クラウドファンディングと聞くと、あるプロジェクトについて資金を募る募金のようなものを想定される人も多いかもしれません。実際のクラウドファンディングは複数の種類があり、資金調達後には支援者へのリターンや返済が必要になるため、単純な募金というわけではありません。
また、インターネットを通じて広く支援者を募ることができる一方、準備なしで臨むと目標額に到達できずに資金調達できないことも少なくありません。そのため、クラウドファンディングを始める前に事前準備をしておくことが重要になります。
当記事では、市場が拡大傾向にあるクラウドファンディングとはなにかを解説し、クラウドファンディングの種類やクラウドファンディングによる資金調達を行うためのポイントについても話していきます。
目次
クラウドファンディングとは不特定多数の人からプロジェクトに対するお金を集めること
クラウドファンディングとは、群衆(crowd)から資金調達(funding)するという意味の造語で、不特定多数の人からプロジェクトに対する資金を少額ずつ集める資金調達方法のことです。クラウドファンディング業者が運営するプラットフォームのサイトがあり、資金調達したい人がインターネットのサイト上で支援者に広く支援を募ることができます。
日本で は2011年にクラウドファンディングサービスが開始されて以降、市場は拡大しつづけています。これまで資金調達というと、金融機関からの借入や投資家からの出資などが主な選択肢でしたが、クラウドファンディングはインターネット上で一般の人から支援金を募るという、新しい資金調達方法として認知されるようになりました。
クラウドファンディングでの資金調達は、インターネット上で一般公開しながら行う点が特徴的で、金融機関からの借入審査などと比べて、資金集めのポイントも異なります。クラウドファンディングの仕組みや種類などを理解したうえで、資金調達方法として活用するかどうか検討しましょう。
クラウドファンディング による資金調達は3種類に分けられる
クラウドファンディングは、資金調達する人がプロジェクトに支援してくれた支援者に対して行うリターンの内容によって3種類に大別されます。
【クラウドファンディングの種類】
購入型 | 金融型 | 寄付型 | |
リターン | 金銭以外の商品やサービス | 株式や配当金、利息などの金銭的なリターン | 報告書やお礼の手紙など対価性なしのリターン |
形式内容 | 商品の売買 | 出資や融資 | 贈与 |
資金調達者 | 個人
中小企業などの法人 |
中小企業などの法人 | NPOや公益法人など |
プラットフォームの一例 | ・CAMPFIRE
・Makuake ・kibidango ・Good Morning ・Green Fundingなど |
・FUNDINNO(株式型)
・Sony Bank GATE(ファンド型) ・Crowd Bank(融資型)など |
・Ready forなど |
クラウドファンディングといっても、リターンの種類によって売買、出資や融資、贈与と性質が異なります。それぞれの特徴や注意点も変わってくるため、クラウドファンディングでの資金調達を検討する際は、自分に合ったクラウドファンディングの種類を選ぶようにしましょう。
購入型クラウドファンディングのリターンは商品やサービス
購入型クラウドファンディングは、プロジェクトで集めた資金を元手に商品やサービスをつくり、支援者に対して製作した商品やサービスをリターンとして提供します。支援者は商品やサービスを予約購入する感覚に近く、BtoCの事業を行う際に購入型クラウドファンディングを活用することが多いです。
たとえば、購入型クラウドファンディングで映画製作の資金を集め、支援者には完成した映画の無料券をリターンに設定したり、画期的な新機能がついたガジェットをつくる資金を集めて、支援者には完成したガジェットを定価の20%引きで購入できるようにしたりするなどが、購入型クラウドファンディングのリターンとして設定される傾向にあります。
購入型クラウドファンディングの支援者は、プロジェクトの内容に共感や興味をもつだけでなく、リターンの内容に魅力を感じて支援を決めます。そのため、購入型クラウドファンディングを行う際は、支援者が欲しいリターンはなにかを捉える必要があります。
