シリーズとは?資金調達におけるポイントを解説

スタートアップ企業やベンチャー企業など、起業後に資金調達を検討している人の中には、シリーズという言葉を聞いたことがある人もいますよね。その際、シリーズという言葉の意味がわからず、シリーズとは何かを知りたい人もいるでしょう。

当記事では、資金調達におけるシリーズとは何かを解説します。シリーズの概要に加えて、シリーズに該当する企業が資金調達をするときのポイントも紹介するため、資金調達におけるシリーズの情報が知りたい人は参考にしてみてください。

シリーズとは事業を拡大する段階のこと

シリーズとは、事業を拡大する段階のことです。「資金調達ラウンド」のひとつとなるシリーズは事業を拡大する段階となるため、資金調達におけるシリーズの情報が知りたい人はシリーズの概要を確認してみましょう。

【資金調達ラウンドの一覧】

資金調達ラウンド 企業の状況
エンジェル プロダクトのアイデアを持っている段階
シード アイデアをもとにプロダクトを形にする段階
シリーズA プロダクトを市場投入し事業の基盤を築く段階
シリーズB 収益を確保し事業が軌道に乗った段階
シリーズC 黒字経営が安定し出口戦略を視野に入れる段階

シリーズはシードに続く資金調達ラウンドです。資金調達ラウンドは投資ラウンドとも呼ばれ、企業が成長段階に応じて資金調達を行うフェーズのことを指すため、シリーズはシードの次に企業が資金調達を行うフェーズを意味します。

シリーズは企業の成長段階により、いくつかの資金調達ラウンドに分類されます。「シリーズA」「シリーズB」「シリーズC」など、いくつかの資金調達ラウンドに分類されるため、資金調達におけるシリーズの情報が知りたい人は各項目を確認してみましょう。

シリーズA

シリーズAとは、事業の基盤を築く段階のことです。シリーズAはシードとシリーズBの間に位置し、プロダクトを市場投入することにより事業の基盤を築く重要な段階となるため、シリーズに関する情報が知りたい人はシリーズAの概要を押さえておきましょう。

【シリーズAの概要】

項目 概要
経営課題 プロダクトを市場に投入し、ビジネスモデルを証明する。
資金使途 製品開発費、広告宣伝費などが挙げられる。
資金調達期間 数か月~半年が目安となる。

シリーズAの経営課題はビジネスモデルを証明することです。シリーズAは製品やサービスなどのプロダクトを市場に投入し、継続的に収益を確保できるかどうかを検証する時期となるため、シリーズAはビジネスモデルを証明することを目指します。

また、シリーズAの資金使途は事業の基盤を築くための費用です。「市場ニーズに応じた製品開発費」や「認知度向上のための広告宣伝費」など、シリーズAは事業の基盤を築くことを目的として各項目に資金を投入することになります。

なお、シリーズAは収益が不安定となる状況が考えられます。資金調達に数か月~半年かかることが想定されるため、シリーズAにおける資金調達を検討している人は手元資金と照らし合わせながら資金調達の開始時期を検討してみましょう。

シリーズAにおける資金調達の考え方

シリーズAは事業の基盤を築く段階となる関係上、資金調達額は数千万円~数億円が目安といわれています。その他のシリーズと同様、あらゆる資金調達方法が想定されるため、シリーズAにおける資金調達時は企業の状況に合わせた資金調達方法を考える必要があります。

シリーズAはプロダクトを市場に投入することにより、一部の顧客からプロダクトへの評価を獲得しつつある状況です。顧客からの評価をもとにプロダクトの改良や市場ニーズの検証などを行うことにより、事業実績を積み上げていくことになります。

そのため、シリーズAは事業実績が乏しい状況が多く、事業の成長に向けて試行錯誤を行う時期といえます。シリーズAの資金調達先は資金の提供だけでなく、事業の成長に向けた助言や支援を受けられる機関を検討する余地があります。

なお、シリーズAの資金調達先との関係性は長期にわたる可能性があります。シリーズB以降の資金調達ラウンドにおいても資金提供を受ける可能性があるため、シリーズAにおける資金調達を検討している人は長期的な関係を築けるかどうかにも留意しましょう。

シリーズB

シリーズBとは、事業が軌道に乗った段階のことです。シリーズBはシリーズAとシリーズCの間に位置し、事業が軌道に乗った段階となるため、シリーズに関する情報が知りたい人はシリーズBの概要を押さえておきましょう。

