新しく事業を始めるのに必要な資格「許認可(きょにんか)」ですが、いざ調べると、許認可の他にも「許可」「認可」「届出」など似た言葉が出てきますよね。
今回は許認可とは何か、なぜ許認可が必要なのか、許認可をとらないリスク、許可・認可・届出・登録・免許の違い、必要な事業・窓口一覧について解説します。
許認可はなぜ必要?関連用語の違い
許認可とは何か、許可・認可・届出・登録・免許などの関連用語の違い、許認可を取得しない場合のリスクについて説明していきます。
許認可とは?
許認可とは、「許可」と「認可」を1つにした造語で、法律で「禁止されていること」を「できる」ようにする資格です。
法律で「禁止されていること」を「できる」ようにする、というのは、例えば車の運転です。
法律上、車の運転のためには運転免許(法律上は許可の扱い)が必要ですが、それと同じように事業で必要な危険物の取り扱いなどのために、許認可が必要なのです。
なお、融資面談などの文脈で、事業に必要な資格として「届出」「登録」「認可」「許可」「免許」をまとめて「許認可」と呼ぶケースもあり、「許可」と「認可」に限らないこともあるため、注意が必要です。
許認可を取得しない場合に考えられるリスク
許認可がなぜ必要か、取得しないとどうなるか。3つのリスクを紹介します。
リスク1:事業が開始できなかったり業務上のペナルティがあったりする
許認可を取得していないと、事業を開始できない可能性があります。また、無許可で事業活動を行うと、営業停止命令や刑事罰を受ける可能性があります。
例えば、飲食店で営業許可書を取得せずに営業した場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金となります。
食品衛生法第72条(e-Gov法令検索)
リスク2:金融機関からの融資が受けられない
金融機関から融資を受けるときは、必ず許認可の確認があります。
許認可を持っていることを示す証明書類の提示、または証明書類のコピーの提出を求められます。
金融機関から事業目的でお金を借りる場合、事業で得た利益からの返済を前提に借りることになります。
許認可がなければ事業が始められない、つまり事業利益から返済できる見込みが立たないと判断されるため、許認可を取得せずに金融機関から融資を受けることはできないのです。
リスク3:取引先から受注できる額が制限される
一定の金額を超える仕事を受ける場合、許認可が必要な業種があります。例えば、建設業の許認可を持っていなければ、500万円以上の案件は受けられません*。
取引先から受注できる額が制限されるため、許認可を取得していなければ、大きな案件を逃してしまうと覚えておきましょう。
*参考:国土交通省HP 土地・不動産・建設業|建設業の許可とは
許可・認可・届出・登録・免許の違い
許認可には、許可・認可・届出・登録・免許があります。一般的な意味もありますが、これらの法律(行政法)上の違いについて解説します。
許可
許可とは、法律上、国や地方自治体に対し、事業者が申請し、審査に通ることで、禁止されている行為ができるようになることです。
審査基準を満たしていれば、必ず許可がおります。
許可には、例えば、500万円以上の工事を行うための「建設業許可」や、食品を販売するための「営業許可」などがあります。
なお、個人が元々行えることを禁止し、解除するなら「許可」ですが、個人が持たない特別なことを国が権利として与えるなら「特許」になるので、違いに注意です。
認可
認可とは、国や地方自治体が、事業者からの申請があったとき、ある一定の基準を満たしているのを認めることです。
基準を満たしていれば、必ず認可されます。
認可には、例えば、認可保育園や私立学校などがあります。
届出
届出とは、国や地方自治体に対し、事業者が事業内容を通知することです。事業者が違法なことをしていない限り、届出は必ず受理されます。
届出は、違法なことが起こる可能性があるケースで、国や地方自治体が監督しやすいように生まれた仕組みです。
そのため、事業者の判断に任される「任意」の届出もあれば、出さないと事業ができない「必須」の届出もあります。
届出には、例えば、深夜12時以降に営業する飲食店の「深夜酒類 提供飲食店営業届出」や、クリーニング屋さんの「クリーニング所開設届出」などがあります。
