これから創業する人の中には、創業融資を検討している人もいるかもしれません。返済が不要な融資制度があるのかどうかを気になっている人もいるでしょう。
当記事では、返済不要な融資制度はあるのかどうかを創業融資の観点から解説します。創業融資を検討している人や返済の要否が気になる人は参考にしてみてください。
返済不要な融資制度はない
返済不要となる融資制度はありません。融資とは、金銭を受け取った当事者が利息を付けて同額を返還する金銭消費貸借契約を交わすことを指すため、創業融資も例外ではなく、契約内容に沿って返済していくことになります。
【主要な創業融資の選択肢】
主要な選択肢 | 融資条件の概要 |
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日本政策金融公庫の創業融資制度 | 融資上限額:最大7,200万円 返済期間:設備資金は20年まで(運転資金は10年まで) 金利:2.20%~3.40%(2024年10月時点の基準金利) |
信用保証協会の創業保証付き融資 | 保証上限額:3,500万円 保証期間:10年程度(各保証協会による) 金利:各金融機関による |
創業融資の主要な選択肢のひとつは「日本政策金融公庫の新規開業資金」です。「設備資金は20年まで」「運転資金は10年まで」の期間に返済するように条件を設定し、返済期間に応じて利息を上乗せして支払うことになります。
創業融資の主要な選択肢のひとつは「信用保証協会の創業保証付き融資」です。10年程度の保証期間が設けられているため、保証期間内に返済するように金融機関と融資条件を設定し、返済期間に応じて利息を上乗せして支払うことになります。
創業融資を受けたら必ず返済しなければなりません。「返済不要となる融資制度」「返済不要となる条件」はないため、創業融資を利用して事業を始める場合は、毎月の返済負担を考慮した事業計画を練るようにしましょう。
皆さまのご状況から融資を受けられるか無料で診断できますので、事業性融資を検討している人はお試しください。
返済不要な融資を謳っている場合は詐欺の可能性がある
返済不要な融資を謳っている場合は、詐欺の可能性があります。SNSをはじめとするインターネット上では、貸金業登録をしていない業者が返済不要の融資の勧誘をしている事例があるため注意しましょう。
XやInstagramなどのSNS上では、返済不要を謳って違法業者が融資の勧誘を行っている事例があります。違法業者から融資を受けてしまうと、「実態は高利のヤミ金業者だった」「個人情報が悪用されてしまう」などのトラブルにつながるおそれがあります。
金融庁からも「SNS等を利用した「個人間融資」にご注意ください!」という注意喚起がなされています。返済不要な融資を謳っている場合は違法な貸金業を行っている場合があるため、トラブルに巻き込まれないためにも決して利用しないようにしましょう。
返済負担を軽減できる可能性はある
返済不要な創業融資はありませんが、返済の負担を軽減できる可能性はあります。「資金繰りの負担」「保証の負担」など、返済負担の要因はいくつか考えられるため、それぞれの要因と返済負担の軽減が期待できる方法を確認してみましょう。
【返済負担の軽減が期待できる方法の例】
返済の負担となりうる要因 | 方法例 |
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資金繰りの負担 | 据置期間を設定する |
保証の負担 | 代表者が連帯保証人にならない |
金利の負担 | 利子補給を受ける |
返済負担の軽減が期待できる方法として「据置期間を設定する」「代表者が連帯保証人にならない」「利子補給をうける」方法が挙げられます。返済不要な創業融資はありませんが、返済負担の要因を軽減できる可能性はあるため、それぞれの方法を押さえてみましょう。
据置期間を設定する
返済負担の軽減が期待できる方法のひとつは「据置期間を設定する」ことです。据置期間を設定することにより、創業初期の資金繰りの負担を軽減できる可能性があるため、資金繰りの負担を軽減したい人は据置期間を設定する方法を検討してみてください。
【据置期間を設定した場合の返済シミュレーション例】
返済条件 | 返済シミュレーション |
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融資額:500万円 返済期間:5年 据置期間:1年 |
返済総額:5,319,375円 1年目の返済額:105,000円(利息のみ) |
融資額:500万円 返済期間:5年 据置期間:0か月 |
返済総額:5,266,875円 1年目の返済額:1,095,376円(うち利息95,376円) |
※日本政策金融公庫「事業資金用返済シミュレーション」をもとに株式会社SoLaboが作成