【シリーズBの概要】

項目 概要
経営課題 市場のシェアを拡大し、事業の成長を加速させる。
資金使途 宣伝広告費、人材採用費などが挙げられる。
資金調達期間 半年が目安となる。

シリーズBの経営課題は事業の成長を加速させることです。シリーズBはシリーズAにおいて築いた事業の基盤をもとに、市場のシェア拡大や新規市場の開拓を進める時期となるため、シリーズBは事業の成長を加速させることを目指します。

また、シリーズBの資金使途は事業のスケール拡大のための費用です。「マーケティング強化のための広告宣伝費」や「製品改良のための人材採用費」など、シリーズBは事業のスケール拡大を目的として各項目に資金を投入することになります。

なお、シリーズBは一定の収益が確保できている状況です。資金調達は半年程度かかることが想定されるため、シリーズBにおける資金調達を検討している人は収益の見通しと照らし合わせながら資金調達の開始時期を検討してみましょう。

シリーズBの資金調達の考え方

シリーズBは事業の成長を加速させる段階となる関係上、資金調達額は数億円~数十億円が目安といわれています。その他のシリーズと同様、あらゆる資金調達方法が想定されるため、シリーズBの資金調達時は企業の状況に合わせて資金調達方法を考える必要があります。

シリーズBは製品やサービスなどのプロダクトが市場において評価され、事業が軌道に乗っている状況です。新規市場の開拓や組織体制の強化などの業務を進めることにより、軌道に乗った事業を衰退させず、さらなる事業拡大を目指すことになります。

そのため、シリーズBは事業拡大を目指して、積極的に資金を投入する時期といえます。ひとつの機関では希望額を調達できないおそれがあるため、シリーズBの資金調達先はひとつの機関に絞らずに複数の機関から調達することを検討する余地があります。

なお、シリーズBは資金調達先の選択肢が増えるタイミングです。プロダクトの評価や過去の資金調達実績をもとに出資や融資を受けられるようになる関係上、資金調達先の選択肢が増えるため、シリーズBにおける資金調達を予定している人は覚えておきましょう。

シリーズC

シリーズCとは、出口戦略を視野に入れる段階のことです。シリーズCはシリーズBの次に位置し、安定した黒字経営により出口戦略を視野に入れる段階となるため、シリーズに関する情報が知りたい人はシリーズCの概要を押さえておきましょう。

【シリーズCの概要】

項目 概要
経営課題 事業を拡大し、企業価値を向上させる。
資金使途 設備投資費や人材育成費などが挙げられる。
資金調達期間 半年が目安となる。

シリーズCの経営課題は企業価値を向上させることです。とくに、出資を受けている場合は出口戦略(イグジット)に向けて、より有利な条件での出口戦略を意識する時期となるため、シリーズCは企業価値を向上させることを目指します。

また、シリーズCの資金使途は出口戦略を視野に入れた体制構築のための費用です。「オフィス拡大のための設備投資費」や「上場を目指した人材育成費」など、シリーズCは出口戦略を視野に入れた体制構築を目的として各項目に資金を投入することになります。

なお、シリーズCは安定して黒字化できている状況です。資金調達の必要性は企業次第ですが、資金調達は半年程度かかることが想定されるため、シリーズCにおける資金調達を検討している人は事業計画と照らし合わせながら資金調達の開始時期を検討してみましょう。

シリーズCの資金調達の考え方

シリーズCは出口戦略を視野に入れる段階となる関係上、資金調達額は数十億円が目安といわれています。その他のシリーズと同様、あらゆる資金調達方法が想定されるため、シリーズCの資金調達時は企業の状況に合わせた資金調達方法を考える必要があります。

シリーズCはビジネスモデルが明確となり、IPO(新規株式公開)やM&A(合併と買収)などの出口戦略を検討する状況です。安定した収益を確保し続けることに加えて、事業の多角化や出口戦略に向けた準備などを行うことになります。

そのため、シリーズCは収益を確保できており、黒字経営が安定している時期といえます。安定した黒字経営は他者からの信用力の評価につながるため、シリーズCの資金調達先は資金提供の判断において信用力を重視する機関を検討する余地があります。

