設備資金や運転資金など、開業資金を工面する人の中には、借入先の候補として日本政策金融公庫を検討している人もいますよね。その際、所定の審査に通過したことにより、日本政策金融公庫から借用証書が届いた人もいるでしょう。
当記事では、日本政策金融公庫における借用証書を解説します。記入項目に関する内容や添付書類に関する内容も解説するため、所定の審査に通過したことにより、日本政策金融公庫から借用証書が届いた人は参考にしてみてください。
借用証書とは金銭の借用を証明するための書類のこと
借用証書(読み方:しゃくようしょうしょ)とは、金銭の借用を証明するための書類のことです。日本政策金融公庫に限らず、金融機関との金銭の貸借が行われるときは必須となるため、日本政策金融公庫から創業融資を受ける人はその前提を踏まえておきましょう。
借用証書を作成する目的は借主と貸主の契約条件を明確にすることです。「借入日」「借用金額」「利率」「返済方法」「返済期間」など、借主と貸主の契約条件を借用証書に明記することにより、借主と貸主の双方における契約上の法的根拠となります。
また、借用証書が郵送されるのは所定の審査に通過した後です。所定の審査に通過した人は借用証書が郵送され、署名や押印などの必要事項を記入した後に返送し、受理されることにより、日本政策金融公庫との契約が成立する流れとなります。
なお、日本公庫電子契約サービスを利用する場合は借用証書が郵送されません。「電子契約手続きのお願い」と題したメールが送られ、そのメールに記載された「ログイン用URL」から契約条件を確認することになるため、該当する人は留意しておきましょう。
借用証書が届いた人は契約条件を確認する
日本政策金融公庫の借用証書には、金銭消費貸借契約に基づく契約条件が記載されています。借用証書にある契約条件は申込者ごとに異なるため、日本政策金融公庫から借用証書が届いた人は借用証書にある契約条件を確認してみましょう。
【借用証書にある契約条件の具体例】
- 借用金額
- 利率(年率)
- 元金支払方法
- 利息支払方法
借用証書にある契約条件のひとつは「利率」です。「借入当初の利率(年利)」や「一定期間経過後の利率(年利)」などの契約条件が記載され、利率の条件は申込者ごとに異なるため、借用証書が届いた人は利率に関する契約条件を確認することになります。
また、借用証書にある契約条件のひとつは「元金支払方法」です。「毎月の返済額」や「返済の回数」などの契約条件が記載され、元金支払方法の条件は申込者ごとに異なるため、借用証書が届いた人は元金支払方法に関する契約条件を確認することになります。
なお、借用証書が同封された郵便物には、その他の重要項目が記載された書類も同封されています。「ご契約内容お客様控え」や「特約条項」など、その他の重要項目が記載された書類も同封されているため、借用証書が届いた人は留意しておきましょう。
借用証書を書き始める人は記入項目を確認する
日本政策金融公庫の借用証書には、いくつかの記入項目があります。借用証書にある記入項目を確認することにより、記入漏れや誤記を防げる可能性があるため、借用証書を書き始める人は借用証書にある記入項目を確認しておきましょう。
【借用証書にある記入項目の具体例】
- 借主の署名
- 収入印紙の貼付
- 送金先口座の指定
借用証書にある記入項目として挙げられるのは「借主の署名」「収入印紙の貼付」「送金先口座の指定」です。必要となる作業は記入項目の内容次第となるため、借用証書を書き始める人はその前提を踏まえつつ、各項目の概要を押さえておきましょう。
借主の署名
日本政策金融公庫の借用証書における記入項目のひとつは「借主の署名」です。借主の署名は借主本人による署名や押印が必要となるため、借用証書を書き始める人はその前提を踏まえつつ、借主の署名の概要を押さえておきましょう。
【借主の署名の概要】
工程 | 概要 |
---|---|
①内容の確認 | 借用証書の記載内容を確認した後、署名欄の左上にあるチェックボックスにチェックマークを記入する。 |
