美容業や飲食業など、独立開業を計画している人の中には、日本政策金融公庫以外からの借入を考えている人もいるでしょう。日本政策金融公庫の他に創業融資を受けられる金融機関があるのかどうかを知りたい人もいるかもしれません。
当記事では、「日本政策金融公庫以外から創業融資を受けることはできるのか?」を解説します。創業融資の観点から日本政策金融公庫以外の選択肢を紹介しているため、日本政策金融公庫以外から融資を受けることを検討している人は参考にしてみてください。
目次
日本政策金融公庫以外から創業融資を受けることはできる
日本政策金融公庫以外から創業融資を受けることはできます。創業融資とは、日本政策金融公庫だけが取り扱っている融資制度ではなく、地域社会への貢献を理念とする民間の金融機関でも取り扱っています。
【日本政策金融公庫以外に創業融資を取り扱っている金融機関の例】
金融機関 | 概要 |
---|---|
信用金庫 | 「地域社会の繁栄」「中小企業の健全な発展」などのビジョンを掲げ、地域金融機関として創業者への融資も行う。 |
信用組合 | 「相互扶助」を基本理念とし、地域・業域・職域の各分野で中小零細事業者の資金ニーズに応えるため、創業者への融資も行う。 |
地方銀行 | 地域における金融インフラの中心的存在として、中堅・中小企業へ金融支援を提供するため、創業者への融資も行う。 |
たとえば、信用金庫は創業者への融資を行っています。信用金庫は「地域社会の繁栄」「中小企業の健全な発展」などをビジョンに掲げる地域金融機関のため、管轄の営業地域で創業する事業者に対し、創業融資による支援を行っています。
また、地方銀行も創業者への融資を行っています。地方銀行は地域における金融インフラの中心的存在として、中堅や中小企業への金融支援を提供しているため、管轄の営業地域で創業する事業者に対し、創業融資による支援を行っています。
なお、金融機関の方針はそれぞれ異なります。「創業セミナー」「創業融資の相談会」などを開催している場合は、創業融資の取り扱いに積極的な金融機関の可能性があるため、日本政策金融公庫以外の金融機関を選ぶときは金融機関の取り組み情報を調べることも検討してみてください。
日本政策金融公庫の審査に落ちた場合も他の金融機関へ申込できる
日本政策金融公庫の審査に落ちた場合であっても、他の金融機関へ創業融資の申込はできます。日本政策金融公庫の審査に落ちたあと、すぐに再審査を申し込むことは推奨されませんが、他の金融機関へ申し込むことは禁止されていません。
ただし、審査に申し込んだ履歴は個人信用情報に反映されます。日本政策金融公庫の審査に落ちたあと、他の金融機関へ申し込むことはできますが、審査に申し込んだ履歴は個人信用情報に反映されるため、他の金融機関の担当者に申込の事実を確認される可能性はあります。
日本政策金融公庫の審査に落ちたあと他の金融機関へ申し込む場合は、否決理由を改善してから申し込むことを検討してみてください。日本政策金融公庫の審査に落ちた理由を改善していない場合、他の金融機関でも同様の理由から否決となってしまうおそれがあるため、否決理由を改善してから申し込むことを検討してみましょう。
日本政策金融公庫以外から創業融資を受ける場合は保証協会付き融資を利用する傾向がある
日本政策金融公庫以外から創業融資を受ける場合は、保証協会付き融資を利用する傾向があります。信用保証協会の保証制度を利用することにより、金融機関は貸し倒れリスクを抑えられるため、日本政策金融公庫以外の金融機関が創業融資を実行する場合は信用保証協会を利用する傾向にあります。
【信用保証協会の役割イメージ】
信用保証協会は金融機関にとって、債権を保証してくれる公的機関です。金融機関は信用保証協会を利用することにより、事業実績がなく貸し倒れリスクの高い創業者への融資を実行しやすくなります。
信用保証協会は事業者にとって、債務の保証人となってくれる公的機関です。事業者は信用保証協会を利用することにより、「不動産」「第三者の連帯保証人」などの担保を提供することなく融資を受けやすくなります。
なお、保証協会が保証しない「プロパー融資」もあります。保証協会付き融資よりもプロパー融資の方が金融機関の貸し倒れリスクは高くなるため、日本政策金融公庫以外の金融機関から創業融資を受けるときは、保証協会付き融資を検討することになるのが実情という点を留意しておきましょう。
保証協会付き融資を利用するためには審査がある
保証協会付き融資を利用するためには審査に通過しなければなりません。金融機関からの融資審査に加え、信用保証協会の保証審査にも通過しなければ、保証協会付き融資を受けられないため、日本政策金融公庫以外の融資を検討している人は信用保証協会の審査ポイントを押さえておきましょう。
【信用保証協会の審査ポイントの例】
項目 | 具体例 |
---|---|
保証資格 | ・事業規模の要件に該当するか ・対象業種の要件に該当するか |
