創業融資を借りて事業を始めたあとは、事業の収益をもとに返済していくことになりますが、「売上が伸びない」「急な怪我により営業できない」などのさまざまな要因から収益を確保できず、返済できない状態になってしまう可能性があります。
当記事では、創業融資を借りたあとに返済不能になった場合の対応策を解説します。返済不能になった場合の相談先も解説しているため、創業融資の借入金の返済が厳しい人は参考にしてみてください。
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支払期日が来る前に金融機関へ相談する
創業融資を借りたあとに返済不能になった場合は、支払期日が来る前に金融機関へ相談してみてください。支払期日までに返済できないと判明した場合、速やかに金融機関へ相談することにより、今後の対応策に応じてくれる可能性があります。
【金融機関に相談できる対応策の例】
- 返済条件の変更
- 創業融資の借り換え
返済不能になった場合、金融機関に相談できる対応策として「返済条件の変更」「創業融資の借り換え」が挙げられます。どちらの対応策も資金繰りを改善する効果が期待できるため、創業融資の借入金の返済が厳しい人はそれぞれの対応策を確認してみましょう。
なお、返済できずに支払期日を過ぎてしまった場合は金融機関からの信頼を失う可能性があります。遅延履歴が残ると、金融機関への相談も不利に働く可能性があるため、創業融資の返済が厳しい場合は支払期日が来る前に対応策を講じるようにしましょう。
返済条件の変更
返済不能になった場合、金融機関に相談できる対応策のひとつは「返済条件の変更」です。創業融資を借入するときに定めた返済条件を緩和してもらうことにより、資金繰りの改善を図ることができます。
たとえば、返済条件を緩和するために、元金据置の期間を設定する方法があります。一時的に資金繰りが悪化した場合、利息のみを支払う期間を設けることにより、その間に事業の立て直しを図ることができます。
また、返済条件を緩和するために、返済期間を延長する方法があります。返済期間を延長することにより、毎月の元金を減額できるため、元金据置の期間も設けるよりも長期的な観点から資金繰りの改善を図ることができます。
なお、複数の金融機関から借入している場合、すべての金融機関において返済条件を変更するよう打診される可能性があります。債権者の公平性を保つために、複数の借入先がある場合はすべての金融機関において返済条件の変更を依頼する可能性がある点を留意しておきましょう。
融資の借換え
返済不能になった場合、金融機関に相談できる対応策のひとつは「融資の借り換え」です。融資を借換えすることにより、返済条件を新たに組み直すことができるため、資金繰りの改善を図ることができます。
融資の借り換えとは、創業融資を受けて借入した残高を、新たな融資によって一括返済することを指します。毎月の返済額や金利は新たな融資条件が適用されるため、創業融資時の返済条件を緩和できる可能性があります。
【返済条件のイメージ】
項目 | これまでの融資 | 借換え後の新たな融資 |
---|---|---|
金利 | 2.0% | 1.8% |
返済期間 | 残り3年 | 新たに5年 |
毎月の返済額 | 約10万円 | 約8万円 |
借入残高 | 残り360万円 | 新たに480万円 |
※イメージのため、実際の返済額とは異なります。
融資を借換えすることにより、金利や返済期間は新たな融資条件が適用されます。上記の表では、毎月10万円の返済負担が毎月8万円に減っているため、資金繰りの改善につながる可能性があります。
融資を借換えすることにより、新たに現金を増やすことができます。上記の表では、残高360万円の借入を新たに480万円の借入によって借換えしているため、手元に残る現金は480万円から360万円を差し引いた120万円となります。
なお、融資の借り換えを希望する場合は、新たに融資審査を受けることになります。資金繰り状況や収益状況などを審査された上で融資の可否が判断されるため、経営状況が悪化している場合は借換えが認められない可能性も考慮しておきましょう。
経営状況を改善させるために専門家への相談も検討する
創業融資を借りたあとに返済不能になった場合は、経営状況を改善させるために専門家への相談も検討してみてください。資金繰りの見直しや法的トラブルの対応など、返済不能な状況を改善するためのアドバイスをしてくれる可能性があります。
【相談できる専門家の例】
専門家 | サポート内容の例 | 相談方法の例 |
---|---|---|
税理士 | ・資金繰りの見直し ・経費削減の提案 ・補助金や助成金の申請支援 |
・顧問契約先に相談する ・税理士紹介サイトから探す ・商工会議所から紹介してもらう |
弁護士 | ・債務整理 ・債権者や保証人との関係整理 ・法的なトラブルの対応 |
・法律相談センターを利用する ・弁護士ドットコムから探す ・法テラスを利用する |
中小企業診断士 | ・経営戦略の再構築 ・補助金や助成金の申請支援 ・金融機関への資料作成支援 |
・商工会や商工会議所を利用する ・よろず支援拠点を利用する ・独立診断士の事務所を探す |
相談できる専門家として「税理士」が挙げられます。税理士は税の専門家として事業者の税務や会計業務を請け負う関係上、事業者の財政状況に応じた資金繰りや経費削減に関するアドバイスに加え、補助金や助成金の申請支援業務を依頼できる可能性があります。