目標金額を達成しプロジェクトを進行できても、リターン次第では発送コストがかかる、少額のリターン枠を用意しすぎて顧客管理が大変など、予想外の出費や手間が発生する可能性もあります。ローコストで魅力的なリターンを設定することが購入型クラウドファンディングのポイントといえるでしょう。
金融型クラウドファンディングは金銭リターンを提供する
金融型クラウドファンディングは、プロジェクトによって集めた資金で事業を行い、配当金や利息などの金銭リターンを提供する形式によって資金を集めます。支援者は事業に投資する感覚に近いです。
金融型クラウドファンディングは、さらに「株式型」「融資型」「ファンド型」の3つに分類されます。それぞれの特徴については以下の通りです。
株式型 | 融資型 | ファンド型 | |
株式の譲渡 | あり | なし | なし |
返済義務 | なし | あり | なし |
配当金の支払い | あり | なし | あり |
株式型クラウドファンディングは、支援者が非上場企業の株式をプラットフォームに掲載されている情報をもとに購入する仕組みになっています。主にスタートアップ企業が創業期に資金調達する際に活用する傾向にあります。
融資型クラウドファンディングは、支援者がクラウドファンディング業者を仲介として企業に融資する仕組みです。企業はクラウドファンディング業者に対し、元本と利息を支払います。支援者側としては貸付業務をクラウドファンディング業者に任せるため手間がかからず、資産運用のひとつとして活用される傾向にあります。
ファンド型クラウドファンディングは、支援者がクラウドファンディング業者を仲介としてファンドに参加し、事業に投資する仕組みです。ファンド型は株式型と異なり、企業は支援者へ株式を譲渡せず、定期的に配当金や特典のリターンを行います。
金融型クラウドファンディングは金融商品取引法などの規制を受け、取り扱えるクラウドファンディング業者も限られています。また、企業はプロジェクトを掲載する前にクラウドファンディング業者へ決算書や事業計画書から自社の経営状況 を申告し、審査を通過する必要があります。
金融型クラウドファンディングは購入型や寄付型のクラウドファンディングと異なり金銭的なリターンが必要になることからも、出資の性質が強いクラウドファンディングといえます。 支援者にはプロジェクトに対する共感だけでなく、事業の実現可能性や金銭リターンがのぞめる事業なのかも説明する必要があるでしょう。
寄付型クラウドファンディングは公益性の高い活動で活用できる
寄付型クラウドファンディングは、プロジェクトによって集めた資金で公益性の高い活動を行い、支援者にはお礼の手紙を送るなど対価性のないリターンでの形式で資金を集めます。支援者は慈善活動や公益性の高い活動へ寄付する感覚に近いです。
たとえば、困窮している家庭の子供たちのために無料で食べられる子ども食堂を開きたい、災害時の支援物資補給のため寄付金を募りたい場合などで寄付型クラウドファンディングを使うケースがあります。
寄付型クラウドファンディングは支援者から資金を贈与してもらう形式のため、対価性のあるリターンを設定できません。また、国や自治体のほか認定NPO法人などが行うプロジェクトの場合、支援者が寄付した資金を寄付金控除として確定申告で所得控除できるものもあり、支援者と資金調達側双方にメリットがあるといえます。
ただし、寄付型クラウドファンディングは公益性の高いプロジェクトが多く資金使途の透明性が求められる傾向にあります。一般的な営利企業で活用できるケースは少ないかもしれませんが、寄付型クラウドファンディングを検討する際は、 取り扱っているプラットフォームで募集中のプロジェクトを参考にしてみてください。
クラウドファンディングは目標金額を達成しないと支援金を受け取れない
クラウドファンディングは目標金額を達成しないと支援金を受け取れないシステムがほとんどです。クラウドファンディングにはAll or Nothing型とAll In型の2種類のシステムがありますが、ほとんどのプロジェクトではAll or Nothing型を採用する傾向にあるからです。
【All or Nothing型とAll In型の比較】
All or Nothing型 | All In型 | |
支援金 | 目標金額を達成した場合のみ支援金を受け取る | 目標金額の達成可否にかかわらず支援金を受け取る |
手数料 | 目標金額を達成した場合のみ発生する | 目標金額の達成可否にかかわらず発生する |
