中小企業の資金調達が難しい理由とは?現状と動向を解説

中小企業の経営者は、設備投資や事業拡大のために一度は資金調達を検討したことがあるでしょう。他の中小企業の資金調達の特徴や動向が気になる人もいますよね。

当記事では、中小企業の資金調達は難しいかどうかとその理由を解説します。中小企業の資金調達の現状と動向も紹介するので、中小企業の経営者として資金調達を検討している人は参考にしてみてください。

中小企業の資金調達は大企業より難しい傾向がある

中小企業の資金調達は大企業に比べると難しい傾向があります。中小企業は大企業より実績が乏しく信用力が低い傾向があるためです。

たとえば中小企業庁の調査レポート「中小企業白書 2016」では、中小企業は景気拡張局面においても資金繰りDI値が0を超えることは少なく、中小企業の資金繰りは、大企業と比較して厳しい傾向にある旨を記載しています。

【企業規模別に見た、資金繰り・金融機関からの借入難易度】

※出典:「中小企業白書 2016」(中小企業庁) (https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap5_web.pdf

資金繰りDIは、最近の資金繰りについて「楽である」と答えた企業の割合(%)から「苦しい」と答えた企業の割合(%)を引いたもので、企業の資金繰り状況を客観的に確認できる指標のひとつです。

資金繰りDIの実際のデータを確認すると、中小企業の資金繰りDIは大企業に比べて恒常的に低いことがわかります。

また、金融庁の検査官が金融機関を検査する際に用いる「金融検査マニュアル」からは、中小・零細企業の特徴として「総じて景気の影響を受けやすく、一時的な収益悪化により赤字に陥りやすい面がある」「自己資本が大企業に比べて小さいため、一時的な要因により債務超過に陥りやすい面がある」との記載を確認できます。

これら行政機関の調査から、中小企業は大企業に比べて資金繰りが難しくなる傾向があると言えます。

なお、中小企業の資金調達が難しい理由として次のような項目が挙げられます。

【中小企業の資金調達が難しい理由】

  • 直接金融による資金調達が難しいから
  • 銀行に提供できる担保がないから

資金調達を検討している人は、予備知識として中小企業の資金調達が難しい理由を押さえておきましょう。

直接金融による資金調達が難しいから

中小企業の資金調達が難しい理由のひとつとして、中小企業の場合は直接金融による資金調達が難しい点が挙げられます。

株式や債券を投資家に買ってもらう直接金融は、経営内容の情報開示を広く行える大企業でなければ成立しにくい傾向があるためです。

たとえば、内閣府公式サイトの「平成15年度 年次経済財政報告」では、「中小企業は大企業と比べて企業の経営内容について情報開示が限定的であり、資本市場へのアクセスにも限界がある」といった旨を記載しています。

株式発行による資金調達を検討している中小企業者は、中小企業庁の公式サイトにある「中小企業者のためのエクイティ・ファイナンスの基礎情報」を参考にしてみましょう。

銀行に提供できる不動産担保がないから

中小企業の資金調達が難しい理由のひとつに、中小企業は担保にできる不動産を持っていない傾向がある点が挙げられます。銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受ける際は不動産担保を求められるためです。

実際に、中小企業庁が「中小企業白書(平成28年度版)」で調査した「中小企業が成長投資を行う際に金融機関に望む条件や性質」では、最も回答が多かった項目(58.6%)は「担保・保証を必要としない」という内容でした。

不動産を持っていないことを理由に銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けられない事業者も一定存在すると考えられます。

一方で、担保に頼らない融資も出てきており、平成25年に金融庁が「ABL(動産・売掛金担保融資)」という不動産担保を必要としない融資の積極的活用を促す発表を公開しています。

この流れを受けて、在庫や売掛金などの不動産以外の担保で受けられる融資を導入している金融機関もあります。

不動産担保なしで融資を受けたい人は経済産業省による「ABLのご案内」の資料を参考にしてみましょう。

資金調達先は内部資金と外部資金に大別できる

資金調達先は、資本金や経営者個人で貯めた自己資金のような内部資金と金融機関などから借り入れた外部資金に大別できます。

【内部資金と外部資金の定義】
内部資金 利益を源泉とするもので返済する必要のない資金の総称。資本金、預貯金、自己資金などがこれに含まれる。
外部資金 企業外部の資本調達源泉から調達された資金の総称。 株式,社債,借入金,企業間信用などがこれに含まれる。

内部資金は自社で生み出した利益やもともと貯めていた自己資金から来ているので、資金調達時にはコストは発生しません。

一方、外部資金は社外から資金を持ってくるので、資金調達時にコストが発生します。銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受ける場合は、借入金の返済のほかに利息の支払いが必要です。

また、投資家から出資を受ける場合、返済は不要ですが、投資家が経営に干渉してくるリスクもあるので、予備知識として覚えておきましょう。

過去に借入経験がある企業は今後の資金調達でも借入を選択する傾向がある

過去に借入経験がある企業は今後の資金調達でも借入を選択する傾向があります。

たとえば、中小企業庁「中小企業白書(平成28年度版)」によると、国内の中小企業3949社が回答した「成長のための課題解決に必要な資金の調達先」は次のような結果になりました。

【成長のための課題解決に必要な資金の調達先】
出典:中小企業庁ウェブサイト(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/h28/html/b2_5_2_1.html

