信用金庫から融資を受ける際に、出資金の拠出を求められることがあります。信用金庫は主に会員に向けて融資を行っており、出資をすることが会員になるための条件の1つであるためです。ただし、小口融資などでは出資が必要ない場合もあります。
当記事では、融資を受けるために出資をする必要があるのか、またその金額はいくらなのかを解説します。これから信用金庫から融資を受けたい人や信用金庫から出資のお願いをされている人は参考にしてみてください。
出資金を払う必要があるかは融資の希望金額によって異なる
信用金庫から融資を受ける際に、出資金を払う必要があるかは融資の希望金額によって異なります。700万円を超える融資の場合は会員となるために出資金が必要になり、それ未満であれば不要です。
信用金庫は会員同士が助け合う「相互扶助」を目的とした金融機関です。そのため融資などで利用する際には、出資を行い信用金庫の会員となる必要があります。しかし融資の金額が700万円以下の小口融資であれば会員となる必要がなく、出資金を払う必要もありません。
融資の希望額が700万円よりも多い場合は、信用金庫の会員となり出資金を払う必要があると認識しておきましょう。
出資金の最低額は信用金庫によって異なる
会員になるための出資金の最低額は信用金庫によって異なります。出資金の金額は統一されておらず、個別の信用金庫ごとに1口の単価や最低口数が決められているためです。
信用金庫 | 会員になるための出資金 |
多摩信用金庫 | 10,000円~(1口50円、最低200口~) |
城南信用金庫 | 10,000円~(1口50円、最低200口~) |
高松信用金庫 | 5,000円~(1口500円、最低10口~) |
豊川信用金庫 | 個人事業主:30,000円~(1口500円、最低60口~) 法人:50,000円~(1口500円、最低100口~) |
会員になるためには信用金庫ごとに決められている最低額以上の出資をしなければいけません。最低金額としては、主に10,000万円を設定している信用金庫が多く、低い場合は5,000円、中には個人と事業主で異なる出資金額を設定している信用金庫もあります。出資金額は、融資を受ける信用金庫のホームページや担当者に確認してみましょう。
出資をすると配当金やサービスが受けられる
出資をすると、配当金やサービスが受けられます。
配当金は年度ごとに経営が黒字となり余剰金が出ると出資高に応じた金額が配られます。配当率は信用金庫によって異なりますが、主に3%から5%ほどとなっています。たとえば、出資金を10,000円払い、配当率が3%だと毎年300円の配当を得ることができます。
余剰金が出ない場合などは、配当金がない場合もあります。配当金については、毎年6月に行われる総代会の後に「出資金残高通知書兼出資配当金振込のご案内」が信用金庫から郵送で届くので確認しましょう。
配当金の他にも、振込手数料の割引や特別金利の定期預金など、独自のサービスを提供する信用金庫があります。
信用金庫 | 会員になるための出資金 |
多摩信用金庫 | ・手数料の割引(振込手数料) ・たましん美術館の招待券 |
足立成和信用金庫 | ・あだちせいわメンバーズ定期預金 ・手数料の割引(振込手数料、定時定額送金手数料) |
会員向けサービスの内容は信用金庫ごとに異なるので、信用金庫のホームページや担当者に確認してみましょう。
出資金で注意すべきことは2つある
出資金を払う際に注意すべきことは2つあります。
【出資金で注意すべきこと】
- 担保にはならない
- 払い戻しに時間がかかる
信用金庫の出資金は信用金庫法に基づいて設定されているため、預金や会費株式などの他の資産とは取り扱いが異なります。あまりに多額の出資金を払ってしまうと事業の資金繰りに影響が出る可能性もあるため、注意点に留意しながら出資できる範囲の金額に抑えると良いでしょう。
担保にはならない
出資金は担保にはなりません。信用金庫の出資金は市場で流通している株式と異なり多くの制約があるため、出資金を担保とすることはできないためです。
出資金を担保にすることができないため、融資を受ける際の自己資金は出資金の他に貯める必要があります。融資を検討している人は、出資金とは別に自己資金を貯めておきましょう。
払い戻しに時間がかかる
出資金の払い戻しには時間がかかります。出資金の払い戻しは、信用金庫法で「その請求の日から6ヶ月を経過した日以降に到来する事業年度末」と決められているためです。
たとえば、脱退請求をした日が2024年9月30日以前の場合、払い戻しを受け取れるのは2025年3月の最終営業日です。一方、2024年10月1日以降に脱退請求をした場合は、2026年3月の最終営業日に支払われることになります。
出資金の払い戻しは短くても半年、長いと1年半かかります。緊急で資金が必要になった場合でもすぐに現金として受け取れないというリスクがあるので、事業が軌道に乗っていない時期や資金繰りが厳しい時期の多額の出資は避けた方がよいでしょう。
まとめ
信用金庫への出資が必要かは融資の希望額によって異なります。700万円を超える場合は、出資を行い会員となる必要がありますが、700万円未満の場合は出資は不要です。
出資の最低金額は信用金庫ごとに決まっており、最低でも5,000円以上の出資が必要です。出資額は利用する信用金庫のホームページか担当者に確認しましょう。
信用金庫に出資となり会員となると、配当金や手数料の割引などのサービスを受けられることがあります。一方で信用金庫の出資金は多くの制約があり、担保にできず、払い戻しもすぐに受けられないので、状況によっては多額の出資を行うことは避けた方がよいでしょう。