「融資額500万円」「返済期間5年」「据置期間1年」に設定した場合、最初の1年間の返済額は105,000円が目安となります。据置期間中は利息のみの支払となるため、創業1年目の返済負担を押さえられます。
「融資額500万円」「返済期間5年」「据置期間なし」に設定した場合、最初の1年間の返済額は1,095,376円です。原則として、融資を受けた翌月から返済が始まるため、創業1年目の毎月の返済額は9万円程度になります。
なお、返済総額は据置期間を設定しない方が低くなります。利息は元金の残高に対して計算する関係上、据置期間を設定すると元金の減少が遅くなるため、据置期間を設定するときは創業後の資金繰り計画に沿った適切な期間を設定することを検討しましょう。
代表者が連帯保証人にならない
返済負担の軽減が期待できる方法のひとつは「代表者が連帯保証人にならない」ことです。代表者が連帯保証人にならないことにより、保証の負担が軽減できる可能性があるため、法人を立ち上げて創業したい人は確認してみましょう。
【代表者の連帯保証を徴求しない制度の例】
制度名 | 概要 |
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日本政策金融公庫 「経営者保証免除特例制度」 |
・法人の代表者を連帯保証人として徴求しない制度 ・「新たに事業を始める」もしくは「税務申告を2期終えていない」場合は、金利0.2%上乗せを条件に経営者保証免除特例制度に申し込める |
信用保証協会 「スタートアップ創出促進保証制度」 |
・法人の代表者を連帯保証人として徴求しない制度 ・「2か月以内に法人を設立し創業する」「創業後5年未満」などの要件に該当する場合は、保証料0.2%上乗せを条件にスタートアップ創出促進保証制度に申し込める。 |
日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度は、法人の代表者を連帯保証人として徴求しない制度です。「新たに事業を始める」もしくは「税務申告を2期終えていない」などの対象要件を満たす場合は、金利の上乗せを条件に経営者保証免除特例制度に申し込めます。
信用保証協会のスタートアップ創出促進保証制度は、法人の代表者を連帯保証人として徴求しない制度です。「2か月以内に法人を設立し創業する」「創業後5年未満」などの対象要件を満たす場合は、保証料の上乗せを条件にスタートアップ創出促進保証制度に申し込めます。
なお、代表者の連帯保証が不要となるかどうかは審査判断によります。「事業計画」「自己資金」「個人の信用情報」など、さまざまな観点から連帯保証を徴求するかどうかを決定するため、連帯保証の加入を希望しない人は、融資を申し込む金融機関の担当者に相談してみましょう。
利子補給を受ける
返済負担の軽減を期待できる方法のひとつは「利子補給を受ける」ことです。利子補給を受けることにより、金利の支払いの負担を減らせる可能性があるため、金利の負担を減らしたい人は利子補給の概要を確認してみましょう。
【自治体による利子補給制度の例】
群馬県高崎市の場合、創業者へ向けた利子補給制度を用意しています。「創業融資を受けた」「高崎市で事業を始める」などの要件の対象者に融資を受けた日から5年間の利子の全額を補給する制度があります。
広島県尾道市の場合、創業者へ向けた利子補給制度を用意しています。「創業融資を受けた」「尾道市の税金を滞納していない」などの要件の対象者に融資当初2年間に支払った利子を年間上限30万円まで補給する制度があります。
利子補給の制度は自治体が取り扱っています。自治体により取り扱いの有無や取り扱う時期は異なるため、利子補給の制度が気になる人はる人は創業場所を管轄する自治体に問い合わせることも検討してみましょう。
返済不要な資金調達方法はある
創業融資は返済不要ではありませんが、返済不要な資金調達方法はあります。創業時の状況によっては活用できる資金調達方法もあるため、返済不要な資金調達方法に興味がある人はそれぞれの方法を確認してみましょう。
【返済不要な資金調達方法】
資金調達方法 | 対象となる事業者 |
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補助金と助成金 | 個人事業主と法人どちらも対象となる |
出資を受ける | 法人のみ対象となる |
クラウドファンディング | 個人事業主と法人どちらも対象となる |
返済不要な資金調達方法として「補助金と助成金」「出資をうける」「クラウドファンディング」が挙げられます。創業時の状況によっては活用できる資金調達方法もあるため、返済不要な資金調達方法が気になる人はそれぞれの概要を確認してみましょう。
補助金と助成金
返済不要な資金調達方法のひとつは「補助金と助成金」です。補助金と助成金は自己資金での立替が必要な資金となりますが、受給したあとは原則として返済不要な資金となるため、返済不要な資金調達方法が気になる人は補助金と助成金の概要を確認してみましょう。
