創業融資を検討している人の中には、創業融資をいくら借りようか悩んでいる人もいるかもしれません。自身が借りられる融資金額の目安を知りたい人もいるでしょう。
当記事では、創業融資における借入額の目安を解説します。借入額の平均値や中央値から解説しているため、創業融資をいくら借りようか迷っている人は参考にしてみてください。
創業融資における借入額の平均は約800万円
創業融資における借入額の平均は約800万円とする考え方があります。日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」によると、金融機関等から借入した場合の平均額は約800万円でした。
【創業時における金融機関等からの借入額】
調査年度 | 金融機関等からの借入額の平均 |
---|---|
2020年度 | 825万円 |
2021年度 | 803万円 |
2022年度 | 882万円 |
2023年度 | 768万円 |
2024年度 | 780万円 |
※日本政策金融公庫総合研究所の「2024年度新規開業実態調査」をもとに株式会社SoLabo作成
2020年度から2024年度までの金融機関等からの借入額の平均は、780万円から882万円の間を推移しています。業種や事業規模によって差がある可能性はありますが、創業時における借入額の目安として、約800万円を基準のひとつとする考え方があります。
新規開業実態調査における「金融機関等からの借入」は、さまざまな金融機関が含まれています。「日本政策金融公庫」「民間金融機関」「地方自治体(制度融資)」「公庫・地方自治体以外の公的機関」が含まれており、さまざまな金融機関からの借入額の平均値と捉えることができます。
なお、この数値だけでは、1つの金融機関での借入額の平均は分かりません。1つの金融機関からの借入によるものか、複数の金融機関からの借入によるものかは判断できない点を留意しておきましょう。
創業費用の中央値は約550万円
創業費用の中央値は約550万円とする考え方があります。日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」によると、開業にかかった費用の中央値は約550万円となっており、開業費用が500万円未満の割合は約40%を占めていました。
【創業費用に関するデータ】
調査年度 | 創業費用の平均値 | 創業費用の中央値 | 500万円未満の割合 |
---|---|---|---|
2020年度 | 989万円 | 560万円 | 43.7% |
2021年度 | 941万円 | 580万円 | 42.1% |
2022年度 | 1,077万円 | 550万円 | 43.1% |
2023年度 | 1,027万円 | 550万円 | 43.8% |
2024年度 | 985万円 | 580万円 | 41.1% |
※日本政策金融公庫総合研究所の「2024年度新規開業実態調査」をもとに株式会社SoLabo作成
2020年度から2024年度までの創業費用の中央値は、550万円から580万円の間を推移していました。創業費用の平均値が約1,000万円に対し、創業費用の中央値は1/2程度の約550万円となっているため、一部の高額な創業案件が平均値を押し上げている傾向があることが分かります。
2020年度から2024年度までの創業費用が500万円未満の割合は、41.1%から43.8%でした。500万円未満の費用で創業した事業者が約4割いることから、創業時にかける費用は約500万円を目安とする考え方もあります。
創業融資における平均融資額は約800万円でしたが、創業費用の中央値は約550万円でした。一部の高額な創業案件が平均を押し上げている可能性が考えられるため、創業融資を検討している人は、業種や事業規模に応じた融資額を希望することを検討してみてください。
創業融資の上限額は借入先によって異なる
創業融資の上限額は借入先によって異なります。金融機関や制度によって上限額が異なるため、主要な創業融資の制度を確認してみましょう。
【創業融資の主要な制度】
日本政策金融公庫「新規開業資金」の融資上限額は7,200万円(そのうち運転資金は4,800万円まで)です。新たに事業を始める人が対象となる融資制度のため、創業時に日本政策金融公庫を利用するときは、新規開業資金の融資条件を検討することになります。
信用保証協会「創業関連保証」の融資上限額は3,500万円です。新たに事業を始める人が対象となる保証制度のため、創業時に信用保証協会を利用するときは、創業関連保証の保証条件を検討することになります。
なお、創業時に融資上限額まで借入する事例は少ない傾向にあります。「2024年度新規開業実態調査」によると開業費用に2,000万円以上かかった割合は9.4%のみに留まるため、創業時に融資上限額まで借入する事例は少ない傾向にあることを留意しておきましょう。
希望する融資額の3割程度の自己資金を用意する
創業融資を申し込むときは、希望する融資額の3割程度の自己資金を用意することを検討してみましょう。「2024年度新規開業実態調査」によると、「金融機関等からの借入額の平均」に対する「自己資金額の平均」の割合が、約30%だったからです。
【自己資金の割合】
調査年度 | 金融機関等からの借入額の平均 | 自己資金額の平均 | 自己資金の割合 |
---|---|---|---|
2020年度 | 825万円 | 266万円 | 32.2% |
2021年度 | 803万円 | 282万円 | 35.1% |
2022年度 | 882万円 | 271万円 | 30.7% |
2023年度 | 768万円 | 280万円 | 36.4% |
2024年度 | 780万円 | 293万円 | 37.5% |
※日本政策金融公庫総合研究所の「2024年度新規開業実態調査」をもとに株式会社SoLabo作成
2020年度から2024年度までの調査結果を見ると、自己資金額の平均が266万円から293万円の間を推移しています。「自己資金額の平均÷金融機関等からの借入額の平均×100」の計算式により、自己資金の割合を算出すると、30.7%から37.5%の間を推移していることが分かりました。
創業融資を受けるときは、相応の自己資金を用意することになります。自己資金を3割用意したら希望の融資額を借入できるとは限りませんが、創業融資を申し込むときは、融資希望額の3割程度の自己資金を準備することを目安にしてみましょう。
なお、創業融資における自己資金の情報が知りたい人は「創業融資を受けるために自己資金はいくら必要か?」の記事も参考にしてみてください。
創業融資の平均融資額を押さえた人は資金計画を立ててみる
創業融資の平均融資額を押さえた人は、資金計画を立ててみましょう。「創業融資の借入額の平均値」「創業費用の中央値」などの情報を参考に、自身の創業における資金計画を立てることを検討してみてください。
【資金計画の例】
創業に必要な資金 | 資金調達の方法 |
---|---|
<設備資金> 400万円 <運転資金> 300万円 |
<金融機関からの借入> 500万円 <自己資金> 200万円 |
合計700万円 | 合計700万円 |
資金計画を立てるときのポイントは、まずは創業に必要な資金を書き出すことです。「店舗の保証金」「内装工事費」などの設備にかかる資金と、「仕入費」「人件費」などの運営にかかる資金をそれぞれ書き出し、創業に必要な資金の合計を算出します。
資金計画を立てるときのポイントは、創業融資の平均融資額である約800万円を目安とすることです。借入予定額がこの金額以内に収まっているかどうかを確認することにより、金融機関が融資を検討しやすい計画かどうかを判断できます。
なお、創業融資の平均融資額は、あくまで資金計画を立てるときの目安のひとつです。「自己資金」「自身の経歴」「事業内容」などの総合的な情報から融資の可否は決定されるため、創業融資を申し込む場合はその前提を踏まえて資金計画を立ててみましょう。
まとめ
創業融資における借入額の平均は約800万円とする考え方があります。業種や事業規模によって差がある可能性はありますが、創業時における借入額の目安として、約800万円を基準のひとつとする考え方があります。
創業費用の中央値は約550万円とする考え方があります。500万円未満の費用で創業した事業者が約4割いることから、創業時にかける費用は約500万円を目安とする考え方もあります。
創業融資の平均融資額を押さえた人は、資金計画を立ててみましょう。「創業融資の借入額の平均値」「創業費用の中央値」などの情報を参考に、自身の創業における資金計画を立てることを検討してみてください。