【製造業版】融資を受けるときのポイントを解説

部品製造業や金属加工業など、製造業として独立開業を目指している人の中には、金融機関から融資を受けることを検討している人もいますよね。その際、融資を受けられるかどうかが不安なことにより、融資を受けるときのポイントを知りたい人もいるでしょう。

当記事では、製造業における融資を受けるときのポイントを解説します。製造業の創業時におけるポイントに加え、全業種に共通するポイントも解説するため、製造業を創業予定の人は参考にしてみてください。

ポイントは現実的な販売数量を想定すること

製造業を創業する場合、ポイントは現実的な販売数量を想定することです。現実的な販売数量を想定することにより、実現可能な売上高を試算できる可能性があるため、製造業を創業予定の人は融資を受けるときのポイントとして押さえておきましょう。

【現実的な販売数量を想定する方法の具体例】

  • 生産能力から検討する
  • 受注見込みから検討する

現実的な販売数量を想定する方法として挙げられるのは「生産能力から検討する方法」と「受注見込みから検討する方法」です。実現可能な売上高を試算できる可能性があるため、製造業を創業予定の人はそれぞれの項目を確認してみましょう。

生産能力から検討する

現実的な販売数量を想定したい場合、方法のひとつは「生産能力から検討する方法」です。生産能力から見積もることにより、現実的な販売数量を想定できる可能性があるため、製造業を創業予定の人は生産能力から販売数量を検討してみましょう。

【生産能力から販売数量を検討するときのイメージ】

製造業の種類 1日あたりの生産能力 設備数 1か月あたりの販売数量(25日営業の想定)
部品製造業 200個/台 2台 200個×2台×25日=10,000個
金属加工業 2件/台 3台 2件×3台×25日=150件
食品メーカー 150食/ライン 1ライン 150食×1ライン×25日=3,750食
衣料品メーカー 30着/台 2台 30着×2台×25日=1,500着

製造業の場合、「1日あたりの生産能力×設備数」の計算式から販売数量を検討する方法があります。「工作機械」や「製造ライン」など、1日あたりの生産能力が明確な設備を利用する事業は生産能力から現実的な販売数量を見積もることができます。

また、「1日あたりの生産能力が200個」かつ「設備数が2台」の部品製造業を創業すると仮定します。「200個×2台=400個」の計算式より、2台による生産能力は400個になるため、1か月の営業日数を掛けることにより、1か月あたりの販売数量を試算することができます。

なお、今回紹介した計算式は最大の生産能力をもとにした計算式です。「不良品の発生率」や「設備の稼働率」など、他の要素を考慮することにより、リスクに備えられる可能性があるため、現実的な販売数量を想定するときは念頭に置いておきましょう。

受注見込みから検討する

現実的な販売数量を想定したい場合、方法のひとつは「受注見込みから検討する方法」です。受注見込みから見積もることにより、現実的な販売数量を想定できる可能性があるため、製造業を創業予定の人は受注見込みから販売数量を検討してみましょう。

【受注見込みから販売数量を想定するときのイメージ】

製造業の種類 1社目の年間受注見込み 2社目の年間受注見込み 3社目の年間受注見込み 1年あたりの販売数量
部品製造業 3,000個 2,000個 1,500個 6,500個
金属加工業 15件 80件 10件 105件
食品メーカー 4,000食 4,000食 4,000食 12,000食
衣料品メーカー 200着 500着 700着 1,400着

製造業の場合、「1社あたりの受注見込み」から販売数量を検討する方法があります。「過去の勤務先の取引先」や「新規契約の予定がある企業」など、受注見込みがある事業は受注見込みから現実的な販売数量を見積もることができます。

また、3社からそれぞれ4,000食を受注する見込みがある食品メーカーを創業すると仮定します。「4,000食×3社=12,000食」の計算式より、受注見込みの合計数は12,000食になるため、1年あたりの販売数量を試算することができます。

なお、販売数量を想定する場合、生産能力と受注見込みを照らし合わせて検討する必要があります。受注見込みが生産能力を超えているときは製品の供給不足となるおそれがあるため、現実的な販売数量を想定するときは念頭に置いておきましょう。

