Web広告代理店や広告制作会社など、広告業を開業予定の人の中には、金融機関から融資を受けることを検討している人もいますよね。広告業の事業内容によっては設備投資を抑えられる場合がありますが、事業に必要な資金ならば融資を受けられる可能性があります。
当記事では、広告業で融資を受けるときのポイントを解説します。広告業の創業時に融資を受けるときのポイントに加え、全業種に共通するポイントも解説するため、広告業の創業時に融資を受けたい人は参考にしてみてください。
目次
広告業で融資を受けるときのポイントは根拠のある収支計画を立てること
広告業の創業時に融資を受ける場合、ポイントは根拠のある収支計画を立てることです。根拠のある収支計画を立てることにより、事業の実現性を伝えられる可能性があるため、広告業の創業時に融資を受けたい人はポイントとして押さえておきましょう。
【根拠のある収支計画を立てるときの工程】
- 案件ごとに売上を試算する
- 案件ごとの経費を把握する
広告業の収支計画を立てるときの工程は「案件ごとに売上を試算すること」と「案件ごとの経費を把握すること」です。工程を押さえることにより、段階的に収支計画を立てられるため、広告業の創業時に融資を受けたい人は各項目を確認してみましょう。
案件ごとに売上を試算する
収支計画を立てるときの工程のひとつは案件ごとに売上を試算することです。広告業は事業内容に応じて売上の計算方法が異なるため、広告業の創業時に融資を受けたい人は想定している案件ごとに売上を試算してみましょう。
【案件ごとに売上を試算するときのイメージ】
| 事業内容 | 案件 | 売上のイメージ |
| 広告代理業 (初期費用を設定している場合) |
テレビCMの出稿代行 | 初期費用10万円+出稿手数料(広告主が負担する広告費200万円×20%)=50万円/件 |
| SNS広告の運用代行 | 初期費用5万円+運用手数料(広告主が負担する広告費50万円×20%)=15万円/件 | |
| リスティング広告の運用代行 | 初期費用3万円+運用手数料(広告主が負担する広告費30万円×20%)=9万円/件 | |
| 広告制作業 | 動画の制作 | 制作単価20万円×制作数2本=40万円/件 |
| バナーの制作 | 制作単価2万円×制作数10枚=20万円/件 | |
| フライヤーの制作 | 制作単価8万円×制作数1枚=8万円/件 |
たとえば、SNS広告の運用代行の場合は「初期費用+運用手数料」の計算式により、売上を試算する方法があります。SNS広告の運用代行では、広告主が負担する広告費に一定の割合を乗じて手数料を受け取る方法があるため、手数料率を設定することになります。
また、動画の制作の場合は「制作単価×制作数」の計算式により、売上を試算する方法があります。動画広告を作成する案件は動画の長さや制作内容に応じて、1本あたりの制作単価を設定する方法があるため、制作単価と制作数をもとに売上を算出してみてください。
なお、Web広告の場合、広告費は料金体系によって異なります。「クリック課金方式」「インプレッション課金方式」「掲載保証型」など、出稿先の料金体系によって広告費が異なるため、運用手数料を試算するときは留意しておきましょう。
案件ごとの経費を把握する
収支計画を立てるときの工程のひとつは案件ごとの経費を把握することです。広告業は事業内容に応じて必要となる経費が異なるため、広告業の創業時に融資を受けたい人は想定している案件ごとの経費を把握しておきましょう。
【案件ごとの経費を把握するときの具体例】
| 事業内容 | 案件 | 必要経費の具体例 |
| 広告代理業 (初期費用を設定している場合) |
テレビCMの出稿代行 | 外注費、交通費、通信費など |
| SNS広告の運用代行 | 広告運用ツール費、クリエイティブ制作費、外注費など | |
| リスティング広告の運用代行 | 広告運用ツール費、キーワード調査ツール費、外注費など | |
| 広告制作業 | 動画の制作 | 撮影費、編集ソフト利用料など |
| バナーの制作 | デザインソフト利用料、画像素材費など | |
| フライヤーの制作 | デザインソフト利用料、印刷費など |
たとえば、SNS広告の運用代行の場合、経費として挙げられるのは「外注費」です。SNS広告やリスティング広告などの広告代理業では、広告クリエイティブの制作を委託業者に外注する方法があるため、事業方針を踏まえて経費を試算することになります。
また、フライヤーの制作の場合は「デザインソフト利用料」や「画像素材費」といった経費が必要です。フライヤーや動画広告などの広告制作業では、制作数が増えるほど、必要経費も増える可能性があるため、想定する制作数を踏まえて経費を試算してみてください。
なお、広告業の場合、案件によっては売上の入金までに時間がかかるおそれがあります。出稿先に支払う媒体費の立替払いや外注費の支払いなど、売上の入金より支払いが先に必要となることがあるため、月々の資金繰りを想定しつつ、運転資金を準備しておきましょう。