②署名の記入 | 法人の場合は直筆またはゴム印による署名を行う。個人事業主の場合は直筆による署名を行う。 |
③実印の押印 | 署名の借主の欄にある右横に実印を押印し、借用証書の左上にある実印の欄に捨印として実印を押印する。 |
借主の署名における最初の工程は「内容の確認」です。「契約条件に関する内容」や「同意事項に関する内容」など、借用証書にある記載内容を確認できた人は署名欄の左上にあるチェックボックスにチェックマークを記入することになります。
借主の署名における次の工程は「署名の記入」です。法人の場合は直筆またはゴム印による署名を行うことになりますが、個人事業主の場合は直筆による署名を行うことになるため、署名を記入するときは法人と個人事業主により対応が異なります。
なお、連帯保証人がいる場合は連帯保証人の欄に署名することになります。「内容の確認」「署名の記入」「実印の押印」など、借主と同様の対応が必要となるため、連帯保証人がいる場合は連帯保証人となる本人に対応してもらいましょう。
借主の署名をするときは印鑑証明書を取得しておく
借用証書に借主の署名をする場合、印鑑証明書に記載された字体通りの署名が必要です。借用証書の提出時は融資日からさかのぼって3か月以内に取得した印鑑証明書を添付する必要もあるため、借用証書に借主の署名をするときは印鑑証明書を取得しておきましょう。
【印鑑証明書の申請先】
項目 | 申請先 |
---|---|
法人の場合 | 法務局 |
個人事業主の場合 | 市区町村役場 |
法人の場合、印鑑証明書の申請先は法務局です。「窓口」「郵送」「オンライン」など、法務局における申請方法は複数用意されているため、法人に該当する人は法務局が対応している申請方法から印鑑証明書を取得することになります。
個人事業主の場合、印鑑証明書の申請先は市区町村役場です。「窓口」や「コンビニ」など、市区町村役場における申請方法は住民登録のある役場次第となるため、個人事業主に該当する人は市区町村役場が対応している申請方法から印鑑証明書を取得することになります。
なお、連帯保証人がいる場合は連帯保証人の印鑑証明書の提出が必要です。借用証書の提出時は借主と連帯保証人全員の印鑑証明書を1通ずつ提出することになるため、連帯保証人を設定している人はそれぞれの印鑑証明書を取得しておきましょう。
収入印紙の貼付
日本政策金融公庫の借用証書における記入項目のひとつは「収入印紙の貼付」です。借用証書は課税文書となる関係上、収入印紙による印紙税の支払いが必要となるため、借用証書を書き始める人はその前提を踏まえつつ、収入印紙の貼付の概要を押さえておきましょう。
【収入印紙の貼付の概要】
工程 | 概要 |
---|---|
①収入印紙の貼付 | 収入印紙の金額は借用金額次第。収入印紙の欄に記載された金額の収入印紙を貼付する。 |
②消印の押印 | 消印が必要。借主の実印を収入印紙と借用証書の両方に印影がまたがるように押印する。 |
収入印紙の貼付における最初の工程は「収入印紙の貼付」です。印紙税の金額は借用金額ごとに定められ、必要となる収入印紙の金額は借用証書の左上にある収入印紙の欄に記載されているため、その金額の収入印紙を貼り付けることになります。
収入印紙の貼付における次の工程は「消印の押印」です。収入印紙は再利用を防止する目的として消印の押印が必要となるため、収入印紙の貼付後は借主の実印を収入印紙と借用証書の両方に印影がまたがるように押印することになります。
なお、貼付する収入印紙は1枚のみです。「500円を4枚」や「1,000円を2枚」など、複数枚の収入印紙を貼付した場合、借用証明の記載内容が収入印紙の下に隠れてしまうため、収入印紙を貼付するときは借用証書に記載された金額の収入印紙を1枚貼付しましょう。
収入印紙を準備する場合は入手方法を押さえておく
収入印紙を準備する場合、いくつかの入手方法があります。収入印紙の入手方法を知ることにより、計画的に準備を進めることができるため、借用証書に記載された収入印紙の金額を確認できた人は収入印紙の入手方法を押さえておきましょう。
【収入印紙の入手方法の具体例】