販売数量を想定した人は事業計画を策定する

販売数量を想定した後は製造業を創業するための事業計画を策定することになります。融資を申し込む場合、審査における必要書類のひとつとして、金融機関から事業計画書の提出を求められるため、販売数量を想定した人は事業計画を策定してみましょう。

【事業計画における項目の具体例】

項目 概要
事業経験 創業者の職務経歴や実績を示す項目。創業する事業に関する経験を整理する。
経営方針 創業後の事業内容や経営方針を示す項目。製品や販売戦略を整理する。
収支計画 創業後の売上や利益の見込みを示す項目。数値の根拠を明確にする。

事業計画の項目として挙げられるのは「事業経験」「経営方針」「収支計画」です。融資を申し込む場合、審査における必要書類のひとつとして、金融機関から事業計画書の提出を求められるため、販売数量を想定した人はそれぞれの項目を確認してみましょう。

事業経験

事業計画の項目として挙げられるのは「事業経験」です。事業経験は創業者の職務経歴や実績を示す項目となる関係上、製造業を創業する場合は製造業に関連する知識や技術を示すことになるため、事業計画を策定する人は事業経験を整理してみましょう。

【製造業における事業経験の具体例】

年月 具体例
平成22年3月 〇〇デザイン専門学校卒業
在学中にレザーソムリエ資格を取得
平成22年4月 株式会社〇〇(革製品メーカー)入社
革製品の裁断、縫製、仕上げ作業を担当。5年目に商品企画部に異動。新商品の企画、材料選定、製造工程管理を担当。主任として部下5人のマネジメントも担う。
平成30年4月 株式会社△△(革製品メーカー)入社
製造部に所属し、財布や名刺入れの製造工程を担当。翌年に営業部に異動し、営業担当として販売先の開拓やECサイトの立ち上げに携わる。担当製品の売上高を前年比20%増加させた。
令和8年10月 退職予定

事業経験を整理するときのポイントは「時系列に沿うこと」です。「革製品メーカーに入社」「革製品の製造工程を担当」「商品企画部に異動」など、時系列に沿って整理することにより、製造業に関する経歴の抜け漏れを防げる可能性があります。

事業経験を整理するときのポイントは「具体的な実績を示すこと」です。「主任に昇格」「5人のマネジメント」「ECサイトの立ち上げ」「売上高を前年比20%増加」など、具体的な実績を示すことにより、創業後の経営に活かせる能力を伝えられる可能性があります。

なお、製造業に関する事業経験に不安がある場合、経験不足の状況を補う必要があります。「経験豊富な人材の雇用」や「製造業に関する資格の取得」など、経験不足の状況を補完する必要があるため、事業経験に不安がある人はその前提を踏まえておきましょう。

経営方針

事業計画の項目として挙げられるのは「経営方針」です。経営方針は創業後の事業内容や経営方針を示す項目となる関係上、製造業を創業する場合は製品の概要や販売戦略を示すことになるため、事業計画を策定する人は経営方針を検討してみましょう。

【製造業における経営方針の具体例】

項目 具体例
商品 国産レザーを使用した財布、名刺入れ、キーケース、スマートフォンケースの製造と販売
単価 8,000円
営業日数 25日/月
営業時間 9:00~17:00
特長 国産レザーの中でも廃棄される予定の端切を中心に利用し、環境負荷を軽減する。デザイン性を高めることにより、端切のレザーを付加価値の高い製品に生まれ変わらせる。元は高品質のレザーだが、低価格で提供できる。オリジナル製品のほか、OEM製造やオーダーメイドにも対応する。
市場分析 中国製やベトナム製など、廉価な革製品が多く流通しているため、価格競争が激しい市場。一方、品質やデザイン性、国産にこだわる消費者のニーズもあるため、30代~50代の質を重視する男女をターゲット層とする。コンセプトの独自性と高いデザイン性により、競合業者と差別化を図る。
集客方法 現在の取引先(小売業者)2社と契約予定となるため、当面は受注を確保できる。加えて「革製品展示会」や「アパレル関連イベント」に出展することにより、新規の販売先の獲得を目指す。個人客に対しては「公式サイト」や「SNS」を活用することにより、製品に対する思いや製品の魅力を発信する。

