【宿泊業版】日本政策金融公庫の創業計画書の書き方と記入例を解説

ゲストハウスや民泊施設など、宿泊業の開業を予定している人の中には、日本政策金融公庫から創業融資を受けることを検討している人もいますよね。その際、日本政策金融公庫に提出する創業計画書の書き方を知りたい人もいるでしょう。

当記事では、宿泊業における創業計画書の書き方と記入例を解説します。「創業計画を考えるときのポイント」や「創業計画書にある各項目のポイント」を解説するため、宿泊業の開業を目指している人は参考にしてみてください。

まずは創業計画を立てるところから始める

創業計画書は事業の実現性を伝えるための書類です。日本政策金融公庫の担当者は創業計画書から事業の実現性を見極めることになるため、まずはその前提を踏まえつつ、創業計画書を作成するための準備として創業計画を立てるところから始めてみましょう。

【創業計画を立てるときのポイント】

  • 将来を構想する
  • 現状を整理する
  • 課題を抽出する

創業計画書の内容が非現実的だった場合、事業の実現性を示すことはできません。日本政策金融公庫から創業融資を受けるならば、担当者に事業の実現性を示す必要があるため、まずは創業計画書を作成するための準備としてそれぞれの項目を確認してみましょう。

将来を構想する

創業計画を立てるときのポイントは「将来を構想すること」です。将来を構想することにより、目標や方針を創業計画書に落とし込むことができるため、宿泊業の開業を目指している人は創業計画書を作成するための準備として将来を構想してみましょう。

【将来を構想するときの具体例】

項目 具体例
コンセプト ・宿泊施設のテーマは?
・宿泊施設のコンセプトは?
ターゲット ・ターゲットとなる年齢は?
・ターゲットとなる国籍は?
サービス ・共用の設備は?
・食事の提供は?

将来を構想するときの項目として挙げられるのは「コンセプト」です。「地元の自然を堪能できる宿」や「色々な国の友達を作れるゲストハウス」など、コンセプトの観点から将来を構想することにより、開業後の目標を創業計画書に落とし込むことができます。

また、将来を構想するときの項目として挙げられるのは「サービス」です。「食事のメニュー」や「アクティビティの内容」など、サービスの観点から将来を構想することにより、開業後の方針を創業計画書に落とし込むことができます。

なお、将来を構想するときは開業の動機を振り返ることも方法のひとつです。開業の動機を振り返ることにより、理想の将来像が見えてくる可能性があるため、将来を構想するときは開業の動機を振り返ることも検討してみましょう。

現状を整理する

創業計画を立てるときのポイントは「現状を整理すること」です。現状を整理することにより、成果や長所を創業計画書に落とし込むことができるため、宿泊業の開業を目指している人は創業計画書を作成するための準備として現状を整理してみましょう。

【現状を整理するときの具体例】

項目 具体例
実績 ・宿泊業界の勤務経験は?
・宿泊業に関する検定は?
知識 ・宿泊業界の流行は?
・デジタルツールの活用は?
技術 ・語学のスキルは?
・調理のスキルは?

現状を整理するときの項目として挙げられるのは「実績」です。「宿泊業界での勤務年数」や「接客コンテストでの受賞歴」など、実績の観点から現状を整理することにより、アピールポイントとなる成果を創業計画書に落とし込むことができます。

また、現状を整理するときの項目として挙げられるのは「知識」です。「AIを活用した接客サービス」や「ワーケーションに対応できる設備」など、知識の観点から現状を整理することにより、アピールポイントとなる長所を創業計画書に落とし込むことができます。

なお、現状を整理するときは強みと弱みを書き出すことも方法のひとつです。強みと弱みを書き出すことにより、得意とする分野と苦手とする分野を把握できる可能性があるため、現状を整理するときは強みと弱みを書き出すことも検討してみましょう。

課題を抽出する

創業計画を立てるときのポイントは「課題を抽出すること」です。課題を抽出することにより、戦略や対策を創業計画書に落とし込むことができるため、宿泊業の開業を目指している人は創業計画書を作成するための準備として課題を抽出してみましょう。

【課題を抽出するときの具体例】

項目 具体例
資金 ・開業資金の目安は?
・資金調達の方法は?
集客 ・新規顧客を獲得する方法は?
・リピーターを増やす方法は?
許可 ・旅館業営業許可の申請は?
・消防法令適合通知書の申請は?