収支計画を立てた後は事業計画書を作成する
広告業の収支計画を立てた後は事業計画書に落とし込むことになります。融資を申し込む場合、審査の必要書類として、金融機関から事業計画書の提出を求められることがあるため、広告業の創業時に融資を受けたい人は事業計画書を作成してみましょう。
【事業計画における項目の具体例】
| 項目 | 概要 |
| 事業経験 | 創業者の職務経歴や実績を示す項目。創業する事業に関する経験を整理する。 |
| 経営方針 | 創業後の方向性を示す項目。提供するサービスや集客方法を整理する。 |
| 開業資金 | 創業時の必要資金を示す項目。必要資金の内訳や調達方法を整理する。 |
事業計画書の項目として挙げられるのは「事業経験」「経営方針」「開業資金」です。事業計画書の項目を確認することにより、段階的に事業計画書を作成できるため、広告業の創業時に融資を受けたい人はそれぞれの項目の概要を確認してみましょう。
事業経験
事業計画書の項目として挙げられるのは「事業経験」です。事業経験は創業者の職務経歴や実績を伝える項目となる関係上、広告業を創業する人は広告業に関する経験を伝える必要があるため、まずは事業経験を記入してみましょう。
【広告業における事業経験の具体例】
| 年月 | 具体例 |
| 平成21年3月 | 〇〇大学卒業 |
| 平成21年4月 | 株式会社〇〇(総合広告代理店)入社 メディア部門に配属し、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など、マスメディアにおける広告枠の買付を担当。クライアントの状況に応じて最適な媒体を選定することにより、広告効果の向上に貢献した。入社5年目からマーケティング部門に異動。市場調査、成果分析などの業務に従事した。 |
| 令和2年4月 | 株式会社〇〇(IT関連企業)入社 マーケティング部でWeb広告運用を担当。Google広告、LINEヤフー広告、Instagram広告において、月間10社程度の運用に従事した。令和4年からマネージャーとなり、ターゲティングや入札単価の調整、広告クリエイティブの改善を実施。担当部門の営業利益を前年比15%増加させた。また、部下13人の指導や管理も行っている。 |
| 令和8年12月 | 退職後、Web広告代理店を創業予定 |
事業経験を記入するときのポイントは、時系列に沿って整理することです。「総合広告代理店に入社」「広告枠の買付を担当」「Web広告運用を担当」など、時系列に沿って整理することにより、広告業に関する経歴の抜け漏れを防げる可能性があります。
また、事業経験を記入するときは、具体的な実績を盛り込むこともポイントです。「月間10社程度の広告運用に従事」や「営業利益を前年比15%増加」など、具体的な実績を盛り込むことにより、広告業に関する経験や能力を金融機関に伝えやすくなります。
なお、資格を保有している場合、その旨も記入する余地があります。「ネットマーケティング検定」や「ウェブデザイン技能士」など、保有資格を伝えることにより、創業者としての知識やスキルを伝えられる可能性があるため、該当する人は覚えておきましょう。
経営方針
事業計画書の項目として挙げられるのは「経営方針」です。経営方針は創業後の事業内容や経営の方向性を示す項目となる関係上、広告業を創業する場合はサービス内容や集客方法を示すことになるため、事業経験を記入した後は経営方針を記入してみましょう。
【広告業における経営方針の具体例】
| 項目 | 具体例 |
| 事業内容 | Web広告の運用代行サービスを提供する。 |
| 取扱商品 | ①リスティング広告の運用代行 ②SNS広告の運用代行 ③動画広告の運用代行 |
| 営業日数 | 20日(定休日:月火) |
| 営業時間 | 10:00~19:00 |
| 特長 | 創業者は総合広告代理店およびIT関連企業において、約17年間にわたり広告業に携わってきた。そのため、クライアントの課題の整理、広告媒体の選定、広告配信、広告の成果分析まで一貫して対応できる。クリック数、コンバージョン数、広告費用対効果などの指標を分析し、継続的に改善することにより、クライアントの広告効果の向上を支援する。クライアント数に応じて、広告制作を外注する予定。 |
| 市場分析 | Web広告市場は拡大傾向が続いている。加えて、中小企業は社内にノウハウがない場合もあるため、外注する需要が見込まれる。人材やノウハウの不足により、広告効果の分析や運用改善ができていない中小企業や個人事業主をターゲットとする。競合業者は複数存在するが、特定の業務に特化している場合があるため、一貫した支援をアピールすることにより、差別化を目指す。 |