経営方針を検討するときのポイントは「強みを明確にすること」です。「端切のレザーを活用する点」や「デザイン性の高いオリジナル製品を製造する点」など、そのメーカーならではの強みを明確にすることにより、競合業者と差別化できる可能性があります。

また、経営方針を検討するときのポイントは「具体的な戦略を示すこと」です。「販売先を確保できている点」や「OEM製造を受託できる点」など、経営における具体的な戦略を示すことにより、売上の実現性を伝えられる可能性があります。

なお、製造業を創業する場合、事業内容によっては許認可が必要です。「菓子製造業」「酒類製造業」「医薬品製造業」「化粧品製造業」など、事業内容によっては許認可が必要となるため、不安な人は許認可の要否を確認しておきましょう。

収支計画

事業計画の項目として挙げられるのは「収支計画」です。収支計画は創業後の売上や利益の見込みを示す項目となる関係上、それぞれの数値の根拠を明確にする必要があるため、事業計画を策定する人は収支計画を作成してみましょう。

【製造業における収支計画の具体例】

項目 創業時 軌道に乗った後 根拠
①売上高 140万円 180万円 <創業時>
①売上高:7個/日×8,000円×25日=140万円
②売上原価:原価率70%(勤務時の経験を参考)
③人件費:創業時は無し
家賃:7万円
支払利息:400万円×年3.0%÷12=1万円
その他:通信費、広告宣伝費、外注加工費など計5万円
<軌道に乗った後>
①売上高:創業時の1.3倍
9個/日×8,000円×25日=180万円
②売上原価:創業時の原価率を採用
③その他:修繕費を2万円計上するため、計7万円
②売上原価 98万円 126万円
経費 人件費 0万円 0万円
家賃 7万円 7万円
支払利息 1万円 1万円
その他 5万円 7万円
③合計 13万円 15万円
利益
①-②-③
29万円 39万円

収支計画を作成するときのポイントは「計算式を示すこと」です。「売上高=1日あたりの販売数量×単価×1か月の営業日数」や「支払利息=借入額×年利÷12」など、計算式を示すことにより、各数値の説得力を高められる可能性があります。

また、収支計画を作成するときのポイントは「内訳を明確にすること」です。「家賃」「支払利息」「通信費」「修繕費」「広告宣伝費」「外注加工費」など、経費の内訳を明確にすることにより、各経費の説得力を高められる可能性があります。

なお、製造業の場合、創業時の設備投資に費用がかかる傾向があります。創業時の借入額に応じて支払利息も増えることが考えられるため、融資を受けたい人は設備投資による収益への影響を把握することにより、無理のない返済計画を立てることを検討してみましょう。

事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントも押さえておく

創業時に融資を受けたい場合、全業種に共通するポイントがあります。創業予定の業種にかかわらず、融資の審査時に金融機関から確認される可能性があるため、事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントを確認してみましょう。

【全業種に共通するポイント】

ポイント 概要
自己資金 事業に使用する予定の資金。創業者名義の口座における預貯金や勤務先における退職金など、創業者の自己資金が確認される。
信用情報 信用取引における利用情報。ローンの利用履歴やクレジットカードの利用履歴など、創業者の信用情報が確認される。

全業種に共通するポイントとして挙げられるのは「自己資金」と「信用情報」です。融資の審査時に金融機関から確認される可能性があるため、事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントを確認してみましょう。

自己資金

全業種に共通するポイントのひとつは「自己資金」です。自己資金は事業に使用する予定の資金となる関係上、審査時に金融機関から確認される可能性があるため、製造業を創業予定の人は自己資金の概要を確認してみましょう。

【自己資金の概要】

項目 概要
自己資金として認められる傾向がある資金 ・預貯金
・退職金
・みなし自己資金
・資産の売却代金
自己資金として認められない傾向がある資金 ・タンス預金
・返済義務のあるお金

自己資金として認められる傾向がある資金として挙げられるのは「預貯金」です。「メーカー勤務時の給与」や「副業による収入」など、創業者名義の口座にコツコツと貯めた資金は金融機関から自己資金として認められる傾向があります。

一方、自己資金として認められない傾向がある資金として挙げられるのは「タンス預金」です。「自宅に保管していたお金」や「入出金履歴を確認できない資金」など、資金の出所が不明瞭な資金は金融機関から自己資金として認められない傾向があります。