課題を抽出するときの項目として挙げられるのは「集客」です。「利用する予約サイト」や「SNSの運用方法」など、集客の観点から課題を抽出することにより、その課題を解決するための戦略を創業計画書に落とし込むことができます。

また、課題を抽出するときの項目として挙げられるのは「許可」です。「旅館業許可の種類」や「飲食店営業許可の要否」など、許可の観点から課題を抽出することにより、その課題を解決するための対策を創業計画書に落とし込むことができます。

なお、課題を抽出するときは競合となる宿泊業者を調査することも方法のひとつです。競合となる宿泊業者を調査することにより、新たな課題を発見できる可能性があるため、課題を抽出するときは競合となる宿泊業者を調査することも検討してみましょう。

次は創業計画書にある各項目を確認する

日本政策金融公庫は創業計画書のフォーマットを用意しています。フォーマットの中には、いくつかの項目が用意され、その中でも融資の可否を左右する項目があるため、創業計画を立てた人は次の工程として創業計画書にある各項目を確認してみましょう。

【創業計画書にある項目の具体例】

  • 「創業の動機」
  • 「経営者の略歴」
  • 「取扱商品とサービス」
  • 「取引先と取引関係」
  • 「必要な資金と調達方法」
  • 「事業の見通し」

創業計画書のフォーマットは日本政策金融公庫の公式サイトにある「国民生活事業」からダウンロードできます。まずは創業計画書をダウンロードし、ダウンロードが完了した人は次から説明する各項目のポイントと記入例を確認してみましょう。

「創業の動機」

日本政策金融公庫の創業計画書にある項目のひとつは「創業の動機」です。開業の目的や理由を記入する項目となるため、「創業の動機」を書くときは開業前の計画性や開業後の経営方針を落とし込むことがポイントになります。

【「創業の動機」の記入例】

高校卒業後は18年間、宿泊業に従事してきました。1社目の旅館では、仲居として配膳業務や案内業務などを経験しました。2社目のホテルでは、フロントスタッフとして予約管理やコンシェルジュ業務などを経験した後に支配人となり、人材育成や売上管理などの業務を行ってきました。そうした中で、オーナーとしてゲストハウスを開業したいと思うようになり、開業資金に充てる目的として自己資金をコツコツと貯めてきました。そしてこの度、観光地である湘南エリアの空き家を確保する目途が立ったため、ワーケーションが可能なゲストハウスの開業を決意しました。

開業前の計画性を伝えるときのポイントは「具体的な行動」を盛り込むことです。「職務経験の年数」「自己資金の貯蓄」「物件の確保」など、具体的な行動を盛り込むことにより、計画的に開業準備を進めてきたことを伝えられる可能性があります。

開業後の経営方針を伝えるときのポイントは「具体的な条件」を盛り込むことです。「立地の利点」「物件の種類」「施設の特徴」など、具体的な条件を盛り込むことにより、経営方針が明確にできていることを伝えられる可能性があります。

なお、支援者の協力がある場合はその旨を記入することも方法のひとつです。「親族」や「取引先」など、支援者の協力は事業の実現性を示す要素となるため、支援者の協力がある人は親族や取引先などの支援者との関係性を記入しておきましょう。

「経営者の略歴」

日本政策金融公庫の創業計画書にある項目のひとつは「経営者の略歴」です。自身の経歴や実績を記入する項目となるため、「経営者の略歴」を書くときは習得したスキルや客観的な実績を落とし込むことがポイントになります。

【「経営者の略歴」の記入例】

年月 内容
平成18年3月 〇〇高校卒業
平成18年4月 旅館〇〇 5年勤務
(仲居として配膳業務や案内業務などを担当)
平成20年11月 サービス接遇検定 1級合格
平成23年5月 〇〇ホテル 8年勤務
(フロント業務を担当後、平成30年より支配人として人材育成や売上管理を担当し、客室稼働率を前年比8%増加させた)
令和6年12月 退職

習得した技術を伝えるときのポイントは「職務内容」を記入することです。「配膳」「調理」「コンシェルジュ」など、複数の職務を担当した経験がある場合はそれらの職務内容を記入することにより、開業後に活かせる技術を伝えられる可能性があります。

客観的な実績を伝えるときのポイントは「役職名」を記入することです。「支配人」「チームリーダー」「女将」など、役職者としての経験がある場合はそれらの役職名を記入することにより、周囲からの評価を伝えられる可能性があります。

なお、宿泊業に関する資格を取得している場合はその旨を記入することになります。「防火管理者」や「食品衛生責任者」などの資格は開業後の経営に役立つ可能性があるため、資格を取得している人は資格名を記入しておきましょう。

「取扱商品とサービス」

日本政策金融公庫の創業計画書にある項目のひとつは「取扱商品とサービス」です。宿泊施設の長所や戦略を記入する項目となるため、「取扱商品とサービス」を書くときは競合施設との差別化や集客の実現性を落とし込むことがポイントになります。