なお、シリーズCが資金調達ラウンドの最終段階となる企業があります。「シリーズD」「シリーズE」「シリーズF」など、シリーズD以降に進む企業もありますが、シリーズCが最終段階となる企業もあるため、資金調達したい人は念頭に置いておきましょう。

シリーズにおける資金調達のポイントは事業実績をもとに収益性を伝えること

シリーズにおける資金調達のポイントは事業実績をもとに収益性を伝えることです。ポイントを押さえておくことにより、資金調達を計画通りに進められる可能性があるため、シリーズにおいて資金調達を希望している人はポイントを押さえておきましょう。

【事業実績から収益性を伝えるための項目】

  • PMF達成を証明する
  • 資金使途を提示する
  • 出口戦略を明確にする

事業実績から収益性を伝えるためには、いくつかの項目があります。これらの項目を押さえておくことにより、資金調達を計画通りに進められる可能性があるため、シリーズにおいて資金調達を希望している人は各項目を確認してみましょう。

PMF達成を証明する

事業実績から収益性を伝えるための項目のひとつは「PMF達成を証明すること」です。PMF達成を証明することにより、そのプロダクトの収益性を伝えられるため、シリーズでの資金調達を希望する人はPMF達成を証明する方法を確認してみましょう。

【PMFの検証方法の具体例】

検証方法 概要
PMF Survey 顧客に「プロダクトがなくなった場合にどのように感じるか?」と質問し、選択肢から回答を選んでもらう。「非常に残念」を選んだ人が40%を超える場合はPMF達成の可能性が高いと判断する。
リテンションカーブ グラフによりプロダクトの利用期間を表す。縦軸に顧客維持率を設定し、横軸に提供開始からの経過時間を設定することにより、グラフが横ばいを維持している場合はPMF達成の可能性が高いと判断する。

PMFはProduct Market Fit(プロダクトマーケットフィット)の頭文字を取った言葉です。PMFはプロダクトが特定の市場ニーズに合致し、顧客から高い評価を受けている状態のことを指すため、PMF達成を証明することは収益性の裏付けとなります。

PMFの達成を証明するには、いくつかの検証方法があります。「顧客アンケートによる検証」や「顧客維持率による検証」など、いくつかの検証方法があるため、PMF達成を証明するときは事業内容や必要経費と照らし合わせて検証方法を検討することになります。

なお、PMFはシリーズAにおける達成が目安となります。フェーズごとの明確な基準はありませんが、シリーズBにおける資金調達はPMFを達成していることが前提となる傾向があるため、シリーズにおける資金調達を希望している人は留意しておきましょう。

資金使途を提示する

事業実績から収益性を伝えるための項目のひとつは「資金使途を提示すること」です。資金使途を提示することにより、調達後の資金が収益につながることを伝えられる可能性があるため、シリーズでの資金調達を希望する人は資金使途の具体例を確認してみましょう。

【資金使途の具体例】

項目 具体例
製品開発費 500万円を活用してアプリに新機能を追加することにより、売上を20%増加させる。
宣伝広告費 600万円を活用してPR動画を公開することにより、新規顧客数を30%増加させる。
設備投資費 2,000万円を活用して事務所を移転することにより、従業員数を20人増加させる。
人材採用費 1,500万円を活用してエンジニアを採用することにより、プロダクト開発を強化する。

資金使途は調達した資金の使い道となるため、資金調達の目的を伝える要素となります。「必要となる費用」や「想定される金額」など、具体的な資金使途を提示することにより、資金調達の必要性を伝えられる可能性があります。

資金使途は資金の使い道に加えて、期待される成果を提示する必要があります。「新機能追加により売上が増加」や「PR動画により新規顧客数が増加」など、期待される成果の具体例を提示することにより、希望額の説得力を高められる可能性があります。

なお、シリーズにおける資金調達は複数回にわたることが想定されます。前段階における資金使途を伝えることにより資金調達先から信頼を得られる可能性があるため、資金調達の実績がある人は前段階での資金使途を伝えることも検討してみましょう。

出口戦略を明確にする

事業実績から収益性を伝えるための項目のひとつは「出口戦略を明確にすること」です。出口戦略を明確にできるということは収益性があることの裏付けとなるため、シリーズでの資金調達を希望する人は出口戦略の手法を確認してみましょう。

