創業融資の返済期間を決めるときのポイントを解説

創業融資を検討している人の中には、返済期間をどのくらいに設定するのか気になっている人もいますよね。返済期間は申込者の希望をもとに、金融機関が最終的に判断するため、申込者は返済期間を設定した理由を審査の担当者に伝えることになります。

当記事では、創業融資の返済期間を決めるときのポイントを解説します。返済期間の目安も紹介しているため、創業融資を検討している人は参考にしてみてください。

ポイントは2つの観点から考えること

創業融資の返済期間を決めるときのポイントは、2つの観点から考えることです。事業融資とは、「事業を成長させるために借入する」「事業で得た収益をもとに返済する」という考え方がベースにあるため、その考えにもとづいて返済期間を検討してみましょう。

【返済期間を決めるための2つの観点】

  • 資金繰りの観点
  • 次回の融資を見据えた観点

「資金繰りの観点」「次回の融資を見据えた観点」の2つが、返済期間を決めるための観点として挙げられます。返済期間は事業の継続性や安定性を左右する要素となるため、創業融資を検討している人はそれぞれの観点を確認してみましょう。

資金繰りの観点

返済期間を決めるときの観点のひとつは「資金繰り」です。資金繰りとは、事業における資金の流れを管理することを指し、資金繰りが円滑な範囲での返済負担に収めることが返済期間を決めるときに重要な考え方となります。

【資金繰りの例】(単位:万円)

項目 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月
売上入金額 300 320 350 400 420
仕入れ 80 85 90 95 100
人件費 100 110 120 130 140
家賃 50 50 50 50 50
その他経費 20 15 10 5 0
返済額 17.5 17.5 17.5 17.5 17.5
キャッシュフロー

(収入―支出)

32.5 42.5 62.5 102.5 112.5

たとえば、1ヶ月目に売上として300万円が入金される場合、仕入れや返済などの支出分を引くと手元に残るのは32.5万円となります。収入よりも支出が大きい状態が続くと、資金ショートする可能性があります。

資金ショートしてしまうと、返済が滞るおそれがあります。返済が滞らないように、入ってくるお金と出ていくお金を予測した上で、返済分のお金を確保できるように返済期間を設定しなければなりません。

なお、日本政策金融公庫の事業資金用返済シミュレーションから返済金額の目安を算出できます。返済年数ごとの返済金額の目安が算出できるため、シミュレーションを活用しつつ、資金繰りが円滑な範囲での返済負担となるように返済期間を検討してみてください。

据置期間を設定することも検討する

創業融資の返済期間を決めるときは、据置期間を設定することも検討しましょう。創業初期は事業が軌道にのるまで時間がかかる場合があるため、据置期間を設定することにより、資金繰りを安定させられる可能性があるからです。

据置期間とは、元金の返済が猶予される期間のことです。据置期間中は利息のみを支払い、据置期間が終了したあとから元金の支払いが開始するため、創業初期の売上が安定しない時期に返済負担を減らすことができます。

据置期間の設定を希望する場合は、その理由を伝えます。「売上が2か月後に入金される」「5か月目から黒字化する計画」など、据置期間が必要な理由を明確に伝えることにより、据置期間の設定に妥当性があると判断される可能性があります。

なお、据置期間の設定には上限があります。「据置期間は1年以内」「据置期間は5年以内」など、制度によって上限が異なるため、据置期間を設定したい場合は創業融資の制度内容を確認するようにしましょう。

次回の融資を見据えた観点

返済期間を決めるときの観点のひとつは「次回の融資を見据えること」です。事業の成長戦略として、金融機関から継続的に融資を受けて成長拡大を図る考え方があるため、次回の融資までにどれだけ借入残高が減っているかどうかの観点から検討することが重要です。

たとえば、設備資金の場合は「設備の更新時期」がひとつの目安です。創業融資を受けて購入した設備の耐用年数や増設時期などを考慮し、次に設備資金が必要となる時期までに創業融資の借入残高を減らすことを考えます。

また、運転資金の場合は「事業の拡大時期」がひとつの目安です。「人手を増やしたい」「店舗を増やしたい」などの事業を拡大する時期に、追加融資を受けられるように創業融資の借入残高を減らすことを考えます。

返済期間を長くしてしまうと、借入残高が減るスピードが遅くなります。返済期間を長くすることは、返済負担が抑えられ資金繰りの安定につながりますが、次回の融資を見据えて借入残高を減らせるような返済期間に設定することも検討してみてください。

金融機関と取引を続けるメリットとデメリットを押さえる

次回の融資を見据えた観点から返済期間を検討する際に、金融機関と取引を続けるメリットとデメリットも押さえておきましょう。創業前で金融機関から継続的に融資を受けるかどうか決めかねている人は、メリットとデメリットを押さえることから始めてみましょう。

