【介護事業版】融資を受けるときのポイントを解説

訪問介護やデイサービスなど、介護事業の開業を目指している人の中には、金融機関から融資を受けることを検討している人もいますよね。その際、融資を受けられるかどうかが不安なことにより、融資を受けるときのポイントを知りたい人もいるでしょう。

当記事では、介護事業として融資を受けるときのポイントを解説します。介護事業を創業するときのポイントに加え、全業種に共通するポイントも解説するため、介護事業の創業時に融資を受けたい人は参考にしてみてください。

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ポイントは介護事業の特性を踏まえて収入の根拠を示すこと

介護事業の創業時に融資を受ける場合、ポイントは介護事業の特性を踏まえて収入の根拠を示すことです。介護保険制度に基づいてサービスを提供する関係上、介護業界特有の収入の算出方法があるため、介護事業で融資を受けたい人はその前提を踏まえておきましょう。

【収入の根拠を示す工程の具体例】

  • 対応能力から利用者数を見積もる
  • 介護報酬の仕組みを理解する

収入の根拠を示す工程として挙げられるのは「対応能力から利用者数を見積もること」と「介護報酬の仕組みを理解すること」です。工程を押さえることにより、融資の申込準備を進められるため、介護事業で融資を受けたい人は各工程を確認してみましょう。

対応能力から利用者数を見積もる

介護事業で融資を受ける場合、事業所の対応能力から利用者数を見積もることになります。受け入れられる利用者数は事業所の対応能力によって異なるため、介護事業で融資を受けたい人は事業所の対応能力を踏まえて利用者数を見積もってみましょう。

【利用者数を見積もるときのイメージ】

介護サービスの種類 利用者数の想定方法 利用者数イメージ
訪問介護 介護職員×1人あたりの担当人数 5人×20人=100人
通所介護や入所介護 施設の定員×稼働率 20人×60%=12人
居宅介護支援 ケアマネジャー数×1人あたりの担当人数 3人×15人=45人

たとえば、通所介護の場合は「施設の定員×稼働率」の計算式により、利用者数を見積もることができます。施設の定員は施設規模や人員基準などの条件から想定することになりますが、稼働率は統計や周辺施設の稼働率などの状況から想定することになります。

また、居宅介護支援の場合は「ケアマネジャー数×1人あたりの担当可能人数」の計算式により、利用者数を見積もることができます。ケアマネジャーの有資格者が各利用者を担当する仕組みとなるため、ケアマネジャー数から利用者数を見積もってみてください。

なお、創業予定地の要介護認定者数を知りたい場合、地方自治体の公式サイトから確認できる可能性があります。利用者数を見積もるときの参考になるため、利用者数を見積もるときは創業予定地周辺の地方自治体の公式サイトを確認してみましょう。

介護報酬の仕組みを理解する

介護事業で融資を受ける場合、介護報酬の仕組みを理解することになります。介護事業の利用料は原則として1割~3割を利用者から受け取り、残りを介護保険から給付されることになるため、介護事業で融資を受けたい人は介護報酬の仕組みを理解しておきましょう。

【介護報酬の仕組み】

項目 概要
計算式 介護報酬の請求額=「各サービスの単位数」×「1単位あたりの単価」
入金までの流れ ①利用者との契約

②サービスの提供

③利用実績の集計

④国保連への請求

⑤介護報酬の入金

介護報酬は「各サービスの単位数×1単位あたりの単価」の計算式から算出できます。単位数は提供時間や要介護度など、サービスごとに定められた条件をもとに算定される一方、1単位あたりの単価は10円が基本ですが、地域区分やサービス内容によって異なります。

また、介護報酬の仕組みを理解するときは入金までの流れを確認する必要があります。介護サービスを提供した場合、サービス提供月の翌月10日までに国民健康保険団体連合会(国保連)に請求することにより、審査を経て、介護報酬が入金される流れになります。

なお、介護報酬は原則としてサービス提供月の翌々月に入金されます。サービス提供から介護報酬が入金されるまでの運転資金を確保する必要があるため、介護事業で融資を受けたい人は入金時期を踏まえた資金繰りを考慮しつつ、借入希望額を検討してみましょう。

収入の根拠を明確にした後は事業計画を策定する

収入の根拠を明確にした後は融資を受けるための事業計画を策定することになります。融資を申し込む場合、審査の必要書類として、金融機関から事業計画書の提出を求められることがあるため、介護事業で融資を受けたい人は事業計画を策定してみましょう。