登録
登録とは、国や地方自治体に書類を提出し、帳簿に記載してもらうことです。不備なく書類を提出すれば、必ず登録されます。
登録の種類によって、実地調査があったり手数料がかかったりするケースがあります。
登録には、例えば、高齢者や障害者などの方を有償で送迎する「福祉有償運送登録」や、塗装用品で毒劇物を扱う「毒物劇物販売業登録」などがあります。
免許
免許とは、講習や試験などで法律に定められた要件を満たしていることを証明し、業務を行う資格があると認められることです。
法律上は、免許は「許可」と「特許」のどちらかに分類されます。
免許には、例えば、訪問看護に必要な「看護師免許」や、美容室で必要な「美容師免許」などがあります。
ちなみに、自動車運転免許が法律上は「許可」扱いであるように、免許は通称と法律上の扱いが違うことも多いので、表現には注意しましょう。
許認可が必要な事業と窓口の一覧
許認可が必要な事業と窓口の一覧です。参考まで、ご自身が検討されている事業に必要な許認可をご確認ください。
■飲食に関わる許認可
業種 | 種類 | 根拠法 | 窓口 |
食料品製造業 | 許可 | 食品衛生法 | 保健所 |
食料品販売業 | |||
飲食店、喫茶店営業 | |||
酒類販売業 | 免許 | 酒税法 | 税務署 |
米穀類販売業 | 登録 | 新食糧法 | 市町村 |
■建設に関わる許認可
業種 | 種類 | 根拠法 | 窓口 |
建設業 | 許可 | 建設業法 | 都道府県 |
建築士事務所 | 登録 | 建築士法 | 都道府県 |
電気工事業 | 登録 | 電気工事業の業務の適正化に関する法律 | 都道府県 |
■運送に関わる許認可
業種 | 種類 | 根拠法 | 窓口 |
一般旅客自動車運送事業 (乗合、乗用、貸切) |
許可 | 道路運送法 | 運輸局
または運輸局から |
特定旅客自動車運送事業 | |||
自家用有償旅客運送事業 | |||
一般貨物自動車運送事業 | 貨物自動車運送事業法 | ||
特定貨物自動車運送事業 |
■物販に関わる許認可
業種 | 種類 | 根拠法 | 窓口 |
古物営業 | 許可 | 古物営業法 | 警察署 |
医薬品販売業 | 許可 | 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 | 都道府県 |
■宿泊に関わる許認可
業種 | 種類 | 根拠法 | 窓口 | |
旅館業 | 許可 | 旅館業法 | 保健所 | |
住宅宿泊事業 | 届出 | 住宅宿泊事業法 | 都道府県 | |
旅行業 | 登録 | 旅行業法 | 観光庁・都道府県 |
■不動産取引に関わる許認可
業種 | 種類 | 根拠法 | 窓口 |
宅地建物取引業 | 免許 | 宅地建物取引業法 | 都道府県 |
■人材に関わる許認可
業種 | 種類 | 根拠法 | 窓口 |
有料職業紹介事業 | 許可 | 職業安定法 | 公共職業安定所 |
労働者派遣事業 | 許可 | 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 | 都道府県労働局 |
■美容に関わる許認可
業種 | 種類 | 根拠法 | 窓口 |
美容室 | 届出 | 美容師法 | 保健所 |
理容室 | 届出 | 理容師法 | 保健所 |
■その他の許認可
業種 |
種類 | 根拠法 | 窓口 |
クリーニング業 | 届出 | クリーニング業法 | 保健所 |
一般廃棄物処理業 | 許可 | 廃棄物処理法 | 都道府県 |
興行場業 | 許可 | 興行場法 | 保健所 |
警備業 | 認定 | 警備業法 | 警察署 |
質屋業 | 許可 | 質屋営業法 | 警察署 |
風俗業 | 許可 | 風俗営業法 |
警察署 |
まとめ
許認可とは何か、なぜ許認可が必要なのか、許認可を取得しないリスク、許可・認可・届出・登録・免許の違い、必要な事業・窓口一覧について解説しました。
事業を始める際は、「〇〇業 許認可」で検索し、下調べするのが良いでしょう。許認可は申請してから受理されるまで時間がかかることも予想されますので、開業準備のやることリストに含めておき、忘れないように準備を進めてください。