- 法務局
- 郵便局
収入印紙の入手方法として挙げられるのは法務局です。法務局の営業日時は原則として「平日午前9時~午後5時」ですが、法人の場合は借用証書に添付する印鑑証明書を取得することもできるため、法人に該当する人は法務局での購入を検討する余地があります。
また、収入印紙の入手方法として挙げられるのは郵便局です。郵便局の営業日時は原則として「平日午前9時~午後5時」ですが、ゆうゆう窓口の場合は土曜日や日曜日に営業しているところもあるため、平日が難しい人は郵便局での購入を検討する余地があります。
なお、収入印紙は払い戻しすることができません。未使用の収入印紙は手数料を支払うことにより別の収入印紙と交換できますが、収入印紙を現金に交換することはできないため、収入印紙を入手するときは借用証書に記載された収入印紙の金額を確認しておきましょう。
送金先口座の指定
日本政策金融公庫の借用証書における記入項目のひとつは「送金先口座の指定」です。送金先口座の情報に誤りがある場合は融資の実行が遅れるおそれがあるため、借用証書を書き始める人はその前提を踏まえつつ、送金先口座の指定の概要を押さえておきましょう。
【送金先口座の指定の概要】
工程 | 概要 |
---|---|
①口座の確認 | 送金先の口座は借主の本人名義の口座と定められている。送金先として指定したい口座の情報を確認する。 |
②口座情報の記入 | 「金融機関名」「預金口座番号」「預金口座名義人」など、送金先とする口座の情報を記入する。 |
送金先口座の指定における最初の工程は「口座の確認」です。日本政策金融公庫は預金業務を実施しておらず、日本政策金融公庫の口座を作ることができないため、「銀行」や「信用金庫」など、別の金融機関の口座を送金先口座として指定することになります。
送金先口座の指定における次の工程は「口座情報の記入」です。「金融機関名」「支店名」「預金の種類」「預金口座番号」「預金口座名義人」など、 それぞれの記入項目に送金先口座として指定する金融機関の口座情報を正確に記入することになります。
なお、ゆうちょ銀行を指定する場合は記号や番号ではなく、「振込用の店番と口座番号」を記入することになります。正確な番号が不明な人はゆうちょ銀行の公式サイトにある「ゆうちょ口座と他の金融機関口座間の送金」を確認してみましょう。
送金先口座の情報を記入するときは預金通帳を用意しておく
送金先口座の情報を記入する場合、送金先口座として指定する金融機関の口座情報を正確に記入することになります。借用証書の提出時は預金通帳を提出する必要もあるため、送金先口座の情報を記入するときは送金先口座の預金通帳を用意しておきましょう。
【預金通帳の提出が必要となるページ】
- 表紙
- 見開き1ページ目
借用証書を郵送する場合、預金通帳のコピーを添付することになります。借用証書に記入された送金先口座の情報を日本政策金融公庫の担当者が確認することになるため、借用証書を郵送するときは「表紙」と「見開き1ページ目」のコピーを添付することになります。
また、借用証書を持参する場合、預金通帳の原本を提示することになります。借用証書に記入された送金先口座の情報を日本政策金融公庫の担当者が確認することになるため、借用証書を持参するときは預金通帳の原本を提示することになります。
なお、預金通帳のない口座も送金先口座として認められる可能性があります。預金通帳のない口座の場合は口座情報が明記された資料を提出することにより、送金先口座として指定できる可能性があるため、該当する人は日本政策金融公庫の担当者に相談してみましょう。
借用証書を書き終えた人は添付書類を準備する
借用証書を書き終えた人は添付書類を準備することになります。日本政策金融公庫から指定される関係上、必要となる添付書類は申込者ごとに異なるため、借用証書を書き終えた人は必要となる添付書類の具体例を確認してみましょう。
【添付書類の具体例】
- 株式会社日本政策金融公庫(国民生活事業)償還金等の預金口座振替利用届
- 株式会社日本政策金融公庫(国民生活事業)償還金等の自動払込利用申込書