【事業計画における項目の具体例】

項目 概要
事業経験 創業者の職務経歴や実績を示す項目。創業する事業に関する経験を整理する。
経営方針 創業後の方向性を示す項目。サービス内容や利用者の獲得方法を整理する。
収支計画 創業後の売上や利益の見込みを示す項目。数値の根拠を明確にする。

事業計画の項目として挙げられるのは「事業経験」「経営方針」「収支計画」です。事業計画の項目を確認しておくことにより、段階的に事業計画の策定を進められる可能性があるため、介護事業で融資を受けたい人はそれぞれの項目の概要を確認してみましょう。

事業経験

事業計画の項目として挙げられるのは「事業経験」です。事業経験は創業者の職務経歴や実績を示す項目となる関係上、介護事業を創業する場合は介護事業に関連する知識や技術を示すことになるため、まずは事業経験を整理してみましょう。

【介護事業における事業経験の具体例】

年月 具体例
平成30年3月 〇〇大学卒業
平成30年4月 社会福祉法人〇〇会(特別養護老人ホーム事業)入社
身体介助、生活援助、レクリエーションなど、入所者の介護業務に従事した。入社4年目にユニットリーダーに就任。職員の業務管理や入所者のケアプラン検討への参加、家族との調整など、リーダーとしての管理業務を担当した。
令和5年10月 株式会社〇〇ケアステーション(訪問介護事業)入社
訪問介護職員として、利用者宅を訪問し、身体介護や生活援助などの介護業務に従事。令和6年に介護職員実務者研修を修了後、サービス提供責任者に就任。利用者や家族との調整、訪問介護員のシフト管理、新規利用者の獲得に向けた営業活動を行った。
令和8年11月 退職後、訪問介護事業所を設立予定

事業経験を整理するときのポイントは、時系列に沿って整理することです。「社会福祉法人への入社」「訪問介護事業者に転職」「サービス提供責任者に就任」など、時系列に沿って整理することにより、介護事業に関する経歴の抜け漏れを防げる可能性があります。

また、介護事業の事業経験を整理するときは、具体的な実績を盛り込むこともポイントです。「介護職員実務者研修の修了」や「利用者獲得の営業活動」など、具体的な実績を盛り込むことにより、自身の経験や能力を金融機関に伝えやすくなります。

なお、介護事業に関する資格を保有している場合、その情報も記載することになります。「介護福祉士」や「主任介護支援専門員」など、保有資格は創業後に活かせる能力を示す材料となる可能性があるため、事業経験を整理するときは保有資格を確認しておきましょう。

経営方針

事業計画の項目として挙げられるのは「経営方針」です。経営方針は創業後の事業内容や経営の方向性を示す項目となる関係上、介護事業を創業する場合はサービス内容や利用者の獲得方法を示すことになるため、事業経験を整理した後は経営方針を検討してみましょう。

【介護事業における経営方針の具体例】

項目 具体例
サービス 訪問介護サービスの提供。ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行う。
営業日数 25日/月
営業時間 9:00~17:00(土日祝は休業)
特長 ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、食事の介助、排せつの介助、入浴の介助、家事援助などのサービスを提供する。利用者や家族の気持ちを傾聴することを重視する。一人ひとりの課題を把握することにより、生活状況に合わせたサービスを検討する。希望に応じて介護保険外の支援も行う。
市場分析 要介護認定を受けている高齢者が一定数いる地域。訪問介護サービスへの需要が見込まれる半面、競合する事業所が増えつつある。創業者の約10年の介護経験を活かし、生活状況や希望に合わせたきめ細かなサービスを提供することにより、競合する事業所との差別化を図る。
利用者の獲得方法 現在の勤務先から10人程度の利用者を引き継ぐ予定。新規の利用者獲得では、居宅介護支援事業所や地域包括支援センター、医療機関を訪問し、紹介を受けられるように関係づくりを進める。利用者の家族が介護サービスを探すケースを想定し、公式サイトからの情報発信も行う。

経営方針を検討するときのポイントは強みを明確にすることです。「利用者や家族の気持ちを傾聴すること」や「約10年の介護経験」など、その介護事業所ならではの強みを明確にすることにより、競合する介護事業所と差別化できる可能性があります。

また、強みを明確にすることに加え、具体的な戦略を示すこともポイントです。「利用者の引き継ぎ予定」や「地域包括支援センターとの関係づくり」など、経営における具体的な戦略を盛り込むことにより、収入の実現性を伝えることができます。

