年金や税金を滞納していた場合、日本政策金融公庫から創業融資を受けられるのかどうかを知りたい人もいますよね。また、日本政策金融公庫からの借入金を滞納した場合には、どのような状況になるのかを知りたい人もいるでしょう。
当記事では、滞納している人は日本政策金融公庫から創業融資を受けられるのかを解説していきます。日本政策金融公庫からの借入金を滞納した場合についても解説しているため、滞納による影響が知りたい人は参考にしてみてください。
滞納している人は創業融資を受けられない可能性がある
支払いを滞納している人は日本政策金融公庫から創業融資を受けられない可能性があります。とくに、信用情報に滞納の履歴がある人は創業融資を受けられない可能性があるため、借入先として日本政策金融公庫を検討中の人は注意が必要です。
信用情報とは、クレジットカードやローンなどの信用取引における利用情報のことです。信用情報は個人信用情報機関が保有していますが、個人信用情報機関に加盟(一部提携)している関係上、日本政策金融公庫の担当者も申込者の信用情報を照会できます。
そして、日本政策金融公庫の公式サイトにある「プライバシーポリシー」の資料には、「信用情報を返済能力の調査や与信取引上の判断に利用する」といった旨が記載されているため、担当者は申込者の信用情報から滞納に関する履歴も確認していると推測できます。
【信用情報に履歴が残る滞納の具体例】
項目 | 具体例 |
---|---|
信用情報に履歴が残る滞納 | ・奨学金 ・クレジットカード ・スマホ本体代の分割払い ・銀行や消費者金融などのカードローン ・住宅ローンや自動車ローンなどの目的別ローン |
信用情報に履歴が残らない滞納 | ・NHKの受信料 ・仕入れや経費にかかる消費税 ・市民税や区民税などの住民税 ・電気代や水道代などの公共料金 ・国民年金や国民健康保険などの保険料 |
たとえば、奨学金を滞納した場合、その履歴は信用情報に残ります。一方、国民年金や住民税を滞納した場合、その履歴は信用情報に残りません。
ただし、国民年金や住民税の支払いをクレジットカード払いにした場合、その支払いを滞納すれば、信用情報に滞納に関する履歴が残ることになります。また、滞納に関する履歴が信用情報に残らずとも、日本政策金融公庫の審査に影響を与える可能性はあります。
消費税などの税金の滞納に心当たりのある人は、日本政策金融公庫に申し込む前に一度、滞納の有無を確認してみることを検討してみてください。そして、滞納の有無を確認した結果、未納や滞納分があった場合はそれらを全額支払っておきましょう。
なお、年金に関する情報が知りたい人は「年金の未払いがある人は日本政策金融公庫から創業融資を受けられるのか?」も参考にしてみてください。
提出書類からも滞納の有無を確認している
日本政策金融公庫から創業融資を受けるには、いくつかの書類を提出することになります。その際、日本政策金融公庫の担当者は、申込者の提出書類からも滞納の有無を確認している傾向があります。
【提出書類の具体例】
項目 | 確認している情報の具体例 |
---|---|
預金通帳 | 家賃は滞りなく支払えているか? |
公共料金の領収書 | 公共料金は滞りなく支払えているか? |
固定資産税の領収書 | 固定資産税は滞りなく支払えているか? |
借入金の支払明細書 | 借入金は滞りなく支払えているか? |
クレジットカードの支払明細書 | 携帯電話料金は滞りなく支払えているか? |
たとえば、家賃を口座振替にしている場合には、預金通帳から家賃の支払状況を確認されます。また、携帯電話料金をクレジットカード払いにしている場合には、クレジットカードの支払明細書から携帯電話料金の支払状況を確認されることになります。
信用情報に滞納に関する履歴がなくとも、提出書類から滞納の事実が発覚すれば、日本政策金融公庫の審査に影響することが考えられます。担当者から支払状況を質問される場合もあるため、滞納に心当たりがある人はその旨を正直に伝えましょう。
なお、預金通帳に関する情報が知りたい人は「日本政策金融公庫の審査における預金通帳を解説」も参考にしてみてください。
滞納に心当たりのある人は信用情報の開示請求を検討してみる
滞納に心当たりのある人は、日本政策金融公庫に申し込む前に一度、信用情報の開示請求を検討してみましょう。個人信用情報機関に信用情報を開示請求すれば、滞納に関する履歴があるかどうかを確認できるからです。
日本にある個人信用情報機関は3社ですが、それぞれ保有している情報が異なります。そのため、個人信用情報機関に信用情報を開示請求するときは滞納した支払いごとに開示請求先も異なります。
【開示請求先】
個人信用情報機関 | 保有している情報の具体例 |
---|---|
株式会社シー・アイ・シー(CIC) | ・クレジットカード ・スマホ本体代の分割払い |
全国銀行個人信用情報センター(全銀協) | ・奨学金 ・銀行のローン商品 |
株式会社日本信用情報機構(JICC) | ・消費者金融のローン商品 |
たとえば、奨学金の滞納に心当たりのある人は「全国銀行個人信用情報センター(全銀協)」に開示請求する必要があります。また、クレジットカードの支払いに関する滞納に心当たりのある人は「株式会社シー・アイ・シー(CIC)」に開示請求することになります。
なお、CICとJICCはインターネットから開示請求できますが、全国銀行個人信用情報センターは郵送による開示請求のみです。申込用紙を記入し送付する必要があるため、全国銀行個人信用情報センターに開示請求したい人は「全国銀行協会の公式サイト」から申込用紙をダウンロードしておきましょう。
滞納における状況ごとの対応策
Q&Aサイトや口コミサイトでは、「支払いを滞納している場合」と「借入金を滞納しそうな場合」の2通りの投稿が見受けられました。それぞれ対応策が異なるため、該当する人は参考にしてみましょう。
