個人タクシーの創業を目指している人の中には、金融機関から融資を受けることを検討している人もいますよね。一般乗用旅客自動車運送事業の許可を受け、個人タクシーの創業に向けて、融資の申請準備を進めたい人もいるでしょう。
当記事では、個人タクシーの創業時に融資を受けるときのポイントを解説します。個人タクシーの創業時におけるポイントに加え、全業種に共通するポイントも解説するため、個人タクシーの創業時に融資を受けたい人は参考にしてみてください。
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目次
融資を受けるときのポイントは運送収入の根拠を明確にすること
個人タクシーで融資を受ける場合、ポイントは運送収入の根拠を明確にすることです。運送収入の根拠を明確にすることにより、事業計画の説得力を上げられる可能性があるため、個人タクシーで融資を受けたい人はポイントとして押さえておきましょう。
【運送収入の根拠を明確にする工程の具体例】
- 過去の営業実績を整理する
- 営業区域の運賃を把握する
運送収入の根拠を明確にする工程として挙げられるのは「過去の営業実績を整理すること」と「営業区域の運賃を把握すること」です。融資を受けるときは現実的な売上高を想定する必要があるため、個人タクシーで融資を受けたい人は各項目を確認してみましょう。
過去の営業実績を参考にする
運送収入の根拠を明確にしたい場合、工程のひとつは過去の営業実績を整理することです。過去の営業実績をもとに創業後の運送収入を想定できる可能性があるため、個人タクシーで融資を受けたい人は過去の営業実績から運送収入を想定してみましょう。
【営業実績から運送収入を想定するときのイメージ】
| 項目 | 具体例 |
| 1日あたりの乗車客数 | 20人 |
| 1人あたりの運賃 | 2,500円 |
| 1人あたりの運賃以外の料金 | 100円 |
| 1日あたりの運送収入 | 20人×(2,500円+100円)=52,000円 |
個人タクシーの運送収入を想定する場合、過去の営業実績をもとに1日あたりの乗車客数を振り返ることになります。「曜日」「天候」「待機場所」など、タクシーの営業実績は営業日の状況により異なるため、1日あたりの平均の乗車客数を整理しておくことになります。
また、個人タクシーの運送収入は運賃以外の料金によっても左右されます。「予約料金」「迎車料金」「車種指定料金」など、運賃以外の料金も運送収入に含まれる場合があるため、1日あたりの平均の料金も計算してみてください。
なお、継続的な利用が見込まれる顧客がいる場合、その顧客による運送収入は売上の根拠となります。個人タクシー事業の継続性を伝える材料となるため、個人タクシーで融資を受けたい人は固定客による売上の見込みも試算しておきましょう。
営業区域の運賃を把握する
運送収入の根拠を明確にしたい場合、工程のひとつは営業区域の運賃を把握することです。タクシーの運賃は営業区域によって異なるため、個人タクシーで融資を受けたい人は創業予定地の運賃から運送収入を想定してみましょう。
【普通車上限運賃の具体例】
| 営業区域 | 普通車上限運賃(令和8年9月時点) |
| 東京都23区、武蔵野市、三鷹市 | <初乗運賃>1.0km:500円 <加算運賃>232m:100円 |
| 大阪府 | <初乗運賃>1.2km:600円 <加算運賃>231m:100円 |
タクシーの運賃は営業区域ごとに異なります。「東京特別区・武三交通圏」「北多摩交通圏」「南多摩交通圏」など、東京都の中でもいくつかの営業区域に分かれるため、創業予定地における運賃規定に従うことになります。
また、タクシーの運賃は見直される可能性があります。「運転者の労働環境の改善」や「タクシーサービスの向上」などを目的として、地方運輸局が運賃を見直す場合があるため、運送収入を想定するときは地方運輸局の公式サイトから最新の情報を確認してみてください。
なお、運送収入を想定する場合、商圏分析をする方法もあります。「創業予定地の人口分布」や「公共交通機関の利用者数」など、商圏分析をすることにより、運送収入の見込みの根拠を示せる可能性があるため、個人タクシーで融資を受けたい人は覚えておきましょう。
運送収入の根拠を明確にした後は事業計画を策定する
運送収入の根拠を明確にした後は融資を受けるための事業計画を策定することになります。融資を申し込む場合、審査の必要書類として、金融機関から事業計画書の提出を求められることがあるため、個人タクシーで融資を受けたい人は事業計画を策定してみましょう。
【事業計画における項目の具体例】
| 項目 | 概要 |
| 事業経験 | 創業者の職務経歴や実績を示す項目。創業する事業に関する経験を整理する。 |