なお、経営方針を検討する場合、専門性を活かすことも方法のひとつです。「認知症ケア」や「リハビリ特化」など、サービスの特徴を明確にすることにより、競合する介護事業所と差別化できる可能性があるため、経営方針を検討するときは留意しておきましょう。

収支計画

事業計画の項目として挙げられるのは「収支計画」です。収支計画は創業後の売上や利益の見込みを示す項目となる関係上、それぞれの数値の根拠を明確にする必要があるため、経営方針を検討した人は収支計画を作成してみましょう。

【介護事業における収支計画の具体例】

項目 創業時 軌道に乗った後 根拠
①売上高 175万円 210万円 <創業時>

①売上高:1人あたりの月間介護報酬35,000円×月間利用者50人=175万円

②売上原価:175万円×原価率8%=14万円

原価率:勤務時の原価率を採用

③人件費:代表者1人、正社員4人

代表者の役員報酬:30万円

正社員の給与:25万円×4人=100万円

家賃:7万円

支払利息:400万円×年3.0%÷12=1万円

その他:交通費、研修費、水道光熱費など計10万円

<軌道に乗った後>

①売上高:1人あたりの月間介護報酬35,000円×月間利用者60人=210万円

②売上原価:210万円×8%=17万円

③その他:利用者数の増加に伴い、交通費が5万円増加したため計15万円

②売上原価 14万円 17万円
経費 人件費 130万円 130万円
家賃 7万円 7万円
支払利息 1万円 1万円
その他 10万円 15万円
③合計 148万円 153万円
利益

①―②―③

13万円 40万円

収支計画を作成するときのポイントは「計算式を示すこと」です。「売上高=利用者1人あたりの月間介護報酬×1か月あたりの利用者数」や「人件費=1か月あたりの給与×従業員数」など、計算式を示すことにより、各数値の説得力を高められる可能性があります。

また、計算式を示すことに加え、内訳を明確にすることもポイントです。「人件費」「支払利息」「交通費」「研修費」「水道光熱費」など、経費の内訳をひとつひとつ明確に示すことにより、各経費の根拠を伝えることができます。

なお、介護事業所は自治体から指定を受ける必要がある関係上、設備基準や人員基準を満たすことが求められます「設備費」や「人件費」など、基準を満たすために費用がかかることが考えられるため、介護事業で融資を受けたい人は念頭に置いておきましょう。

事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントも押さえておく

創業時に融資を受ける場合、全業種に共通するポイントがあります。創業予定の業種にかかわらず、融資の審査時に金融機関から確認される可能性があるため、事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントを確認してみましょう。

【全業種に共通するポイント】

ポイント 概要
自己資金 事業に使用する予定の資金。創業者名義の口座における預貯金や勤務先における退職金など、創業者の自己資金が確認される。
信用情報 信用取引における利用情報。ローンの利用履歴やクレジットカードの利用履歴など、創業者の信用情報が確認される。

全業種に共通するポイントとして挙げられるのは「自己資金」と「信用情報」です。創業者の自己資金や信用情報に懸念がある場合、審査結果に影響を及ぼすおそれがあるため、事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントとして各項目を確認してみましょう。

自己資金

全業種に共通するポイントのひとつは「自己資金」です。自己資金は事業に使用する予定の資金となる関係上、審査時に金融機関から確認される可能性があるため、介護事業の創業時に融資を受けたい人は自己資金の概要を確認してみましょう。

【自己資金の概要】

項目 概要
自己資金として認められる傾向がある資金
  • 預貯金
  • 退職金
  • みなし自己資金
  • 資産の売却代金
自己資金として認められない傾向がある資金
  • タンス預金
  • 返済義務のあるお金

自己資金として認められる傾向がある資金として挙げられるのは、預貯金です。「デイサービス勤務時の給与」や「副業による収入」など、創業者名義の口座にコツコツと貯めた資金は金融機関から自己資金として認められる傾向があります。

一方、自己資金として認められない傾向がある資金には、注意が必要です。「自宅に保管していたお金」や「入出金履歴を確認できない資金」など、出所が不明瞭な資金は金融機関から自己資金として認められないことが考えられます。

自己資金は介護事業の創業に向けた計画性を示す材料のひとつとなります。介護事業の創業に向けて計画的に自己資金を積み立てている場合、創業に向けた計画性の根拠となる可能性があるため、介護事業の創業時に融資を受けたい人はその前提を踏まえておきましょう。