プロジェクトやリターンの実行 | 目標金額を達成した場合のみ実行する | 目標金額の達成可否にかかわらず実行する |
All or Nothing型は目標金額を支援者から集めきれた場合のみプロジェクト成立となり支援金を受け取れ、達成できなかった場合は支援者に返金となります。
All In型は目標金額を達成できなくとも集めた支援金を受け取れます。支援金を受け取った以上、クラウドファンディング業者への手数料や支援者へのリターンなどの義務が発生するため、集まった支援金額によっては赤字になってしまう可能性もあります。
多くのクラウドファンディング業者ではAll or Nothing型を採用する傾向にあるため、目標金額を達成できなければ支援金を受け取れないと考えておきましょう。しかし、寄付型のクラウドファンディングなどではAll In型を採用しているところもあるため、クラウドファンディングでの資金調達を検討する際は、All or Nothing型とAll In型どちらを使うのか、手数料やプロジェクト、リターンの実行条件についても事前に確認しておきましょう。
クラウドファンディングのプロジェクトを達成するポイント
クラウドファンディングでプロジェクトを達成するポイントとして、宣伝活動とプラットフォームの選び方を意識することが挙げられます。
宣伝活動について | ・SNSや人脈を活用して宣伝を行う
・共感を呼ぶ紹介ページをつくる |
プラットフォームの選び方について | ・手数料を確認する
・入金までの時期を確認する ・プラットフォームごとの支援者層を意識する |
クラウドファンディングでの資金調達は、インターネット上でさまざまな人に支援を募ることができる点が特徴です。クラウドファンディング業者側でも募集の宣伝をしてくれるところもありますが、自身でも宣伝していく意識が大切です。
また、購入型、金融型、寄付型と自身の目的に合ったプラットフォームを選ぶのはもちろんのこと、各プラットフォームで手数料や入金時期、支援者層も異なるため、事前に調べておく必要があります。
クラウドファンディングのプロジェクト達成率はプラットフォームにもよりますが30%前後といわれています。プロジェクトの達成は決して簡単ではないため、事前準備をしっかり行ったうえで臨みましょう。
SNSや人脈を活用して宣伝を行う
クラウドファンディングでプロジェクトを達成するポイントのひとつとして、SNSや人脈を活用して宣伝を行うことが挙げられます。クラウドファンディングの募集期間中は、自身でもプロモーション活動を行うことができるため、宣伝活動をしたほうが目標金額を達成できる可能性が上がるからです。
クラウドファンディングサイト上では常にさまざまなプロジェクトが募集活動しているため、 自社のプロジェクトが埋もれてしまう可能性もあります。
そこで、クラウドファンディングの起案者自身 が自ら知人に声をかける、 またはSNSで情報発信することで、クラウドファンディングを利用したことがない層にもアプローチが可能になります。 プロジェクトの内容に興味をもってもらえれば、 支援者が二次的に情報を拡散してくれるかもしれません。
また、広く情報発信活動をすることで、直接支援にはつながらなくても市場の反応を確認できます 。SNS上で質問などを 受け付けるようにすれば、ユーザー層の生の声を聞けるチャンスにもつながるため、クラウドファンディングでの資金調達をする際は、自身で宣伝活動を行うことも検討してみましょう。
共感を呼ぶ紹介ページをつくる
クラウドファンディングでプロジェクトを達成するポイントのひとつとして、共感を呼ぶ紹介ページをつくることが挙げられます。支援を募る相手は 金融機関といった投資のプロではなく一般の人であるため、事業に対する熱量や事業内容を分かりやすく伝えることで、事業を応援したいと思ってもらいやすくなるからです。
購入型、金融型、寄付型と種類は分かれているものの、支援者は事業の成長を応援したい気持ちがあるから支援する という点は共通しています。そのため、クラウドファンディング起案者は自分の事業が社会にどのように貢献するのか、どうしてその事業をやろうと思ったのかといったストーリーを説明することが 大切になってきます。
また、難しい最新技術を使った商品開発であっても、専門用語はあまり使わず分かりやすく説明し、支援者の生活をどのように豊かにするのかといったメリットを伝えるようにすることも大切です。