借入れ経験がある企業の場合、最も回答の多かった調達先が「金融機関からの借入れ」(85.8%)でした。次いで、「内部留保」(22.9%)、「経営者等の個人資金」(20.2%)という結果です。

一方、過去に借入れが一度もない無借金企業の場合、「内部留保」の回答が最も多く(44.5%)、次いで「経営者等の個人資金」(25.4%)、「親会社・関係会社からの借入れ」(23.4%)という結果でした。

このように、無借金企業は内部留保等の内部資金への依存度が高く、金融機関からの借入れを必要としない傾向があることがわかります。

金融機関から借入れを行う場合、候補となる金融機関としては銀行、信用金庫、政府系金融機関などが挙げられます。金融機関からの借入れを検討している人は、独立行政法人中小企業基盤整備機構の「金融機関の選び方」を参考にしてみましょう。

コロナの影響を受けた業種は借入件数が増加している傾向がある

コロナ禍では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた業種について金融機関から新たな借入れを行った中小企業が多い傾向です。

たとえば、東京商工リサーチが令和3年2月に発表した調査によると、感染症流行後の金融機関からの借入状況は感染症の影響が大きかった宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業などで高い割合となっていることが分かります。

【感染症流行後の金融機関からの借入状況(業種別)】
新たな借入は行っていない 新たな借入を行った
建設業 (n=299) 59.2% 40.8%
製造業 (n=1,788) 38.0% 62.0%
卸売業 (n=904) 51.5% 48.5%
小売業 (n=1,054) 42.9% 57.1%
宿泊業 (n=277) 24.5% 75.5%
飲食サービス業 (n=246) 21.5% 78.5%
生活関連サービス業 (n=160) 30.6% 69.4%
その他 (n=1,274) 54.4% 45.6%
総計 43.9% 56.1%

出典:(株)東京商工リサーチ「中小企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート」

また、同調査で「新たな借入れを行った」と回答した企業に調達した資金の使い道を聞いたところ、業種を問わず「手元現預金の積み増し」を回答した企業の割合が高い結果となりました。

【調達した資金の使い道】
赤字補てんや当面の資金繰り 手元現預金の積み増し デジタル化(テレワーク含む) 感染症対策  (デジタル化関連を除く) 新製品・サービスの開発や新規事業の立ち上げ その他の設備投資
建設業 46.7% 84.2% 8.3% 16.7% 8.3% 25.0%
製造業 52.8% 82.3% 7.3% 10.7% 11.9% 18.7%
卸売業 40.9% 83.8% 11.8% 12.0% 6.6% 12.5%
小売業 54.0% 77.7% 8.9% 13.8% 12.1% 21.3%
宿泊業 80.1% 60.7% 4.9% 23.8% 6.3% 13.6%
飲食サービス業 73.9% 74.5% 6.9% 26.6% 22.9% 18.6%
生活関連サービス業 70.1% 75.7% 11.2% 22.4% 12.1% 20.6%
その他 53.4% 75.7% 10.5% 13.5% 11.8% 20.6%

出典:(株)東京商工リサーチ「中小企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート」

コロナの影響を受けた宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業では「赤字補てんや当面の資金繰り(人件費・家賃の支払い等)」と回答した企業が7割以上いることから、借入金を事業継続のための運転資金に充てていることがわかります。調達資金の使い道の特徴は業種によっても異なるといえるでしょう。

なお、感染症の影響を受けている事業者は、金融機関からの借入れを検討するほか事業再構築補助金などの補助金を利用する選択肢もあります。補助金について知りたい人は当社株式会社SoLabo(ソラボ)が運営する「補助金ガイド」も参考にしてみましょう。

資金調達の目途が立たない場合は支出削減を検討する

資金調達の目途が立たない場合は経費や人件費などの支出削減を検討しましょう。場合によっては事業縮小や新規投資の中止も必要になります。

大阪商工会議所が平成30年12月に発表した「中小企業の資金調達に関する調査」では、借入れの目途がついていない企業に今後の対応策をアンケートしました。そこで最も多かった回答は「経費削減・雇用調整・事業縮小・新規投資の中止など支出を削減する」で、全体の47.6%を占めました。

経費削減を例によると、原材料や資材の仕入れ費用の低減や新たな取引先の開拓を検討する必要があります。

なお、削減する支出の対象は事業状況によって異なるので注意が必要です。とくに創業期は事業が軌道に乗るまでに時間がかかる傾向があります。

創業の場合は、創業前か創業直後に融資を受けやすい傾向があるので、創業を検討している人は「起業前後に創業融資の審査を受ける上での注意点を解説」を参考にしてみましょう。

まとめ

中小企業の資金調達は大企業より難しい傾向があります。「直接金融による資金調達が難しいから」もしくは「銀行に提供できる担保がないから」という理由が挙げられます。

不動産担保がない状態で資金調達したい人は、金融庁の方針を受けて不動産担保を必要としないABLという融資を導入している金融機関もあるので、取引先の金融機関に問い合わせてみるとよいでしょう。

なお、宿泊業や飲食サービス業、生活関連サービス業などコロナの影響を受けている業種では借入件数が増加している傾向があります。赤字補てんや当面の資金繰りなどの運転資金を必要としているためです。

金融機関からの借入れが難しい場合は、補助金や助成金を検討するのも選択肢のひとつです。事業再構築補助金などのコロナ禍に対応した補助金も出ているので、最新情報を知りたい人は経済産業省の公式サイトを確認してみましょう。

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