| 集客方法 | 広告業界で培った人脈を活用できるため、紹介から顧客を獲得する見込み。新規開拓においては、公式サイトやSNSを通じてWeb広告の運用事例、広告効果を改善するためのノウハウを発信する。初回の無料相談サービスを展開し、無料相談から契約につなげる。また、中小企業の経営者やマーケティング担当者が参加する異業種交流会やセミナーに参加することにより、営業活動を行う。 |
経営方針を記入するときのポイントは強みを明確にすることです。「広告業における17年間の経験」や「課題整理から成果分析まで一貫した支援」など、強みを明確にすることにより、競合する広告業者と差別化できる可能性があります。
また、強みを明確にすることに加え、具体的な戦略を示すこともポイントです。「無料相談サービスの展開」や「異業種交流会やセミナーへの参加」など、経営における具体的な戦略を盛り込むことにより、売上の実現性を伝えることができます。
なお、業務の外注を予定している場合、経営方針に盛り込むことになります。「広告クリエイティブの制作」や「コピーライティング」など、業務の一部を外注するときは外注先や外注内容を整理しておく必要があるため、経営方針を記入するときは留意しておきましょう。
開業資金
事業計画書の項目として挙げられるのは「開業資金」です。開業資金は創業時に必要となる資金を示す項目となる関係上、必要資金の内訳や想定している調達方法を示すことになるため、経営方針を検討した後は開業資金を試算してみましょう。
【広告業における開業資金の具体例】
| 項目 | 必要資金 | 見積先 | 金額 | 調達方法 | 金額 |
| 設備資金 | (内訳) パソコン購入費 ソフトウェア導入費 備品費 |
(内訳) A社 B社 C社 |
(内訳) 50万円 40万円 20万円 |
自己資金 | 70万円 |
| 親族から借入 | 20万円 | ||||
| 運転資金 | (内訳) 外注費(6か月分) 通信費(6か月分) ツール費(6か月分) 消耗品費(6か月分) 水道光熱費(6か月分) |
(内訳) 60万円 18万円 12万円 6万円 4万円 |
金融機関から借入 | 120万円 | |
| 合計 | 210万円 | 合計 | 210万円 | ||
開業資金を試算するときのポイントは設備資金と運転資金を区別することです。設備資金は設備導入に必要となる資金ですが、運転資金は事業の継続に必要となる資金となるため、創業後の数か月分の運転資金も含めて開業資金を試算する必要があります。
また、開業資金を試算するときは必要資金と資金調達額を一致させることもポイントです。「設備資金と運転資金の合計額」と「自己資金と借入希望額の合計額」を一致させることにより、資金計画の妥当性を伝えられる可能性があります。
広告業の事業内容によっては設備投資を抑えられる場合がありますが、開業に資金が必要となる人は融資を受けることを検討する余地があります。借入希望額の根拠を明確にすることにより、融資を受けられる可能性があるため、該当する人は留意しておきましょう。
事業計画書を作成した人は全業種に共通するポイントも押さえておく
創業時に融資を受ける場合、全業種に共通するポイントがあります。創業予定の業種にかかわらず、融資の審査時に金融機関から確認される項目となるため、事業計画書を作成した人は全業種に共通するポイントを確認してみましょう。
【全業種に共通するポイント】
| ポイント | 概要 |
| 自己資金 | 事業に使用する予定の資金。創業者名義の口座における預貯金や勤務先における退職金など、創業者の自己資金が確認される。 |
| 信用情報 | 信用取引における利用情報。ローンの利用履歴やクレジットカードの利用履歴など、創業者の信用情報が確認される。 |
全業種に共通するポイントとして挙げられるのは「自己資金」と「信用情報」です。創業者の自己資金や信用情報に懸念がある場合、審査結果に影響を及ぼすおそれがあるため、事業計画書を作成した人は全業種に共通するポイントとして各項目を確認してみましょう。
自己資金
全業種に共通するポイントのひとつは「自己資金」です。自己資金は事業に使用する予定の資金となる関係上、審査時に金融機関から確認される可能性があるため、広告業の創業時に融資を受けたい人は自己資金の概要を確認してみましょう。
【自己資金の概要】
| 項目 | 概要 |
| 自己資金として認められる傾向がある資金 |
|
| 自己資金として認められない傾向がある資金 |
|
自己資金として認められる傾向がある資金として挙げられるのは、預貯金です。「広告代理店勤務時の給与」や「副業による収入」など、創業者名義の口座にコツコツと貯めた資金は金融機関から自己資金として認められる傾向があります。
一方、自己資金として認められない傾向がある資金には、注意が必要です。「自宅に保管していたお金」や「入出金履歴を確認できない資金」など、出所が不明瞭な資金は金融機関から自己資金として認められないおそれがあります。