【出口戦略における手法の具体例】

手法 メリットとデメリット
IPO <メリット>
・経営者が変わらない
・企業の知名度が上がる
<デメリット>
・審査を通過しなければならない
・敵対的買収をされるリスクがある
M&A <メリット>
・企業の成長の加速が期待できる
・事業のシナジー効果が期待できる
<デメリット>
・経営権を失うおそれがある
・買い手が見つからないおそれがある

出口戦略は出資者の利益を確定させる戦略のことです。出口戦略は収穫を意味する「ハーベスティング」とも呼ばれ、出資資金の回収や利益の獲得を行う戦略を指すため、事業の収益性を高めることにより、より良い条件での出口戦略を立てることができます。

出口戦略には、いくつかの手法があります。IPO(新規株式公開)やM&A(合併と買収)など、いくつかの手法がありますが、いずれの手法にもメリットとデメリットがあるため、経営方針に応じて手法を検討することになります。

なお、出口戦略の必要性はシリーズの段階を追うごとに高まる傾向があります。「シリーズB」や「シリーズC」など、シリーズが進むにつれて具体的な出口戦略を求められる傾向があるため、出資による資金調達を予定している人は留意しておきましょう。

ポイントを押さえた人はシリーズにおける資金調達方法を確認する

シリーズにおける資金調達には、あらゆる方法があります。企業の資金調達ラウンドに応じて資金調達方法を選択することになるため、シリーズにおける資金調達のポイントを押さえた人は資金調達方法の具体例を確認してみましょう。

【シリーズにおける資金調達方法の具体例】

資金調達方法 資金調達先 概要
出資 エンジェル投資家 起業後間もない企業などに出資する個人投資家。株式の売却益や企業の成長支援など、目的はさまざまとなり、エンジェルやシードの企業を中心に出資する。
VC
(ベンチャーキャピタル)
未上場の企業に出資する投資会社。経営支援を行う傾向があり、企業の上場時や成長時における株式の売却益を得ることを目的として、成長段階にある企業に出資する。
PEファンド
(プライベートエクイティファンド)
未上場の企業に出資する投資会社。経営に関与することにより企業価値を高めようとする傾向があり、株式の売却や譲渡を目的として、成熟期の企業を中心に出資する。
CVC
(コーポレートベンチャーキャピタル)
事業会社が設立した投資会社。事業シナジーの創出による売上増加や事業拡大を目的として、関連性のある事業を行う企業に出資する。
融資 金融機関 民間金融機関と政策金融機関がある。民間金融機関は利息による収益を目的として、政策金融機関は政策達成を目的として、審査を通過した企業や個人に融資する。
補助金や助成金 公的機関 補助金や助成金の制度を設けている公的機関がある。対象者や募集期間など、複数の条件があり、条件を満たしている企業や個人に支給する。
クラウドファンディング 不特定多数の個人 不特定多数の個人から資金を集める仕組み。発案者がインターネット上にプロダクトの情報を公開し、事業計画やリターンなどに賛同した人が資金を提供する。

たとえば、資金調達方法のひとつは「出資」です。出資を受ける場合は原則として返済の義務がありませんが、出資の対価として出資者が株式を保有することになるため、出資者は株式保有比率に応じて経営権の一部を保有することになります。

また、資金調達方法のひとつは「融資」です。融資を受ける場合は所定の審査に通過しなければならないことに加えて、融資金の返済と利子の支払いが義務となりますが、金融機関は経営権に関与することはありません。

なお、資金調達方法には、それぞれ特徴があります。「返済義務の有無」「経営支援の有無」「経営関与の有無」など、資金調達方法ごとに特徴が異なるため、シリーズにおける資金調達を希望する人は資金調達方法の特徴を比較することから始めてみましょう。

まとめ

シリーズとは、事業を拡大する段階のことです。「資金調達ラウンド」のひとつとなるシリーズは事業を拡大する段階となるため、資金調達におけるシリーズの情報が知りたい人はシリーズの概要を確認してみましょう。

また、シリーズにおける資金調達のポイントは事業実績をもとに収益性を伝えることです。ポイントを押さえておくことにより、資金調達を計画通りに進められる可能性があるため、シリーズにおいて資金調達を希望している人はポイントを押さえておきましょう。

なお、シリーズにおける資金調達には、あらゆる方法があります。企業の資金調達ラウンドに応じて資金調達方法を選択することになるため、シリーズにおける資金調達のポイントを押さえた人は資金調達方法の具体例を確認してみましょう。

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