現在建設業を営む方が初めて融資を受ける際や追加融資を受ける際に必要となる書類の一つが「事業計画書」です。(創業~創業2期以内の方が作成する書類は、紛らわしいですが事業計画書ではなく「創業計画書」です)
事業計画書のテンプレートについては日本政策金融公庫のホームページかダウンロードすることが可能です。しかし、その書き方については迷ってしまうことでしょう。この記事では、建設業の方向けの事業計画書の書き方について解説します。
目次
1.まずは日本政策金融公庫の公式ページからテンプレートをダウンロードしてください
エクセルが得意であれば事業計画書のテンプレートを自作するのも可能ですが、既にあるものを使った方が時間短縮になります。日本政策金融公庫という事業融資を行う公的金融機関では、そのホームページ上で事業計画書のテンプレートを無料公開しています。
・事業計画書(Word版)(Excel版)→以下リンクの表の通し番号「18」番のWordまたはExcelという青い文字をクリックすれば、即ダウンロードされます。
2.事業計画書をどの目的で作るのか?それにより、記入分量は変化する
事業計画書を作成する目的は大雑把に分けて二つの目的があります。一つ目は、経営者が事業の内容を把握して将来の戦略に使うため。二つ目は、事業所が融資や助成金を受けるために提出するためです。
①経営者が事業把握のために作成する→自分または税理士がすべて記入する
建設業の経営者は特に数字に強くなければいけません。扱う数字の規模が大きいですし、土木でも建設でも他業種に比べ非常に社会的責任の強い業種と言えるからです。

上記は事業計画書のテンプレートですが、ざっと見て、文章で記入する箇所と数字を記入する箇所に分かれています。向かって左側の部分(1.現況・新商品の開発または新役務の内容、課題、重点取組項目、具体策)については文章を記入し、向かって右側の部分(2.~4.)については数字の記入をし、最後の5(計画終了時の定量目標および達成に向けた行動計画等)については再び文章を記入します。
自分は数字の部分は強くない!と自信がない方は経営資料を渡して第三者(税理士)に作成してもらい、そのままコンサルを受けるという手もあります。但し、税理士に支払う費用はかかります。
②融資や助成金を受けるために作成する→認定支援機関に頼めば全部書いてもらえます

日本政策金融公庫で融資を受ける場合は事業計画書を提出しなければいけません。また、事業計画書を作成している事業所対象の助成金がありますので、助成金が欲しくて事業計画書を書かなくてはいけない方もいらっしゃることでしょう。
「文章以外の数字が苦手」「数字も文章も両方ムリ」とお手上げ状態の方は専門家に依頼することも可能です。日本政策金融公庫で中小企業経営力強化資金という制度を利用すれば、事業計画書はすべて認定支援機関のスタッフ(経済産業省認定の税理士など)が記入します。 経営者自身で記入しなければいけないところが認定支援機関に依頼をすれば、ゼロになるのです。とは言え、認定支援機関に支払う費用は必要です。但し、認定支援機関に相談してから申し込めば金利が少し低くなり融資の通過率が上がるというメリットもあります。
「認定支援機関って何?」と知りたい方は、当サイトの以下既存記事を是非ご覧ください!
3.建設業ならではの事業計画書の書き方とは?
①現況、新商品の開発または新役務の内容、課題・重点取組項目、具体策
文章を記入する部分です。事業計画書向かって左側上の部分に、あなたが行っている建設業の現在の状況や新しいサービス内容や課題とその具体策について記入します。どこの場所でいつから何を営業していのか、創業のきっかけは何か、営業の強みは何か、現在困っている課題は何か、などを記入します。
【例1】
民間居住用の賃貸アパート物件を〇県〇市で〇年営んでいる建設業者です。父親の代からの事業を〇年に長男である私が引き継ぎました。トータルで〇年から〇年までで〇件の受注を受けています。豊富な外注先と経験を持ち、スピーディな対応が強みです。売上は〇年から順調に伸びていますが、近年〇〇の値上げによる販管費の圧迫により新たな人員の雇用が難しくなっています。従業員の高齢化により新規の人材を育てるべく、ホームページや人材紹介を使い雇用の促進を進めています。
建設業は非常に業務の幅が広い業種です。その中で主にどの業務が得意なのか、問題点は何なのかを明確に記入しましょう。スペースが足りなければ、行数を増やしても問題ありません。
【例2】
下水道の地域インフラ整備やメンテナンス事業を〇県で営んでいます。おかげ様で、〇県と〇県で過去に〇県の受注を行っており技術力にも自信があります。しかし、昨今では人員不足のためお客様希望の納期に間に合わせるのが難しい現状です。スクリーニング調査や情報管理システムを新たに導入することで、広域調査のスピードの短縮化や業務の効率化を図りたいと思います。
②経営上の課題項目
ここは該当する項目(以下の表の左側の部分)に〇をつけて、右側にその課題を克服するために具体的にどのような計画をもっているのか、ということを記入します。経営上の課題は「経営全般」「売上・収益」「人材・マネジメント」「財務」の4つに分けて記入します。