事業計画 | ・事業計画に妥当性はあるか ・資金計画に妥当性はあるか |
返済能力 | ・自己資金の準備状況 ・返済計画に妥当性はあるか |
経営者 | ・創業予定の業種経験はあるか ・個人の信用情報に問題はないか |
たとえば、審査ポイントのひとつとして「事業計画」が挙げられます。信用保証協会へ創業計画書を提出することになるため、「事業の内容」「予想売上」「必要な資金額」など、創業計画書の内容から事業計画の妥当性を検証することになります。
また、審査ポイントのひとつとして「経営者」が挙げられます。「創業予定の業種経験はあるか」「個人の信用情報に問題はないか」など、さまざまな観点から経営者個人の経歴を確認される可能性があります。
なお、金融機関の審査に通ってから信用保証協会の審査が行われる傾向にあります。状況によって順番が前後する可能性はありますが、金融機関での審査が行われたあと、金融機関の担当者から信用保証協会へ保証審査の申込がされる流れを押さえておきましょう。
信用保証協会の審査ポイントが気になる人は「信用保証協会の審査は厳しい?審査基準と審査難易度を解説」を参考にしてみてください。
日本政策金融公庫と保証協会付き融資の違いは信用保証料の有無
日本政策金融公庫と保証協会付き融資の違いは信用保証料の有無です。保証協会付き融資の場合、信用保証協会へ保証料を事前に支払うことになるため、保証協会付き融資を検討する人は確認しておきましょう。
【信用保証料のシミュレーション例】
融資条件 | 信用保証料の目安 |
---|---|
借入金額:500万円 保証期間:60か月 保証料率:1%の場合 |
137,500円 |
借入金額:500万円 保証期間:84か月 保証料率:1% |
385,000円 |
参考:東京都信用保証協会「信用保証料簡易シミュレーション」を参考に株式会社SoLaboが作成
「借入金額500万円」「保証期間60か月」「保証料率1%」と仮定した場合、保証料の目安は137,500円です。保証料は融資金額から差し引かれるため、保証協会付き融資を検討する人は保証料が差し引かれることを考慮した資金計画を立てることになります。
「借入金額500万円」「保証期間84か月」「保証料率1%」と仮定した場合、保証料の目安は192,500円です。保証期間が長くなれば長くなるほど、保証料は高くなるため、保証協会付き融資を検討する人は返済期間と保証料のバランスを考慮した資金計画を立てることになります。
なお、日本政策金融公庫から融資を受ける場合、信用保証料は発生しません。日本政策金融公庫は保証協会付き融資を取り扱っていないため、信用保証料の支払いは発生しない点が、公庫と保証協会付き融資との違いとなることを理解しておきましょう。
自治体の制度融資を利用すると保証料の割引がある場合がある
自治体の制度融資を利用すると、保証料が割引される可能性があります。自治体の制度融資の内容次第ですが、保証料の一部を自治体が負担してくれる場合があるため、日本政策金融公庫以外の融資を検討している人は自治体の制度融資を押さえてみてください。
【自治体の制度融資:東京都の例】
制度名 | 概要 |
---|---|
創業融資(略称:創業) | <融資限度額> 3,500万円 <返済期間> 設備資金は10年以内 運転資金は7年以内 <金利> 2.2%以内 <保証料率> 保証協会が定めるが、東京都が保証料の3分の2を補助する |
自治体の制度融資とは、保証協会付き融資を自治体が制度化したものです。自治体によって融資条件が異なりますが、「自治体が保証料の一部を援助する」「利子の一部を援助する」などの優遇措置を用意している場合があります。
自治体の制度融資を利用するには条件があります。保証協会や金融機関の要件に加え、「自治体の管轄地域で開業すること」「自治体の税金を完納していること」などの条件が設定されているため、自治体の制度融資を利用したいときは自治体が設定した条件を確認することになります。
なお、自治体の制度融資を利用するときは融資までの日数に留意しましょう。「自治体」「保証協会」「金融機関」の3者とやり取りが発生するため、通常の保証協会付き融資よりも融資までの日数が長くなることを念頭に置いておきましょう。
まとめ
日本政策金融公庫以外から創業融資を受けることはできます。創業融資とは、日本政策金融公庫だけが取り扱っている融資制度ではなく、地域社会への貢献を理念とする民間の金融機関でも取り扱っています。
日本政策金融公庫以外から創業融資を受ける場合は、保証協会付き融資を利用する傾向があります。信用保証協会の保証制度を利用することにより、金融機関は貸し倒れリスクを抑えられるため、日本政策金融公庫以外の金融機関が創業融資を実行する場合、信用保証協会を利用する傾向にあります。
日本政策金融公庫と保証協会付き融資の違いは信用保証料の有無です。保証協会付き融資の場合、信用保証協会へ保証料を事前に支払うことになるため、保証協会付き融資を検討する人は確認しておきましょう。