【「取扱商品とサービス」の記入例】

項目 内容
事業内容 宿泊施設を提供する事業。
取扱商品・サービスの内容 簡易宿所営業(売上シェア100%)
客単価 5,000円/室
営業日数 30日
セールスポイント 湘南エリアの観光拠点となるゲストハウスを提供します。共用設備を充実させることにより、宿泊客同士が密なコミュニケーションを取れることが特徴です。コワーキングスペースも提供するため、ワーケーションの場としても活用いただけます。空き家をリノベーションすることにより、社会的な課題でもある空き家の再活用に貢献します。
販売ターゲット・販売戦略 湘南エリアの観光に訪れる10代~30代の男女がターゲットです。ゲストハウス向けの予約サイトへの登録に加え、InstagramやTikTokなどのSNSを運用することにより、新規顧客の獲得を目指します。また、チェックアウトの際に次回の宿泊料やコワーキングスペースの利用料を割り引くクーポンを発行することにより、リピーターの獲得を図ります。
競合・市場など企業を取り巻く環境 近隣に宿泊施設は多数ありますが、ホテルや旅館が多いため、ゲストハウスの営業形態により差別化が可能です。政府がワーケーションを推奨している関係上、ワーケーションを目的とした宿泊者も獲得できる見込みです。また、鎌倉や江の島を中心にインバウンド需要も高まっている関係上、外国人の宿泊客も獲得できる見込みです。

競合業者との差別化を伝えるときのポイントは「宿泊施設の強み」を記入することです。「共用設備の充実」や「コワーキングスペースの提供」など、その業者の強みを記入することにより、競合業者と差別化する要素を伝えられる可能性があります。

集客の実現性を伝えるときのポイントは「具体的な施策」を記入することです。「InstagramやTikTokなどのSNS運用」や「チェックアウト時のクーポン配布」など、具体的な施策を記入することにより、集客の実現性を伝えられる可能性があります。

なお、商圏分析を実施した場合はその旨を記入することも方法のひとつです。「流動人口」や「商業特性」など、商圏分析は差別化や実現性における根拠となるため、商圏分析を実施した人は流動人口や商業特性などの商圏分析の結果を記入しておきましょう。

「取引先と取引関係」

日本政策金融公庫の創業計画書にある項目のひとつは「取引先と取引関係」です。想定している販売先や仕入先を記入する項目となるため、「取引先と取引関係」を書くときは集客の見込みや仕入先の信頼性を落とし込むことがポイントになります。

【「取引先と取引関係」の記入例】

項目 取引先名 所在地 取引先のシェア 掛取引の割合 回収・支払の条件
販売先 一般個人
(最寄り駅から徒歩3分のため、鎌倉や江の島など観光地への交通の便が良い)
100% 0% 即金
仕入先 〇〇アメニティ
(知人が経営)
神奈川県〇〇市 50% 100% 末日〆翌月末日支払
リネンサプライ〇〇
(知人が経営)
神奈川県〇〇市 50% 100% 末日〆翌月末日支払
人件費 末日〆翌月末日支払

集客の見込みを伝えるときのポイントは「集客が期待できる理由」を記入することです。「立地の特徴」や「宿泊業の需要」など、集客が期待できる理由を記入することにより、集客の見込みが想定できていることを伝えられる可能性があります。

仕入先の信頼性を伝えるときのポイントは「仕入先との関係性」を記入することです。「知人が経営する業者」や「現勤務先の取引先」など、仕入先との関係性を記入することにより、信頼できる仕入先が確保できていることを伝えられる可能性があります。

なお、販売先からの回収条件が決定している場合はその旨を記入することになります。「クレジットカード」や「電子マネー」など、回収方法や回収日は具体性を持たせる情報となるため、回収条件が決定している人は販売先からの回収条件を記入しておきましょう。

「必要な資金と調達方法」

日本政策金融公庫の創業計画書にある項目のひとつは「必要な資金と調達方法」です。開業資金や資金調達の金額を記入する項目となるため、「必要な資金と調達方法」を書くときは必要資金と借入額の妥当性を落とし込むことがポイントになります。

【「必要な資金と調達方法」の記入例】

項目 必要な資金 見積先 金額 調達の方法 金額
設備資金 (内訳)
物件取得費
内装工事費
ベッド×10台
備品費
(内訳)
A社
B社
C社
D社
(内訳)
600万円
350万円
40万円
25万円
自己資金 500万円
親、兄弟等からの借入
(内訳・返済方法)
日本政策金融公庫からの借入
(内訳・返済方法)
400万円
運転資金 (内訳)
人件費
広告費
修繕費
光熱費
(内訳)
100万円
40万円
25万円
20万円
他の金融機関等からの借入
(内訳・返済方法)
300万円
合計 1,200万円 合計 1,200万円