【金融機関と取引を続けるメリットとデメリットの例】

項目 内容 具体例
メリット 金融機関からの信用が蓄積される ・他の金融機関とも取引できる可能性がある
・緊急時に迅速に融資してもらえる可能性がある
デメリット 返済負担がある ・複数口の取引がある場合、返済管理が複雑になる
・借入に依存すると資金繰りが圧迫される

金融機関と取引を続けるメリットとして、「金融機関からの信用が蓄積されること」が挙げられます。「他行からも資金調達できる可能性」「緊急時に迅速に借入できる可能性」など、金融機関と信頼関係を構築することにより、資金繰りの助けとなる可能性があります。

金融機関と取引を続けるデメリットとして、「返済負担があること」が挙げられます。「返済管理の手間」「借入依存の危険性」など、返済負担が増えることによって、資金繰りが悪化する可能性があります。

2024年版中小企業白書によると、小規模企業の借入金依存度は60.2%だったため、小規模企業においても借入しながら経営している傾向にあると分かります。金融機関からの借入有無は事業の財務状態に関わってくるため、創業融資の段階から金融機関との付き合い方を長期的な視点において検討してみてください。

返済期間の目安のひとつは5年から10年

創業融資における返済期間の目安は5年から10年程度です。制度上は10年超の返済期間に設定できるものもありますが、「資金繰りの観点」「次回の融資を見据えた観点」から、返済期間は5年から10年程度の間で設定される傾向があります。

【創業融資の制度における返済期間の例】

制度名 返済期間
日本政策金融公庫
「新規開業・スタートアップ支援資金」
【設備資金】
20年以内(そのうち据置期間は5年以内)
【運転資金】
10年以内(そのうち据置期間5年以内)
信用保証協会:東京都の制度融資
「都創業融資」
【設備資金】
10年以内(そのうち据置期間1年以内)
【運転資金】
7年以内(そのうち据置期間1年以内)

日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の場合、「設備資金20年以内」「運転資金10年以内」の間に返済期間を設定できます。返済期間の希望が通るかどうかは金融機関の判断によるため、とくに設備資金で10年超の返済期間を希望する場合は、返済計画を担当者から確認される可能性があります。

東京都の制度融資の場合、「設備資金10年以内」「運転資金7年以内」の間に返済期間を設定できます。運転資金を7年超の期間で返済することはできないため、収益計画によっては資金繰りに負担がないかどうか担当者から確認される可能性があります。

なお、据置期間の設定を希望する場合、返済期間の中に据置期間が含まれます。返済期間が7年でそのうち据置期間を1年設定した場合、元金は6年の間に返済しなければならないため、元金返済開始後の返済負担を考慮して設定するようにしましょう。

返済期間を変更する場合は金融機関からの同意を得る

返済期間を変更する場合は金融機関からの同意を得なければなりません。契約時に決めた返済期間を変更するには金融機関の了解を得る必要があるため、創業融資を検討している人は留意しておきましょう。

借入後に返済期間を延長することを、「返済のリスケジュール」と呼びます。「資金繰りが厳しい」「経営状態が悪化した」などの理由から毎月の返済負担を減らしたい場合は、金融機関に返済のリスケジュールを依頼し、返済計画を見直すことになります。

返済のリスケジュール中は、追加融資を受けにくい可能性があります。一度決めた返済条件を変更した関係上、金融機関からの信用に影響を与えるため、追加融資の審査に通らない可能性があります。

なお、繰上げ返済や一括返済することはできます。金融機関によって手数料が発生する場合はありますが、期日より前に返済することはできるため、創業融資の返済期間に悩んでいる人は、手元資金に余裕がある場合は繰り上げ返済する選択肢も念頭に置いておきましょう。

まとめ

創業融資の返済期間を決めるときのポイントは、2つの観点から考えることです。事業融資とは、「事業を成長させるために借入する」「事業で得た収益をもとに返済する」という考え方がベースにあるため、その考えにもとづいて返済期間を検討してみましょう。

「資金繰りの観点」「次回の融資を見据えた観点」の2つが、返済期間を決めるための観点として挙げられます。返済期間は事業の継続性や安定性を左右する要素となるため、創業融資を検討している人はそれぞれの観点を確認してみましょう。

創業融資における返済期間の目安は5年から10年程度です。制度上は10年超の返済期間に設定できるものもありますが、「資金繰りの観点」「次回の融資を見据えた観点」から、返済期間は5年から10年程度の間で設定される傾向があるため、返済期間で悩んでいる人は目安を参考にすることも検討してみてください。

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