また、相談できる専門家として「弁護士」が挙げられます。弁護士は法律の専門家として依頼者の権利保護や訴訟などの法律業務を行う関係上、「債務整理」「債権者や保証人との関係整理」などの法的な解決方法を提示してくれる可能性があります。
なお、中小企業診断士も経営改善の相談先として挙げられます。中小企業診断士は経営課題の分析や改善提案を専門とする国家資格であるため、経営改善に関する全般的な相談をしたい場合は中小企業診断士に相談することも検討してみてください。
経営改善計画策定支援を受けることも検討する
経営改善のために専門家へ相談する場合は、経営改善計画の策定支援を受けることも検討してみましょう。経営改善計画策定支援とは、資金繰りに不安や課題を抱えている事業者に対し、専門家が経営改善計画の策定を支援する制度です。
【経営改善計画策定支援の概要】
項目 | 概要 |
---|---|
支援内容 | ・経営改善計画書の策定支援 ・経営改善計画の伴走支援 |
対象 | 財務上の問題を抱え、自ら経営改善計画を策定することが難しい中小企業や小規模事業者 |
利用目的 | ・金融支援を取り付ける ・業況改善の可能性を示す |
実施機関 | 中小企業活性化協議会 |
支援の流れ | ① 相談 ② 計画策定支援 ③ 金融機関へ計画提出と金融支援の実施 ④ 伴走支援 |
費用の目安 | ≪小規模事業者の場合≫ 150万円以下 ≪中規模事業者の場合≫ 300万円以下 ≪中堅規模の事業者の場合≫ 450万円以下※費用の一部は国が負担する補助制度あり |
※中小企業庁「経営改善計画策定支援」を参考に株式会社SoLaboが作成
経営改善計画策定支援では、国が認定する認定経営革新等支援機関に経営相談できます。「経営改善計画書の策定支援」「経営改善計画の伴走支援」など、経営に課題を抱えている中小企業や小規模事業者に対し、事業の抜本的な立て直しを支援してくれます。
経営改善計画策定支援では、金融支援を含めた経営改善計画の策定支援を受けられます。返済条件の変更や資金調達などの金融支援を金融機関に依頼できるため、返済負担を減らして資金繰りの改善を図れる可能性があります。
なお、経営改善計画策定支援を希望する場合は認定経営革新等支援機関検索システムを活用してみましょう。経営改善計画策定支援の実績数が掲載されているため、依頼する認定経営革新等支援機関を探す場面において活用してみてください。
借入金を返済しないでいるとさまざまな方面に影響が及ぶ
借入金を返済しないでいるとさまざまな方面に影響が及びます。創業融資を借りたあとに返済不能になった場合、支払期日を過ぎても返済しないでいるとさまざまな方面に影響を及ぼすため、創業融資を返済できない人は確認しておきましょう。
【借入金を返済しない場合に起こること】
項目 | 概要 |
---|---|
遅延損害金が発生する | 債権者が被る損害を補てんするため、返済期日を過ぎても返済されない場合、遅延損害金が発生する。延滞期間が長くなるほど遅延損害金も増えていく。 |
個人信用情報に傷がつく | 「遅延」「未入金」などの延滞情報が信用情報機関に登録される。信用情報に傷がつくと、個人のローンやクレジットカードなどの金融取引の審査に通りにくくなる。 |
保証会社や連帯保証人に連絡される | 債務者が返済しない場合、債権者である金融機関から保証会社や連帯保証人へ連絡し、代位弁済を求める可能性がある。代位弁済が実行された場合、債務者は保証会社や連帯保証人に対し返済義務を負う。 |
法的措置を実行される | 借入金の延滞が続くと、債権者である金融機関が支払督促の申し立てや、財産差し押さえの手続きを取る可能性がある。裁判所によって申し立てが認められた場合、法的措置が執行される。 |
借入金を返済しないでいると、遅延損害金が発生します。遅延損害金は金融機関によって定められた利率にもとづき、一日ごとに増えていくため、延滞期間が長くなればなるほどに遅延損害金も増えていきます。
また、借入金を返済しないでいると、保証会社や連帯保証人に連絡される可能性があります。保証会社や連帯保証人を立てて創業融資を受けた場合、返済が滞ると金融機関は保証人に対して代位弁済を求める可能性があります。
なお、借入金を返済せずに放置していると、最終的には法的措置を執行されるおそれもあります。金融機関が訴訟の手続きを行い、裁判所が認めた場合は強制執行の手続きに移るおそれがあるため、借入金を返済できない場合は速やかに金融機関や専門家へ相談するようにしてください。
まとめ
創業融資を借りたあとに返済不能になった場合は、支払期日が来る前に金融機関へ相談してみてください。支払期日までに返済できないと判明した場合、速やかに金融機関へ相談することにより、今後の対応策に応じてくれる可能性があります。
創業融資を借りたあとに返済不能になった場合は、経営状況を改善させるために専門家への相談も検討してみてください。資金繰りの見直しや法的トラブルの対応など、返済不能な状況を改善するためのアドバイスをしてくれる可能性があります。
なお、借入金を返済しないでいるとさまざまな方面に影響が及びます。「遅延損害金の発生」「代位弁済の実行」など、支払期日を過ぎても返済しないでいるとさまざまな方面に影響を及ぼすため、創業融資を返済できない人は速やかに金融機関や専門家に相談しましょう。