自己資金は製造業の創業に向けた計画性を示す材料のひとつとなります。製造業の創業に向けて計画的に自己資金を積み立てている場合、創業に向けた計画性の根拠となる可能性があるため、製造業を創業予定の人はその前提を踏まえておきましょう。

信用情報

全業種に共通するポイントのひとつは「信用情報」です。信用情報は信用取引における利用情報となる関係上、審査時に金融機関から確認される可能性があるため、製造業を創業予定の人は信用情報の概要を確認してみましょう。

【信用情報の概要】

項目 概要
信用情報として登録される情報 ・本人情報
・住宅ローンの利用状況
・カードローンの利用状況
・クレジットカードの利用状況など
信用情報として登録されない情報 ・納税の状況
・保有する資産
・預貯金の残高など

信用情報として登録される情報として挙げられるのは「クレジットカードの利用状況」です。「利用額」「支払日」「支払遅延」など、クレジットカードの利用状況は信用情報として登録されるため、融資の審査において金融機関から確認される可能性があります。

また、信用情報として登録される情報として挙げられるのは「住宅ローンの利用状況」です。「契約日」「借入残高」「返済遅延」など、住宅ローンの利用状況は信用情報として登録されるため、融資の審査において金融機関から確認される可能性があります。

信用情報は創業者の返済能力や信用力を判断される材料のひとつと考えられます。「長期延滞」や「代位弁済」など、信用情報に異動情報が登録されている場合は審査を通過できず、融資を受けられないおそれがあるため、信用情報に不安がある人は留意しておきましょう。

ポイントを押さえた人は製造業に利用できる融資制度を確認する

製造業を創業する場合、創業融資制度を検討する余地があります。さまざまな機関が創業融資制度を用意している関係上、創業者の希望条件に合った融資制度を選択することになるため、ポイントを押さえた人は製造業の創業に利用できる融資制度を確認してみましょう。

【製造業の創業に利用できる融資制度の具体例】

融資制度 概要
日本政策金融公庫
「新規開業・スタートアップ支援資金」
<対象者>
・新たに事業を始める人
・事業開始後おおむね7年以内の人
<返済期間>
設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)
<融資限度額>
7,200万円
東京都中小企業制度融資
「創業」
<対象者>
・1か月以内に東京都内で創業しようとする個人
・創業した日から通算5年未満の個人など
<返済期間>
設備資金:10年以内(うち据置期間1年以内)
運転資金:7年以内(うち据置期間1年以内)
<融資限度額>
3,500万円
大阪府制度融資
「開業・スタートアップ応援資金」
<対象者>
・開業前の人
・開業後5年未満の人など
※ 事業開始前または事業開始後2か月未満の場合は創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要
<返済期間>
10年以内
<融資限度額>
3,500万円

製造業の創業に利用できる融資制度のひとつは日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。「新たに事業を始める人」や「事業開始後おおむね7年以内の人」が対象となるため、製造業を創業する人は利用できる可能性があります。

また、製造業の創業に利用できる融資制度のひとつは大阪府の制度融資「開業・スタートアップ応援資金」です。「開業前の人」や「開業後5年未満の人」が対象となるため、大阪府内において製造業を創業する人は利用できる可能性があります。

なお、製造業の場合、設備投資を支援する補助金や助成金を検討する余地があります。採択される必要がありますが、補助金や助成金は原則として返済不要となるため、製造業を創業予定の人は補助金や助成金も選択肢のひとつとして検討してみましょう。

まとめ

製造業を創業する場合、ポイントは現実的な販売数量を想定することです。現実的な販売数量を想定することにより、実現可能な売上高を試算できる可能性があるため、製造業を創業予定の人は融資を受けるときのポイントとして押さえておきましょう。

また、販売数量を想定した後は製造業を創業するための事業計画を策定することになります。融資を申し込む場合、審査における必要書類のひとつとして、金融機関から事業計画書の提出を求められるため、販売数量を想定した人は事業計画を策定してみてください。

製造業を創業する場合、創業融資制度を検討する余地があります。さまざまな機関が創業融資制度を用意している関係上、創業者の希望条件に合った融資制度を選択することになるため、ポイントを押さえた人は製造業の創業に利用できる融資制度を確認してみましょう。

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