融資を申し込む際の運転資金は、ひと月にかかる経費と事業が軌道に乗るまでの月数が基準となります。申し込んだ金額の妥当性を説明できないと、計画性がないと判断され審査に通らない可能性があるので、事業に合った運転資金の目安や計算方法を確認しましょう。
当記事では、融資を受ける際の運転資金の目安や計算方法、運転資金として計上できる項目を解説します。融資の申し込みを検討している人や事業計画書を作成する人は参考にしてみてください。
運転資金の目安は2ヶ月から3ヵ月程度
運転資金として融資を受けられる金額は2ヶ月から3ヵ月分と考えておきましょう。なぜなら、事業が軌道に乗り売上が回収できるようになるまで2ヶ月から3ヵ月程度かかると金融機関は考え、その期間の運転資金を融資するためです。
2ヶ月から3ヵ月程度の融資を受けると、売上金の回収により運転資金が手元にあるので資金に余裕ができます。3か月目以降は回収した売上金を運転資金として利用できるので、それ以上の融資は不要であると判断されるのです。
たとえば、消費者を顧客とする飲食店や美容室などの業種では、現金払いのほかにクレジットカードの決済があるため、売上回収が当月から翌月となります。また、また建設業や製造業といった売掛金で取引する業種では、売上の回収までに1ヶ月から2ヶ月です。
金融機関は売上金を回収するまでの期間に対する運転資金の融資が妥当と考えます。多くの業種では売上金が入るまでに2か月程度であるため、一般的な運転資金は2ヵ月から3ヵ月分となるのです。
業種によっては3ヵ月より多く運転資金を計上できる
業種によっては、運転資金を3ヵ月より多く計上できる場合もあります。業務の特性で売上金の回収が遅くなる場合や事業が軌道に乗るまでには時間がかかると判断された場合は、その期間を考慮した金額にしてもらえる可能性があるためです。
たとえば、訪問介護やデイサービスといった国民健康保険団体連合会(通称:国保連)から売上が入る業種では、売上回収がサービス提供月の翌々月となります。売上回収までの期間があるため、運転資金を3ヵ月よりも長く申し込むことができる可能性があります。
また、事業が軌道に乗るまでの期間が長い場合も運転資金を長く申請できることがあります。製品開発をする必要がある業種では、金融機関が事業が軌道に乗るまでに時間がかかると判断する場合があるためです。
融資で申し込みできる運転資金は一般的には2ヶ月から3ヵ月程度ですが、事業の形態によってはそれ以上の運転資金を申し込める可能性があります。事業計画を立て、事業に合った金額を申し込みましょう。
運転資金の計算方法
運転資金の融資を受ける際の運転資金は以下のように計算します。
融資を受ける際の運転資金 = 経費(人件費や家賃など) × 月数 |
融資で申し込みできる運転資金は事業を行うのに必要な人件費や家賃などの経費を月数でかけた金額です。たとえば、1ヶ月にかかる経費が15万円、運転資金として3ヵ月分を申し込む場合は、15万円×3ヵ月で45万円となります。
必要な経費に関しては、事業計画書や収支計画書を作成し、人件費や家賃といった運転資金が月々どのくらいかかるのかを確認しましょう。
金融機関の担当者は業種によって、どの程度の運転資金がかかるのかというデータを持っています。一般的にかかる費用よりも高く計上している経費がある場合は、なぜその金額になるのか、なぜその金額が適切であるのかを説明できるようにしておいてください。
計上できる項目
運転資金に計上できる項目は以下の通りです。
項目 | 内容 |
原材料費 | 製品を製造するために消費した材料へ支払う費用 |
役員報酬 | 取締役や会計参与、監査役などに従事している者へ支払う費用 |
給料賃金 | 従業員に対して支払う費用 |
法定福利費 | 福利厚生のために支払う費用 |
外注費 | 業務の一部を委託する際に支払う費用 |
水道光熱費 | 水道や電気、ガスに支払う費用 |
旅費交通費 | 業務に必要な交通や宿泊に支払う費用 |
車両費 | 車の維持管理のために支払う費用 |
通信費 | 業務に必要な通信関連や配送に支払う費用 |
広告宣伝費 | 商品サービスを販売するために必要な広告や宣伝のために支払う費用 |
接待交際費 | 事業に関わる人に対して接待や謝礼をするために支払う費用 |
消耗品費 | 金額が10万円以内または使用可能期間が1年未満の物品購入に支払う費用 |
支払手数料 | 金融機関への振込手数料や仲介手数料に支払う費用 |
支払報酬料 | 弁護士・税理士の報酬として支払う費用 |
どこまでを運転資金として計上できるか判断するには、設備資金であるかどうかで判断すると良いでしょう。設備資金は事業を行う上で一括で支払う資金であり、設備や建物、ホームページなどが該当します。それ以外の経費は概ね運転資金として計上可能です。
どこまでが運転資金か把握できたら、その合算値を計上しておきましょう。各項目に月々のいくらかかるのか知ることで、融資の運転資金としていくら申し込めば良いのかわかります。
まとめ
金融機関から融資を受ける際の運転資金は、一般的に2ヶ月から3ヵ月となります。事業が軌道に乗るまでとなるので、事業計画書や収支計画書を作り、必要となる運転資金を確認しましょう。
融資を受けられる運転資金は、事業を行うのに必要な経費を月数でかけた金額です。運転資金として計上できる項目とかかる費用を確認し計算しましょう。また一般的にかかる費用よりも高く計上している経費がある場合は、なぜその金額になるのか、なぜその金額が適切であるのかを説明できるようにしておきましょう。