赤字決算の場合、銀行融資を利用できないのではないかと考える事業者もいるでしょう。銀行は融資の可否を決定する際に事業者の返済能力を重視していることから、赤字決算の事業者は銀行にとって貸し倒れのリスクが高いと判断される可能性があります。
しかし、赤字決算だからといって必ずしも銀行融資を受けられないとは限りません。当記事では、赤字決算の事業者が銀行融資を受けられる可能性と、その条件について解説します。
赤字決算でも銀行融資の利用は可能だが審査が厳しくなる
赤字決算の事業者でも銀行融資を利用することは可能ですが、審査が厳しくなる傾向にあります。銀行は融資の可否を決定する際に事業者の返済能力を重視していることから、赤字決算の事業者は財務状況が悪く、銀行にとって貸し倒れのリスクが高いと判断される可能性があるためです。
しかし、赤字となった原因や今後の見通しによっては、適切な対策と将来の計画を示すことで銀行融資の審査に通過できる可能性があります。赤字決算でも銀行融資を受けたいと考えている人は、どのような場合に赤字決算でも銀行融資が認められるのかを押さえておきましょう。
【赤字決算でも銀行融資を利用できる場合】
項目 | 詳細 |
---|---|
事業への先行投資による赤字の場合 | 成長戦略の一環として多額の投資をしたことによる赤字の場合。将来的な収益増加が見込まれることを示せれば銀行融資を受けられる可能性がある |
偶発的な事由による一時的な赤字の場合 | 自然災害や予期せぬ事故などやむを得ない事情による赤字の場合。一時的かつ事態の収束により収益力の回復が見込まれることを示せれば銀行融資を受けられる可能性がある |
黒字化の見込みを明確に示せる場合 | 経営改善により黒字化が明確に見込まれる場合。数値に基づく根拠のある事業計画書を提示することにより、赤字決算でも銀行融資を受けられる可能性がある |
担保によって信用力を補完できる場合 | 不動産や保証人など、信用力の補完につながる担保を提供できる場合。融資額相当の価値のある担保であると認められれば、赤字決算でも銀行融資を受けられる可能性がある |
赤字決算の場合は審査が厳しくなる傾向にありますが、事業の将来性や返済の可能性を明確に示すことができれば、業績が赤字であっても銀行融資を受けられる可能性があります。赤字決算の状態で銀行融資を受けたいと考えている場合は、赤字の原因を特定した上で、業績改善の見込みや事業者の返済能力を銀行の融資担当者に示しましょう。
なお、当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)では、融資サポートを実施しています。8,000件以上の融資サポートの実績から回答するため、自社の状況で融資を受けられるかどうか知りたい人は株式会社SoLabo(ソラボ)の無料診断をお試しください。
事業への先行投資による赤字の場合
事業への先行投資による赤字の場合、銀行融資を受けられる可能性があります。銀行融資の審査では、現在の財務状況だけではなく事業の将来性も含めて判断されるため、先行投資による赤字が最終的に事業の成長につながる「良い赤字」であることを証明できれば、融資を認められる場合があります。
たとえば、新規事業立ち上げのために新たな生産設備を導入し、多額の投資をしたことにより赤字決算となる場合があります。これらの投資は一時的に費用が先行するため赤字決算となることがありますが、将来的には投資以上の収益を生み出す可能性を秘めています。
また、市場での競争優位性を確立するために革新的な技術の研究開発に取り組み、多額の投資したことにより赤字決算となる場合もあります。一時的な赤字となっても、独自の製品やサービス開発による将来的な収益の増加が見込めれば、銀行から融資を前向きに検討してもらえる可能性があります。
銀行は、戦略的な先行投資によって生じる「良い赤字」と、経営不振による「悪い赤字」を区別して融資の可否を判断します。創業時や新規事業立ち上げ時の先行投資により赤字決算となっている場合は、赤字の原因と投資の妥当性を説明し、将来的な収益増加の見込みを示しましょう。
偶発的な事由による一時的な赤字の場合
偶発的な事由による一時的な赤字の場合、銀行融資を受けられる可能性があります。自然災害や予期せぬ事故によって発生した損害が原因の赤字であれば、やむを得ない事情による一時的な赤字であると判断され、銀行融資が認められる場合があります。
たとえば、自然災害によって店舗や設備が損壊し、その修繕に多額の費用を投じた場合、一時的に赤字決算となることがあります。これは事業者のコントロール外で発生した損失であり、事業の収益性が根本的に悪化したものとはみなされません。
また、予期せぬパンデミックにより客足が減少した場合、一時的に赤字決算となることもあります。事業の収益性が低下していても、原因が明確であり状況が落ち着くことで本業の収益力が回復すると判断されれば、銀行から融資の実行を検討してもらえる可能性があります。
銀行は、偶発的な事由による一時的な赤字を、企業の根本的な経営状況の悪化とは区別して融資の可否を判断します。やむを得ない事情により一時的な赤字となっている場合は、原因を説明した上で再発防止策や業績回復に向けた計画を提示し、銀行からの信頼獲得につなげましょう。
黒字化の見込みを明確に示せる場合
黒字化の見込みを明確に示せる場合、赤字決算の事業者でも銀行融資を受けられる可能性があります。銀行は融資の可否を判断する際、過去や現在の財務状況だけでなく、事業における将来的な返済能力も重視しているためです。