| 経営方針 | 創業後の方向性を示す項目。サービス内容や集客方法を整理する。 |
| 収支計画 | 創業後の売上や利益の見込みを示す項目。数値の根拠を明確にする。 |
事業計画の項目として挙げられるのは「事業経験」「経営方針」「収支計画」です。事業計画の項目を確認しておくことにより、段階的に事業計画の策定を進められる可能性があるため、個人タクシーで融資を受けたい人はそれぞれの項目の概要を確認してみましょう。
事業経験
事業計画の項目として挙げられるのは「事業経験」です。一般乗用旅客自動車運送事業の許可では、運転経歴の要件がありますが、融資の審査でも事業経歴からタクシーに関連する知識や技術を伝えることになるため、まずは事業経験を整理してみましょう。
【個人タクシーにおける事業経験の具体例】
| 年月 | 具体例 |
| 平成18年3月 | 〇〇高校卒業 |
| 平成18年4月 | 株式会社〇〇運送入社 小型トラック(3tトラック)ドライバーとして、〇〇地域のルート配送に従事。車両点検、商品の検品、積み込み、小売店への配送を担当した。 |
| 平成22年4月 | 〇〇交通株式会社入社 法人営業部に配属し、近隣企業への営業業務を担当。普通自動車第二種運転免許取得後はタクシー運転手として、〇〇地域を担当。付け待ちや無線配車により、1日の平均乗車客数は20人。タクシー運転手として勤務開始以降は約16年間、無事故無違反を継続している。 |
| 令和8年11月 | 退職後、個人タクシーを創業予定 |
事業経験を整理するときのポイントは、時系列に沿って整理することです。「運送会社に入社」「タクシー会社に転職」「普通自動車第二種運転免許を取得」など、時系列に沿って整理することにより、タクシー運転手に関する経歴の抜け漏れを防げる可能性があります。
また、事業経験を整理するときは、具体的な実績を盛り込むこともポイントです。「1日20人の平均乗車客数」や「約16年間の無事故無違反」など、具体的な実績を盛り込むことにより、タクシー運転手としての経験や能力を金融機関に伝えやすくなります。
なお、事業経験を振り返るときは運転手以外の経験も整理することになります。「営業」や「顧客管理」など、運転手以外の業務経験も創業後の経営に役立つ能力として評価される可能性があるため、個人タクシーで融資を受けたい人は覚えておきましょう。
経営方針
事業計画の項目として挙げられるのは「経営方針」です。経営方針は創業後の事業内容や経営の方向性を示す項目となる関係上、個人タクシーを創業する場合はサービス内容や集客方法を示すことになるため、事業経験を整理した後は経営方針を検討してみましょう。
【個人タクシーにおける経営方針の具体例】
| 項目 | 具体例 |
| サービス | 一般乗用旅客自動車運送事業として、タクシーによる旅客運送サービスを提供する。 |
| 営業日数 | 25日 原則として平日営業とするが、土日祝日も需要が見込まれる場合は営業する。 |
| 営業時間 | 15:00~翌1:00 |
| 特長 | 無事故無違反を継続してきた経験を踏まえ、安全運転を徹底する。約16年間のタクシー運転手経験を活かしつつ、顧客のニーズを把握することにより、適切な接客につなげて、顧客満足度の向上を目指す。夕方の帰宅時間帯、終電後に移動する人をターゲット層として、夜間の移動需要に対応できる。 |
| 市場分析 | 〇〇地域は繁華街と住宅街が共存するため、時間帯に応じてさまざまなタクシー需要が見込まれる。夕方は駅周辺や住宅街への帰宅、夜間は繁華街や飲食店からの帰宅が想定される。一方、大手タクシー会社や個人タクシーの競合業者も存在するため、接客品質と運転技術の向上により、差別化を目指す。 |
| 集客方法 | 「付け待ち」や「流し営業」など、これまでの営業経験を活かすことに加え、配車アプリも活用して効率的に新規の乗車客を獲得する。「乗降客が多い駅」や「夜間の利用が見込まれる医療機関」など、乗車客が集中する場所で効率的に集客する。また、丁寧な接客と的確な経路選択により、リピーターの獲得を図る。 |
経営方針を検討するときのポイントは強みを明確にすることです。「夜間の移動需要に対応できる点」や「約16年間のタクシー運転手経験がある点」など、強みを明確にすることにより、競合するタクシー業者と差別化できる可能性があります。
また、強みを明確にすることに加え、具体的な戦略を示すこともポイントです。「過去の営業経験を活かした効率的な集客」や「配車アプリの活用」など、経営における具体的な戦略を盛り込むことにより、運送収入の実現性を伝えることができます。