信用情報

全業種に共通するポイントのひとつは「信用情報」です。信用情報は信用取引における利用情報となる関係上、審査時に金融機関から確認される可能性があるため、介護事業の創業時に融資を受けたい人は信用情報の概要を確認してみましょう。

【信用情報の概要】

項目 概要
自己資金として認められる傾向がある資金
  • 預貯金
  • 退職金
  • みなし自己資金
  • 資産の売却代金
自己資金として認められない傾向がある資金
  • タンス預金
  • 返済義務のあるお金

信用情報として登録される情報として挙げられるのは、クレジットカードの利用状況です。「利用額」「支払日」「支払遅延」など、クレジットカードの利用状況は信用情報として登録されるため、融資の審査において金融機関から確認される可能性があります。

また、住宅ローンを利用している場合、住宅ローンの返済状況も信用情報に記録されます。「契約日」「借入残高」「返済遅延」など、返済状況を金融機関から確認されることになるため、融資を受けたい人は返済状況に問題がないかどうかを確認することが必要です。

信用情報は創業者の返済能力や信用力を判断する材料のひとつと考えられます。「長期延滞」や「代位弁済」など、信用情報に異動情報が登録されている場合は融資を受けられないおそれがあるため、信用情報に不安がある人は留意しておきましょう。

ポイントを押さえた人は介護事業に利用できる融資制度を確認する

介護事業の創業時に融資を受ける場合、あらゆる融資制度の中から選択することになります。介護事業者向けの融資制度や創業者向けの融資制度が選択肢となるため、ポイントを押さえた人は介護事業の創業時に利用できる融資制度を確認してみましょう。

【介護事業の創業に利用できる融資制度の具体例】

融資制度 概要
日本政策金融公庫
「ソーシャルビジネス支援資金」
<対象者>
・NPO法人
・保育サービス事業、介護サービス事業等を営む人
・社会的課題の解決を目的とする事業を営む人など
<返済期間>
設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)
<融資限度額>
7,200万円
日本政策金融公庫
「新規開業・スタートアップ支援資金」
<対象者>
・新たに事業を始める人
・事業開始後おおむね7年以内の人
<返済期間>
設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)
<融資限度額>
7,200万円
東京都中小企業制度融資
「創業」
<対象者>
・1か月以内に東京都内で創業しようとする個人
・創業した日から通算5年未満の個人など
<返済期間>
設備資金:10年以内(うち据置期間1年以内)
運転資金:7年以内(うち据置期間1年以内)
<融資限度額>
3,500万円
大阪府制度融資
「開業・スタートアップ応援資金」
<対象者>
・開業前の人
・開業後5年未満の人など
※ 事業開始前または事業開始後2か月未満の場合は創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要
<返済期間>
10年以内
<融資限度額>
3,500万円

介護事業の創業に利用できる融資制度のひとつは日本政策金融公庫の「ソーシャルビジネス支援資金」です。「ソーシャルビジネスを始める人」や「介護サービス事業を営む人」が対象となるため、介護事業の創業時に融資を受けたい人は利用できる可能性があります。

また、地方自治体の制度融資も介護事業の創業に利用することができます。東京都の「創業」や大阪府の「開業・スタートアップ応援資金」など、制度融資はその地域の創業者が対象となるため、融資を受けたい人は各地域の情報を確認してみてください。

なお、介護事業の創業後は独立行政法人福祉医療機構「WAM」の融資制度も検討する余地があります。「特別養護老人ホーム」や「ケアハウス」など、福祉施設を対象とした融資制度となるため、該当する人は予備知識として覚えておきましょう。

まとめ

介護事業の創業時に融資を受ける場合、ポイントは介護事業の特性を踏まえて収入の根拠を示すことです。介護保険制度に基づいてサービスを提供する関係上、介護業界特有の収入の算出方法があるため、介護事業で融資を受けたい人はその前提を踏まえておきましょう。

また、収入の根拠を明確にした後は融資を受けるための事業計画を策定することになります。融資を申し込む場合、審査の必要書類として、金融機関から事業計画書の提出を求められることがあるため、介護事業で融資を受けたい人は事業計画を策定してみてください。

介護事業の創業時に融資を受ける場合、あらゆる融資制度の中から選択することになります。介護事業者向けの融資制度や創業者向けの融資制度が選択肢となるため、ポイントを押さえた人は介護事業の創業時に利用できる融資制度を確認してみましょう。

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