なお、自己資金は開業資金総額の2割から3割を目安とする考え方があります。日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」では、資金調達額に占める自己資金の割合が22.9%だったため、自己資金を準備するときは参考にしてみましょう。
信用情報
全業種に共通するポイントのひとつは「信用情報」です。信用情報は信用取引における利用情報となる関係上、審査時に金融機関から確認される可能性があるため、広告業の創業時に融資を受けたい人は信用情報の概要を確認してみましょう。
【信用情報の概要】
| 項目 | 概要 |
| 信用情報として登録される情報 |
|
| 信用情報として登録されない情報 |
|
信用情報として登録される情報として挙げられるのは、クレジットカードの利用状況です。「利用額」「支払日」「支払遅延」など、クレジットカードの利用状況は信用情報として登録されるため、融資の審査において金融機関から確認される可能性があります。
また、住宅ローンを利用している場合、住宅ローンの返済状況も信用情報に記録されます。「契約日」「借入残高」「返済遅延」など、返済状況を金融機関から確認されることになるため、融資を受けたい人は返済状況に問題がないかどうかを確認してみてください。
信用情報は創業者の返済能力や信用力を判断する材料のひとつと考えられます。「長期延滞」や「代位弁済」など、信用情報に異動情報が登録されている場合は審査結果に影響を及ぼすおそれがあるため、信用情報に不安がある人は留意しておきましょう。
ポイントを押さえた人は広告業に利用できる融資制度を確認する
広告業の創業時に融資を受ける場合、創業者向けの融資制度を検討する余地があります。さまざまな機関が創業者向けの融資制度を用意しているため、ポイントを押さえた人は広告業の創業に利用できる融資制度を確認してみましょう。
【広告業の創業に利用できる融資制度の具体例】
| 融資制度 | 概要 |
| 日本政策金融公庫 「新規開業・スタートアップ支援資金」 |
<対象者>
・新たに事業を始める人 ・事業開始後おおむね7年以内の人 <返済期間> 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内) 運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内) <融資限度額> 7,200万円 |
| 東京都中小企業制度融資 「創業」 |
<対象者> ・東京都内で創業しようとする具体的計画を有する個人 ・創業した日から通算5年未満の個人など <返済期間> 設備資金:10年以内(うち据置期間1年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間1年以内) <融資限度額> 3,500万円 |
| 大阪府制度融資 「開業・スタートアップ応援資金」 |
<対象者> ・開業前の人 ・開業後5年未満の人など ※事業開始前または事業開始後2か月未満の場合は創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要 <返済期間> 10年以内 <融資限度額> 3,500万円 |
広告業の創業に利用できる融資制度のひとつは日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。「新たに事業を始める人」や「事業開始後おおむね7年以内の人」が対象となるため、広告業の創業者は検討する余地があります。
また、地方自治体の制度融資も広告業の創業に利用することができます。東京都の「創業」や大阪府の「開業・スタートアップ応援資金」など、制度融資はその地域の創業者が対象となるため、融資を受けたい人は各地域の情報を確認してみてください。
なお、民間金融機関でも創業融資制度を展開している場合があります。「信用金庫」や「地方銀行」など、地域密着型の民間金融機関は地域の創業者支援に取り組んでいることがあるため、民間金融機関が気になる人は創業融資制度の有無を確認してみましょう。
まとめ
広告業の創業時に融資を受ける場合、ポイントは根拠のある収支計画を立てることです。根拠のある収支計画を立てることにより、事業の実現性を伝えられる可能性があるため、広告業の創業時に融資を受けたい人はポイントとして押さえておきましょう。
また、広告業の収支計画を立てた後は事業計画書に落とし込むことになります。融資を申し込む場合、審査の必要書類として、金融機関から事業計画書の提出を求められることがあるため、広告業の創業時に融資を受けたい人は事業計画書を作成してみてください。
創業時に融資を受ける場合、全業種に共通するポイントがあります。創業予定の業種にかかわらず、融資の審査時に金融機関から確認される項目となるため、事業計画書を作成した人は全業種に共通するポイントを確認してみましょう。