【補助金と助成金の概要】
項目 | 概要 |
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補助金 | ・審査に通らなければ採択されない ・原則として後払い |
助成金 | ・対象要件を満たしていれば採択される ・原則として後払い |
補助金の特徴は「審査に通らなければ採択されない」点です。採択される上限数が決まっている関係上、上限を超える申込があった場合は審査を通過した事業者のみ支給される傾向にあるため、補助金は申請したら必ず受給できるとは限りません。
一方、助成金の特徴は「要件を満たしていれば採択される」点です。対象者の要件は限定されていますが、要件を満たした事業者は原則として助成金が支給される傾向にあるため、助成金を申請した場合は、補助金よりも受給の可能性が高い傾向にあります。
なお、補助金と助成金は「原則として後払い」という注意点があります。自己資金で対象となる経費の支払いを済ませたあと、補助金や助成金が入金される流れとなっているため、創業時に自己資金での立替ができる人は補助金や助成金を検討してみてください。
出資を受ける
返済不要な資金調達方法のひとつは「出資を受ける」ことです。出資してくれる投資家を探すことになりますが、出資を受けたあとは資金の返済が不要となるため、返済不要の資金調達方法が気になる人は出資を受けるときの概要を確認してみましょう。
【出資による資金調達方法の概要】
項目 | 出資を受けるまでの流れの概要 |
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出資を受ける | 1.投資家へ自社の事業計画を伝え、資金を募る 2.出資額に応じて自社の株式を譲渡する 3.利益が出たら株式割合に応じて分配する |
出資を受けるためには、まずは投資家から資金を募ります。「エンジェル投資家」「ベンチャーキャピタル」などの投資家へ自社の事業計画を伝え、投資家が事業の将来的な成長性に共感や期待を持った場合、出資してくれる可能性があります。
出資を受けるときは、出資額に応じて自社の株式を譲渡します。事業者は出資を受けた資金を活用し事業を発展させることにより、将来利益が発生した場合、持株の割合に応じて投資家へ分配金を渡すことになります。
出資を受けるときの注意点は「投資家を見つけること」です。投資家は企業の将来性を重視するため、将来的に大きな利益を生む可能性があるスタートアップ企業への投資を行う傾向がある点に留意しておきましょう。
クラウドファンディング
返済不要な資金調達方法のひとつは「クラウドファンディング」です。クラウドファンディングは支援者に対し、なんらかの方法でのリターンを提供しますが、原則として資金の返済が不要となるため、返済不要の資金調達方法が気になる人はクラウドファンディングを受けるときの概要を確認してみましょう。
【クラウドファンディングの概要】
項目 | 概要 |
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クラウドファンディング | ・「商品」「サービス」などのリターンを用意し、支援金を募る方法 ・「購入型」「寄付型」「株式投資型」「ファンド型」など、さまざまな種類のクラウドファンディングがある |
クラウドファンディングは事業への共感性や社会への貢献性などを伝えることにより、支援を募る方法です。支援者は設定された金額とリターンのプランを選択し、支援を受けた事業者はプランに応じた商品やサービスを返すことになります。
クラウドファンディングはいくつかの種類があります。「購入型」「寄付型」「株式投資型」「ファンド型」の4種類に分けられており、それぞれリターンの内容が異なっている関係上、クラウドファンディングをするときは事業者に合った種類を選択することになります。
なお、クラウドファンディングは商品やサービスのリターンに手間がかかります。「配送作業」「支援者リストの管理」「クラウドファンディング業者との手続き」など、自身での作業が必要になるため、クラウドファンディングでの資金調達を検討するときは、手間や費用が発生する点を留意しておきましょう。
まとめ
返済不要な創業融資はありません。創業融資に限らず、融資を受けお金を借りたならば必ず返済することになるため、創業時に融資を受けた場合は、返済条件に沿って返済していくことになります。
返済不要な創業融資はありませんが、返済の負担を軽減できる可能性はあります。「据置期間を設定する」「代表者が連帯保証人にならない」「利子補給を受ける」など、返済負担の要因を軽減できる可能性はあるため、それぞれの方法を押さえてみましょう。
創業融資は返済不要ではありませんが、返済不要な資金調達方法はあります。創業時の状況によっては活用できる資金調達方法もあるため、返済不要な資金調達方法に興味がある人はそれぞれの方法を確認してみましょう。