なお、経営方針を検討する場合、ターゲット層を絞ることも方法のひとつです。「高齢者」や「観光客」など、ターゲット層を絞ったサービスを提供することにより、競合業者と差別化できる可能性があるため、個人タクシーで融資を受けたい人は検討してみましょう。
収支計画
事業計画の項目として挙げられるのは「収支計画」です。収支計画は創業後の売上や利益の見込みを示す項目となる関係上、それぞれの数値の根拠を明確にする必要があるため、経営方針を検討した人は収支計画を作成してみましょう。
【個人タクシーにおける収支計画の具体例】
| 項目 | 創業時 | 軌道に乗った後 | 根拠 | |
| ①売上高 | 75万円 | 120万円 | <創業時>
①売上高:平均単価3,000円×平均乗車客数10人×25日=75万円 人件費:従業員を雇用しないため無し 家賃:自宅のため無し 支払利息:300万円×年4.0%÷12=1万円 その他:燃料費、駐車場代、車両保険料、車両点検費、車両修繕費など計50万円 <軌道に乗った後> ①売上高:平均単価3,000円×平均乗車客数16人×25日=120万円 ②その他:乗車客数の増加に伴い、燃料費や配車アプリ手数料などの経費が増加したため、計65万円 |
|
| ②経費 | 人件費 | 0万円 | 0万円 | |
| 家賃 | 0万円 | 0万円 | ||
| 支払利息 | 1万円 | 1万円 | ||
| その他 | 50万円 | 65万円 | ||
| ③合計 | 51万円 | 66万円 | ||
| 利益
①―② |
24万円 | 54万円 | ||
収支計画を作成するときのポイントは計算式を示すことです。「売上高=平均単価×平均乗車客数×1か月あたりの営業日数」や「支払利息=借入額×年利÷12」など、計算式を示すことにより、各数値の説得力を高められる可能性があります。
また、計算式を示すことに加え、内訳を明確にすることもポイントです。「燃料費」「駐車場代」「車両保険料」「車両点検費」「車両修繕費」など、経費の内訳をひとつひとつ明確に示すことにより、各経費の根拠を伝えることができます。
なお、個人タクシーを創業するときは車両の架装が必要となる場合があります。「行灯」「自動ドア」「タクシーメーター」など、車両の状況によっては架装が必要となるため、車両の購入費用に加えて、架装費用を想定しつつ、借入額を検討してみましょう。
事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントも押さえておく
創業時に融資を受ける場合、全業種に共通するポイントがあります。創業予定の業種にかかわらず、融資の審査時に金融機関から確認される可能性があるため、事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントを確認してみましょう。
【全業種に共通するポイント】
| ポイント | 概要 |
| 自己資金 | 事業に使用する予定の資金。創業者名義の口座における預貯金や勤務先における退職金など、創業者の自己資金が確認される。 |
| 信用情報 | 信用取引における利用情報。ローンの利用履歴やクレジットカードの利用履歴など、創業者の信用情報が確認される。 |
全業種に共通するポイントとして挙げられるのは「自己資金」と「信用情報」です。創業者の自己資金や信用情報に懸念がある場合、審査結果に影響を及ぼすおそれがあるため、事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントとして各項目を確認してみましょう。
自己資金
全業種に共通するポイントのひとつは「自己資金」です。一般乗用旅客自動車運送事業の許可では、自己資金の要件がありますが、融資の審査でも自己資金を確認されることになるため、個人タクシーの創業時に融資を受けたい人は自己資金の概要を確認してみましょう。
【自己資金の概要】
| 項目 | 概要 |
| 融資審査において自己資金として認められる傾向がある資金 |
|
| 融資審査において自己資金として認められない傾向がある資金 |
|
融資審査の場合、自己資金として認められる傾向がある資金として挙げられるのは預貯金です。「法人タクシー勤務時の給与」や「副業による収入」など、創業者名義の口座にコツコツと貯めた資金は金融機関から自己資金として認められる傾向があります。
一方、自己資金として認められない傾向がある資金に注意が必要です。「自宅に保管していたお金」や「入出金履歴を確認できない資金」など、形成過程が不明瞭な資金は金融機関から自己資金として認められないことが考えられます。
なお、事業の許可申請に向けて貯めた自己資金の場合、形成過程が明確ならば、金融機関からも自己資金として認められる可能性があります。預金通帳や残高証明書といった書類をもとに形成過程を確認されることになるため、融資を受けたい人は留意しておきましょう。