たとえば、業績の黒字化に向けた明確かつ実現可能な事業計画を策定することにより、銀行からの評価を高められる場合があります。市場分析に基づき、売上回復やコスト削減の具体的な戦略を提示できれば、赤字決算の事業者でも銀行から融資を検討してもらえる可能性があります。
また、既存事業の見直しや不採算部門の撤退など、経営改善に向けた具体的な取り組みが進んでいる場合も、銀行からの評価は高まります。これらの改善策が数字として黒字化に結びつくことを具体的に示せれば、赤字決算であっても銀行融資を受けられる可能性があります。
銀行は、単に「黒字化を目指したい」という希望ではなく、その実現に向けた現実的かつ具体的な根拠を求めます。黒字化の見込みを明確に示すためには、緻密な収益計画や実行可能なコスト削減策を策定し、それらを確実に実行できることを証明しましょう。
担保によって信用力を補完できる場合
担保によって信用力を補完できる場合、赤字決算の事業者でも銀行融資を受けられる可能性があります。資金の回収可能性を重視する銀行にとって、貸し付けた資金相当の価値を有する担保は、万が一債務者からの返済が滞った場合の貸し倒れリスクを軽減する有効な手段となるためです。
銀行融資における担保には、企業が保有する不動産や流動資産を提供する「物的担保」が挙げられます。万が一債務者の返済が滞った場合に、銀行は提供された物的担保を売却してその売却益から優先的に資金を回収できるため、十分な価値のある担保を提供することは事業者の信用力の補完につながります。
また、銀行融資において有効な担保として、保証人とも呼ばれる「人的担保」が挙げられます。万が一債務者の返済が滞った場合に、人的担保となった保証人が債務者の代わりとなって借入金を返済する義務を負うため、保証人を立てることにより銀行の貸し倒れリスクが軽減されます。
銀行は、融資判断をする際に事業者の信用力に基づく資金の回収可能性を重視しています。赤字決算の場合は資金の回収可能性が低いと判断される可能性がありますが、事業者の信用力を補う十分な担保があれば、赤字決算でも融資の実行を検討してもらえる可能性があります。
なお、事業性の銀行融資において、物的担保として提供できる資産は不動産と流動資産の2種類に大別されます。銀行融資における担保について詳しく知りたい人は「なしでも大丈夫?銀行融資における担保を解説」の記事を参考にしてみてください。
2期以上連続赤字の場合は銀行融資以外の資金調達方法を検討する
2期以上連続して赤字決算が続いている場合、銀行融資の利用は困難となる傾向にあります。長期にわたって赤字決算が続く中で銀行融資の申し込みをしても、審査に通らない可能性が高いため、その他の資金調達方法を利用することも検討しておきましょう。
【2期以上の赤字決算でも利用できる可能性がある資金調達方法】
資金調達方法 | 概要 |
---|---|
公的融資 | 国や地方公共団体などの公的機関が提供する融資制度。日本政策金融公庫が提供する「マル経融資」や「セーフティネット貸付」など、赤字決算の事業者でも利用対象となる制度がある |
ノンバンクの融資 | 信販会社やクレジットカード会社など、貸付業務に特化した金融機関が提供する融資制度。銀行よりも金利は高く設定されているが、審査基準はゆるい傾向にある |
補助金/助成金 | 制度の目的に沿った取組に対して給付される返済不要の支援金。原則として事業完了後の後払いとなるため、経費の購入時は自己資金によって立て替える必要がある |
クラウドファンディング | インターネットを通じてプロジェクトを公開し、賛同者から少額ずつの出資を受ける方法。返済義務はないものの、原則として出資者に対するリターンが求められる |
ファクタリング | 所有する売掛債権を売却して支払期日よりも前倒しで現金化する方法。手数料が発生するため受け取れる金額は本来の売上金よりも低くなるが、即日から1週間程度の短期間で資金を調達できる |
資産売却 | 所有する不動産や機械設備、有価証券などの資産を売却して現金化する方法。売却手続きに費用や手間が発生するが、資産の価値に応じてまとまった資金を調達できる可能性がある |
これらの資金調達方法は、銀行融資と比較して事業者の財務状況が利用可否に影響しにくいため、2期以上の赤字決算であっても利用できる可能性があります。それぞれの資金調達方法の特徴を把握した上で、万が一銀行融資が利用できなかった場合の手段として検討してみましょう。
まとめ
赤字決算の事業者でも、銀行融資を受けることは可能です。赤字決算となった理由を明確にし、事業の将来性や返済の可能性を明確に示すことができれば、業績が赤字であっても銀行融資を受けられる可能性があります。
赤字決算でも銀行融資を受けるためには「事業への先行投資による赤字である」「偶発的な事由による一時的な赤字である」「黒字化の見込みを明確に示せる」「担保によって信用力を補完できる」などの条件に該当する必要があります。赤字の状況であっても、将来的な返済可能性を銀行へ示すことが大切です。
ただし、長期にわたって赤字が続いている場合は、銀行融資の利用は困難となります。2期以上の赤字が続いている事業者は、万が一銀行融資を受けられなかった場合に備えて、銀行以外の融資制度や事業者向けの補助金など銀行融資以外の資金調達方法も検討しておきましょう。