【滞納に関する不安や悩み】
- 支払いを滞納している場合
- 借入金を滞納しそうな場合
滞納における対応策については、申込者の状況ごとに異なる部分もあります。該当する人はあくまでも一例としてそれぞれの項目を参考にしてみてください。
支払いを滞納している場合は融資以外の資金調達方法を検討する
何かしらの支払いを滞納している場合には、日本政策金融公庫の融資以外の資金調達方法を検討してみてください。とくに、他社借入の返済が遅れている人は日本政策金融公庫から創業融資を受けることにより、今よりも資金繰りが悪化するおそれもあります。
たとえば、中小企業や小規模事業者の場合には、日本政策金融公庫などの金融機関から創業融資を受けるのではなく、補助金制度を利用する方法もあります。
【補助金制度の具体例】
項目 | 概要 |
---|---|
小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓や生産性向上の取り組みなど、小規模事業者が事業を行う際に要する経費の一部の支援が受けられる補助金制度。商工会や商工会議所のサポートを受けつつ、経営計画書、補助事業計画書を作成し、採択が決定されれば、所定の補助を受けられる。 |
ものづくり補助金 | 正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。中小企業などによる生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金制度。 |
事業再構築補助金 | 新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編またはこれらの取組を通じた規模の拡大など、事業再構築に意欲を有する中小企業や小規模事業者の挑戦を支援する補助金制度。 |
早期経営改善計画策定支援事業 | 通称は「ポストコロナ持続的発展計画事業」。国が認定した税理士などの専門家の支援を受けたのち、資金繰り計画やビジネスモデル俯瞰図といった内容の経営改善計画の策定する際、その費用の3分の2(上限20万円)の補助を受けられる制度。 |
※中小企業庁「ミラサポplus」(https://mirasapo-plus.go.jp/)をもとに株式会社ソラボ作成
ただし、補助金制度を利用できるのは、所定の要件を満たしている場合のみです。審査を受けることにもなるため、気になる人は日本政策金融公庫に申し込む前に一度、中小企業向け補助金・総合支援サイトの「ミラサポplus」を確認してみましょう。
なお、「支払い.com」というサービスを利用することにより、クレジットカードの支払いを最長60日遅らせることができます。利用できるのは請求書の支払いに限られ、対象となるのは個人事業主や法人のみですが、クレジットカードの支払いを遅らせたい人は支払い.comの利用を検討してみましょう。
【PR】最短60秒で利用可能!
支払いドットコム公式サイトを確認する
借入金を滞納しそうな場合は担当者に相談する
日本政策金融公庫からの借入金を滞納しそうな場合には、すぐに担当者に相談することを検討してみましょう。借入金を滞納し続ければ、裁判などの法的措置に発展するおそれもあるからです。
日本政策金融公庫からの借入金を滞納した場合、電話による連絡が来たのち、封書による督促状が届くことになります。その後、日本政策金融公庫の担当者に連絡せず、借入金を滞納し続ければ、裁判などの法的措置に発展することも考えられます。
日本政策金融公庫の担当者に相談することにより、返済期限の猶予の先延ばしや借入金の分割払いを検討してもらえる可能性もあります。教育一般貸付(国の教育ローン)などの借入金を支払えない人は、まずは日本政策金融公庫の担当者に相談することを検討してみましょう。
滞納した場合は遅延損害金が発生する
日本政策金融公庫からの借入金を滞納した場合には、延滞の利息として遅延損害金が発生します。滞納が長引けば長引くほど、返済総額が膨らむことになるため、日本政策金融公庫からの借入金を滞納しそうな人は注意が必要です。
日本政策金融公庫の公式サイトにある「国民生活事業(主要利率一覧表)」には、「遅延損害金の割合は年8.80%です。(令和3年4月1日から令和4年3月31日までの貸付け)」と記載されているため、滞納した場合は実質年率8.80%の利息負担が発生する計算です。
また、遅延損害金が発生する日は、「契約書にある返済期日の翌日から」または「督促状にある返済期日の翌日から」です。「書面到達の日から〇日以内に支払うこと」といった旨が督促状に記載されていれば、その返済期日の翌日が遅延損害金の起算日となります。
滞納した理由がコロナだったとしても、原則として遅延損害金が免除されることはなく、滞納が長期化した場合には、信用情報に異動情報が登録されることも考えられます。日本政策金融公庫からの借入金を支払えない人は、まずは担当者に相談することを検討してみましょう。
まとめ
日本政策金融公庫の担当者は、申込者の信用情報や提出書類から滞納の有無を確認している傾向があります。そのため、支払いを滞納している人は審査に通らず、日本政策金融公庫から創業融資を受けられない可能性があります。
また、何かしらの支払いを滞納している場合には、日本政策金融公庫から創業融資を受けるべきかどうかも再検討してみてください。滞納している人が日本政策金融公庫から創業融資を受ければ、今よりも資金繰りが悪化し、返済不能に陥るおそれもあります。
そして、日本政策金融公庫からの借入金を滞納しそうな人は、すぐに担当者に相談することを検討してみてください。先延ばしにすればするほど、状況が悪化することも考えられるため、コロナなどの影響により借入金を返済できない人は、まずは担当者に相談することを検討してみましょう。