必要資金の妥当性を伝えるときのポイントは「分類した金額」を記入することです。「物件取得費」「内装工事費」「ベッド」など、分類した金額を記入することにより、必要資金が適正であることを伝えられる可能性があります。

借入額の妥当性を伝えるときのポイントは「矛盾のない金額」を記入することです。「設備資金とその内訳の合計額」「運転資金とその内訳の合計額」など、矛盾のない金額を記入することにより、借入額が適正であることを伝えられる可能性があります。

なお、親族や友人からの借入がある場合はその旨を記入することになります。贈与は自己資金として認められる可能性もありますが、親族や友人からの借入は自己資金とは区別されるため、親族や友人からの借入がある人はその内訳や返済方法を記入しておきましょう。

「事業の見通し」

日本政策金融公庫の創業計画書にある項目のひとつは「事業の見通し」です。開業後の売上や利益の見込み額を記入する項目となるため、「事業の見通し」を書くときは売上や利益の算出根拠を落とし込むことがポイントになります。

【「事業の見通し」の記入例】

項目 創業当初 1年後または軌道に乗った後 算出の根拠
売上高① 60万円 97万円 【創業当初】
①売上高:5,000円/室×10室×40%×30日=60万円
②原価率:20%
売上原価:60万円×20%=12万円
③人件費:アルバイトを2人雇用
(時給1,200円×130時間=16万円)
その他(広告費、修繕費、光熱費など):12万円
【軌道に乗った後】
①売上高:5,000円/室×10室×65%×30日=97万円
②売上原価:当初の原価率20%を採用
③人件費:アルバイトを1人増員
(時給1,200円×200時間=24万円)
その他:修繕費と光熱費を計3万円増加
売上原価② 12万円 20万円
経費 人件費 16万円 24万円
家賃
支払利息 2万円 2万円
その他 12万円 15万円
合計③ 30万円 41万円
利益①-②-③ 18万円 36万円

売上の算出根拠を伝えるときのポイントは「根拠となる計算式」を記入することです。「客室単価×客室数×客室稼働率×営業日数」や「時給×勤務時間」など、根拠となる計算式を記入することにより、再現性のある売上高を伝えられる可能性があります。

利益の算出根拠を伝えるときのポイントは「経費にかかる金額」を記入することです。「人件費」「広告費」「修繕費」「光熱費」など、経費にかかる金額を記入することにより、再現性のある利益額を伝えられる可能性があります。

なお、法人の場合は役員報酬を人件費として記入することになります。個人事業主の場合は自身の収入を人件費に含めませんが、法人の場合は役員報酬を人件費に含めることになるため、法人に該当する人は役員報酬を含めた金額を記入しておきましょう。

創業計画書を書き終えた後は記入内容を見直す

創業計画書を書き終えた後は記入内容を見直すことを検討してみてください。創業計画書を見直すことにより、改善点や修正点に気付くことも考えられるため、創業計画書を書き終えた後は各項目の記入内容を見直してみましょう。

【記入内容を見直すときのポイント】

  • 全体の整合性はとれているか?
  • そう言える根拠は示せているか?
  • 誤字脱字などの修正点はないか?

創業計画書を見直すときのポイントは「全体の整合性」です。「経営方針」や「資金計画」など、創業計画の内容に矛盾がある場合は一貫性がないことにより、日本政策金融公庫の担当者に事業の実現性が低いと判断される可能性があります。

創業計画書を見直すときのもうひとつのポイントは「そう言える根拠」です。「売上高」や「利益額」など、創業計画の数字に無理がある場合は説得力がないことにより、日本政策金融公庫の担当者に事業の実現性が低いと判断される可能性があります。

なお、日本政策金融公庫は「創業計画書のセルフチェック」に関する情報を公開しています。会員登録を必要とせず、無料のサービスとなるため、創業計画書を見直すときは日本政策金融公庫の公式サイトにあるセルフチェックも利用してみましょう。

まとめ

創業計画書は事業の実現性を伝えるための書類です。日本政策金融公庫の担当者は創業計画書から事業の実現性を見極めることになるため、まずはその前提を踏まえつつ、創業計画書を作成するための準備として創業計画を立てるところから始めてみましょう。

また、日本政策金融公庫は創業計画書のフォーマットを用意しています。フォーマットの中には、いくつかの項目が用意され、その中でも融資の可否を左右する項目があるため、創業計画を立てた人は次の工程として創業計画書にある各項目を確認してみましょう。

なお、創業計画書を書き終えた後は記入内容を見直すことを検討してみてください。創業計画書を見直すことにより、改善点や修正点に気付くことも考えられるため、創業計画書を書き終えた後は各項目の記入内容を見直してみましょう。

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