾向がある資金として挙げられるのは「タンス預金」です。「自宅に保管していたお金」や「入出金履歴を確認できない資金」など、資金の出所が不明瞭な資金は金融機関から自己資金として認められない傾向があります。
自己資金は小売業の創業に向けた計画性を示す材料のひとつとなります。小売業の創業に向けて計画的に自己資金を積み立てている場合、創業に向けた計画性の根拠となる可能性があるため、小売業を創業予定の人はその前提を踏まえておきましょう。
信用情報
全業種に共通するポイントのひとつは「信用情報」です。信用情報は信用取引における利用情報となる関係上、審査時に金融機関から確認される可能性があるため、小売業を創業予定の人は信用情報の概要を確認してみましょう。
【信用情報の概要】
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 信用情報として登録される情報 | ・本人情報 ・住宅ローンの利用状況 ・カードローンの利用状況 ・クレジットカードの利用状況など |
| 信用情報として登録されない情報 | ・納税の状況 ・保有する資産 ・預貯金の残高など |
信用情報として登録される情報として挙げられるのは「クレジットカードの利用状況」です。「利用額」「支払日」「支払遅延」など、クレジットカードの利用状況は信用情報として登録されるため、融資の審査において金融機関から確認される可能性があります。
また、信用情報として登録される情報として挙げられるのは「住宅ローンの利用状況」です。「契約日」「借入残高」「返済遅延」など、住宅ローンの利用状況は信用情報として登録されるため、融資の審査において金融機関から確認される可能性があります。
信用情報は創業者の返済能力や信用力を判断される材料のひとつと考えられます。「長期延滞」や「代位弁済」など、信用情報に異動情報が登録されている場合は審査を通過できず、融資を受けられないおそれがあるため、信用情報に不安がある人は留意しておきましょう。
ポイントを押さえた人は小売業に利用できる融資制度を確認する
小売業を創業する場合、創業融資制度を検討する余地があります。さまざまな機関が創業融資制度を用意している関係上、創業者の希望条件に合った融資制度を選択することになるため、ポイントを押さえた人は小売業の創業に利用できる融資制度を確認してみましょう。
【小売業の創業に利用できる融資制度の具体例】
| 融資制度 | 概要 |
|---|---|
| 日本政策金融公庫 「新規開業・スタートアップ支援資金」 |
<対象者> ・新たに事業を始める人 ・事業開始後おおむね7年以内の人 <返済期間> 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内) 運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内) <融資限度額> 7,200万円 |
| 東京都中小企業制度融資 「創業」 |
<対象者> ・1か月以内に東京都内で創業しようとする個人 ・創業した日から通算5年未満の個人など <返済期間> 設備資金:10年以内(うち据置期間1年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間1年以内) <融資限度額> 3,500万円 |
| 大阪府制度融資 「開業・スタートアップ応援資金」 |
<対象者> ・開業前の人 ・開業後5年未満の人など ※ 事業開始前または事業開始後2か月未満の場合は創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要 <返済期間> 10年以内 <融資限度額> 3,500万円 |
小売業の創業に利用できる融資制度のひとつは日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。「新たに事業を始める人」や「事業開始後おおむね7年以内の人」が対象となるため、小売業を創業する人は利用できる可能性があります。
また、小売業の創業に利用できる融資制度のひとつは大阪府の制度融資「開業・スタートアップ応援資金」です。「開業前の人」や「開業後5年未満の人」が対象となるため、大阪府内において小売業を創業する人は利用できる可能性があります。
なお、創業時の場合、信用保証協会による保証付き融資も選択肢となります。信用保証協会が債務を保証することにより、事業実績の乏しい創業期でも融資を受けやすくする仕組みとなるため、融資制度を探すときは選択肢のひとつとして検討してみましょう。
まとめ
小売業を創業する場合、ポイントは販売形態に応じて売上高を想定することです。販売形態に応じて売上高を想定することにより、現実的な利益を試算できる可能性があるため、小売業を創業予定の人は融資を受けるときのポイントとして押さえておきましょう。
販売形態に応じた売上高を想定した後は小売業を創業するための事業計画を策定することになります。融資を申し込む場合、審査における必要書類のひとつとして、金融機関から事業計画書の提出を求められるため、売上高を想定した人は事業計画を策定してみてください。
創業時に融資を受けたい場合、全業種に共通するポイントがあります。創業予定の業種にかかわらず、融資の審査時に金融機関から確認される可能性があるため、事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントを確認してみましょう。