支援者の事業を応援したいという気持ちをつかむことができれば、クラウドファンディングを通して企業のファンを獲得することにつながります。プロジェクトの募集ページは、クラウドファンディングの担当者に相談するなどして、支援者の共感を得られるページをつくるようにしましょう。
手数料を確認する
クラウドファンディングでプロジェクトを達成するポイントのひとつとして、手数料を確認してプラットフォームを選ぶことが挙げられます。計画通りに資金繰りを進めるためにも、手数料を含めた金額を目標金額として設定する必要があるからです。
クラウドファンディングの手数料は、プロジェクトが成立したあとの最終的な調達金額に対してかかるケースが多いです。相場は10%から20%で、プラットフォームによってはさらに決済手数料が必要になったり、金融型クラウドファンディングの場合は事前に審査手数料が発生したりします。
購入型クラウドファンディングで資金調達した場合、手数料だけでなく支援者へのリターンを用意するコストもかかります。手数料がどれくらいかかるかを踏まえたうえで目標金額を設定しないと、赤字になったり支援者へのリターンを用意する資金が足りなくなったりする事態につながりかねません。
手数料にはクラウドファンディング業者によるサポート費用も含まれています。プラットフォームにもよりますが、プロジェクト掲載まで専任の担当からアドバイスをもらえるなどサポート体制があるところが多いです。初めてクラウドファンディングを実施する人などにとっては、手数料が低いところより、手数料が高めのところでもプラットフォーム側からのサポートが手厚い環境のほうが魅力的かもしれません。
プラットフォームを選ぶ際は、手数料とどのようなサポートがあるのかも確認したうえで、自分に合ったところを判断し、手数料を含めた目標金額を設定するようにしましょう。
入金までの時期を確認する
クラウドファンディングでプロジェクトを達成するポイントのひとつとして、入金時期を確認してプラットフォームを選ぶことが挙げられます。プロジェクト成立後に 実際に自分の手元に入金されるまでには一定の期間がかかるため、予定していた支払いに間に合わないなどのトラブルが発生する可能性があるからです。
プラットフォームによっては、プロジェクト成立後の翌々月末に入金となるところもあります。いつ入金されるかは、企業の資金繰りはもちろん、その後のプロジェクトの進行にも影響するため、事前に入金時期を確認しスケジュールの見通しを立てることが大切です。
なお、クラウドファンディングの募集期間はおおむね1か月から2か月ほどで設定するプロジェクトが多く、 入金までにトータルで3か月から4か月ほど期間がかかってきます。資金を急ぐ場合には融資などクラウドファンディング以外の資金調達方法を検討してください。
プラットフォームごとの支援者層を意識する
クラウドファンディングでプロジェクトを達成するポイントのひとつとして、プラットフォームごとの支援者層を意識することが挙げられます。ターゲットとなる支援者層が多くいるプラットフォームを活用したほうが資金を集めやすいからです。
たとえば、PCまわりのガジェットを開発したく購入型クラウドファンディングを活用する場合、ユーザー数が多くさまざまなジャンルのプロジェクトがあるところより、ガジェット系のクラウドファンディングが盛んなプラットフォームを利用したほうが、プロジェクトに興味をもってもらいやすいかもしれません。
クラウドファンディング業者を選ぶときには、各プラットフォームに掲載されているプロジェクトを見比べて、 自分のプロジェクトにマッチしているかを意識して選ぶようにしましょう。
まとめ
クラウドファンディングとは、事業内容やリターンへの期待から支援者から資金を集める調達方法です。事業への共感が得られれば多くの支援を集められる可能性がある点や、資金調達と広告宣伝効果のどちらも兼ねられる点はクラウドファンディングの魅力的な点です。
ただし、原則として対価性のあるリターンが発生する点や、クラウドファンディング業者に対して手数料が発生するなど、クラウドファンディング独自のコストや手間も発生します。
そのため、自身の事業にクラウドファンディングが合っているかどうか検討をしたうえで、募集事例を参考にしながら自社にあったプラットフォームを探すようにしましょう。