信用情報
全業種に共通するポイントのひとつは「信用情報」です。信用情報は信用取引における利用情報となる関係上、審査時に金融機関から確認される可能性があるため、個人タクシーの創業時に融資を受けたい人は信用情報の概要を確認してみましょう。
【信用情報の概要】
| 項目 | 概要 |
| 信用情報として登録される情報 |
|
| 信用情報として登録されない情報 |
|
信用情報として登録される情報として挙げられるのは、クレジットカードの利用状況です。「利用額」「支払日」「支払遅延」など、クレジットカードの利用状況は信用情報として登録されるため、融資の審査において金融機関から確認される可能性があります。
また、住宅ローンを利用している場合、住宅ローンの返済状況も信用情報に記録されます。「契約日」「借入残高」「返済遅延」など、返済状況を金融機関から確認されることになるため、融資を受けたい人は返済状況に問題がないかどうかを確認することが必要です。
信用情報は創業者の返済能力や信用力を判断する材料のひとつと考えられます。「長期延滞」や「代位弁済」など、信用情報に異動情報が登録されている場合は融資を受けられないおそれがあるため、信用情報に不安がある人は留意しておきましょう。
ポイントを押さえた人は個人タクシーに利用できる融資制度を確認する
個人タクシーの創業時に融資を受ける場合、創業者向けの融資制度を検討する余地があります。さまざまな機関が創業者向けの融資制度を用意しているため、ポイントを押さえた人は個人タクシーの創業に利用できる融資制度を確認してみましょう。
【個人タクシーの創業に利用できる融資制度の具体例】
| 融資制度 | 概要 |
| 日本政策金融公庫 「新規開業・スタートアップ支援資金 |
<対象者> ・新たに事業を始める人 ・事業開始後おおむね7年以内の人 <返済期間> 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内) 運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内) <融資限度額> 7,200万円 |
| 東京都中小企業制度融資 「創業」 |
<対象者> ・東京都内で創業しようとする具体的計画を有する個人 ・創業した日から通算5年未満の個人など <返済期間> 設備資金:10年以内(うち据置期間1年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間1年以内) <融資限度額> 3,500万円 |
| 大阪府制度融資 「開業・スタートアップ応援資金」 |
<対象者> ・開業前の人 ・開業後5年未満の人など ※ 事業開始前または事業開始後2か月未満の場合は創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要 <返済期間> 10年以内 <融資限度額> 3,500万円 |
個人タクシーの創業に利用できる融資制度のひとつは日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。「新たに事業を始める人」や「事業開始後おおむね7年以内の人」が対象となるため、個人タクシーの創業者は検討する余地があります。
また、地方自治体の制度融資も個人タクシーの創業に利用することができます。東京都の「創業」や大阪府の「開業・スタートアップ応援資金」など、制度融資はその地域の創業者が対象となるため、融資を受けたい人は各地域の情報を確認してみてください。
なお、個人タクシーの創業に必要となる資金は創業者の状況次第です。「組合加入の有無」や「車両購入の有無」など、創業者の状況によって必要額が異なるため、個人タクシーで融資を受けたい人は必要額と照らし合わせつつ、融資制度を選択してみましょう。
まとめ
個人タクシーで融資を受ける場合、ポイントは運送収入の根拠を明確にすることです。運送収入の根拠を明確にすることにより、事業計画の説得力を上げられる可能性があるため、個人タクシーで融資を受けたい人はポイントとして押さえておきましょう。
運送収入の根拠を明確にした後は融資を受けるための事業計画を策定することになります。融資を申し込む場合、審査の必要書類として、金融機関から事業計画書の提出を求められることがあるため、個人タクシーで融資を受けたい人は事業計画を策定してみてください。
創業時に融資を受ける場合、全業種に共通するポイントがあります。創業予定の業種にかかわらず、融資の審査時に金融機関から確認される可能性があるため、事業計画を策定した人は全業種に共通するポイントを確認してみましょう。