【一例】
経営上の課題項目 (創業の場合は、重点取組項目) 〔 該当項目に○またはチェック 〕 | 課題項目または重点取組項目を踏まえた具体策 | |
経営全般 | 【経営戦略の策定】 地元主体でコツコツと経営してきたが、人材不足と販管費圧縮を改善し資金繰りや資本金を強化したい。これまで紹介や人脈頼みの経営だったので、継続可能な事業にするため経営戦略を専門家に相談しながら〇年〇月までに策定する。 | |
〇 | 経営戦略の策定 | |
IT化の遅れ | ||
事業の「選択と集中」 | ||
事業承継・後継者問題 | ||
その他( ) | ||
売上・収益 | ||
〇 | 営業力の強化 | 【営業力の強化】 ・〇年〇月に〇〇にて行われる「建築業界・就職フェスタ」にブースを構え若い世代にアピールする。・〇年〇月までにホームページを作成。近隣の高校・大学にURLの入ったチラシの配布協力を依頼する。 |
〇 | 販路拡大 | |
市場の競争激化 | ||
商品開発力 | ||
採算分析 | 【販路拡大】 これまで〇県〇市のみで営業していましたが、新たな地域として隣接する〇市を追加。新事務所を構え、月に2件のも受注を目標とします。
| |
原価・経費の削減 | ||
その他( ) | ||
人材・マネジメント | 【必要な人材の採用】 後進の育成のため、近隣の高校・大学やリクルートなどのWebメディア担当を1名選任。年間で最低3名以上の採用と離職率10%カットを目指します。 | |
管理者層の育成 | ||
〇 | 必要な人材の採用 | |
店舗マネジメントの向上 | ||
財務 | 【資金繰り計画の策定】 着工金・中間金を出さない受注先が多く、資金繰りに難航している。現状では固定客を紹介してもらっているが、今後のことを考え資金繰り計画を建築業専門の税理士に相談したい。 | |
設備投資計画の策定 | ||
〇 | 資金繰り計画の策定 | |
在庫の削減 |
③業績推移と今後の計画
向かって右側の部分に業績推移と今後の計画という部分があります。こちらは損益計算書です。以下の画像では省略していますが、現在から3期目までの目標の数値を記入します。
【例】
前期実績 | 今期見込 | 最終目標 | |||
/ 期 | 30/12期 | 32/12期 | |||
売上高 | 0 | 2,130 | 3,500 | ||
売上原価 | 885 | 1,200 | |||
Aうち減価償却費 | 0 | ||||
売上高総利益 | 0 | 1,250 | 1,800 | ||
販売管理費 | 450 | 600 | |||
人件費 | 0 | ||||
うち役員報酬 | 0 | ||||
B減価償却費 | 0 | ||||
営業利益 | 0 | 800 | 1,200 | ||
営業外収益 | 0 | ||||
営業外費用 | 50 | ||||
C 経常利益 | 0 | 750 | 900 | ||
特別損益 | 0 | ||||
法人税等 | 0 | ||||
当期利益 | 0 | 600 | 750 | ||
総資産 | 3,140 | 3,700 | |||
総負債 | 1,140 | 700 | |||
自己資本 | 0 | 2,000 | 3,000 |
④借入金・社債の期末残高推移
現在他社から借り入れがある場合は、この欄に記入をします。最終目標のD合計の部分には、その借金をいくらに減らしたいかという数値目標を記入します。
前期実績 | 今期見込 | 最終目標 | ||
/ 期 | 30/12期 | 33/12期 | ||
既存借入金 | ||||
小 計 | 0 | 0 | 0 | |
社 債 | ||||
新規借入金 | 1,140 | 700 | ||
D 合 計 | 0 | 1,140 | 700 |
⑤計画終了時の定量目標および達成に向けた行動計画等
この部分は、日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金を利用する場合は不要です。
※中小企業経営力強化資金については当サイトの以下既存記事を是非ご覧ください。
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前期実績 | 今期見込 | 計画1期目 | 計画2期目 | 計画3期目 | 最終目標 |
/ 期 | / 期 | / 期 | / 期 | / 期 | / 期 |
算出不能 | 年 | 年 | 年 | 年 | 年 |
日本政策金融公庫の融資は、その場限りのお金を貸して終わりというスタンスではなく、融資をしたあとに事業者の経営がうまくいくことを重視しています。計画終了時の定量億票は、④の表でのA、B、C、Dという文字のところにある数字を以下の算式に当てはめ計算します。
D/(A+B+(C×1/2)※Cが欠損金の場合は1/2はかけない
まとめ
建設業の融資は他事業と異なり、多額の資金を要します。また、仕分けの方法も特殊(最初に材料費が必要)なため、より柔軟に資金調達することが大切です。
金融機関からお金を借りる、または自身が事業を振り返りたい場合、事業計画書の内容を理解して作成する必要があります。