添付書類の具体例として挙げられるのは「株式会社日本政策金融公庫(国民生活事業)償還金等の預金口座振替利用届」です。ゆうちょ銀行以外の金融機関の口座から返済金や手数料の口座振替を行う場合は添付書類として準備することになります。
また、添付書類の具体例として挙げられるのは「株式会社日本政策金融公庫(国民生活事業)償還金等の自動払込利用申込書」です。ゆうちょ銀行の口座から返済金や手数料の口座振替を行う場合は添付書類として準備することになります。
なお、一部のネット銀行(インターネット専業銀行)は返済金の口座振替に利用できます。「GMOあおぞらネット銀行」や「PayPay銀行」など、一部のネット銀行は返済金の口座振替が可能となるため、気になる人はネット銀行の公式サイトを確認してみましょう。
団体信用生命保険に加入予定の人は申込書兼告知書を添付する
団体信用生命保険に加入する場合、「申込書兼告知書」を添付することになります。団体信用生命保険に加入するときは融資の実行前に申込手続きが必要となるため、団体信用生命保険に加入予定の人は借用証書の提出時に申込書兼告知書を添付しましょう。
団体信用生命保険とは、債務が弁済される任意保険のことです。「利用する融資制度」「被保険者の年齢」「健康状態の告知事項」など、所定の条件を満たしている人は公益財団法人公庫団信サービス協会の団体信用生命保険に加入することができます。
また、申込書兼告知書は借用証書が同封された郵便物に含まれています。「氏名」「告知日」「満年齢」「現住所」「生年月日」「告知事項」など、いくつかの記入項目があるため、必要となる項目を記入した後は借用証書の提出時に添付することになります。
なお、「被保険者ご本人記入欄」の箇所は被保険者となる本人が記入することになります。団体信用生命保険に加入予定の人はその前提を踏まえつつ、必要となる項目を記入した後は借用証書の提出時に申込書兼告知書を添付しておきましょう。
日本政策金融公庫の団体信用生命保険に関する情報が知りたい人は「日本政策金融公庫の融資における団体信用生命保険を解説」を参考にしてみてください。
融資が実行されるのは書類提出後のおおむね4営業日以内
融資が実行されるのは書類提出後のおおむね4営業日以内です。借用証書と添付書類を提出後、それらの書類が受理されれば、おおむね4営業日以内に融資が実行されることになるため、借用証書を提出する人は留意しておきましょう。
借用証書を提出するときは「郵送する方法」と「持参する方法」があります。「郵送にかかる時間を省きたい場合は持参」や「窓口に行く時間を省きたい場合は郵送」など、借用証書と添付書類を提出するときは自身の状況から提出方法を選択することになります。
また、借用証書と添付書類の提出完了後は日本政策金融公庫の担当者が各書類を確認することになります。抜け漏れや誤記がある場合は再提出を求められ、融資実行までの期間が長くなるおそれがあるため、提出前に各書類の記入項目を見直す余地があります。
なお、借用証書と添付書類を提出したにもかかわらず、入金が行われない場合はいくつかの要因が考えられます。「書類の未着」や「連絡の不備」など、いくつかの要因が考えられるため、気になる人は日本政策金融公庫の担当者に確認することを検討してみましょう。
まとめ
借用証書(読み方:しゃくようしょうしょ)とは、金銭の借用を証明するための書類のことです。日本政策金融公庫に限らず、金融機関との金銭の貸借が行われるときは必須となるため、日本政策金融公庫から創業融資を受ける人はその前提を踏まえておきましょう。
また、日本政策金融公庫の借用証書には、いくつかの記入項目があります。借用証書にある記入項目を確認することにより、記入漏れや誤記を防げる可能性があるため、借用証書を書き始める人は借用証書にある記入項目を確認しておきましょう。
なお、融資が実行されるのは書類提出後のおおむね4営業日以内です。借用証書と添付書類を提出後、それらの書類が受理されれば、おおむね4営業日以内に融資が実行されることになるため、借用証書を提出する人は留意しておきましょう。